映画のジャンルは数多くありますが、その中でも多く描かれてきたのが「家族」です。泣ける家族映画を無性に観たくなる日がある人もいるのではないでしょうか。
しかし家族と一言に言っても、その概念は時代の移り変わりとともに多様化しています。特に近年は、シングルマザーや貧困など現代の問題にアプローチする作品も増えてきました。そこで今回は「家族映画」をテーマに、と言っても泣ける系だけで関わらず、色々な家族の在り方を描いた映画をご紹介します。
『マリッジ・ストーリー』(2019)
離婚プロセスに戸惑い、子の親としてのこれからに苦悩する夫婦の姿を、アカデミー賞候補監督ノア・バームバックが、リアルで辛辣ながら思いやりあふれる視点で描く。
スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン、レイ・リオッタ出演。夫婦の離婚は2人の愛がなくなったからといった単純なものではなく、周囲の環境など複雑な理由だと納得する一作。ギクシャクしていても、息子と三人でいる時には自然と笑顔になってしまう姿は微笑ましくも同時に切ない。
『家族を想うとき』(2019)
イギリス、ニューカッスルに住むある家族。父のリッキーはマイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立。母のアビーはパートタイムの介護福祉士として、時間外まで1日中働いている。家族を幸せにするはずの仕事が、家族との時間を奪っていき、高校生のセブと小学生の娘のライザ・ジェーンは寂しい想いを募らせてゆく。そんななか、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう……。
『わたしは、ダニエル・ブレイク』で知られ、家族を題材にした作品が多数あるケン・ローチ監督作。イギリスで問題になっている貧困や雇用問題を取り扱っている本作。鑑賞後は自分の将来について考えてしまう。
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『万引き家族』(2018)
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく……。
『海街diary』『そして父になる』などで様々な家族の在り方を描いてきた是枝裕和監督作。リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、樹木希林出演。第42回アカデミー賞、第71回カンヌ国際映画祭をはじめとした映画祭で数多くの賞を受賞した。
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『ルーム』(2015)
突然の監禁から7年の時が経ち、母は全てを賭けた脱出を決意する。奪われた人生を取り戻すために、何より部屋しか知らない息子に、“本当の世界”をみせるために。衝撃に胸をつかれ、生きる輝きに嗚咽が漏れる、世紀の愛の物語。
『FRANK ーフランクー』のレニー・アブラハムソン監督作。ブリー・ラーソン、ジョーン・アレン、ウィリアム・H・メイシー、ジェイコブ・トレンブレイ出演。「監禁された親子の話」という衝撃の題材だが、主演2人の確かな演技力によって、ドキュメンタリーのようなリアリティある仕上がりになった。脱出するかしないかに留まらず、世界とどのように向き合っていくかという普遍的なテーマまで発展した物語は、観客の心に深く突き刺さる。
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『ハッピー・オールド・イヤー』(2019)
デザイナーのジーンは、スウェーデンに留学しミニマルなライフスタイルを学んで帰国する。かつて父親が営んでいた音楽教室兼自宅の小さなビルで、出て行った父を忘れられずにいる母、オンラインで自作の服を販売する兄と三人で暮らす彼女は、家を改装しデザイン事務所にすることを思い立つ。理想的な事務所すべく、モノにあふれた家の“断捨離”を進めていく。一度は全てを手放そうとする彼女だったが、洋服、レコード、楽器、写真といった友達から借りたままだったモノを返して廻ることに。友達の反応は千差万別で、なかなか思うように“断捨離”は進まない。そんな時、かつての恋人エームから借りたカメラを見つける。処分に困りながらも小包として送るが、受取を拒否され返ってきてしまう……。
ナワポン・タムロンラタナリット監督作。チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、サニー・スワンメーターノン出演。昨今話題の断捨離をテーマに、それを通して家族や友人と向き合う主人公の成長物語になっている。鑑賞後は、断捨離に興味を持つこと間違いなし。
『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)
アカデミー賞4部門ノミネートのロードムービー。全米美少女コンテストで地区代表に選ばれた9歳のオリーブは家族のミニバスで会場を目指すが、同行するのは問題だらけの家族たち。道中で起こるいざこざを描いていく。
『ルビー・スパークス』のジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス監督作。グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ出演。家族の一人一人のキャラが個性的で、そんな彼らの問題を解決していく本作は、まさに「家族映画」の王道。
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『オン・ザ・ロック』(2020)
ローラは順風満帆な人生を送っていると思っていた。しかし、夫のディーンが新しく来た同僚と残業を繰り返すようになり、良からぬことが起こっているのでと疑いを抱く。そこで、ローラはそういう男女の問題に精通しているプレイボーイの男性に相談を持ち掛ける。それは、自分の父親のフェリックスだった。フェリックスはローラにこの事態を調査すべきだとアドバイスし、父娘2人で夜のニューヨークへと繰り出す。アップタウンのパーティーやダウンタウンのホットスポットを駆け巡る内に、フェリックスとローラは自分たち父娘の関係についてある発見をすることになる……。
『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラ監督作。ラシダ・ジョーンズ、マーロン・ウェイアンズ、ビル・マーレイ、ジェニー・スレイト出演。父と娘の友情を描いた本作は同時に、世代によって変化する男らしさも描かれている。ウディ・アレン作品のような設定だからこそ、女性監督であるソフィア・コッポラが描きたかったものが際立つ。
『パラサイト 半地下の家族』(2019)
全員失業中で、その日暮らしの生活を送る貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである超裕福なパク氏の家へ、家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして兄に続き、妹のギジョンも豪邸に足を踏み入れる。しかしこの相反する2つの家族の出会いは、誰も観たことのない想像を超える悲喜劇へと猛烈に加速していくことに……。
『母なる証明』のポン・ジュノ監督作。ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム出演。貧困家族を主人公にしているが、パク氏の家に潜入するワクワク感や随所に散りばめられるユーモアがあることで、エンタメとして楽しめる。しかし気を抜いていると、所得の格差がもたらす現実を突きつけられる。このバランス感覚は韓国映画でしか表現できないだろう。第92回アカデミー賞をはじめ、数々の賞を受賞した。
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『チョコレートドーナツ』(2012)
マルコが好きだったもの。人形のアシュリー、ディスコダンス、ハッピーエンドのおとぎ話、そしてチョコレートドーナツ。マルコは僕らに家族をくれた。僕らはマルコをなにがあっても守ると約束した。僕たちは忘れない。マルコと過ごした愛しい日々。
トラヴィス・ファイン監督作。アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ出演。同性愛と障害児に対する偏見が根強くあった1970年代が舞台。家族になりたい気持ちと偏見という大きな壁がぶつかり、翻弄される彼ら。あまりの現実の厳しさに「二度と観たくない」という声も多いが、自分の中にある差別と向き合うことができる傑作。
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『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)
銭湯「幸 さちの湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔 し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。そんなある日、突然「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。 家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる。気が優しすぎる娘を独り立ちさせる。娘をある人に会わせる。その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく……。
『浅田家!』の中野量太監督作。宮沢りえ、杉咲花、篠原ゆき子(篠原友希子)、松坂桃李、オダギリジョー出演。号泣する映画の大定番として知られる本作。宮沢りえ演じる双葉の温かさと母親としての強さに、「家族って良いなあ」と鑑賞後はしみじみ思うはず。
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※本記事で紹介する映画は国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」のデータに基づいてセレクトしたものです。
※2021年1月25日時点のVOD配信情報です。