バットマンとスーパーマンの共演作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』2016年3月の日本公開が発表されました。すでにアメリカでは予告編が公開されています。
アメコミにあまり関心の無い人にとって、正義の味方であるハズのバットマンとスーパーマンが対峙し「オマエに血は流れているのか? そいつを流すことになる!」と穏やかでない台詞を交わしているのに違和感を覚えるかもしれません。しかしこの2人、コミック世界ではイデオロギーの違いから度々大げんかをやらかしているのです。
リバタリアンVSコンプライアンス
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クリストファー・ノーランの『ダークナイト』で、金儲けや功名心に関心が無くただただ混乱を求めるジョーカーに対し、バットマンは自分の存在がジョーカーという狂気を生みだしたのではないかと苦悩します。
バットマンとジョーカーが表裏の存在であるということは、ことあるごとに話題になるネタです。バットマンは自身が決めた善悪の規範のみに従い法の遵守は二の次です。対するジョーカーは徹底して、あらゆる秩序や支配の崩壊を目指します。
つまり「目的のためなら法は無視する」という点では全く同じ方向をむきながら、敵対しているのです。そんなバットマンをリバタリアンに、ジョーカーをアナキストに例える向きもあります。
彼ら“無法者”に対しスーパーマンは法を絶対に遵守する、言ってみれば「コンプライアンス・ヒーロー」です。一見スーパーマンの姿勢は正しく思えます。しかし、悪法であっても改正されない限り絶対に守る危険人物だとも言えます。当然、バットマンとの折り合いもすこぶる悪いのです。
バットマン:ダークナイト・リターンズ
『バットマンvスーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス』予告編での対峙場面でバットマンがアイアンマンの様なアーマーを着こんでいます。実はアーマーを着たバットマンとスーパーマンがにらみ合う場面に多くのアメコミファンは思い当たるフシがあります。
1980年代中ごろにアメコミ界を揺るがすコミックが発売されます。『シンシティ』や『300』の原作者フランク・ミラーによる『バットマン:ダークナイト・リターンズ』です。
老いて自警活動を引退したブルース・ウェインが荒廃するゴッサム・シティに痺れを切らし、バットマンとしてカムバックをする物語です。このコミック終盤でも、スーパーマンとバットマンは殴り合いの大ゲンカを繰り広げます。その時に肉体的にスーパーマンに劣るバットマンが予告編に登場する様なアーマーを着こんでいるのです。
その『バットマン:ダークナイト・リターンズ』は正に、リバタリアンたるバットマンとコンプライアンスの権化であるスーパーマンの対立が描かれています。
このコミックが発売された80年代を鑑みれば、世界の警察を名乗ったアメリカをスーパーマンが、徐々に死に向かうソビエト:共産主義を老いたバットマンが象徴していたのかもしれません。
その物語や対立構造を現代にどう蘇らせるのかが、新作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の見どころになるのは間違いありません。
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※2021年3月21日時点のVOD配信情報です。