【映画『何者』を3倍楽しむための原作ガイド】一対の物語「何者」と「何様」

映画に夢中な書店員

ふじわらなお

10月15日公開映画『何者

何者 メイン

(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

佐藤健有村架純菅田将暉二階堂ふみといった、今をときめく若手俳優陣競演の超話題作です。

監督は演劇ユニット「ポツドール」の主宰で、大きな反響を呼んだ池松壮亮主演映画『愛の渦』の監督である三浦大輔ということで、映画ファンは絶対に見逃せない作品となっています!

そして原作は朝井リョウの「何者」。ということで今回はこれから『何者』を見に行くかたに向けて、原作本「何者」と、8月末に新しく発売されたアナザーストーリー集「何様」を紹介したいと思います。

朝井リョウとは

朝井リョウといえば「桐島、部活やめるってよ」。2012年公開の映画は傑作でした。

桐島

平成生まれの作家として初の直木賞を受賞しています。大学卒業後は就職し、2015年までは会社員と作家を両立していました。

また主演の佐藤健とも親交があり、日本テレビ「ZIP!」の取材で、「拓人と朝井リョウがすごく僕の中で繋がったんです。朝井リョウを演じようと思って。」と佐藤健は語っています。

観察者・拓人の視点で就活を描いた「何者」

何者本

出典:「何者」:朝井リョウ:本:Amazon.co.jp

あらすじ

「何者」は、就職活動に臨む5人の男女の物語です。

ふとしたことがきっかけで1つの部屋に集まり、就活対策をすることになった5人。ルームシェアをしている拓人(佐藤健)と光太郎(菅田将暉、理香(二階堂ふみ)と隆良(岡田将生)のカップル、光太郎の元彼女で、拓人が思いを寄せている瑞月(有村架純)。

読んでいてヒリヒリしました。私自身が就活生だった数年前の気持ちは、5人の登場人物全てに当てはまるような気がしたからです。「何者」かになりたいとあがいている以上、今でも変わらないかもしれません。

しっかり準備して就活に臨んだ理香と瑞月、気楽に取り組む光太郎、一歩引いた目で見つめる拓人、就活自体を放棄している隆良と、それぞれスタートは違います。ですが、就活が進むにつれて、トントン拍子に進んでいく人とそうでない人がでてきます。

どうして自分は選ばれないのか、どうして彼(彼女)は選ばれたのか。

焦りや嫉妬、友情と恋愛、あらゆる感情が渦巻き、それが、SNSを通して露呈する時、彼らは自分自身を見つめることができるのでしょうか

観察者・拓人

この本は、常に拓人の視点から描かれています。

拓人は観察者です。瑞月から「出た、拓人くんの分析」と言われるように、周囲の人間を分析する癖があります。

だから、読者は常に拓人の目を通した登場人物たちを見つめることになります。彼の目から見た登場人物たちを見つめることで、「そう、いるよねそういう子」「うわ出た意識高い系~」と、登場人物たちをちょっと上から視点でカテゴライズすることができるのです。

映画『何者』のポスターに、それぞれの名前だけでなく、「地道素直系女子」、「意識高い系女子」、「空想クリエイター系男子」といったカテゴライズがなされています。

何者

(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

日頃よく無数にいる同級生や同僚をカテゴライズしてわかったつもりになるのと同じように、観客がすんなりと彼らを「なるほどこんなタイプね」とポスターを見るだけで受け入れさせますポスターを見るだけで、彼らをわかったつもりになって、私たち観客は映画館に入っていってしまいます

それは、拓人の視点で物語を読み進めている原作読者と同じ状態です。

そして、最後、きっとあなたはズキリとさせられることでしょう。

何にズキリとさせられるかは、原作か映画を観てのお楽しみです。

拓人の知らない、反対側の世界を描いた「何様」

8月末に新しく発売された単行本「何様」。

何様

出典:「何様」:朝井リョウ:本:Amazon.co.jp

「何者」発売以降に「小説新潮」や「yomyom」で掲載された作品と、書き下ろし作品1篇をまとめた本です。のっぺらぼうの顔に、光にかざしたらようやく見える程度の輪郭が描かれていることが印象的な表紙です。

2つの始まり

天真爛漫でチャラそうに見えるけれど純粋。何も考えてなさそうなのに、誰よりも順調に就活を進めていく光太郎は、菅田将暉のイメージにぴったりで、もっと彼を見たい!と思いましたが、その欲求に応えてくれた1篇が、「水曜日の南階段はきれい」です。

原作ではさらっとしか扱われなかった、彼が出版社を目指した理由が、高校時代の瑞々しい青春物語として描かれていて、とても甘酸っぱいです。

そして、原作ではガツガツ就活を頑張る意識高い系女子と、インテリのアート系男子という、ちょっとニガテなタイプ・・・と感じてしまった理香と隆良の出会いが描かれる「それでは2人組を作ってください」。

留学、インターン、ボランティアに参加し、英語がペラペラという完璧すぎる女の子の本音と過去が明らかになります。そして、理香の視点から見た隆良は、なんだか不器用でかわいいのです。

なくてはならない存在、サワ先輩とギンジ

映画では山田孝之が演じるサワ先輩。拓人のことを静かに見守り、言うべきことはビシッと言う、絶対的な安定感がある存在です。社会人になったサワ先輩が、相変わらずのかっこよさと優しさを醸しだす「逆算」は、隠れファン必見です。

ギンジは、拓人が決別した元演劇仲間です。大学を中退し自分の劇団を立ち上げたギンジに対して拓人は歪んだ憎しみを募らせます。雑誌に取り上げられたりと有名になっていくギンジおじさんの演劇を観にきた甥の目からみたら、彼はどう見えるのか。唯一の書き下ろし「きみだけの絶対」。常にギンジという人間自体は描かれず、彼はいつも誰かの目を通して描かれているというのが面白いです。

大人になってしまった人たちの人生

瑞月の両親の別居が原因で、瑞月は就活の方針を変えざるをえませんでした。その両親になにが起こったのかを、瑞月の父親と関係を持った女性の視点で描いたのが「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」。

拓人を落とした面接官をはじめとした人事部と、新人面接官の苦悩を描いた「何様」。つい最近まで選ばれる側だった社会人が、人事部に配属され選ぶ側に回ることへの当惑、苦悩が描かれています。

前者の女性は、企業合同説明会などのマナー講師を務めています。つまり彼らは「何者」の主人公たちの対極の立場にいる人物です。就活生を教える立場であり、人生を左右する立場でもあり、その存在価値を揺さぶる立場でもある彼らもまた、悩み、葛藤しています。

「何者かになりたい」「何者なんだろう、私」の先に、「何様だよ、自分」と戸惑いながら仕事をしている大人がいます。「何様」は「何者」の数年後の姿なのかもしれません。

生きるとは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けること

何者 サブ12

(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

「何様」の帯に書いていた言葉です。「何様」は作品集なので、描いている時間も人もバラバラのため一概にそうとは言えません。

ですが「何者」が、まだ何者にもなっていない登場人物たちが何者かになるために模索する物語なのだとしたら、「何様」は、「何者」かになったつもりで、あるいは何らかの役割を担わされた大人たちの戸惑いであり、何者でもない自分に戻ろうとするあがきでもあると感じました。

就活生だけでなく大人なら誰でも共感できる2つの「何者」

(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

「何者」は就活生、もしくは就活前の学生へオススメ。そして、「何様」は、社会人にオススメです。

もちろん、映画『何者』を観たあとに、両方読んだら3倍楽しめます

より深く、映画を楽しむために、秋の夜長は2冊の「何者」で自分自身を探求してみませんか?

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    5.0
    【ダメージのイメージ】 RPGの戦闘方法は大別すると、 『ターン制』 『リアルタイム制』 の二種類がありますよね。 ターン制は交互に行うイメージで、 卓球やテニスのラリーに近いです。 リアルタイム制は攻守の主導権争い、 サッカーやバスケットかな。 僕はリアルタイム制が苦手です。 滅茶苦茶パニクります。 メタルギアシリーズも苦手です。 CPUに血が通っている感覚です。 いつ攻撃されるか分からない、 そんな恐怖を感じるのです。 【ダメージの質】 ターン制でもリアルタイム制でも、 ダメージは共通して受けます。 なのにリアルタイム制だと、 『ダメージを受ける恐怖』 をより強く感じてしまうのです。 自分でも不思議ですけど、 『ターン制は無機質』であり、 『リアルタイム制は有機質』 なんですよ。 【ターン制ダメージ】 ターン制のダメージは、 『風邪や事故』 のような関節的ダメージです。 人間から直に被る痛みではなく、 『空気感染や人工物を介する痛み』 となります。 スポーツによる例えならば、 『コートを仕切るネット』 そんなイメージですかね。 【リアルタイム制ダメージ】 リアルタイム制のダメージは、 『人間から受けるダメージ』 つまり直接的ダメージです。 『障害物はネットではなく人間』 サッカーやバスケットは、 人間がボールを奪いにきます。 『人間が襲ってくる恐怖』 それをより強く感じるのが、 リアルタイム制ダメージなのです。 【ゲームの存在意義】 『サカつく』や『牧場物語』 昔は牧歌的なゲームばかり プレイしてきました。 『選択の猶予があるゲーム』 そんなジャンルばかり志向 して生きてきたのです。 その選択を今となっては、 後悔して反省しています。 『痛み』から目を背けてきたのです。 せっかくゲームという架空上で、 『人間関係に近い痛み』 を味わうことができるのです。 僕はゲームというツールを、 『痛みを克服する材料』 として活用すべきでした。 【恐怖ではなく痛み】 面接は人間と対峙する恐怖を、 より強く受ける行為です。 いや、 恐怖ではなくて痛みでした。 そこを履き違えてはいけなかった。 僕は人間関係の痛みを、 『恐怖という言葉』で 『曖昧』にしていたのです。 ノーダメージは存在しない。 『人間関係には必ず痛みがある』 その事実をゲームから、 『擬似的だとしても学ぶべき』 だったのです。 【ダメージの逆説】 逆を言えば、 『リアルタイム制が得意な人』は、 『ターン制に目を向けるべき』 だと考えています。 【しかし、それはまた別の話】
  • ともひろ
    3.5
    大学三年の二月、就活の準備でもすっか!みたいなノリで友達と一緒に観ました。「俺たち、こういうことは辞めような」と誓い合いました。 DVDの特典映像で「専門家が解説!何者の登場人物に見る内定を取れる就活生」みたいな映像があったんですけど、内定を取れる就活生が「現実適応型、コミュ力全開型、理系院生型」の三つに大別されていて、コミュ力のない文系学部生の僕は理想を諦めて現実に適応するしかないのかと絶望しかけました。
  • メイメイ
    3.2
    じわじわ嫌なところついてくる
  • Rickey
    3.3
    自分の就活の時に見直そうと思う
「何者」
のレビュー(70282件)