映画ファンが選ぶ「Filmarks賞」受賞監督インタビュー!【無料上映会情報も】

2015.06.09
映画

Filmarks公式

フィルマーくま

映画ファンが選ぶ「Filmarks賞」受賞監督インタビュー

園子温や青山真治など数々の映画監督を輩出してきた学生映画のコンペティション「東京学生映画祭」。その第27回が、5月29日から31日の3日間、東京の北沢タウンホールで開催されました。

その中で、映画レビューアプリ・Filmarksのユーザー投票によって決まる特別賞「Filmarks賞」を見事受賞したのが、木畠彩矢香さん『息ができない』(アニメーション部門)と横山翔一さん『たちんぼ』(実写部門)。さらに、この受賞2作品の無料オンライン上映が決定。監督おふたりに作品の見どころや製作秘話を伺いました。

記事の最後に、応募者全員が観られる無料オンライン上映の情報があります

歌舞伎町や渋谷はあるけど、この街が舞台の映画ってまだ無いなと。(横山)

この度は受賞おめでとうございます!まず、どのように作品の着想を得たのか、横山監督から聞かせていただけますか?

横山:僕は以前、新橋にある映像制作会社で働いていて、映画の舞台になっている新橋のあのあたりは先輩によく呑みに連れていってもらったりして、そこで色々と面白い経験をしたんです。その経験をもとに、いつかここで映画を撮りたいなと思っていて。その後、映画美学校に入ってそれを実現したという感じです。

「Filmarks賞」受賞監督横山さん

確かに横山監督の『たちんぼ』では、新橋という街に強いこだわりが感じられますね。

横山:できれば新橋界隈でぜんぶ撮りたいと(笑) そこは頑張りたいと。そもそも新橋のあのあたりは色んな事情で撮影が難しいとされている地域なんですね。そんな中、スタッフがものすごい頑張ってくれて、お店に無償で撮影許可をもらってくれたり。街の方々も皆さん協力してくださって、作品に出てくる街の風景はもちろん、ビデオ屋や風俗店の一部も実際に新橋にあるお店でロケ撮影できました。

たちんぼ撮影中の1コマ

すごい情熱ですね(笑)そこまでこだわる理由は?

横山:僕は、生まれも育ちも東京なんですけど、新橋って、酔ったビジネスマンがテレビの街頭インタビューを受けてたりとか、それくらいのイメージだったんですけど、新橋で仕事をしている時代にそれがガラリと変わったんです。新橋のあのあたりの夜の産業とか、外国人もたくさんいたりして、それこそ“たちんぼ”もいましたし、街として猥雑な感じがまだ残っている。これは面白いなと。きれいなオフィスビルがすぐ傍に立っているのに、っていうギャップも面白かった。

そのうちふと、都内にディープなスポットはいくつかあるけど、ここはまだ映画になっていないんじゃないかと気づいて。歌舞伎町や渋谷はあるけど、この街が舞台の映画ってまだ無いなと。誰よりも先んじてこの街で撮りたいという思いがありました。

たちんぼ撮影中の1コマその2

6分の作品に1年をかけて。今まで挑戦してこなかったテーマでやってみようと。(木畠)

木畠監督はどのような着想を得て『息ができない』を制作されたのでしょうか?

木畠:大学の卒業制作ということで、今まで挑戦してこなかったテーマでやってみようと思ったんです。それまでは、軽く楽しめるエンタメをやっていたんですけど、思いきって重いテーマにしてみようと。ただ「面白かったー」で終わらないようなものを。それで、自分のこれまでの経験を振り返ってみて、ズルズル引きずるような悩ましい感情を思い起こしてみて(笑)、それで辿り着いたのが、息ができない感じ。その感覚を再現してみようと。

インタビュー木畠さん

息苦しさのきっかけになるプールでの場面は、いわゆる“よくあるシーン”でありつつも、ショッキングですよね。あれは木畠監督の実体験ですか?

木畠:半分実体験で、あとは体験と記憶の端々をちょっとずつ拾ってきてまとめて、またさらに広げたという感じです。

『息ができない』では、サンドアートという珍しい手法を使われていて、とても興味深く感じました。

木畠:これまで線画アニメーションや点描をやってみたんですけど、あまりしっくりこなくて。それで砂に行き着きました(笑) アクリル盤に下からライトを当てて、その上に砂を広げて指で描きます。それをコマ撮りにしていくというやり方です。線のタッチは指だけじゃなく、綿棒や爪楊枝も使って描き分けました。自宅で制作していて何度か砂が動いちゃったりもしたんですけど(笑)、脚本に半年かけて、実制作と撮影にも半年かけて、6分の作品を1年かけてつくりました。

息ができない_1

とても繊細な作業なんですね。制作にあたって、影響を受けた作家さんなどはいたのでしょうか?

木畠:キャロライン・リーフというサンドアートを使うアニメーション作家がいて、彼女の『変身』という作品にインスピレーションを受けたんです。素晴らしい作品です。普通サンドアートだと、映画的なカット割りをせずにカタチやシーンがそのまま変形していくのが主流なんですけど、彼女は映画的なカット割を取り入れていて、それで私も入れてみようと。

それと、自分の体験と記憶を切り取るという点では、バナナマンさんのコントをヒントにしたりもしました。彼らのコントって演劇的な要素もあって、日常のどこからか面白いシーンを切り取って、それをコンパクトにまとめているんですね。これはこの作品に限ったことではないのですが、こういう風に日常のワンシーンを切り取ってまとめられるのかと、参考にしています。

『息ができない』では作品のテーマとサンドアートという手法が、うまくシンクロしているように感じました。

木畠:暗くて重い感じを出す時に、砂のテクスチャは合うのかなと。ちょっと跡が残る感じとか、砂の質感とか、砂独特の重みとかですかね。実はこの作品の前に、豚がコックに追いかけられるという作品をつくったことがあって…

横山:それメチャメチャ面白そうですね(笑)

木畠:でも、つくり終わってから、なんでこれをサンドアートでやったんだろうと(笑) 豚が色んな動きをするんですけど、全然軽やかじゃないし。その経験を活かしたところもあります。

「Filmarks賞」受賞監督木畠さん

ラストで笑いが起きてホッとしました。(横山)

両作品ともFilmarksで★4という高い評価を受けています(6/9時点)。『たちんぼ』には「会場内でウケていた」「最後のオチが決まっていた」というレビューが寄せられています。手応えはいかがですか?

横山:映画祭当日、実は他の観客さんに混ざって自分の作品を観ていたんですが、反応がすごくよくて嬉しかったですね。基本的にはくだらない内容なので、ウケるのかな?という不安はあったんですが、ラストで客席に笑いが起きてホッとしました(笑) 上映が終わっても会場がざわざわしていたのが記憶に残ってます。

他の作品とは毛色が違っていたこともあり、その分エンタメ作として『たちんぼ』が際立って、わかりやすかったのかなというのもあります。

レビューにはB級映画や低予算映画の巨匠とも称されるロジャー・コーマン監督を感じた、という声もありました。

ロジャー・コーマン監督のB級テイストは僕も好きです。今回は、1日12時間×5日間という限られた撮影時間と費用の中で、できるだけ面白いモノをつくろうということは心がけていました。その考え方は、コーマン監督の低予算映画に通じるものがあるかもしれないですね。

インタビュー横山さん

—両作ともに音楽が印象的でした。これはどなたが作られたんですか?

横山:映画美学校の中に編集マンの友人がいるんですけど、その方が映画監督の河瀬直美さんの作品を編集していたりする、実はすごい方で(笑) その方の奥さんが、メジャー企業のサウンドロゴをつくっているこれまたスゴい方で、ご縁でエンディングテーマをつくってもらいました。映画の予告編なんかにも使わせてもらって、これがなかったら、全然違ったと思います。

木畠:私の作品も、音楽を音大の学生の方とコラボして、やりとりをしながらつくりました。主人公の心情に合ういい音楽ができて本当に感謝してます。効果音はプロの方に頼んで、こちらもすごくよくて。いい効果音があることで、アニメーションの世界観がグッとリアルになったと思います。

横山:効果音でいうと、僕たちは既存の音素材を使うのではなく、自分たちでつくってみたんです。たとえば、銃の発砲音は、爆竹を手に持ってそこにマイクを向けたり。指が飛びそうになりながら録ってました(笑)

木畠:それはスゴいですね(笑)

—そんなおふたりの渾身作を、今回、無料オンライン上映というカタチで多くの方がご覧になります。

横山:ありがたいです。この映画は、割とオンライン上映に向いている作品なんじゃないかなと思います。僕の作品は16分、木畠さんの作品も6分と短いですし。『たちんぼ』は最後にオチがあるので、エンターテインメント作品として最後まで楽しんでもらえたら嬉しいです。

木畠:この作品が、子どもの頃の記憶や感覚を思い出すきっかけになればいいなと思います。暗めな話ではあるんですが、軽い気持ちで観てもらって(笑) 話のタネにでもしてもらえたら光栄です。

インタビュー集合写真

—横山さん、木畠さん、ありがとうございました!今後のご活躍に期待しています!

受賞作を観てみよう!無料オンライン鑑賞応募受付中【締切まで残り1日】

応募者全員もれなく受賞作品を観られるオンライン上映会の応募を現在受付中!この貴重な機会をどうぞお見逃しなく!【応募締切は6月10日(水)23:59まで】

応募はコチラのページの応募フォームから

作品情報

実写部門 『たちんぼ』(2015)/16分

監督:横山翔一

たちんぼポスター画像

https://filmarks.com/detail/62160

夜のサラリーマンの楽園—新橋。個室ビデオ店で働く男・磯野は道の反対側にある中国マッサージ店で働く中国人の娘・ミカをいつも気にしていた。ある時、店を飛び出したミカが店主に連れ戻される現場を目撃した磯野は、忘れていた過去を思い出し……。鑑賞魚の視点から男の恋の行方を描くファンタジー作品。

アニメーション部門 『息ができない』(2015)/6分

監督:木畠彩矢香

息ができないポスター画像

https://filmarks.com/pc/detail/62224

自責の念に苛まれる少年が、徐々に増えていく水に溺れやがて沈んでいく様に、足のつかない水中に一人取り残されるような、少年の身の置き所のない不安な心情を表現した。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS