死してなお咲き誇る悪の華、クリストファー・リーの魅力とは〜名作とともに振り返る〜

Why So Serious ?

侍功夫

2015年6月7日、名優サー・クリストファー・リーさんがお亡くなりになりました。享年93歳になります。

1948年にデビューして以降、年に1~2本、全盛期には4~5本の映画に出演し続け、通産250本以上もの映画に出演した記録はギネスブックにも登録されているそうです。

しかもただ沢山出演しているだけでは無く、多くの名監督から出演を熱望され近年では大作への出演が続いていました。リーさんがなぜこれほどまで多くの監督たちに愛され続けたのかを紐解き、哀悼の意といたします

クリストファー・リー×名監督の代表作

スティーブン・スピルバーグ『1941』

1941

ゴリッゴリのシネフィルなスピルバーグは、フランソワ・トリュフォーやベルイマン組常連のマックス・フォン・シドーにオードリー・ヘップバーンまで自作へ出演をさせています。もちろんリーさん出演作品もあります。

『1941』は第二次世界大戦中、日本軍によるアメリカ本土攻撃を描いたコメディです。リーさんはドイツ軍大佐を演じています。この作品にはジョン・ベルーシを始め、ネッド・ビーティから三船敏郎までスピルバーグの好きな俳優たちが総出演しています。

ジョージ・ルーカス『スターウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』

スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃

リーさんは、プリクウェル・シリーズで若きダース・ベイダー:アナキン・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービを同時にあしらい、さらに最強のジェダイ・マスターであるヨーダとさえ互角に渡りあうシスの暗黒卿「ドゥークー伯爵」を演じました。

スター・ウォーズシリーズといえば最初に作られた『エピソード4 新たなる希望』にはリーさんと共演することの多かったピーター・カッシングが出演しています。

ジョー・ダンテ『グレムリン2 新・種・誕・生』

グレムリン2/新種誕生

悪ふざけ番長ジョー・ダンテは自身のヒット作『グレムリン』続編でリーさんを起用しています。生物学の研究者で白衣を翻し、飄々としながらグレムリンに手を丸のみされる様子などをコミカルに演じています。

マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』

ヒューゴの不思議な発明

主人公ヒューゴを助ける少女イザベルが入り浸る古本屋のカウンター奥に長身を隠しながら、威厳と博識溢れる店主ムッシュ・ラビスを演じました。7ヶ国語を操るマルチリンガルで、イアン・フレミングやJ・R・R・トールキンとも交友のあったリーさんの実像に一番近い役柄だったのかもしれません。

ピーター・ジャクソン『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔

ガンダルフよりも高位にある魔法使いでありながら、指輪の魔力に取り憑かれた白のサルマンをシリーズ通して演じました。イアン・マッケラン演じるガンダルフでさえ敵わないと思わせる威圧感はリーさんにしか出せなかったでしょう。また上記の通り、生前トールキンとも交友がありエルフ語にも通じた(!)リーさんは、監督からも現場で度々相談を受けており、その様子がメイキングなどに納められています。

ティム・バートン『チャーリーとチョコレート工場』

チャーリーとチョコレート工場

厳格な歯医者であったが故にショコラティエを目指す息子と縁を切ってしまいながら、実は陰ながら誰よりも息子を愛していたウィリー・ウォンカの父親ウィルバー・ウォンカを演じました。この役は原作や過去の映像作品にも登場しないオリジナル・キャラクターです。つまり、この役にバートンの想いが込められているのです。その想いとはズバリこうではないでしょうか?

「リーさんは僕のお父さんです!」

カリフォルニアの燦々と輝く陽光の元に生まれてしまった少年時代のバートンは、常に自分の居場所に違和感を感じ、怪奇映画に耽溺することで、なんとか日々をやり過ごしていたそうです。そんなバートンにとってリーさんは、日々の生活を見守る、ある意味では本当に“父親”だったのかもしれません。

ちなみにバートンはリーさんと同年代に活躍した怪奇映画俳優のヴィンセント・プライスやマイケル・ガフなども自作へ出演してもらっており、子供の頃のヒーローに職権で会いまくっています。

クリストファー・リー:ドラキュラ伯爵の誕生

1950年代末、イギリスの映画製作会社ハマー・フィルム・プロダクション(ハマー・プロ)は、アメリカのユニバーサル・ピクチャーズが1930年代に製作した一連の怪奇映画のリメイクを始めます。

フランケンシュタインの逆襲

1957年、『フランケンシュタイン』のリメイクとして、監督にテレンス・フィッシャー、フランケンシュタイン博士にピーター・カッシング、怪物にリーさんを配し作られた『フランケンシュタインの逆襲』は大ヒットを飛ばします。すぐさま第2弾として『魔人ドラキュラ』のリメイク制作が、監督と出演者2人の続投で決まります。

吸血鬼ドラキュラ

参照:http://www.amazon.co.jp/dp/B00007IGB2

ピーター・カッシングがヴァン・ヘルシングを、そしてリーさんがドラキュラ伯爵としてです。このことがリーさんの人生を決定付けます。

長身を黒いマントで覆い、深い彫りと高く通った鼻、艶やかな髪をオールバックになでつけ、地を振るわすような低い声で滑らかに語りかけ、慇懃無礼に振る舞う妖艶なリーさんによるドラキュラ伯爵が誕生します。

『吸血鬼ドラキュラ』は『フランケンシュタインの逆襲』を越えるヒット作となり、リーさんはたちまち「ドラキュラ俳優」として7本もの映画にドラキュラ伯爵として主演することとなります。

現在活躍する名監督たちが子供のころの出来ごとです。スクリーンの向こう、もしくは深夜のホラー映画放映で、リーさんが女性たちの生き血をすする様子に名監督たちが魅了されたことは想像に難しくありません。

更新された“ドラキュラ”像

『吸血鬼ドラキュラ』はドラキュラ映画史上初のカラー作品で、血走った赤い目と鋭く突き出す牙から鮮血をしたたらせる最初のドラキュラとなりました。

さて、怪奇映画の5大モンスターといえば"フランケンシュタインの怪物"に"ミイラ男"、"狼男"、"半魚人"に"吸血鬼ドラキュラ"になります。それぞれイラストなどで紹介される際にベースとなるのは、フランケンシュタインの怪物の場合、ボリス・カーロフが切り株のような頭のメイクをした姿です。ミイラ男も同じボリス・カーロフのしわしわな顔、もしくは包帯グルグル巻きの姿が描かれます。狼男はロン・チェイニー・ジュニアの毛むくじゃらな姿です。半魚人は『大アマゾンの半魚人』に登場するギルマンになります。

この4人(?人では無いけど)はいずれもユニバーサル・ピクチャーズが製作した、いわゆる「ユニバーサル・モンスターズ」がベースになります。しかしドラキュラだけは面長で彫りが深く高い鼻を持ち、牙を生やしたハマー製作のリーさんがベースになるのです。

ホラー大百科

出典 : http://www.amazon.co.jp/dp/4253008348

秋田書店より刊行された『ホラー大全科』ではロン・チェイニー、ボリス・カーロフのユニバーサル映画に並び、リーさんのドラキュラ伯爵が描かれています。

さらに、他のモンスターは基本的には特殊メイクの産物として造形されていますが、ドラキュラはほぼ地の顔です。しかも5大モンスターが並ぶ際にはドラキュラは不動のセンターです。

つまり、リーさんは恐怖そのものを象徴するモンスターたちのリーダーとして、地の顔がアイコン化してしまったのです。

悪の華よ、永遠なれ!

たとえば。スターウォーズに登場するキャラクターの中で、一番人気があるのは間違い無くダース・ベイダーです。テレビアニメ「機動戦士ガンダム」の一番人気のキャラクターといえば、「赤い彗星」ことシャア・アズナブルでしょう。

優れた作品の魅力的な悪役は往々にして主役よりも高い人気を獲得します。ダース・ベイダーは全身を覆うコスチュームがあるので、長身の人物さえ用意できれば「中の人」は代替え可能。シャアは絵なので大量生産だって可能です。

その点、リーさんは顔だけでなく立ち振る舞いや声も含めて、ドラキュラそのものなのです。代替えの効かない唯一無二の存在。人智を超えた魔力を持ち、女性を魅了する悪の華そのものが生きていたのです。

名だたる監督たちがそんな人物に魅了されないワケがありません。かくしてクリストファー・リーさんは250本以上の映画に、主に魅力的な悪役として起用されるに至ったワケです。

リーさんがお亡くなりになった現在、リーさんの新作を見るのは叶わなくなりました。しかし、妖しく美しい姿は多くの映画に焼き付けられていますし、筆者もまだ見ていないリーさんの映画があります。これから先、リーさんが生前に残した、枯れることの無い悪の華の芳香を楽しむことを誓い、本項を終わろうと思います。

R.I.P Sir Christopher Lee 気が向いたらまた棺桶から蘇って来てください!

参考動画:ハマー時代のリーさんが女性を襲う様子を集めた動画です。エ、エロい!

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  • mira
    3.6
    照明による影の演出あたりがとてもいい。
  • ひーちゃん
    -
    小学生の時に 初めて見た吸血鬼映画。クリストファーリーは最初に覚えた俳優。ピーターカッシング含めて大好きな俳優です。あの頃はハマーホラーがよくテレビで放映されてたな。
  • Qちゃん
    3.3
    そういえばこれ観てた! 吸血鬼系の番組、幼稚園の時くらいにテレビで結構やってた記憶。 そのせいでドラキュラは子供の頃1番怖かったモンスターだった。 吸血防止のため、風呂入る時、肩にタオル掛けて入ってた。そんなんで防げるわけがないが、気づかず吸われないようにワンクッション。 ドラキュラものに絞ると、これ初見時、コッポラのドラキュラしか観てなかった。しかもそれが当時トラウマだったので、めっちゃ恐る恐る本作観た。 まずオープニングのテロップでクリストファーリーとピーターカッシングが続けて出てきて、あれ、どっちがドラキュラ役だ?と思った。 2人ともあの顔だし。 クリストファーリーの方か。 お、セクシー…?というにはやや微妙なオッサン感。。でも、これなら勝てる望みが見込める! ゲイリーオールドマンのドラキュラは勝てる気しなかったもん。。 本作の怖さについて製作当時の反響がどうだったのか調べてないけど、今観ると怖くない。ヘルシング教授出張ってるし、安心して観られた。
  • ジャイロ
    3.4
    1950年代 本当は、1956年の『吸血鬼/I vampiri』を観たかったんですが、観られないので、50年代はこれ 『吸血鬼ドラキュラ』 イギリス、ハマーフィルムによる「ドラキュラシリーズ」の第1作目です。このシリーズ、有名みたいですね。好きな人は好きなんだろうなあ。 感想を一言で言うと… この話、知ってる!!!! まあドラキュラ、立て続けに3作目だし 血のように真っ赤なクレジットタイトル。不気味な石像。悪魔の城。音楽も雰囲気出てる。オープニングがめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。やっぱカラーはちがうな。このオープニング、今まで観た吸血鬼の中で一番好きかも。 ただね、石で造られたドラキュラの棺に思いっきり「DRACULA」って書いてあるんです。 たとえば、鈴木一郎さんや、山田太郎さんは、自分の家の自分のベッドに「一郎」とか「太郎」とか、ましてや「鈴木」や「山田」なんて刻まないですよね。でもね、ドラキュラは刻んじゃうんです。雰囲気出すために。 んー納得いかない。 あと城ね。ドラキュラ城。今回は、こじんまりとしてたなあ。廃墟感は無かったし、大階段も無かった。ちょっと残念。 『吸血鬼ノスフェラトゥ』『魔人ドラキュラ』『吸血鬼ドラキュラ』と、回を重ねるごとにヴァンヘルシング教授が前面に押し出されてきており、今回は最前列にいました。ヘルシング。 んー納得いかない。 何よりも、今回のドラキュラはストーリーが大胆にアレンジされており、ジョナサンが吸血鬼を退治するのですが、明らかに優先順位間違えてる。そこはおばあちゃんではなくて、おじいちゃんの方だろー!!! 納得いかない!!! あと、クリストファーリーのドラキュラ伯爵は、ベラルゴシよりも俊敏な気がする。俄然、足で稼ぐタイプ。なんだろう。ベラルゴシの方が強そう。 一番不気味なのはやっぱりノスフェラトゥかな。あのヤバい雰囲気は、明らかに人のそれでは無かった。 個人的には『魔人ドラキュラ』が一番好きです。
  • horahuki
    4.1
    言わずと知れたハマーフィルムを代表するゴシックホラー。その後の映画界に凄まじいほどの影響を与えた不朽の名作。 ハマー初のドラキュラ映画ですが、比較対象であるユニバーサルのブラウニング版『魔人ドラキュラ』とは大きく方向性を変え、直接的な残虐描写に力を入れ、エロとバイオレンスを盛り盛りにした作品となっていました。 ジョナサンハーカーの日記からスタートする本作。彼がドラキュラを退治するために単身ドラキュラ城に乗り込むまでを日記としてモノローグで語る古めかしさがムードを高めてていい感じ!「御者が乗せるのを拒んだ」「鳥の囀りひとつ聞こえない」そんな台詞ひとつひとつがスマートに距離的かつ時代的な隔絶による異界化を成し遂げてますね。 さらには、大広間を動く人物の移動の起点から終点まで、カメラを横に振り空間を広く贅沢に使うことで、ゴシックな美術と引きのカメラによる人物との距離感が演劇チックな印象を与え、作品の方向性を観客に植えつけてしまうプロローグはお見事な演出! そしてクリストファーリーという役者の強みを活かしたドラキュラの見せ方のうまさ!黒いマントを羽織り、ただ佇むリーを少し引き気味のカメラで映してるだけで物凄い存在感。影に包まれたリーがカメラに向かって階段を降り歩いてくる中で光によって表情が露わになることで、得体の知れない不気味さを脱ぎ捨て人間としての温かみを感じさせながらも、どこか油断のならない凄みを顔と声で観客に植えつけちゃう。すげぇ役者やなって改めて思いました。 そしてやっぱりエロいんですよね。吸血欲求は性欲の象徴な訳だけど、ある意味でアレを表す牙に襲われる前の女性たちの欲望を抑えきれないような姿。魔術にかかったかのように抵抗できずに溺れていく感じ。 特にルーシーのシーンがめちゃ良かった。表面には出せないけども抑えられない情欲を表現するかのようなベッドから出て再びベッドに戻るワンカットの映像の凄まじさ。恥ずかしさを強く感じながらもそれ以上に強烈な抗えない本能と喜びを「行って戻る」という行動だけで表現してて、めちゃ好きなシーンです。 その後の、風で落ち葉が舞う外と中の境界に佇むリーもめちゃカッコ良かったし、光と影によって表情が見え隠れしながら近いていくとこも最高に良かった。影がかかってる時の表情の読めない異様さと光が当たった時の剥き出しの欲望。ここはドラキュラ伯爵という存在を最も端的に表現したシーンなのではないかと思います。やっぱりフィッシャー監督うまいっすね。そして何よりリーが凄い! そして本作から感じるのは吸血鬼という存在の脆弱性。リーは前半ではこれ以上にない凄みを感じさせながらも、物語が進むに連れてどこか滑稽な印象を与える。ユニバーサル版との違いは多々ありますが、高貴で孤高なカッコよさの裏にある、社会に怯え暮らさなければならない日陰者という側面をより強調し、ドラキュラから威厳を削ぎ落としたのもユニバーサルとのひとつの大きな違いなのだろうと思いました。 だからユニバーサルのような荘厳な古城ではなく牧歌的な風景に囲まれた屋敷に暮らしてるのだろうし、リーにアホみたいな大立回りをさせたのだろうと思います。クライマックスのリーからは威厳は感じられなかった。時代に伴う吸血鬼という存在の描き方の変遷なのでしょうね。ちなみにラストのアレはフィッシャー監督ノータッチという…笑 私は映像の凄みを至る所に感じるブラウニングの演出の方が好きですが、本作の直截的なわかりやすい演出も好きなので、作品としては甲乙つけがたいですね。でも正直なところ本作は若干期待ハズレだったかも…。フィッシャー監督は『ミイラの幽霊』の方がうまい気がする。。。私のカリスたん贔屓もありますけどね(笑) それと、カッシングに触れるのを忘れちゃいましたが、カッシングもめちゃカッコ良かったです^_^
「吸血鬼ドラキュラ」
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