《高齢化問題》の解決の糸口になる傑作誕生!?『幸せなひとりぼっち』監督に迫る!

2016.12.16
インタビュー

Filmarks編集部

フィルマーくま

幸せなひとりぼっち

近年スウェーデン映画がにわかに注目を集めています。ロイ・アンダーソン監督の『さよなら、人類』や世界的に大ヒットとなった『100歳の華麗なる冒険』など、ブラックなユーモアと人間を暖かい眼差しで見つめた秀作が日本でも公開されるようになってきました。

12月17日から公開される『幸せなひとりぼっち』もまた、北欧特有のブラックユーモアに人情味あふれる人間ドラマが合わさったとても心地良い作品です。

スウェーデン本国では5週連続1位、国内歴代3位となる興行成績を叩き出した本作。監督のハンネス・ホルムさんにその魅力を語っていただきました。

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ベストセラー原作を映画化するプレッシャー

−すごく感動しました。普遍的なテーマである孤独を暖かい眼差しで描いていて、気持ちよく見られる作品でした。スウェーデンでは記録的な大ヒットとなりましたが、本作の何が人々の共感を呼んだと監督はお考えですか。

ハンネス・ホルム(以下ホルム):やはりベストセラーですから、どんな風に映画化されているのか気になって見に行った人も大勢いるでしょうね。原作ファンの方にも、またファンでない方にも驚きを与える映画にできたと思います。

ハンネス・ホルム2

一見頑固なおじさんの話なんですけど、ラブストーリーもありますしね。最近クラシカルなラブストーリーはあまりありませんから、そういうのがスクリーンで見られるのが、貴重な機会だったのではないかと思います。ハリウッドでは、ヒットはタイミングが全てなんて言われますけども、この映画もタイミングがよかったのだと思います。

幸せなひとりぼっち1

−大ヒット小説が原作だというお話が出ましたが、これだけ有名な小説を映画にすることにプレッシャーはなかったですか。

ホルム:映画監督として、ベストセラーの本を映画化する仕事を選ぶのは賢明ではないですね。(笑) 当然ファンの方はイメージが出来上がっているので、少しでも違うと厳しく批判されます。今回初めて原作ものに挑戦したのですが、原作を読んだとき、自分の両親のことを思い浮かべながら、自らのストーリーとして消化できたので、原作の映画化に挑戦しました。

実は、主人公のオーヴェを誰が演じるのか国内でも大きな議論になりました。ロルフ・ラスゴードに決まったとき、怒りの声も上がったんです。ロルフは元々演技派の実力派として知られていて、コメディタッチの原作に、なんでシリアスな実力派を起用するんだというような。でも、結果としてはすごく上手くいきました。ロルフもこの映画で多くの賞を貰いましたし、公開が始まってからは怒りの声もなくなりました。

−ロルフ・ラスゴードさんは、オーヴェの年齢の設定と同い年だけど、撮影時には老けメイクを施したそうですね。

ホルム:これは難しい判断でした。原作の中で59歳と書くのは簡単ですが、映像にするにはそう簡単にはいきません。オーヴェの歩んできた人生を考えると、どんな顔をした59歳なのかを考えなくてはなりません。人生の苦労が顔に刻まれているような、そういうルックスを自分は想像していたので、わざと実際の59歳よりも多少老けるようなメイクを施しました。

幸せなひとりぼっち2

高齢化社会問題の解決の糸口は、若い世代とシニア世代との交流にある?

−日本でも、高齢化社会により、老人の孤独は重要な社会問題なのですが、やはりスウェーデンも、オーヴェのような孤独な老人は増えているのですか。

ホルム:日本とスウェーデンは似ている点がいくつかあると思います。謙虚であるところや、効率性を重んじる点など。ただ効率性を重んじるのが必ずしも良いとは限りません。高齢化の問題でいうと、効率化を考えれば、「老人はみんな老人ホームに入れる」という極端なことも考えられます。でもシニア世代は人生経験がすごく豊富ですから、もっと若い世代と触れ合うべきだと思います

以前インドで撮影する機会があったのですが、インドは社会福祉が充実している社会ではありませんし、子供が強制労働を強いられている問題もあります。しかし、老人と触れ合っている子供たちをたくさん見かけたんです。

そうした環境で、逸話とかお伽話とかを老人たちが子供たちに伝えていくような文化が、きちんと息づいているところがあって、ある意味、これが高齢化社会の未来における解決策ではないかと思いました。

ハンネス・ホルム1

そうやって触れ合うことで老人は子供たちから元気をもらえます。もし僕がスウェーデンの首相になったら、老人ホームと幼稚園を一緒にして触れ合う機会を増やそうと思いますね。人間の寿命はどんどん延びていきます。高齢化社会についてはもっとたくさんの議論が必要だと思います。

ラブストーリーと社会問題がうまくマッチした作品に

−オーヴェと仲良くなる女性、パルヴァネはイランからの移民という設定ですね。スウェーデン社会で《移民》はとても大きな存在だと思いますが、頑固で古臭い老人と、イスラムからの移民の女性の交流という点に、監督の意図はありますか。

ホルム:若い頃はよくテレビで仕事をしていて、政治的なものも扱っていました。ときにアメリカの政治家の風刺芸なども。でも年をとっていくにつれて、人間関係の方に興味を持ち始め、自分の作品にもそうした要素が増えていきました。

幸せなひとりぼっち3

何か社会に訴えるために一番効果的なのは、納得できるストーリー展開にそれらを落とし込むことですね。頑固で意地の悪いおじさんがいろいろ学んで変わっていく物語は、今までにもたくさんありました。「スクルージ・マクダック」や『アバウト・シュミット』、『グラン・トリノ』もそういう要素がありますね。

そういう意味ではすごくありふれた作品なのですが、ラブストーリーがそこに上手く重なりあい、なおかつ、社会的な問題も見え隠れするというのがとても効果的だったのではと思います。

トトロのような世代の架け橋となれる映画を

−監督は影響を受けた映画監督はいらっしゃいますか。

ホルム:最近は実はあまり映画を見ていないんです。元々シネフィルといえるほど本数は見ていないのですが。人を観察するのが好きで、よく妻にも怒られるのですが、じっと人を見る癖があるんです。日本の映画で影響を受けたのは若い時に観た黒澤明監督の作品ですね。彼の作品は、ユーモアと悲劇がうまいことバランスが取れている点が素晴らしいです。

最近は『となりのトトロ』を子供と一緒に観ています。子供と一緒に楽しめる、あのような作品は希少価値があり素晴らしいと思います。私の作品も、ああいう世代の橋渡しになるような映画にできればと思っています。

−最後にこれからこの映画をご覧になる日本の観客にメッセージをお願いします。

ホルム:外国映画を普段観ない人にも是非ご覧になってほしいと思います。きっとすごく居心地の良い映画になっているはずです。

本作『幸せなひとりぼっち』は、12月17日(土)より新宿シネマカリテ&ヒューマントラストシネマ渋谷他 順次公開です。

(C)Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

(取材・文:杉本穂高、撮影:柏木雄介)

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  • junko
    3.8
    生きざまが人生の終焉を飾るストーリー。奥さんを亡くし頑なになった心をまた人と繋がることで取り戻すことができた。それは主人公が実直に生きていたからこそだと思いました。
  • Nori
    3.0
    ブスッとして、すぐキレて、歪んでて。 自ら心を閉ざして、人を寄せつけず、孤独の淵に沈み込んで。 序盤から、あまり好きになれないこの男でしたが、こういう人いるよね。特に高齢男性に。 こんな人も、誰かとの繋がりがあれば、人生は豊かに輝くものになるのかなぁ、と。 自分自身の人生を肯定してくれる誰かの存在の大切さよ。
  • チョコ
    4.7
    いつからでも始められる変われる!
  • よしみ
    4.0
    2017年映画鑑賞1本目の作品(笑 とても素晴らしい作品だった。 いくつかの回想が絶妙のところで挿まれていて 涙腺がゆるむところも 主人公を演じた Rolf Lassgard は難しい役どころを巧みに 主人公の妻を演じた Ida Engvoll も負けてなかった。 難をあげるとすれば、音楽がもう一つ
  • ツッチー
    4.7
    部活仲間4人と見た。非常に良い映画。心にしんみりくる。 この映画の良い点を一つ挙げるとしたら?回想シーンをうまく取り入れていることかな。妻のソーニャが美しくてオーヴェがどれだけ愛していたか、わかる。ソーニャのようにどんな逆境にも負けない女性は強い。また町の秩序における理想で昔は協力していたルネとオーヴェ。今では車椅子生活になってしまったが、オーヴェが心開ける数少ない友人なんだなと見てわかる。昔に築いてきた友情が想像できる。 [ネタバレかも] また隣人がオーヴェを変えていく。特に子供だよね。子供は汚れた心がないからいいよね。オーヴェがだんだん心を開いていく。オーヴェが笑うとほんとに幸せなんだなと思う。特にお互いの家の窓から変顔するシーンは気がついたら自分も笑顔になっていた。オーヴェの叶わなかった夢、子供を育てること。実現はしなかったが、隣人に子供が生まれその子を不器用ながら抱いたとき自分の中で喜びと悲しみが爆発した。 子供を身ごもったまま死んじゃうパターン多いよね。 オーヴェが最後たくさんの住人に認められてよかった。
  • 門松ティンパニ
    3.9
    怒って文句言ってたら周りの人から見たらその人がなんで怒ってるかと無視してキチガイかの様に見られるし、一回そんな風に思われたらずっとキチガイ扱いされるけれど、ちゃんと近所の人達は解っていて怒られても声を掛け続けていてくれてよかった。周りの人たちも素敵。結局あったかい。 鬱陶しがられるかとか思って周りの人になんでも遠慮してしまいがちな世の中やけど、あんな人も時には必要だなと改めて考えさせられた。 見終わった後は自分の本当の知人が亡くなってしまったかの様な悲しみに襲われる。
  • ok
    -
    2017/03/20
  • Esther16
    4.5
    記録
  • ろく
    3.5
    久しぶりのスウェーデン映画。とても良い笑いあり涙あり系。 サーブって日本じゃあんまり見ないなと思ってたら、この映画を見た翌日に街中で偶然見かけました。 非常に頑固で偏屈な主人公だが根は悪いわけではないんだよな。 奥さん思いでとても優しい人だと思う。亡くなって間もないからって、あんなに毎日墓参りにお花持ってきてくれる人そうそういない。 隣に引っ越してきた奥さんもとても図々しいけど根はとてもいい人。 喧嘩しても翌日にはコロッと忘れてそうな人で、一人暮らしのオーヴェの事を自分の祖父のように気に掛けてくれてる。 面倒だけど悪くはないお隣さんとの付き合いってこういうものなのかなぁ。 でも実際こういう所に住んだら普段は面倒臭いなーって思っちゃいそう…。
  • kyohei
    4.1
    初めは、常に不機嫌な感じのじいさんだなぁという印象だった。 見終わると頑固だけど正直ものでいいじいさんだと思いました。 自殺しようとすると、ご近所さんのトラブルが発生して、何だかんだで優しくて手伝ってしまう。 そして、じいさんの過去が回想されていく、正直に生きろという父親や奥さんへの熱い愛情が感じられて泣きそうになりました。 こんなバスが転落する展開になるとは予想していなかったのでびっくりしました。
  • 中村優一
    4.2
    飛行機内で鑑賞。 頑固で厄介者で、妻の後を追って自殺したがっているお爺さんが、おせっかいな隣人達との交流で次第に心を開いて行く映画。 ストーリーの流れも映像もいい。最後は確実にジーンときます。 子供達が可愛いくて天使のよう。演技なのかどうかわからないナチュラルさもいいです。
  • kottan
    5.0
    大切なものを次々失い、たくさん傷ついても誠実で真っ直ぐ。そんな不器用なオーヴェおじさんにハラハラしてたのに、いつの間にやら大好きになって、愛しくて愛しくてたまらなくなった。 とても気持ちよく引き込まれた。ほんと観て良かったと思う。そして、できるだけたくさんの人に観てほしいと願う1本になった。
  • もやし畑
    3.4
    ひとりぼっちのおじいさんが出会いの中で変化していく。とても心が温まる。
  • m
    4.0
    邦題は合っていない。 しかしこれはいい映画だった。 どんな人にも心がある。どんな人にだって歩んできた人生がある。ちゃんと裏側を読み取れる人になろうと思った。 死の訪れの突然さがリアル。本当に悲しいなって思うのには時間がかかるんだな。 プロポーズのシーンがすきだった。 日常に紛れてる何気ない「結婚しよう」あ〜すてきだ。
  • 中谷
    4.8
    良作!!
  • Miki
    4.8
    不幸な人生は、育った環境、親、他人のせいにばかりしていたオーヴェ。 ようやく自分が明るく、幸せになれる人に出会うけどまた失う。 そんな他人のせいにして頑固な人が、おじいさんになってようやく他人に心を開く話。 心を開いたり自分を変えるのって、周りは気付かせてくれるけど、結局、変わろう!て決めるのは自分なんだなと感じた。 そして変わるのって芯が強くなきゃだめなんだなと とてもいい映画だった!
  • Masapinn
    5.0
    頑固な人が時折見せる優しさってなんでこんなにも温かく見えるんだろうって感じさせられた。 ひとりぼっちだった頑固じじいが大勢の人に見守られながら最期を迎えるシーンで映画の一部始終を振り返った。 幸せなひとりぼっちってタイトルがぴったりな映画。
  • とみみ
    4.0
    地域に1人はいる嫌なおじさんが頑なな心を開いていく話。ベタだけど、そこがいい。踏み込み方って大事。
  • アヤ
    4.5
    ✔️ 記録
  • ykaru
    4.5
    人と人は関わらないようにしようとしても、関わってしまうもの。人との関わり、心をひらくこと、生きることの素晴らしさ。 一度は閉ざしてしまった心をゆっくりとひらいていくおじいさん。待っているのはすてきな最期。 どうしようもなく救われるあたたかい物語。
  • canta/inoue
    -
    猫がかわいい
  • Moko
    4.1
    オーヴェのこと嫌いだったのに気づいたら好きになってた。
  • JJ
    3.4
    まあ老害って片付けたらそうかも知れないけど、面倒な近所付き合いもひょっとしたら生きてるって実感させるんでは?とぼんやり考えたりもしました。
  • Soshi
    4.0
    オーヴェ。 還暦前のおじさん。 正義感たっぷりで曲がったことが大嫌い。 ルールは厳守。 誰だって御構い無しに注意する。 ボルボが嫌い。 アウディは0が4つもある車と言い、価値を認めない。 愛車はスウェーデン国産車。 意外と心は優しい。 何でも屋。 修理は手作業。 しかし妻に先立たれて自殺を試みる毎日。 中々死ねない。 そんなオーヴェに寄り添うように生活を共にする同じ地区の人々。小規模な区画にひしめくように住む彼らは、嫌でも毎日のように顔を合わせる。喧嘩もあるけど、それぞれがかけがえのない存在になりオーヴェの生活を変えていく。 心温かくほっこりする物語。
  • YoArai
    3.3
    いい話、以上。
  • 橋本修平
    4.3
    クストリッツァを想わせる首吊りで死ねないおじいさん
  • ナナ
    4.3
    「生きてる感じがするだろ?」
  • ハチ子
    4.0
    清清しい作品。あったかい気持ちになれました。ユニークも忘れないところも◎
  • エリカ
    -
    おもしろかった。 死ねない頑固おじいちゃん。 でも、実は周りの人に支えられてるのね。
  • 肉片
    3.6
    偏屈な人間が人との関わり合いを通して変わっていくみたいなの、嫌いなわけないんだよな サフランライス食いたくなった 全体的にグラントリノっぽいな…
「幸せなひとりぼっち」
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