こんにちは! FILMAGAライターのNekuboです。
いきなりですが、みなさんはどんな基準で映画を観ますか? 好きな俳優が出演しているからだとか、好きな監督の作品だからとか、人によっては様々ですよね。
では、その一方でレンタルショップなどのすみっこで見かける「ちょっと気になるけど手を出しづらい映画」ってないですか?例えば「アルマゲドン21~」だとか「~シャーク」だとか…。
そういった類の映画は、いわゆる「B級映画」や「DVDスルー(もしくはDVDダイレクト)」と呼んだり、一昔前には「パチモン映画」などと呼ばれて一部のコアな映画ファンしか観ないような作品でした。
おそらくレンタルショップに足を運ぶ人の誰もが一度は、そういった映画のパッケージが並ぶ棚を目にして「こんな映画は絶対に面白くないだろうな」とか「ネタとしてちょっと気になるけど…」と鼻で笑いながらスルーしたことがあると思います。
実を言うと、そういった作品群の中にも意外と面白い映画や、他では観られないような個性的でアイデアに富んだ映画が隠れていたりするのです。
本稿ではそんな「気になるけど手を出しづらい映画」の中でも特に主流となってしまっているジャンルのひとつである“モンスターパニック映画”の中から、近年、特に人気を誇っているサメ映画の魅力について紐解いていきます。
PART.1:サメ映画って?
そもそもサメ映画とはなんぞや?という話を最初にしておきましょう。
サメ映画とは、主にモンスターパニック映画に属する「サメが人を襲う映画」のことを指します。代表作にはスティーヴン・スピルバーグ監督作『JAWS/ジョーズ』(1975)や、レニー・ハーリン監督作『ディープ・ブルー』(1999)などがありますね。
実は『ジョーズ』以前にも1969年にアメリカとメキシコで製作された『ザ・シャーク』(原題「Shark!」)という映画があり、実はこれこそがサメ映画のはじまりとも言えますが、ジャンルそのものの認知度を一気に押しあげたという意味では『ジョーズ』こそが起源ではないでしょうか。
↓1969年製作“Shark!”のTrailer
その他にもサメが人を襲わないサメ映画を一つだけ紹介しておくと、1963年にイタリアで製作された『チコと鮫』という映画があります。
この映画は少年チコとサメの交流をドキュメンタリータッチで描いたもので、少年だったチコとサメが共に成長していく中で、社会という壁にぶつかりながらも共存を目指すという非常に社会的メッセージを孕んだ作品です。
↓『チコと鮫』のTrailer
しかし、残念なことに日本国内ではDVDなどのメディア化に恵まれておらず、今もなお観ること自体が難しい現状にあるんですよね…。
PART.2:サメ映画の基盤となった映画『ジョーズ』
サメ映画を語るうえで『ジョーズ』の存在は欠かせません。この映画が後世に与えた影響とは絶大なものなのです。現に今活躍している映画監督の中にもこの映画に影響を受けたという人は少なくありません。
75年にスティーヴン・スピルバーグ監督の手によって生まれた映画『ジョーズ』は、同時期やそれ以降の同ジャンルの作品と比べても別格の存在にありました。
そもそも、モンスターパニック映画というものは、簡単に言ってしまえばドライヴ・イン・シアターなどでカップルがイチャつきながら楽しむような映画のひとつだったそうです。
つまり、そこにストーリー性はほとんど無く、基本的には「若い男女がモンスターに襲われてキャーキャー言うだけの映画」というイメージが当時は強かったのでしょう。
また、モンスターパニック映画の平均的な本編時間は約90分なのですが、これはある意味、ジャンルにおける宿命のようなものです。
先に述べたように、モンスターパニック映画はデートムービーとしての側面が強かったですから、ひたすらモンスターが暴れているだけの物語に120分も必要なかったし、そもそも低予算で製作されていたので長尺にはならなかったのです。
しかし、『ジョーズ』は違いました。
『ジョーズ』の本編時間は約124分と長く、これまでの約90分という枠組みから飛び出してドラマに重点をおいた映画にしたのです。
実際に本編を観てみると意外にもサメが登場するシーンは少なく、その代わりに人間ドラマの部分で非常に面白くなっています。そして、この人間ドラマを含む『ジョーズ』のストーリーラインというものが、後のサメ映画の基盤ともなっていくのですが…。
PART.3:映画『ジョーズ』からみるサメ映画のストーリーとは?
サメ映画のストーリーも多種多様ではありますが、基本的なベースとなっているのはPART.2で述べたように映画『ジョーズ』のストーリーです。
では、ここで一度『ジョーズ』のストーリーを簡単に振り返ってみましょう。
『ジョーズ』のあらすじ
アメリカの東海岸にある港町アミティの浜辺で女性の死体が打ち上げられたことから物語は始まります。町の警察署長ブロディは検死のもと「サメによる襲撃」と判断し、夏の観光でにぎわう浜辺を遊泳禁止にしようとします。
しかし、その浜辺こそが港町であるアミティを成り立たせているため、町の有力者は彼の判断にNoを言い、結局浜辺は遊泳禁止にならないまま、ブロディと有力者はモメてしまいます。
そんなことをしているうちに早くもサメによる二人目の犠牲者が出てしまい、業を煮やしたブロディはサメの専門家である海洋学者フーパーに協力を依頼したのです。
その頃、街では二人目の犠牲者となった少年の母親がサメを賞金に掛けたことにより、早くもイタチザメが捕らえられていました。これで事件は解決したと町の人々は喜びましたが、フーパーは別のサメではないかと疑います。
その夜、ブロディとフーパーは秘密裏にイタチザメの腹を裂き、人が食べられた痕跡を探るのですが、そのような跡は見当たらず、やはりイタチザメの仕業ではないと確信します。
そこでブロディはフーパーと共に船でサメの探索に出たのですが、そこで町の漁師の船が漂流しているのを発見してしまいます。この船の調査のために海に潜ったフーパーは船底に刺さっていたホホジロザメの歯を見つけるのでした。
その翌日、ブロディとフーパーは改めて浜辺の遊泳禁止を申し出るのですが、やはり有力者は反対し、その結果、巨大なホホジロザメが観光客を襲うという最悪の事態に…。
そこでブロディは、地元の漁師クイントを雇い、ホホジロザメの退治を提案します。そしてついに、ブロディ、フーパー、クイントの3人は巨大なホホジロザメと対峙することになるのでした。
『ジョーズ』のストーリー~サメ映画の六ヶ条~
基本的に『ジョーズ』以降のサメ映画はこの六ヶ条の流れを踏んでいるものがほとんどだと言ってもいいでしょう。それがたとえ、物語の舞台が港町の浜辺ではなく潜水艦の中だったり、その他の環境だったりしても、不思議とこの六ヶ条は守られているのです。
2016年にDVDが発売され、ニコニコ生放送でも配信されて話題となった『シン・ジョーズ』という映画がありましたが、この映画のストーリーも、放射能を帯びたサメの存在に気づいたライフセーバーがサメの撃退をするというものでした。
しかし、その中で主人公の行動を阻むビーチの支配人や、主人公の協力者としてドローンを扱える男と、やっぱりワケありの船乗りというキャラクターが登場します。
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すべてのサメ映画の基盤となった『ジョーズ』は1974年に生まれた物語(劇場公開されたのは75年ですが、原作者のピーター・ベンチュリーによって物語が完成したのは74年です。)ですが、近年の代表として例に挙げた『シン・ジョーズ』は2016年の作品です。
この二作品のあいだにある年数だけを考えてみても41年という時を経て、今もなお『ジョーズ』のストーリーラインはサメ映画の基盤であるからゆえに受け継がれているのです。
PART.4:そして、サメ映画は新たな段階へ…
本稿の冒頭でサメ映画の人気を紐解くと言っておきながら、そこに踏み込まずに終わってしまったvol.1でしたが、次号のvol.2ではついに「サメ映画の人気の秘密」と「現代のサメ映画」についてお話ししていきたいと思います。
とはいえ、サメ映画を語るうえでスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ジョーズ』はどうしたって外せないものなのです。
これを抜きにしてはサメ映画の人気にも、現代のサメ映画にも繋がりません。PART.3で書いたように『ジョーズ』のストーリーラインは現代のサメ映画にもしっかりと受け継がれてはいます。
ですが、やはりそれだけでは一発屋のようになってしまい、サメ映画というジャンルは廃れていったのではないかと思います。
では、そうならないために現代のサメ映画はどのように変わっていったのでしょうか?
次号をお楽しみにしていただけたらと思います。
※2020年10月28日時点のVOD配信情報です。