クリエイターの発掘を目的にプロ・アマを問わず「良質な映画企画=名作のタネ」を募集する、今回で第三回目となる「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP)」が今年も開催。今まさに企画募集中です。
「TCP」とは、創りたい映画の企画があっても、それを実現するためにはどうしたらいいか? また、撮影した作品をどこに提供したらいいか分からないというクリエイターの悩みを解決するべく誕生し、世に出ずに埋もれてしまっている映像作品を、映画ファンの方に届けるためにTSUTAYAがその架け橋になり企画の実現を全面的にバックアップするプログラム。
先日第三回募集にあたり、説明会を兼ねたトークイベントが都内で行われ、TCP初代グランプリの中江和仁監督と第2回であるTCP2016準グランプリのヤングポール監督が登壇しました。
前回の中江監督に引き続き、今回はヤングポール監督に「どんな映像企画が選ばれるのか?」また「選ばれる企画作成において抑えるべきポイント」「受賞した企画の着想」などを聞きましたのでご紹介します。
ヤングポール監督は、現在フリーランスとしてインデペンデント映画やテレビドラマの監督として活躍中。今年テレビ東京系で放送され話題になった「山田孝之のカンヌ映画祭」にも助監督として登場しました。
昨年のTCP2016において準グランプリ・Filmarks賞を受賞した企画は、撮影現場で見てきた人たちを元にして描いた、「恐怖」と「笑い」の映画『ゴーストマスターズ ~呪いのビデオができるまで~(仮)』。今まさに製作の準備中です。
「面白い」と思ったことを企画にするために
-日ごろから映像企画を実現させるために、心がけていたことなどはありますか?
自分はシナリオライターではないので、脚本コンペには応募はしてきませんでした。演出の方に興味があり、映画を観ていても、「なぜ面白いと思ったのか?」ということを日頃から考えていました。面白く演出するためにどうやっていたのかを想像したり、調べたりなどして、気になる演出がどんな効果を生み出したのかということを日頃から心がけていました。
-ヤングポール監督の「面白さ」の発想の起源ってどこにあるのでしょうか?
映画だけでなくて、「面白さ」っていろんなところに存在すると思います。よく言われるのが、葬式ですね。真面目な雰囲気の中、木魚を叩いている坊主の頭にハエが止まったことに、自分だけが気づくことで生まれる「笑い」だったり、叩き方のリズムが妙に自分のツボに入って笑いをこらえるのに必死になったり、そういった「笑い」って誰しも起こることですよね。
-自分が「面白い」と思ったことを企画にするにはどうしたらいいでしょうか?
当然自分が思った「面白さ」と相手が感じる「面白さ」は必ずしも一致しないので、どうすれば相手に自分の思う「面白さ」を理解してもらえるかを、きちんと考えないと伝わりません。面白いものをより面白く見せるために、企画書1枚に落とし込むことをして、仲間同士でそれらを見せ合う場を設けたりしました。
TCPは、シナリオのコンペではなく、大きな企画のコンペです。シナリオのコンペであれば、シナリオの優劣によって競う方向性が固まりますが、シナリオの前の段階の企画のコンペなので、それを種に制作プロダクションやTSUTAYAなどが集まって練り上げていき、みんなで作った企画が最終的に映像作品として形になります。より多くの人が面白いと思えるものを作ることができるのがTCPなのだと思います。
TCPで評価されたポイントとは?~一次審査に通った企画書の構成教えます~
-具体的に一次審査はどのようなことを意識して提出されたのでしょうか?
400以上の企画書が送られてくるので、ビジュアルを重視し3分以内に読めるように簡潔に、文字を読まなくても内容が伝わるくらいの企画書作りを意識しました。審査する人に向けての親切設計ですね。長いシナリオで提出しても、たとえそれがどんなに面白かったとしても、大量の企画に目を通す過酷な審査状況の中で面白いと感じられるかどうかは分からないですよね。
具体的に言ってしまうと、規定であるA4用紙10枚以内をフルに使った構成を考え、基本的に読んだ人が頭に入りやすいものを意識して提出しました。
1枚目:表紙(インパクト重視)
2枚目:この企画を一言で言い表すキャッチコピー
3枚目:企画概要 (3行くらいでストーリーの概要を説明できる短いあらすじ)
4枚目:あらすじ①
5枚目:あらすじ②
6枚目:あらすじ③
7枚目:キャラクター紹介①
8枚目: キャラクター紹介②
9枚目:これまでのまとめ(企画意図。またはそのおさらい/まとめ的な)
10枚目:企画者説明/プロフィール
ココに注目してほしい~映画撮影の裏側にはこんな面白い人がいる~
-現在、製作中の映画の企画のきっかけについてお聞かせください
今回企画して製作している映画のジャンルは、ホラーコメディです。ホラーってナンセンスなもので、突き詰めていくとそれは一種のコメディになるのではないかという着想を経て企画化しました。
死んだ人が追いかけてくるというよくあるホラーの展開って、かなり非科学的でナンセンスですよね。ホラー自体がコメディというかナンセンスを含んだ題材なんじゃないかと思いました。
また、映画の撮影現場をテーマにした理由は、例えば、ものを爆破することを職業にしている人など、いろんな「面白い」人が集まっていることにあります。そんな人たち、なかなか世の中にいないわけで、ある一つの技能がものすごく優れている多くのエキスパートたちが一つの作品を作っている撮影現場って面白いと感じ、それを題材にしたいと考えました。映画業界はそんな多様性が認められた仕事場であり、それってとても豊かなことですよね。
さらに言うと、作品作りは身を削る作業なのですが、そんな中で必死にものを作っているからこそ、その人の素の部分、根っこの部分が浮き出るんです。本気の人って「面白い」という思いが根本にあって、そういった今まで出会ってきた面白すぎる人たちをリスペクト前提に題材にできたらといいなと思い企画しました。
-話がそれますが、FILMAGAでも、他のメディアがあまり扱わないような、映画の裏側にいるエキスパートの方に取材したいと思っています。面白い方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください!
いいですね。例えば、ものを用意する美術部の方の仕事も面白いです。主人公の住んでいる家のテーブルの引き出しの中に全く映像には映らないのですが、こういうものが入っているだろうと演出部と想像して考え、それらを引き出しに入れていくこともしている。それらは俳優が不意に引き出しを開けた時に、ここは自分の家なんだと、そこに気持ちが入ることによって芝居の質が変わってくるということもあり得るからなのですが、そこまで仕事を追求していくのは面白いですね。
映るものを撮っているんだけど、画面には映らない『何か』を撮るために仕事をたくさんしている。
さらにカースタントなど、車を走らせて転倒させることでご飯食べている人もいるわけで、それって普通に映画を観ていても、どんなこだわりがあって作られているか、なかなか想像できないことです。そういった異常なことが撮影現場の裏側では様々存在しているのって知ると面白いですよね。
-映画好きなFilmarks(フィルマークス)ユーザーに向けて、今製作中の作品について、期待して欲しい点をお聞かせください
みなさんが体験したことのないような驚愕体験が目の前に待ち受けている作品を作るので期待してください。こんな風だろうと想像していると痛い目に合うようなものを目指しています。もしかしたらとんでもないホラを吹いてしまっているかもしれませんが(笑)せっかく作るので、予想をはるかに裏切る展開や今まで観たものは何だったのかと驚かせられるものを見せたいと思っています。
企画書はラブレターのようなものだ
-最後に、これからTCPに応募しようとしている方へメッセージをお願いします
自分が面白いと思った企画書をまとめて、誰かに送って返事を待つことって、青春時代のラブレターを出すような体験に似ているかもしれません。自分の想いを込めて、本気で取り組めば取り組むほど、淡い青春時代をリアルに体験できると思います。そういった意味では、相手が求めているものを考えても仕方ないので、自分の創りたい想いが詰まった企画をぜひ提出してみてください。
映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017」
■募集期間 WEBエントリー締め切り 2017年4月20日(木)~6月13日(火)
■企画書・約款等 郵送物送付締め切り 2017年6月16日(金)※郵送物必着
>>「TCP2017」公式サイト
http://top.tsite.jp/special/tcp/
(取材・撮影・文:柏木雄介)