ただの不倫劇よりもゾクッ!?『阿修羅のごとく』の人間模様から学ぶ女のうまい生き方

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

近ごろ、ゴシップにせよドラマにせよ映画にせよ、不倫劇がブーム。きっとその良し悪しよりも「この人たちどうなっちゃうんだろう?」という人間模様に興味津々な人が多い気がしています。でもトラブルが起こったらもっとゾクッとする人間関係になるのは夫婦よりも兄弟・姉妹や親子関係のような……。そんな描写を的確に描いている映画として思い出したのが『阿修羅のごとく』。でもじっくり観てみると、ここから女のうまい生き方が学べるように思えるんです。

ashu

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

密かに妬み合う四姉妹の物語

父親が不倫していると三女が言い出したことをきっかけにはじまる父、母、そして四姉妹とそれぞれの家族模様を描いたのが本作。しかし、どうも私には四姉妹それぞれが密かに抱えていたお互いに対する妬みや嫉みが浮き彫りになっていく物語のようにも見えるわけです。

ちなみに四姉妹とは、したたかな未亡人である長女・綱子(大竹しのぶ)に、主婦でしっかり者に見えるのがアダとなる次女・巻子(黒木瞳)、真面目すぎる三女・滝子(深津絵里)に、男になびきすぎる四女・咲子(深田恭子)。

それぞれキャラクターが違うがゆえに起こる妬みですが、そこには女の駆け引きがあるようで……。

面と向かっていがみ合わない!

物語が進むと、ある人物が「自分の結婚式に姉妹の中でひとり呼びたくない人がいる」と父、母に告白するシーンが。あからさまに姉妹の確執がうかがえる場面。ただ、ここにうまい女の駆け引きが隠されています。それが「本人に面と向かって言わない」こと。

別のシーンでも、姉妹の不倫現場に遭遇してもあえて罵倒しなかったり、「○○ちゃんには秘密」と言ってある姉妹同士で相談し合ったり、嫉妬や妬んでいる相手を直接刺激するようなことは避けているんです。

どんなに憎くても相手の感情を荒立てないことが上手な人間関係の築き方なのかも。

悪事は知らん顔して泳がせる!?

不倫についても昨今のものとはひと味違う描写が。大抵、夫や父の不倫・浮気がわかればそれを見逃さない表現が多いもの。この物語のスタートも父の不倫からはじまり、しかも三女・滝子は興信所まで使って証拠を押さえようと奔走していました。

しかし、ある人物だけはすべてをわかっても、知らないふりをしていたのです。映画の合間合間で、その不倫への憎しみが垣間見えるのですが、決して表にその感情を出すことはありません。

悔しさ、憎さ……そういった負の感情こそ、思い切ってぶちまけたほうがスッキリする、そう感じる人も少なくないと思いますし、私も共感できます。

でもこの作品を観ていて、知らぬ存ぜぬを貫くことで、本当は知っていたことが相手や周りにわかったとき、かえってその怒りがどれほど強いものだったか強調することができます。それに加えて、あえて波風を立てない一枚上手な女の生き方だとも思えたのです。

女の幸せなんて一瞬だったり、意外なところにあったりするもの?

『阿修羅のごとく』は、もともと向田邦子が脚本を手掛け、1979年と1980年にNHKで放送されたドラマで、それを原作として森田芳光監督が映画化したもの。

ちなみに映画冒頭で阿修羅の意味としてこのような文章が流れます。

インド民間信仰上の魔族。外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心が強く、日常争いを好み、たがいに事実を曲げ、またいつわって他人の悪口を言いあう。怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる。

その意味に違わず四人姉妹を通して、映画では阿修羅な瞬間が幾度も登場。その一方で今見てきたように女のちょっとズルくてうまい生き方を描いていると思うのですが、それだけでなく女の幸せとは何なのかも語っている気がしているんです。

例えば、夫が仕事で大成功して結婚って幸せなものと思っていたのにそのあと落とし穴が待ち受けていたり、結婚なんて縁遠いし男にも興味がないと思っていたのに、いざ恋人ができると思いの外その生活が幸せなものだと感じていたり。

女の幸せなんて一瞬だったり、思ってもいないところに転がっていたりする。そんなことも向田邦子は言いたかったのではないかなと。勝手な深読みですが。気になった人はぜひ観てみてください。

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

 

※2021年4月20日時点のVOD配信情報です。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • ふみぃぃeeeee
    3.9
    世界観的に家父長制が色濃く反映された台詞など多かった印象。その部分に時代を感じる一方、女性の力強さに関してもひしひしと伝わってくる。 会話劇の中に絶妙に挟み込まれた"気まずさ"の描写はやはり面白く、森田芳光監督らしい。 家族内のドロドロした関係性をユーモアを交えながら表現。父の不倫という一大事が四姉妹の絆の再生に繋がっていく。お話自体すごく面白い。 男性の愚かしさとそれに対する女性側の怒りもどちらも見えるが、最終的には「しょうがないな〜」と笑う女性陣。一枚も二枚も上をいっているような、そんな感じ。 [2021年 211本目]
  • 秋津凡夫
    1.5
    汚らしい 仲代達矢以外の役者の演技とその演出は酷く、他に良い所があるわけでもない。人間への冒涜。
  • アダム運転手
    5
    四姉妹は良い
  • すとんこ
    4
    バラバラだった四姉妹が、父の浮気を知ったことをきっかけに、互いの絆を取り戻していくって話☆ ヒューマン・ファミリー・ドラマだから、きっと父の浮気も誤解でって展開あるかなと思ったら、そこは森田芳光監督、『ウホッホ探検隊』でも証明済み、容赦なくお父さん浮気してます、ガッツリと。しかもフラレてションボリするとこも一緒。笑える。 四姉妹それぞれの思いや生き様がユーモラスに描かれつつも、家族ゆえの辛さや気不味さ、そして温かさや有り難さも描く。 ビターなホームコメディとして楽しめる一本(^_^)☆
  • まつこ
    3.6
    男と女はいろいろですね。70歳になった父親に彼女だけじゃなく子供もいたとしたら。もう70なら好きにしたらと私なら思っちゃうかな。 当時すごい話題だったなー!こんな4姉妹美しすぎて眩しいわ。深キョンが特に可愛いかった。「だめ〜♡」なんて言われたらキュンしかない。ネジゆるめのホラー獅堂がだんだん微笑ましく思えた。深津ちゃんの花嫁姿も素敵だったな。共働きが増えたり、家庭の様子はあの頃と変わったかもしれないけど、今もどこかでこんな風に悩んでいる人がいるんだろうな。時代が変わっても心に刺さる作品だと思った。
阿修羅のごとく
のレビュー(2114件)