浅野忠信、田中麗奈のもとで挑戦した初めての映画、初めての演技――15歳の新星・南沙良【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

血のつながった家族と、血のつながらない家族―。人間のエゴや価値観のズレを突きつけられる映画『幼な子われらに生まれ』は、親子関係の脆さと尊さも包み隠さずに描いた1作だ。本作にて、主人公のサラリーマン・田中信(浅野忠信)と、再婚した妻・奈苗(田中麗奈)の間に連れ子として共に生活している不機嫌な長女の薫を演じたのが、新星・南沙良だ。映画初出演、さらには演技初挑戦ながら、浅野と田中というベテラン俳優を相手に、不安定な薫という物語のキーパーソンを等身大で堂々と演じた。「ずっと女優になりたかった」と意欲を見せる南に、初めて尽くしの現場で受けた洗礼を教えてもらった。

南沙良

――元々、女優をやりたい気持ちはあったんですか?

はい。小さい頃から、ずっと女優さんになりたかったんです。

――約200人のオーディションを勝ち抜いたそうですね?

そうなんです! お芝居をして、三島(有紀子)監督と面接をしました。演じる薫についての話をしたんです。「原作を読んでどう感じたの?」と聞かれたので、「すごく複雑な子だと思いました。親子関係や夫婦関係など、いろいろな家族の形が描かれていますね」と答えました。重たい話ですけれど、すごく温かみのある作品だと思って読んでいたんです。

南沙良

――複雑な環境下の中で生まれる鬱屈した気持ちや、思春期特有の揺れを繊細に演じていらっしゃいました。南さんは、薫をどう受け止めて演じていたんですか?

私は原作を読んで、(感情を)うまく表現できない不器用な子だなと思っていました。無愛想だったり、ぶっきらぼうだったりするけど、その中に薫なりのやさしさ、素直さ、正直さなどが実は存在しているんですよね。薫の演技については、三島監督とすごく話し合いを重ねました。

――具体的に、どのような話し合いをされたんですか?

薫の不器用な性格において、どうやって、やさしさや素直さを表現するかということを、すごく話し合いました。家族について、お父さんについて、薫は一体どう思っているのか。薫の考えていることが、「表情や動きで表現できるといいね」ということになり、リハーサルを何回かやって、確かめてから本番に行く、みたいな流れでした。あとは順撮りだったので、気持ちが入りやすくて、すごくやりやすかったです。

南沙良

――演じた薫は実年齢に近いですよね。家族に対する思いで理解できるところもありましたか?

薫が義父に対して反抗的な部分がありますけど、私も当時、父とそんなに仲良くなかったんです。喧嘩したり、言い合いになったりしたので、そこは共感できました。でも、喧嘩の内容はくだらなくて……、私に似合わない洋服を買ってきたとか、テレビのチャンネルの奪い合いとか(笑)。

――ダークな内容ではなくてホッとしました(笑)。薫の不器用さの面で、何かしら自分と通じるところはありますか?

私も感情を上手に表現することがあまりできないので、そこは共感できました。

南沙良

――あまり表に出さないんですね。

出さないわけではないんですけど、どう表現していいかが、よくわからなくて(笑)。

――例えば「うれしい!」と思ったときは言えますか?

ああ、はい! 言えます! 反対に「嫌だなあ」と思ったりしたときは、あまり言えないんです。

――撮影現場でつらいときとかも、胸の内にしまっていたんですか?

それが、なかったんです。撮影は本当に楽しかったです。

南沙良

――初めての現場で、緊張もしなかったんですか?

スタッフさん、共演者の皆さんが本当に温かくて、優しく接してくださったので楽しかったです。雰囲気が本当によくて、リラックスして演技できました。

南沙良

――義理の父親役の浅野さんの印象はいかがでしたか?

本当に透明感がすごいんです! 浅野さんは透けているんじゃないかっていうくらい。最初すれ違ったときに、透けていて一瞬気づかなくて(笑)。

――そうなんですか(笑)!? スクリーンでは存在感として映えますが、お芝居で圧倒されるようなことはなかったですか?

三島監督に「お芝居をするよりも、キャッチボールを大切にしてね」とすごく言われました。浅野さんは、本当にコミュニケーションも取ってくださいました。私がやって、返されたものに対して、素直に感じたものを表すように心がけていました。

――カメラが回っていないところでも、コミュニケーションを取ったり?

そうです。浅野さん、すごく優しいんです。私が撮影期間中に誕生日だったんですけど、浅野さんや三島監督がケーキを用意してくださって!う れしかったです。しかも誕生日プレゼントも用意してくださって。スニーカー、浅野さんのバンドのキャップとトートバッグ、私がすごく好きな声優さんのライブDVDまで、たくさんもらいました。妹役の(新井)美羽ちゃんもプレゼントを買ってきてくれて……。皆、とっても優しかったです。

南沙良

――いっぱいいただいたんですね(笑)。母親役の田中さんは、いかがでしたか?

麗奈さんは本当に明るくて、面白い方でした。休憩中もすごく話しかけてくださって、一緒にお話をしたり、写真で遊んだり(笑)。あとは麗奈さんが現場でお料理を作ってくださったので、そのお手伝いをしたりもしました。

――本当の家族みたいですね。素敵な共演者の皆さんと挑んだ完成作、初号は皆さんでご覧になったんですか?

そうです。三島監督とは終わってから少しお話をして、「お疲れさま、本当にありがとう」と言ってもらえて、すごくうれしかったです。またご一緒したいです。

南沙良

――自分の演技については、いかがでしたか?

いやぁ……もう、自分のところは恥ずかしくて全然観られなかったです(笑)。「私ってこんな風に映るんだ……」って思いました。客観的に見つつも、「自分がいる……」と。

――とはいえ、客観的に見られた面もあったんですね。率直に、どんな感情が残りましたか?

作品を観る前は、親子や夫婦、兄弟、家族はひとつの形だと勝手に思っていたんです。ただ、この作品を観ると、家族の形はたくさんあって、表現も一通りではないですし、温かいものなんだと改めて思いました。いいものだなあ、って。

南沙良

――これから女優としてキャリアを重ねていくと思いますが、目標は立てていますか?

ひとつの型にはまらないでいたいと思っています。たくさんのイメージを持っていただけるような女優さんになりたくて、本当に、今は何でもやりたいです。(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)

南沙良

幼な子われらに生まれ』は8月26日(土)より、テアトル新宿・シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。

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  • scotch
    3.5
    泣かせの重松清が原作。泣かせに来る感動ものと思いきや、重たい家族の話。 義理の娘に反抗されまくりの悲しい父親。いやー、終盤まで重たい重たい。しかし、その重たさゆえに面白い。 が、なんだこのハッピーエンド感!おい、最後まで反抗しまくれや、娘。クドカンも何中途半端にええ奴になっとうねん。 ということで、どうにも納得できぬ結末。 斜行エレベーター、我が県だったんだ。 BS松竹東急
  • のとけんいち
    3.6
    登場人物はみんな良いところ悪いところがあり、それが周囲を苦しめてしまうことになるのがもどかしく、特に主人公と前妻との間に生まれた子どもが悲しむシーンが辛かった。 現在の妻の連れ子が「欲しいものは鍵」というシーン。家に自由に出入りしたいのかと思いきや、自分の部屋に親が自由に入れないようにしたい意味だったなど、わかりにくい箇所がいくつかあった。
  • 松永恭昭
    4.1
    見事なストーリーでした。重松清は、中流家庭の父親の憂鬱を描きだすのがうますぎる。 ただ、全体的にチグハグ感は気になってノイズに感じた。 演技はとてもよかったのだけども、そもそものキャスティングもこれでよかったんだろうか?と思うほどに、中流からはかけ離れていたし、ロケーションも、え? デザイナーズマンションじゃない?と気になったし、 映像も、手持ちだったり、がっつりと画にこだわってたりと安定しなくて、いちいち気になって、画面から放り出される。 脚本も、濡れ場必要だった?と感じたし。 ずうっと相米信二が監督したらオモシロかったろうになあと思ってみていました。
  • あおりんご
    3.8
    「血のつながらない家族と血のつながった他人。」 公開年: 2017年 監督: 三島有紀子 原作: 重松清 キャスト: 浅野忠信、田中麗奈、宮藤官九郎、寺島しのぶ テーマがとにかく重い。 重たすぎる。 観ててしんどいけど、他人の家庭の秘密を覗いているようなヒリヒリ感があって、気づけばのめり込むように観てしまった。 主人公の信は、バツイチ再婚の父親。 妻の連れ子たちと、本当の家族になろうと努力し続けている。 飲み会も断り、休日出勤も避け、ひたすら家庭に尽くす。 なのに血のつながらない(でも長年育ててきた)長女からは「本当のパパに会いたい」と突きつけられ、妻にも本音を打ち明けられず、ただただ一人で抱え込んでいく。 自分は完全に父親目線で観ていたから、やるせなさが多すぎた。 こんなに家族に尽くしているのに、こんな仕打ちを受けるのか、と。 一番近くにいるはずの妻にすら相談できず、全部を一人で飲み込むしかないのか、と。 観ながら何度も何度も胸を締め付けられた。 でも、ふと思う。 これって、子供の目線から見たら全然違う物語なんだろうな〜と。 子供にとっては「本当のパパじゃない人」が必死に父親ヅラをしていると映るのかもしれない。 今は離婚も再婚も当たり前の時代だけど、それを選んだのは結局大人だ。 子供は、大人の都合に巻き込まれただけ。 「子供のため」と言いながら、本当はそれって親のエゴなんじゃないか? そんなことを考えさせられてしまった。 キャストは本当に素晴らしい。 浅野忠信は、徐々に沸点が上がっていく不器用な男を見事に体現していた。 田中麗奈も良かった。可愛いんだけど少し面倒で、何かあるとすぐ男にぶら下がる嫁さんを絶妙なラインで演じていて、妙にリアルだった。 ダメ男役のクドカンも最高。 あの飄々とした無責任さが、逆に物語を引き締めていた。 でも何よりも印象的なのは、元嫁のセリフ。 「あなたは理由は聞くけど、気持ちは聞こうとしない」 これが、もう刺さりすぎた。 調べて知ったんだけど、このシーンは台本通りじゃなくて寺島しのぶさんがほぼ即興で放った言葉らしい。 それを受けた浅野忠信が、「どんな気持ちになった?」というセリフを返すんだけど、それもアドリブだったそう。 撮っていた監督すら鳥肌を立てたというあの瞬間が、そのまま映画に焼き付いている。 だから、あんなに生々しく刺さるのかと納得した。 理由は聞くけど、気持ちは聞かない。 これ、世の男性はあるあるなのかもしれない(少なくとも自分は)と、ハッとなった。 正直言うと、しんどい映画だ。 でも私は観て良かった。 親も、子も、誰も悪人じゃなくて、みんな少し不器用なだけ。 でも、その不器用さがこんなにも人を傷つけるのか、、、と静かに突きつけてくる一本。 誰の目線で観るかで、まるで違う映画になると思いますよ🎥
  • ちーくん
    3.9
    元妻と実の娘(沙織)、そして現在の奥さんとの間にいる連れ子(薫、恵理子)と新しく産まれてくる命。血が繋がっているから親子なのか、それとも血が繋がっていないと親子ではないのか、それぞれ全員が親の違う子供であるが故に起こる衝突や彼女たちにしか分からない心境など、ただでさえまともな家庭を築くことすら難しいこの世の中で複雑な家庭環境で多感な時期を過ごす彼女らは余計に自分が分からなくなるし難しい問題だなと思いましたね。個人的な考えとしては親の立場というのはただの自己都合でエゴとしか思わないので父親の浅野忠信や元妻の寺島しのぶ、現妻の田中麗奈がどうなろうとも全て子供を第一に優先させるべきだと思ってしまいます。ですが本作の父親や母親は完璧ではないにしろ側から見ればかなり理想に近い親子像ではあったと思うので慎重に思いやりを持って子供に接することが最後の展開に繋がるんだなと思いましたね。いつだって家族は難しい。
幼な子われらに生まれ
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