アフガニスタンに生まれ難民としてイランで育った少女、ソニータは自らの運命を己の力で切り拓くために魂のラップを叫ぶ。燃え上がるような情熱を帯びたドキュメンタリー映画『ソニータ』がいよいよ10月21日(土)に公開となります。
今回は、『ソニータ』をはじめ様々な「世界の課題」に光を当てたドキュメンタリー作品を中心に配給されているユナイテッドピープル株式会社代表の関根健次氏に話を聞きました。
ユナイテッドピープルとは……?
――関根さん、よろしくお願いします。ではまずユナイテッドピープル社について教えてください。また、関根さんが配給の仕事に就かれたキッカケはなんですか?
はい。ユナイテッドピープルは国際協力のプロフェッショナル、NGOを支援するためにインターネット上で募金のシステムを10年以上運営してきました。そこで、「社会の構造が変わらないと寄付金がいくらあっても足らない」という結論にいたりました。寄付が必要ないとは思っていません。寄付金が必要となる原因を見極め、解決しなければなりません。具体的に言うと、現在紛争地が増え続けています。私も紛争地に行ったことがあるのですが、その時気づいたのが戦争が生み出される「社会の構造が変わらないといけない」と思いました。
また、「貧困問題」、「環境問題」も構造的な問題があるということに気づきました。では、構造を変えるためにはどうしたらいいのか、というと「一人ひとりの行動が変わること」だと思ったんです。「一人ひとり」というのは必ずしも外交官や政治家、大統領に限らず、普通の主婦だったり学生、一般の社会人など、社会の現場の「一人ひとり」なんですね。現場のひとたちが少しでも社会に目を向けて、より良くしていこうという気持ちを持てば、人が生み出した問題ですから、人が解決できる問題だと思っています。映画を見ることによって課題を共有して問題意識をもって行動をしよう、という一人ひとりがユナイトする、だからユナイテッドピープルという社名なんです。得意分野を活かしあいながら世界の課題解決にむけて、自分自身が一人として始めれるところから初めて、そして繋がってみんなでやっていこうというコンセプトです。
――なるほど……それは関根さんが紛争地帯や世界の課題を目の当たりにしたから言えることですよね。ユナイテッドピープルの配給作品は「世界の課題解決」に繋がる作品が多いということですね。
はい、そうですね。社会問題をテーマにしているので、難しいと思われる方も多いと思いますけれども、中にはエンターテイメントとして楽しめる作品もありますし、ただ単に世界の課題を映し出している作品は選ばないようにしています。映画の中に解決方法や、社会に光を照らす映画を意識して探しています。楽しめるポイントもありますし、社会に活かせるヒントがあるのは多いですよ。
――今回の作品。『ソニータ』はまさにそうですよね。一見難しそうなテーマですが、おっしゃるように、ドラマ性の高いドキュメンタリーでした。では次に、配給会社の一日の業務についてです。例えば今日はどのような業務をされましたか?
はい。『ソニータ』の公開前の先行試写会を計画しているのですが、その当選者への連絡をしたりとか、試写会のセッティング、レイアウトの準備をしたり、取材を受けたり、パブリシティの掲載文面を確認やテレビ局への売り込みをしていました。
――バタバタですね〜
大変ですよ〜。かなり地味な仕事が多いです笑。ユナイテッドピープルの特徴は、市民上映会として誰でも上映会ができるシステムがありまして、年間契約でユナイテッドピープルの映画が上映できるシステムがあります。どんな映画がいいか相談したり年間プログラムの提案などもしています。
関根氏の『ソニータ』に対する熱い想い
――では、今回の『ソニータ』について聞かせてください。今回『ソニータ』を配給に至った経緯はなんだったのでしょうか?
はい。世界では難民問題が悪化しているように思います。パレスチナ難民に加え、最近ではシリアでの紛争の影響でシリア難民も存在しますし、アジアではミャンマーで問題となっているロヒンギャ難民が存在します。「環境難民」と言われる気候変動の影響で難民化する人たちもでてきています。21世紀は新たな難民世紀だと言われるほど難民問題は加速しているんです。
――連日テレビでも報道されていますよね。
そうですね。この『ソニータ』という映画に出てくる実在の人物の“ソニータ”は紛争によって生まれた難民の一人なんです。アフガニスタンから難民としてイランで生活をしていたのですが、身寄りのない状況の中で、彼女は決して夢を諦めずに将来は有名なミュージシャンになって、大きなステージで歌うという夢を突き進むわけです。そんな彼女の姿が教えてくれるのはどんな環境に置かれていても夢を抱き続ける、自分を信じて行動することで道が拓けていくということなんですね。
――僕も見ていて胸が熱くなりました。
『ソニータ』という映画に出会って、本人(ソニータ)にも会いましたけれども、彼女の姿をみると元気、勇気が湧いてきて、もっと頑張ってみようと前向きな気持ちにさせてくれるんです。『ソニータ』という作品を日本に届けたいとおもった一番大きなポイントは日本に元気を届けたいという思いがあったからですね。
もちろん、現在の難民が置かれている状況を伝えたかった、という想いもあります。また、アフガニスタンには未だに「児童婚」と言われる、親が強制的に結婚相手を決めてしまう習慣があります。結婚相手が勝手に決められて、しかも、金銭目的で強制的に結婚をさせられる習慣です。そんな習慣がある現状を伝えたかったです。
――ソニータの熱い生き方と難民の現状、まさにその2つですよね。ソニータ本人にもお会いしたんですよね? 実際に会ってみていかがでしたか?
はい、映画の通り、今でも夢を追いかけてる非常に強い精神をもったファイターですよね。戦っていますよ。戦士です。ソニータのラップの日本語字幕が入った動画もあるので是非みてください。
※強制的に結婚をさせられる習慣に対して怒りの言葉をラップにのせる彼女の動画です。
――関根さん、貴重なお言葉をありがとうございました。あ、一番最後に好きな映画を教えてもらっていいですか?
はい、『台北カフェ・ストーリー』ですね!
――最高ですよね〜。ありがとうございました!
【あわせて読みたい】
※ 「製作総指揮」って何やってるの?映画『ゴーストロード』の“製作総指揮”マイク・ロジャースに直撃!【インタビュー】
※ 熱狂の『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ SPECIAL SHOW』をレポート!【We Love HEDWIG and the ANGRY INCH !】
※ 来日キアヌ・リーヴスが直行した「九州じゃんがららあめん」を直撃取材してみた
※ 下劣、ゲス、クズ…共感度0%、不快度100%のラブストーリー『彼女がその名を知らない鳥たち』
※ あの頃のトム・クルーズがふたたび!破天荒シズルほとばしる実話『バリー・シール/アメリカをはめた男』