“北欧映画”って一言でまとめてない?スウェーデン・アイスランド・デンマーク、国ごとに異なった特徴を体感できる映画6本

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

みなさんは国ごとに映画を観てみようと考えたことはありますか?
アメリカ、フランス、イタリア。日本はもちろん、アジアの諸外国、インドなど。それぞれの国では、それぞれの文化や歴史を活かした作品が生まれるでしょう。たとえば、フランスはラブストーリー、インドならばひたすら踊り、韓国ではバイオレンスな作品が代表的ですね。

では、北欧はどうでしょう。
正直、世間的に目立つ作品は少ないのですが、近ごろでは北欧映画をひたすら堪能する映画祭「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル」が開催されるようになり、少しずつですが、注目を集めてるのではないでしょうか。

そこで今回は、北欧の国ごとにスポットを当てつつ、作品をご紹介。映画を通じて、北欧の文化に触れましょう!

スウェーデンの映画

スウェーデンは、日本にも馴染み深い北欧の国のひとつなのではないでしょうか。家具量販店で有名なイケアはもちろん、近ごろは北欧の雑貨を取り扱うお店も増えてますね。ファストファッションで知られるH&Mもスウェーデンのブランドです。

映画を観たときにも家屋や生活の日常品の可愛らしさが印象に残るのが、スウェーデンの映画の特徴のひとつです。とりわけ、後述の『幸せなひとりぼっち』は、スウェーデンだからこその要素が詰まった作品でしょう。主人公・オーヴェらの住む家々はスウェーデンの伝統的な色使いで、隣人・パルヴァネとの交流も移民の多いスウェーデンらしいなとも思います。

家屋、雑貨、食事、自動車など、物語を彩るスウェーデンの生活。みなさんの生活にもシンプルで可愛らしいスウェーデンの文化を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

シモンの目に映る世界をユニークに描く『シンプル・シモン』

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他人の感情がわからない。触られるのが大嫌い。アスペルガー症候群のシモンは、大好きなお兄ちゃん・サムのために完璧な恋人探しを始める。北欧デザインのインテリア、カラフルなファッション、シモンの目に映る世界をユニークに描き、映像的にも楽しめるキュートでハッピーな物語『シンプル・シモン』。人付き合いは計算では答えを得られない。ゆえに、楽しくて、難しいのでしょう。人付き合いに難しさを感じる方にお薦めの一本です

偏屈なおじさんの孤独と悲哀と愛情の物語『幸せなひとりぼっち』

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愛する妻に先立たれた孤独な中年の男・オーヴェ。周囲からは厄介なおじさんと疎まれ、近所からは鼻つまみ者扱い。しかし、隣人・パルヴァネ一家との交流から心を解きほぐされる。スウェーデン発の物語『幸せなひとりぼっち』。前項の『シンプル・シモン』は、鮮やかさが持ち味で、現代的な北欧のイメージでしたが、本作は伝統的な色使いの北欧らしさ。若い感性と、昔ながらの感性を味わうのも楽しみ方のひとつです。偏屈なおじさんとの交流を描いた物語はベタですが、主人公・オーヴェは魅力的。孤独と悲哀を感じさせつつも、心を許したときに見せる微笑みは愛嬌に溢れ、その人間味と彼の過去に胸を打たれるでしょう。

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アイスランドの映画

アイスランドは自然に溢れた国ですが、生い茂る木々などのイメージよりも、自然の持つ厳しさを感じられるでしょう。溶岩が固まった岩肌や、国土の一割を覆う氷河。苔むした山、青い湖など、大自然の美しさと強さが魅力の国です。アイスランドが舞台の作品でもその特徴は表れ、雄大な景色は作品を彩る要素のひとつ。

また、アイスランドの作品は動植物とともに生きることが生活の一部なのだとはっきりと思わせられます。以下に紹介の作品にも馬や羊などの家畜はもちろん、海鳥や魚など、どれも印象的に描かれます。
アイスランドの唯一無二とも言える自然の強さで育まれた感性はそれだけでも稀有な才能に思えます。いかなる環境で生まれ育っても、感性は環境の影響を受けますが、アイスランドのそれは非常に特異なのでしょう。映画は視覚情報がすべてですが、アイスランドの作品に関しては五感への刺激も伴います。ぜひ、感覚を研ぎ澄ましてのご鑑賞を。

少年少女の性への目覚めを丁寧に紡いだ秀作『ハートストーン』

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閉鎖的な漁村を舞台に思春期を迎えた少年少女の繊細な心を丁寧に紡いだ『ハートストーン』。主人公・ソールは、大人びた少女・ベータに恋心を抱き、彼の親友・クリスティアンはソールへの特別な感情に気づきます。舞台は閉鎖的な漁村。他人との違いを受け入れないコミュニティでの生きにくさを徹底的に叩きつけます。また、本作では同性愛が描かれますが、個人的には同性への愛よりも、ひとりの人間への愛にも感じられました。北欧の男の子は顔立ちが美しく、性別が曖昧に映るときもあり、人間の美しさが際立つ人種なのかなとも思います。それは4人が顔を寄せ合うビジュアルからも感じられるのではないでしょうか。

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不仲な老兄弟と羊の絆と愛の物語『ひつじ村の兄弟』

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アイスランドの辺境の村に暮らす、羊飼いの老兄弟、グミーとキディー。ふたりの育てる羊は国内随一の優良種だったが、ふたりは長らく絶縁状態の不仲な兄弟だった。しかし、彼らはある事件をきっかけに重大な秘密を共有することになる。不仲な老兄弟と羊の絆と愛の物語『ひつじ村の兄弟』。前項の『ハートストーン』よりも寒々しい景色が目立ち、広大なアイスランドの土地が非常に印象的。疫病にかかる羊が描かれるので、羊飼いには死活問題の作品なのですが、哀愁とユーモアのバランスが絶妙。これもアイスランドの作品の特徴に思えます。

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デンマークの映画

アイスランドの自然には根源的な強さや厳しさを感じますが、デンマークの自然には純粋な美しさが感じられます。後述の『ヒトラーの忘れもの』では、物語がはらんだ戦争の無情さを皮肉っているとも思えるほどに綺麗な海岸線が映し出され、同様に『偽りなき者』でも、物語とは相反するように美しい自然の景色が差し込まれます。デンマークの映画に皮肉めいた作品が多いとは思いませんが、いわゆる鬱映画の代表的な作品『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー監督もデンマーク出身。本作も不遇な主人公の顛末をミュージカル風に見せ、相反する要素を取り込んだ作風は上述の作品との類似点とも言えます。

どれも後味がいいとは言い難く、癖の強い作品ばかり。ただ、それぞれの作品が与えるインパクトは非常に大きいと思いますので、この機会にぜひご観賞を。

小村を舞台に巻き起こる集団ヒステリーを描く『偽りなき者』

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デンマークの小村を舞台に集団ヒステリーの被害を受ける男性を描いた物語『偽りなき者』。舞台が小さな田舎町なのは『ハートストーン』とも同様の共通点ですね。閉鎖的なコミュニティでの生きにくさ、失った信頼を取り戻す難しさを考えさせられます。冤罪を扱う作品なので、心をかき乱されるのは当たり前ですが、それだけに非常に爪痕を残される1本。12月を迎えたデンマークの山々、ラストの山中でのシーンなど、皮肉とも言えるほどの自然の美しさも印象的なので注目を

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地雷撤去を命じられた少年兵たちの実話『ヒトラーの忘れもの』

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第二次世界大戦直後のデンマーク。ナチス・ドイツが埋めた地雷の撤去を命じられたのは、異国に置き去られたドイツの少年兵捕虜たちだった。物語の舞台はデンマークの海岸。真っ白な砂浜、薄い灰色の海、曇り空、枯れ草。色彩のない無機質な色味が戦争の無情さに拍車をかけます。少年兵たちに指示を出すのは、デンマークの軍曹・カール。初めは少年兵らへの冷酷な指揮に胸が痛みますが、徐々に彼の苦悩も伝わります。戦争の当事者たちが残した責任を背負わされるのは、新たな世代。それをあらためて気づかされる作品です。

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さいごに

どれも北欧らしさを感じられる作品なのですが、個人的に素晴らしかったのはアイスランドの作品でした。圧倒的な自然の豊かさ。そして、厳しさ。『ハートストーン』の少年少女たちが心に悩みを抱えたとき、彼らはアイスランドの自然に包まれ、自身らの悩みを洗い流すように見えました。アイスランドの土地で生まれ育ったからこその心の浄化なのでしょう。

北欧の作品は風変わりな物語が目立つので、いつもとは異なる作品に触れたい方にもお薦め。
ぜひ、この機会にご観賞を!

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