【パンクな問題作品】40年以上の時を超え『懲罰大陸★USA』がついに日本公開!

映画ファンのボンクラ

鎗火亮介

映画製作の手法として、フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)というアプローチがあるのはご存じでしょうか?

現実に起きた出来事を撮影したドキュメンタリーではなく、事実をでっち上げてドキュメンタリー風にフィクションを構築した映画ジャンルです。

たとえば「ドキュメンタリー映画撮影中に行方不明になった少年たちのフィルムを編集して映画化した」というフィクションをドキュメンタリー風に描いた『ブレアウィッチ・プロジェクト』などが当てはまります。

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今作は日本でも大ヒットとなったことは記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回ご紹介する『懲罰大陸★USA』はそんな大ヒット作品の30年以上も前に先がけて製作されましたが、40年以上の時を超え、ついに日本公開となりました。

製作の背景

本作は、1971年公開の作品で、アメリカ国内でのベトナム戦争反戦運動の状況を背景としたフェイクドキュメンタリーです。

当時、ベトナム戦争が激化の一途をたどる中、ニクソン大統領は秘密裏にカンボジア爆撃キャンペーン実施を決め、アメリカ国内では一般人による政治運動も盛んになっていました。

そういった情勢を背景に、ニクソン大統領は1950年に成立したマッカラン国内治安維持法を発令、アメリカ政府は反政府的・危険分子とみなした人々を一方的に拘束します。

その情勢に恐怖を抱いたイギリス人のピーター・ワトキンス監督は本作を製作することに。

作品概要

『懲罰大陸★USA』は2つのパートで構成されています。

1つめは、反乱分子とみなされた人びとが裁判にかけられ、彼らが判事の理不尽な審問に対して抗議する様子を追った描写。彼らは、ヒッピー、学生の平和運動家、ロックミュージシャン、黒人の公民権を求めた活動家などで構成されています。

2つめは、求刑通りの懲役ではなく、カリフォルニアにある「ベアーマウンテン国立懲罰公園」にて、3日以内に90キロ強先のUSA旗を目指して行進していく描写です。これは、国家への忠誠のための矯正を目的とした刑です。

この事態にヨーロッパの映像制作者たちがドキュメンタリー用の取材を敢行しました。

矯正集団また、彼らを追う州兵や警察や軍隊の面々にもインタビューを行い、両面からこの懲罰政策の中身を追います。

いわくつきの作品

衝撃的な内容に米国メディアは即反応しました。

まずニューヨークの映画祭で上映された翌日、ニューヨークタイムズ誌のレビューでは「本作はとても鈍い、頭のイカれた誠意で描かれており、最初のヒステリックな10分間で気づくだろう。完全にマゾヒストの願いや夢を果たすべく作られた映画だ」と語られ、それに同調した各メディアが総攻撃を浴びせました。

マンハッタンの劇場で公開されるも、4日間で打ち切りに。当時、どんな作品でも1週間は公開されたので異例の事態でした。

その後、西海岸で短期間で上映された際は、観客からはポジティブな反応が出ました。

しかし、ロサンゼルスのとある劇場の支配人は「FBIや警察などの権威から目をつけられ、街から抹殺される」と語り、それ以降アメリカ国内の劇場ではほとんど上映されることがありませんでした。

そういった経緯から、日本での公開も見送られていたのでしょう。

体制側からの抑圧の恐怖

本作の見どころはこれに尽きます。

裁判のパートでは、事実よりは誇張されていると思われますが、理不尽な罪状認否が行われます。

例えば、ロックミュージシャンの認否の際、彼女は裁判官からロックが反政府的な思想を煽るものであるとして、また無職のヒッピーの場合、国家の行政に貢献しない者として禁固刑に処されます。そのような審問には、恐怖とあまりのバカバカしさからくる笑いがこみあげます。

一方、懲罰公園での刑を選択した人びとは炎天下の中、水分補給もほとんどできない状況で90キロ強のUSA旗まで歩かされます。

過酷な状況の中、人権を無視した刑として逃亡を試みる人もいますが、彼らはみな州兵や警察、軍隊の面々に取り押さえられ、さらに抵抗することでひどい暴行を受けます。

最もひどい場合には「止まれ」の命令を無視したがために、射殺されることもありました。インタビュー映像では、18歳の少年州兵が命令を受けたものとして証言される描写がありますが、そこで上官は一切責任をとる様子を見せません。

本作では2つのパートの共通点である「国家を守る」という大義名分のもと、体制側は上記のような行動に出ます。

権力者が国民の人権を無視し反抗的な思想を持つ人びとを弾圧。あるいは、そういった行動に出た下っ端の人間が責められ、上級の人間たちは責任を転嫁し合うという状況は現在、世界各地で起こっています。

そういった意味で、フェイクドキュメンタリーとはいえ、時代や国家を超えた普遍的な問題提起の作品といえるでしょう。

初公開!世界のどす黒い危険な映画シリーズ

第3弾『懲罰大陸★USA』上映

シネマカリテにてレイトショー公開 9/11(金)まで

第4弾『ヒューマン・ハイウェイ』上映

シネマカリテにてレイトショー公開 9/12(土)から 9/25(金)まで

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  • AnriKimura
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    邦題でブラックコメディものかと思ったらド級のシリアスフェイクドキュメンタリーやったわ
  • オカダ
    4.5
    COME ON BABY AMERICA
  • ルサチマ
    4.2
    サバイバルドキュメント
  • backpacker
    4
    【備忘】 原題は『Punishment Park』。 あり得たかもしれないアメリカのifを描く、モキュメンタリー映画。 【あらすじ】 1970年代アメリカ。 ベトナムでの対共産主義との戦争に対する反対運動に対し、米政府はマッカラン国内治安維持法に則り、反政府的危険分子と判断した人々を拘束。 一方的な簡易裁判により判決を言い渡された被告人達には、2つの選択が迫られる。 1つは、十数年の懲役刑。 1つは、パニッシュメント・パークで数日間過ごす。 当然の如く後者を選んだ彼らは知らない。 パニッシュメント・パークの正体が、人間狩のフィールドであることを……。 70年代アメリカの反戦運動と、それを弾圧する政府の姿は、近年のポピュリズム旋風、白人至上主義・ネオナチ復興、人種差別問題の再燃、極右対極左、等の〈分断の社会〉情勢が原因となり、再び取り上げられる事が増えている。 68年民主党大会での反戦デモ逮捕者に対する有罪判決事件を『シカゴ7裁判』としてNetflixオリジナル映画化した事からも、近年の再認識の機運の高まりが感じられる。 本作もまた、そんな時流に乗り、再評価を受けている作品の一つである。 と言っても、公開当初は4日間で上映中止に追い込まれ、その後も延々と封印され続けていた本作も、2000年代初頭には映画人を筆頭に再評価を受けていたため、再々評価と言うべきかもしれない。 特筆すべきは、前半の簡易裁判のパートだ。 この前半パートでは、 若者達の口を塞ぎ(比喩では無く、猿轡を噛ませて黙らせている)、主張に耳を貸さない大人たちと、 大人たちを思考停止と口汚く罵り、自分たちの意見が絶対に正しいと譲らない若者たちが登場する。 双方の主張は、共に自分たちが考えうる「正義」の形であるため、決して相容れず、常に平行線で、完全に分断されている。 互いの言葉に耳を傾けず、コミュニケーションを取ることを諦める人々の姿。 これは、現代アメリカ社会でも顕在化している、政治・経済・世代・人種・信仰と言った、イデオロギー対立による分断の形に他ならない。 「人間、話せばわかる」と言うが、「話してわからないから人間ではない」を地で行くような、お粗末な連中の物語であるにもかかわらず、その狂気は完全に現代社会とシンクロしている。 当然ながら、裁判は大人たちの思い通りに進み、若者は刑を執行されることになる。 ここでの大人たちとは、体制の人間であり、国家権力の代弁者であり、政治の具現化である。 その為、体制・権力・政治にとって法律は、常に自分たちが良いように解釈し、思うがままに国を運営する為の手段に他ならないという、残酷な真実を突きつけてくる。 後半のパニッシュメント・パークについては、手持ちカメラによるモキュメンタリー映像が、淡々と描かれる。 若者達の逃避行と、狩人となった警察の、双方の姿を捉えつつ、カメラは第三者として、目の前に起こる惨劇を決して止められない。 結末の決まった出来レースを見ていると、共感や認め合い等の優しい労わりの精神が失われる恐怖と、それが現代社会に生きる我々が置かれた状況に他ならないことの絶望感が押し寄せ、ホトホト気が滅入ってしまう。
  • おむすび
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懲罰大陸★USA
のレビュー(164件)