近年、ハリウッドは空前の「怪獣」ブーム。『GOZILLA ゴジラ』に『キングコング:髑髏島の巨神』、『パシフィック・リム』……。5月18日(金)から公開の『ランペイジ 巨獣大乱闘』もそんな怪獣映画のひとつだ。
昔から巨大な怪物や動物が登場する映画はたくさんあるけれど、今回は『ランペイジ 巨獣大乱闘』の公開から「巨大化」をキーワードに、意図の有無を問わずなんらかの原因で「おっきくなっちゃった」生き物が登場する映画の中から7作品を、イラストをまじえて紹介してみようと思う。通常のなん倍巨大化したのか、その倍率も記載したので参考に。
『ランペイジ 巨獣大乱闘』
動物:白いゴリラ、オオカミ、ワニ
原因:遺伝子操作で巨大化
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
テレビでも放送されている予告編「巨大化が、止まらない!」がインパクト大の本作。原作は1986年にアメリカで発売されたアーケードゲーム「RAMPAGE」。巨獣たちが森やビルを駆け回る姿は爽快だ。
近未来の地球を舞台に、ゲノム編集されて巨大化してしまった白いゴリラ、ワニ、オオカミが大暴れし、ロック様ことドウェイン・ジョンソンも大暴れする。色々な動物の遺伝子が組み込まれているので、予告でも登場するワニのいでたちはまるで怪獣さながら。
劇中、白いゴリラのジョージのことを「世界に一匹だけ」というセリフが登場するが、白いゴリラはスペインのバルセロナ動物園に実在していて、名前は「小さな雪片」を意味する「コピート・デ・ニエベ」。英語名では「スノーフレーク」。残念なことに2003年にこの世を去ってしまったが、世界で唯一な上に境遇も本作の白ゴリラ・ジョージと同じく、人間に親や仲間を虐殺された生き残りだった。
巨大化した白いゴリラは全長12m、体重9.06t。通常のゴリラが130cm~190cm、体重150kg前後ということで巨大化率は約8倍。全長26m・体重13.8tのオオカミは通常の20倍前後、全長68.5m・体重150tのワニは通常サイズの約14倍と巨大化率はそれぞれ違えどスクリーンをところ狭しと動き回る姿に、ハラハラドキドキ息継ぎを忘れそう! 人間嫌いでサンディエゴ野生動物保護区に務める霊長類学者デイビス・オコイエを演じるロック様無双も楽しい。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『放射能X』(1954)
動物:アリ
原因:放射能汚染で巨大化
本作はなんと1950年代、冷戦下のハリウッドで製作された隠れた秀作。アメリカ・ニューメキシコの砂漠で行われた核実験で巨大化してしまったアリが、ロサンゼルスを襲うパニック・ムービーだ。原題の『Them!』は、本編に登場する生存者の少女の叫びから来ていると思うのだけど、「Terror! Horror! Excitement! Mystery!」の頭文字という意味もあるとかなんとか。通常サイズ1cm前後のアリだけど、本作ではおよそ300倍となる体長3mにまで巨大化(女王アリともなるとさらに巨大!)。
まだまだ映像技術の乏しい時代でありながらも、アリの習性や生態をしっかり踏まえて人間たちが対策を練っていく様子は、観応え十分。『エイリアン』を筆頭にその後のモンスター映画に多大な影響を与えたといわれる本作だが、半世紀経ってもなおスリリング。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『巨大生物の島』(1976)
動物:ネズミ
原因:謎の白い液体を飲んで巨大化
本作のテレビ放映時のタイトルは『新巨大生物の島』、ビデオ発売時には『巨大ネズミの襲撃』だったせいか混乱を招きがちな一作。
混同しがちなレイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した1961年製作の『SF巨大生物の島』という作品もあって、そちらは別物。『SF巨大生物の島』はジュール・ヴェルヌの「神秘の島」を原作に、そして今作はH・G・ウェルズの「神々の糧」を原作に映画化している。
休暇で美しい島に訪れたフットボール選手のモーガンは、チームメイトを襲った謎の敵の正体を突き止めるべく、島の調査を開始する。そこには地面から湧きだしたある液体を飲んで様々な動物が巨大化していた。
大きくなったニワトリ、イモムシ、ハチなどが登場するけれど、メインはなんといってもネズミ。10cm前後のネズミが人間サイズに巨大化して大群で人間たちを襲撃。人間たちに駆除されていくネズミたちが実写という衝撃。
今なら撮影はおろか放送もNGに違いないし、観ているこちらもネズミが不憫で腹立たしいものの、静粛な味わい深いラストで見過ごせない作品になってしまった。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『ジャイアントベビー /ミクロキッズ2』(1992)
動物:人間の赤ちゃん
原因:電磁物体拡大機
電磁物体縮小機で6mmに縮んでしまった子供たちの冒険を描いた『ミクロキッズ』の続編となる本作。リック・モラニス演じる発明家ウェインが今度は電磁物体拡大機を発明、ちょっとしたアクシデントで、息子であるまだ赤ちゃんのアダムが巨大化してしまう。ぐんぐん大きくなって、平均身長80cm前後の2歳半の子供があっちゅー間に34mに。その大きさなんと40倍!!
よく「子供は小さな怪獣」と例える親たちも多いなか、「小さな」どころか文字通り「怪獣」化したアダム坊やは、興味の赴くままラスベガスに上陸、本物の車やビルをおもちゃ代わりに、街で遊びまわる。赤ちゃんのくせにラスベガスで遊び放題。当然街はパニックになるけれど、アダム坊やの仕草が愛らしい上に悪意もゼロなだけに、本気で攻撃するわけにもいかず……。
「ビルを蹴散らすゴジラごっこ、子供なら一度はあこがれるよね! ね!?」な夢をかなえた一作。大人も子供も楽しめるSFコメディ、オススメです。
Rakuten TVで観る【登録無料】『リヴァイアサン』(2006)
動物:ウナギ
原因:遺伝子操作で巨大化
大きなサメやタコやイカの巨大水生生物映画は数あれど、“変わり種”という理由でこちらを紹介。フロリダ州南部にある大湿地帯・エバーグレーズで、住民が次々と巨大生物に食い殺される事件が発生する。本作でおっきくなるのはアジア産の「タウナギ」で、4mに巨大化。普通のウナギが50cm前後なので、8倍の巨大化。
タウナギは綿密に言えばウナギとは別物で、実は1m級に成長するヤツもいたりする。“地上もOK!”というオプション付きなのは、土が湿っていれば水がなくても生きていられる実際のタウナギにちょっと近い。見た目、ヘビなのかウツボなのかよく分からない凶悪顔に変貌しちゃってたり、サイズ感が見るたび違う気がしたりと、ツッコミどころ満載なのはご愛嬌(笑)。
タイトルにもなっている「リヴァイアサン」というのは旧約聖書に描かれている水の怪物のことだけど、原題は『Razor Tooth』。ちなみに2014年製作の漁業の様子を追ったドキュメンタリー映画『リヴァイアサン』、1989年製作の『リバイアサン』、2016年『リバイアサンX 深海からの襲来』という似たタイトルのモンスター作品があるのでお間違いなく。
『モスキート』(1994)
動物:蚊
原因:異星人の血液を吸って巨大化
虫の巨大化映画は数あれど、こちらは巨大化の理由が変化球のため、ご紹介。これからの季節にやってくる、忌々しいアイツが主人公。そう、蚊です。蚊の通常サイズは5mm前後。それが人間サイズに巨大化。
人間生きていれば蚊の1匹や2匹(あるいはもっと)、殺生しちゃうことだってある。普段は忌み嫌われ、虐げられてきたヤツらだもの、人間がさぞ憎いはず。
ある日、エイリアンの血を吸って巨大化しちゃった蚊が、リゾート地で観光客を狙ってやりたい放題! 死闘を繰り広げる人間たちの中に『悪魔のいけにえ』の“レザーフェイス”を演じたガンナー・ハンセンも出演。なんと、レザーフェイスのマストアイテム、チェーンソーまで担いでくれるという粋な計らいが! これはホラーファンには嬉しい。
巨大蚊映画には1993年製作の『スティンガー』という作品もあるけれど、やっぱりそれより斜め上を行く本作をオススメしたい。
血を吸われてミイラ化していく人間、車も大破できる強い口吻、やられてもやっつけても気持ち悪い、終始ぞわぞわしちゃう「B級サイコー!」な一作。キャッチコピーの「で蚊い」は秀逸過ぎ(笑)。
『モンスターVSエイリアン』(2009)
動物:白人女性
原因:隕石と接触
舞台はアメリカ。結婚式直前のスーザン・マーフィーが、突如空から降ってきた隕石と接触し、巨大化してしまう3DSFアニメーション。アメリカ白人女性の平均身長162cm程度ということで、通常の約10倍、15.21mに巨大化。時を同じくして地球にロボット・エイリアンが襲来。軍の施設に収容されてしまったスーザンは、同じく収容されていたモンスターたちと地球を守るために出動する。
『未知との遭遇』『スター・トレック』『E.T.』などなどパロディ要素満載の本作だけど、登場するモンスターたちも昔のSF映画のオマージュが盛りだくさん。
スーザンは『妖怪巨大女』、頭がゴキブリのコックローチ博士は『蠅男の恐怖』、半漁人のミッシング・リンクは『大アマゾンの半魚人』、アメーバのボブは『ブロブ 宇宙からの不明物体』、放射能で巨大化したムシザウルスは先に紹介した『放射能X』や『ゴジラ』と、SF好きは思わずニヤリ、モンスターと言ってもお世辞にも強そうには見えない面々が好感持てる。コックローチ博士はやっぱり気持ち悪いけど。
中でもゴールデンゲート・ブリッジでのアクションは日本の特撮を彷彿とさせるので、特撮好きの方にも強くオススメしたい。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】巨大化生物早見表
まとめ
昔どこかで、ちらっと小耳に挟んだことがある。「全ての生き物を同じ大きさにしたら、もっとも弱いのは人間」と。「人類最弱説」(もちろん武器ナシ、タイマンで)。「生まれ変わったら動物学者になりたい!」なんて密かに思ってたりする私もそう思う。
アリなんて自分の体重の100倍くらいの荷物ひょいひょい運んじゃうわけで、それって人間の体重を50kgとしたら5000kg=5tだ。バッタなんて、自分の体長の数十倍も跳ぶ。虫のすごさは『テラフォーマーズ』を観て(読んで)いただくとして、ニワトリやウサギが人間サイズだとしたら、あのクチバシやモフモフの脚力に勝てる気はまったくしない。
大型動物が人間サイズになったとしても、キリンならそもそも蹴り一発でライオン仕留めるくらいだし、体重の1/5を超える重さの首を振り回されたらかなりのダメージだし、地球最大の生物といわれるクジラが小さくなったら泳ぐのだって早くなるだろう。仮に身体だけ小さくなって通常時の時速50kmで泳いでいたとしても、体当たりされたらきっと勝てない。大きさを変えなくとも素で人間サイズに近い温厚そうなイルカだって、最高時速50kmくらい出るっていうし、あのジャンプ力を繰り出す尻尾でひっぱたかれたら瀕死の重傷を負うのではないか。
……というわけで、動物巨大化映画を通して見えるのはいつだって「人間のエゴ」。人間は他の生き物もきちんと尊敬して尊重して共存していきたいなと思う次第です。(文=春錵かつら/イラスト=妖介)
【あわせて読みたい】
※ 『シン・ゴジラ』進化の記録!“鎌倉さん”vs牛久大仏、大きいのはどっち!?
※ 時代はサメGO!一度は見ておきたい、愛すべき「超サメ映画」大特集
※ 【このゴジラを見ろ!】地球人なら一度は見ておくべきニッポンのゴジラ映画9選
※2020年11月28日時点のVOD配信情報です。