黒木華×野村周平、文化系と体育会系のまったく違う撮影苦労エピソード『ビブリア古書堂の事件手帖』【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

ビブリア古書堂の事件手帖

ビブリア」はギリシア語で「本」、ラテン語で「本を愛する人」という意味を持つが、本作の主人公・篠川栞子(黒木華)こそ、まさに人一倍の情熱と知識を持つ本の虫。そんな彼女が、観客を古書の世界へといざなってくれる。

ビブリア古書堂の店主・栞子は、祖母が遺した夏目漱石の「それから」を、野村周平演じる五浦大輔が持ち込んだことをきっかけに、彼を雇うことに。“活字恐怖症”の大輔は、本に対しての途方もない知識量や優れた洞察力を持つ栞子に、徐々に惹かれていく。さらには、栞子が祖父から受け継いだ太宰治の希少本「晩年」を狙う謎の人物“大庭葉蔵”が現れ、ふたりは力を合わせて正体を探り始めるのだがーー。

FILMAGAでは、黒木・野村の両者に、作品に関するインタビューを敢行。劇中同様、「本が大好き」な黒木、「コミュニケーション上手」の野村という取り合わせのふたりに、本作の魅力を聞いてみた。

ビブリア古書堂の事件手帖

――初共演となりました。お互いの共演前後の印象から教えていただけますか?

野村 最初、華さんが本当におしとやかで寡黙な方だと思っていたので、僕みたいな賑やかなタイプは嫌われるんじゃないかな、と考えていたんです。けれどそんなことはなく、僕みたいな、こんな子供を温かく包み込んでくれて、女神のような人でしたね。

――野村さんは、最初から打ち解けていったんですか?

野村 だんだん穴を掘っていった感じなんです。少しずつ掘って……っていう。大きいシャベルだったら、ちょっと行き過ぎているんで。

黒木 (笑)。

野村 スコップでガリガリガリガリやりながら、「行けるとこまで行ってみよう!」みたいな(笑)。

黒木 (笑)。最初は、グイグイ来られたらどうしようと思っていたんですけど、ものすごく気の遣われる方で。よく周りを見ていますし、今、自分がどういうふうに居ればいいのかを考えていらっしゃる方。なので、ムードメーカーといいますか、現場を本当に盛り上げてくださいました。私はそういうことが苦手なので、すごく助かりました。

ビブリア古書堂の事件手帖

――では、現場は和気あいあいとした雰囲気だったんですね?

黒木 そうですね。たまに野村くんが静かだと、「大丈夫かな?」と思ってしまうくらい。

野村 そう! こちらは普通なのに、「体調とか悪いんですか?」って聞かれて(笑)。

黒木 すごく優しい方なんだなって。ご一緒していて楽しかったです。

――おふたりとも、非常に役にハマッている印象を受けました。演じやすかったですか?

野村 演じやすくさせてもらっていましたね。僕の場合は、三島監督が「この人はこうすればよくなるだろう」というのをわかっていらっしゃるんで、引き立てていただいたというか。監督を信頼して、言っていることを忠実に守っていたらこうなった、という感じです。

黒木 (笑)。私も静かで本好きというところは栞子と似ているので、そういう意味では自然と役になりきれたかもしれないですね。眼鏡の上げ方、髪の毛のかき上げ方、困ったときにする仕草などは、こだわりながらやっていました。原作のビジュアルが有名なので、もちろん外見のディテールは近づけるようにしましたが、それよりも彼女のパーソナルな部分を表現できたらと、監督と相談していたんです。人と話すのが苦手で普段は伏し目がちなんだけれど、本のことや興味のあることになると、生き生きと話し始めるなど、クセや仕草を作りこんでいきました。

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――野村さんのほうからも、監督に提案したんですか?

野村 いや、僕自身は直感で動くので、台詞を覚えて現場に入ってみないとわからないんです。だから、そのときに生まれるものが提案というか……お芝居自体が提案。「見て見て」、「これ、使っていいですか?」というような感じでしたね。

――完成した作品をご覧になって、どんな感想を持ちましたか?

黒木 過去と現代のパートが、本を通してつながっていることにすごく感動しました。三島監督のこだわりと、本に対する愛情をすごく感じましたね。撮影中は東出(昌大)さんと夏帆さんの過去パートを初めて映像で観た時に、純文学のような、すごく良い雰囲気で、本当におふたりとも「絵になるなあ」と思いました。

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野村 過去編は過去編で素晴らしかったですね。僕も観ていなかったので、完成作を観て「過去編、すごい深いっ……! こっち(現代)は、軽やかに謎解きが進行していくので、ギャップがすごい!」と思って(笑)。あとは、光の映り方が特にキレイだな、と思いながら観ていました。スモークの使い方も特徴的で、本当にお店が幻想的な第一印象を与えてくれるというか。安らぎのある場所になっていて、素晴らしいなと思いました。

――三島監督のこだわりが、現場でも随所にあったのではと思うのですが、いかがでしたか?

黒木 そうですね。こだわられていましたよね。

野村 こだわっていましたね。ワンカットでいく部分もあったり、ライティングもチェンジしたり、いろいろこだわりがありました。店の中の目線とかも、結構言われましたね。

黒木 そうですね。

野村 「こっち見てて」とか、「ああ、いいね」と言って(笑)。

黒木 「大輔いいね、かわいいね」とか言われてましたね(笑) 野村さん、監督と本当に仲よさそうで(笑)。

野村 最後のほうは、監督が親戚のお姉さんみたいな感じになって、「大輔さあ、こういう感じでやってみてよ」と言われたり(笑)。最終的には「お年玉とかあげたい」って言われました(笑)。

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――野村さんが「じゃれ合う」なら、黒木さんは三島監督とどういう感じだったんでしょう?

黒木 私たちは……もう、大人の関係です(笑)。静かに。

野村 レベルの高い会話をしていて、素晴らしいなって……。

黒木 いえいえ。栞子もそうですが、監督との共通項で、「本が好き」というのがあったんです。休み時間には「この本、読んだことある?」という話をしたり。ビブリア古書堂の本棚には、本物の古書が集められていました。

野村 本当に監督も華さんも、ずーっと本の話をしているんですよ。僕はまじで大輔みたいな感じで、「何の話をしてるんだ!?」みたいな。すごい高レベルな話をしているんだな……と思いながら、こんな僕のレベルの低い会話にも付き合ってくれるんで、本当に女神みたいな!

黒木 (笑)。野村くんは、うまいんですよ。野村くんがいないシーンだと、寂しくなりましたし。

野村 え!?

黒木 姉弟みたいな感じでしたね。「こんな弟いたらいいな」と思いました。

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――ちなみに、特に苦労したようなシーンはありましたか?

野村 僕は、犯人と思わしき人を追いかけるシーンで、200メートル×10本ぐらい走ったんです……! あれは疲れました……。

黒木 本当にお疲れ様でした(笑)。私はやっぱり長い謎解きの台詞が大変でした。ワンカットで撮っていたのもあって。あとは、読み聞かせのシーンとかですかね。どういうふうに読んだら栞子らしく相手に聞きやすくできるか考えましたし、難しかったところでした。

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――栞子さんはすごく本を大切にしていますが、おふたりにとって、人生において大切にしている本や作品などはありますか?

黒木 今まで読んできた本や、観てきた映画で、今の自分が出来上がっていると思います。何度か読み返してしまうのは、「コインロッカー・ベイビーズ」、作家さんだと太宰(治)も好きです。そこはかとなく暗い人のものが好きなんです(笑)。

野村 (笑)。

黒木 何となく共感してしまうんですよね。映画では、岩井俊二さんの『リリイ・シュシュのすべて』が、ずっと好きです。ほかにもいろいろありますけど。

野村 僕はモノとかではなく、人なんですよね。人生を変えるものって。その人と出会って、その人が、僕に持っていないものを持っていて。男女限らず、そういう人と出会えることが、僕にとっては人生を変えているというか、大切というか。

ビブリア古書堂の事件手帖

――野村さんに影響を与えるような人は、どういった感じの方なんですか?

野村 芸能人ではない人たち、ですかね。その人たちは、プライベートがしっかりあって、その人たちの意見はすごく面白いです。しっかり自分も持っている人たちなので、やっぱりかっこいいなと思います。僕自身も一般人の感覚なので。食事もチェーン居酒屋で全然いいよ、みたいな感覚です。……けど、実は最近、小説とかも読み始めたんですよ。「深夜特急」とか読んでいるんです。案外、頑張ってるんです、野村(笑)。

ビブリア古書堂の事件手帖

――心境の変化があったんですか?

野村 ちょっと知恵を入れとかなきゃというか、何でも知っておいたほうがかっこいいんじゃないかなって。というか、音楽も全部知っている人のほうがかっこいいし、「「言わせれば、すごいいっぱい出てくるぜ」という感じを目指そうと思っています。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=林孝典)

映画『ビブリア古書堂の事件手帖』は、2018年11月1日(木)より全国ロードショー。

ビブリア古書堂の事件手帖
(C)2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

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