吉沢亮。『仮面ライダーフォーゼ』の2号ライダーや、主演ドラマ『ぶっせん』などでじわじわと顔を売りつつ、その名が爆発的に知れ渡ったのは、現在大ヒット上映中の映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』で演じる真選組一番隊隊長・沖田総悟だ。当たり役となったドSのキャラクター像、さらには吉沢の持つ美しさのトリコとなり、熱心に応援する若い女性が後を絶たない。
その実、確かな演技力と佇まいから、シネフィルからの熱い支持も得ているのが吉沢の底力。若手実力派の筆頭株・二階堂ふみが、『オオカミ少女と黒王子』や『リバーズ・エッジ』で共演した彼を「天才」と表したのは有名な話だ。
オファーが絶えず、いくつもの出演作品が公開される中、主演として近日公開を迎えるのが、『あのコの、トリコ。』だ。吉沢扮する気弱な高校生・鈴木頼と、人気モデルに成長し女優を目指す幼なじみの雫(新木優子)、ライバルの人気俳優・昴(杉野遥亮)を軸に描かれる三角関係は、芸能界が舞台なだけあって華やかさも加わった作品となっている。
FILMAGAでは、本作について吉沢に単独インタビューを敢行、想いを聞くうちに、話は意外なところで着地した。
――芸能界を舞台にしているので夢がギュッと詰め込まれている反面、ちらほら現実的な描写もあり、バランスのよい作品でした。吉沢さんは台本を読んで、どのような印象を受けましたか?
芸能界の裏側みたいなものが、割と忠実に書かれている台本という印象がありました。「こういう瞬間あるよね」というシーンが結構あって、すごくいいなと思いました。原作だと、もっとファンタジックというか、芸能界のキラキラ感が大きいんですけど、割と地味な感じはそのままなので(笑)。
――よりリアルに感じた理由は、どこになりますか?
雫が下着の広告を撮影するシーンで、頼が急遽(相手役の)代役を務めることになったとき、眼鏡を外して雫と絡んでいくところがあるじゃないですか。最初ぎこちないけど段々お互いの空気が合っていく感じは、演じていても、すごく「こういうこと、あるな」と思いました。頼自体、モデル業なんてやったこともないし、雫は雫で「頼となんて……」と照れている部分もあるから、ふたりとも最初はカメラマンさんに言われたことを素直にやっているだけなんです。ぎこちなかったけど、お互いの関係性を一旦忘れて世界観に入り込んでいく感じとか、段々お互いの波長が合ってどんどん距離が近くなっていく感じは、普通にお芝居をしていてよくあることだなと。
――男女関係なく、あることなんですか?
男女問わずですが、女性とは結構ある気がします。男同士でも、演じていくうちにテンポ感でバチッとハマッていく瞬間は、やっぱりあります。
――最後まで呼吸がかみ合わないようなことも、場合によってはありますか?
そうですね。ただ、今回の新木さんとはめっちゃやりやすかったです。共演は2回目ですけど、ほぼ「はじめまして」状態だったんです。新木さんの明るさみたいなものが雫のままだったし、現場でカメラが回っていようが、いなかろうが、気を遣う瞬間が一切なく、ナチュラルにいさせてくれる女性だったので、すごく助けられました。
――特に波長が合ったようなシーンを挙げるなら?
どこだろうな……!? 例えば、二人が共演した舞台の、頼が私服のまま稽古をしているシーンで、雫とふたりでベッドに座っているところとかは、女優さんとふたりなので僕はこっ恥ずかしいと思ってしまうんですけど、新木さんはそう感じさせないんです。いい意味で、リラックスさせてくれる雰囲気があったので、すごくよかったと思います。
――現実的なパートをお話いただきましたが、反対に、作品において「ここは夢だなあ」と思った箇所はどこでしたか?
まずもって、好きな子がモチベーションで芝居をすることは、僕はないな(笑)。いや、役者でそんな人はいないだろうなと思います。でも男として見ていて、やる気の動機が自分のことだけではなく、他人のために自分の殻を破っていくこと、そんな頼は格好いいなと思います。
――延長線のお話で、昴と演技賞をめぐって競うような場面もありました。吉沢さんは賞レースなど、気にしたりしますか?
もちろん賞をいただけたらありがたいと思いますが、そのためにお芝居をしているわけではないので、そんなに意識はしていないです。……いただけたら、きっと「やったあ!」となると思うんですけど(笑)。
――ちなみに、多く学園ものをやられていますが、本作ならではの魅力はどこにあると考えますか?
少女漫画の原作において、男目線で話が進むことはなかなかないな、と思っていました。基本的に、女性から見たキラキラした男の子を映していくことが多い気がしていて、それこそ、普通の少女漫画だったら、昴みたいなタイプが主役になるべきというか。完璧に見えて、一途で男らしいというタイプが、女子からキャーキャー言われる気がするんです。そんな昴を見ている男(頼)が主人公ということ自体、面白い構成だなと思いました。その分、頼としては格好いい部分を切り取っていくのではなく、人間味のある格好悪い部分や、好きな子のために成長していく姿を見せていくべきで、いわゆる通常の少女漫画の映画化より、男の人間性みたいなものを丁寧に描いていると思います。頼のキャラクター性を身近に感じてもらえるのが、この作品のいいところな気がします。
――そのお話からすると、頼の心の揺れ動きは吉沢さんにとっても無理があるようには受け取っていなかったということですよね?
いろいろ考えながらでしたが、宮脇(亮)監督と話し合いながら、自然に流れは作れましたので、無理をする瞬間もなくやれたなと思います。監督とは頼の人間性についてだったり、本当に 細かく「このシーン、どうしようか?」ということを相談しながらやれたので、すごくよかったです。
そういえば、ホン読みのときに印象的だったのが、「1シーン、1シーンに登場人物たちの成長が見たい。映画全体の中で変わっていくのもありつつ、区切られた1シーンの入り口から最後で、ちゃんと感情の流れができて、そこでの成長を見たい」と監督がおっしゃったんです。
――すごく高度なお芝居を求められているように感じます。
そうですかね。だからか、ほかの映画などでやるよりも、感情の起伏や声の強弱も意識しながらやったような気がします。僕、あまりお芝居で抑揚をつけたくないんですけど、今回は割とつけました。わかりやすく、1シーンずつ作った気がします。
――「抑揚をつけたくない」のは、ナチュラルにお芝居をしていきたいという気持ちからですか?
楽したい人間なので(笑)、あまり無理したくない、みたいな(笑)。
――「楽」と「吉沢亮」は対局にあるかと思っていました。
いや、僕めちゃめちゃ楽したい人間です(笑)。役にもよりますけど、ただ自分が「違うな」と思ったことをやるのは、すごく抵抗があるんです。もちろん中(内)ではあるんですけど、それを表に出すのは、あまりやりたくなくて。
――今の吉沢さんは、主演でも助演でもポイントでも演技を楽しんでいるように映ります。それぞれの面白さの違いなどは感じていますか?
芝居に関しては、あまりそこまでの変化はないかなと思います。ただ、現場でやることは、立場で変わると思っています。主演に関しては、物語が人間性を伝えてくれるので、芝居で苦労することはあまりない気がします。主演は主演で自分の芝居だけでなく、作品全体のことや現場の雰囲気、自分以外で考えなければいけないことが多いという印象です。そういう意味では、端でやっているときに、自分で埋めなければいけない部分が多かったりするので、「ここ、どうしよう」と考えたりする作業が増えますね。目の付け所が変わるような気がしますし、どっちも楽しいし、どっちも大変です(笑)。
――ところで、今回のインタビューは、映画ファンが集うFILMAGAで掲載されます。吉沢さん、普段、劇場で映画をご覧になったりしますか?
最近まったく観られていないですね……。最後に映画館で観たのは『スリー・ビルボード』だったかな……。めちゃくちゃよかったです! 警察官(サム・ロックウェル)の演技がすごく素敵だし、ラストシーンの終わり方も「格好よすぎるだろう!」と思いました。
――オスカーを獲ってからご覧になったんですか?
どうだったかな……周りで「面白い」と評判になっていたので、観にいこうと思い、行きました。映画を観ているときに一番注目してしまうのは、物語自体が面白いというのはもちろん、やっぱり役者さんのお芝居ですね。物語って、僕、すぐ忘れちゃうんですけど、本当に衝撃的で「とんでもない芝居を観た!」という瞬間の画って、物語のディテールは覚えていなくても、その役者さんの表情はすごく覚えているんですよね。何年経っても自分の中に残っているから、そういう作品に出たいなという気持ちがあります。観にきてくれた人たちの何年先にも残るような役や作品に出たいと思っています。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=林孝典、スタイリスト=荒木大輔、ヘアメイク=小林正憲/SHIMA)
映画『あのコの、トリコ。』は、2018年10月5日(金)より全国ロードショー。
(C)2018 白石ユキ・小学館/「あのコの、トリコ。」製作委員会
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