【熊川哲也】ディズニーが贈る実写映画版  “くるみ割り人形”の魅力を語る

Kバレエカンパニー芸術監督 熊川 哲也さん(くまかわ・てつや)さん

「美女と野獣」のディズニーが”くるみ割り人形”をついに映画化

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』が11月30日(金)から公開となる。この度、自らのバレエ団Kバレエカンパニーが創立20周年を迎え、12月にはカンパニー公演「くるみ割り人形」を控えている熊川哲也さんに実写化された“くるみ割り人形”の魅力をうかがった。

チャイコフスキーの音楽と
ディズニーならではのメッセージ性

くるみ割り人形と秘密の王国_1

久々に観客側で「くるみ割り人形」を観ました。私にとってチャイコフスキーは、数々のバレエ音楽を生み出してくれた父親的存在。そして「くるみ割り人形」は娘のように愛おしい存在です。そんな作品がディズニーで映画化されたということで、チャイコフスキーの音楽に感謝をしながら、圧倒的な映像美とディズニーならではのメッセージ性に想像以上に感動し、存分に楽しみました。

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』は、一般的に知られている「くるみ割り人形」の物語と若干異なり、少女クララが母の死を乗り越えて冒険し、成長して帰ってくるというストーリーになっています。とても分かりやすい展開なので、クララを応援しながら観ているうちに子どもにも大人にも大切なメッセージを受け取ることができます。心に刺さる言葉やシーンも随所に散りばめられていて、私自身は「自分一人で旅をしなくちゃいけないこともあるんだよ」というセリフに胸を打たれました。バレエ留学のため、15歳で単身ロンドンへ渡った時のことを思い出したからです。

バレエで使われるチャイコフスキーの音楽もアレンジされて見事に映画音楽になっており、シーンに合わせて流れるので自然とファンタジーの世界へと入っていけます。さらに、圧倒的な映像美も実に魅力的。豪華絢爛で壮大なスケールの王国と英国テイストの華やかな衣裳など全体的に臨場感があり、まるで舞台を観ている感じでした。途中でバレエシーンが出てくるのですが、ストーリーの中にうまく組み込まれていてバレエの見せ方としても新鮮でした。ダンサーのクオリティーも高く、振り付けも素晴らしい。バレエの動きは何と美しく人を魅了するものなんだろうと、バレエの世界に身を置きながらも再認識したシーンでした。映画は「くるみ割り人形」の世界をさらに広げてくれ、今後のバレエシーンにも影響を与えそうですね。

くるみ割り人形と秘密の王国_4
Photo Credit : Laurie Sparham

そして何より一番の収穫は、純粋さに鈍感になっていた自分に気づけたこと。制作者として活動していると、つい大人の視点で作品を見てしまいがち。この映画と出会い、時には純粋な気持ちで作品や仕事と向き合う姿勢も大事なんだなと思いました。そういう意味で大変良い刺激をもらいました。

クリスマスは世代をこえて
「くるみ割り人形」で過ごしてほしい

くるみ割り人形と秘密の王国_2

私が芸術監督を務めるKバレエカンパニーでも、毎年「くるみ割り人形」を上演しています。ホフマンの原作に立ち返った独自の物語になっていますので、今回の映画とはまた違うストーリーの作品です。また今年は特に初演以来のオーチャードホールでの公演となり、生のフルオーケストラで上演。演出も舞台美術もブラッシュアップし、今回の映画に引けをとらない、きらびやかで華やかなステージに仕上げました。若手ダンサーたちも活躍しており、カンパニーの今と未来を感じていただけるはずです。

映画の中で、クララは母親からある大切なメッセージを受け取ります。元々「くるみ割り人形」もクリスマスに親から子へ、そしてその子へと伝えられてきた物語で、バレエの「くるみ割り人形」も3世代で観に行くのが恒例行事のご家庭も多い作品です。こんな風に世代を超えて何かを受け継いでいくプロセスは、逆に親が子から人生の大切な何かを学ぶ機会にもなっています。ぜひ、この冬はKバレエの公演と映画の両方の「くるみ割り人形」を! 特に大人は子どもと同じ目線で楽しんでみてください。きっと忘れていた大切なものを思い出し、心豊かなひとときを過ごすことができるはずです。

(取材・編集 朝日新聞社メディアビジネス局)

熊川哲也氏プロフィール

1972年北海道生まれ。英国ロイヤル・バレエ学校に留学中の89年、ローザンヌ国際バレエコンクールで金賞受賞。同年、英国ロイヤル・バレエ団に東洋人として初めて入団。93年にはプリンシパルとなる。豊かな演技力と、高く滞空時間の長い跳躍で世界中のバレエファンを魅了。98年に退団し、翌年に自らのバレエ団Kバレエカンパニーを創立、芸術監督を務める。2003年にはKバレエスクールも設立。12年1月から、Bunkamuraオーチャードホールの芸術監督に就任。13年紫綬褒章受章。

くるみ割り人形と秘密の王国

くるみ割り人形と秘密の王国

STORY:『美女と野獣』のディズニーが「くるみ割り人形」を映画化した、究極の“プレミアム・ファンタジー”開幕! 愛する母を亡くし心を閉ざした少女クララは、“くるみ割り人形”によって“秘密の王国”に誘われる。それは、母が遺(のこ)した真実を知る驚くべき冒険の始まりだった……。キーラ・ナイトレイ、モーガン・フリーマン、ヘレン・ミレンら豪華キャストが結集。チャイコフスキーの永遠の名曲が全編を彩り、バレエ界や音楽界からも超一流のダンサーやアーティストが参加している。

11月30日(金)全国公開​

監督:ラッセ・ハルストレム、ジョー・ジョンストン
出演:キーラ・ナイトレイ、マッケンジー・フォイ、ヘレン・ミレン、モーガン・フリーマン
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
指揮:グスターボ・ドゥダメル
バレエ:ミスティ・コープランド、セルゲイ・ポルーニン
ピアノ:ラン・ラン
エンドソング:ア ンドレア・ボチェッリ

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

Disney.jp/kurumiwari
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※2022年3月20日時点のVOD配信情報です。

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  • りゅう
    3.7
    個性的なキャラクターが多くてよかった 見た目も刺激的 ディズニーっぽさのある華やかな世界だった すこしアリスインワンダーランドっぽさも感じた
  • 松井の天井直撃ホームラン
    -
    ↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。 ☆☆☆★★ 完璧なるお伽話の世界観。 冒頭からお口あんぐりな映像の凄さに圧倒される。 まあ。ストーリーの子供っぽさは、ディズニー作品なのだから。大人が子供に絵本を読み聞かせる位な、この作品での世界観で充分な気もしますが。 とにかくクララが完璧な美少女っぷり。 おじさん年甲斐も無く萌えちゃったじゃあないの( ´Д`) あ?そう言えば、モチーフはチャイコフスキーの♫くるみ割り人形♫でしたね。 どっちかと言えば、『不思議の国のアリス』に近いかな〜…って感じですが。 2018年12月2日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン7
  • サイチ
    3.3
    世界観がアリスインワンダーランドに似てる。 キーラ・ナイトレイの綺麗な顔立ちなのに野心抱えてる役が様になりすぎてかなり好み。 ディズニーらしいテイストの映画。
  • J
    3.5
    内容関係なくどっかの世界に迷い込む系の映画ってなんかワクワクして好き
  • アロエちゃん
    1.8
    Disney大丈夫か?と心配になるくらいつまらなかった。5回寝て途切れ途切れで見ながらやっと完走。衣装や役者はよかったけど脚本がオワコン
くるみ割り人形と秘密の王国
のレビュー(23898件)