イタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督の最新作、「Il signore delle formiche(原題)」が『蟻の王』の邦題で2023年11月10日(金)より公開されることが決定。第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、独立賞5部門を受賞した本作のポスタービジュアルが公開された。
【公開決定】『蟻の王』(2023)
舞台は「この国に同性愛者は存在しない」とされていた1960年代イタリア。詩人で劇作家であり、蟻の生態研究者でもあるアルドは、教え子の若者エットレとの関係を問われ裁判にかけられてしまう。新聞記者エンニオは熱心に取材を重ね、不寛容な社会に声をあげるのだが……。
制作の指揮をとるのは、ヨーロッパを代表する名匠ジャンニ・アメリオ監督。『小さな旅人』(92)、『いつか来た道』(98)、『家の鍵』(04)など、人と人の繋がりを時に冷徹に、時に繊細に描き続けてきた。今回の題材は、実在した詩人で劇作家のアルド・ブライバンティとその教え子を巡る史実、“ブライバンティ事件”にインスパイアされた、“人間の尊厳”を問い直す、魂を揺さぶる物語。監督は製作の動機を「今も存在する“異なる人”に対する憎悪に立ち向かう勇気を与えたい」と語っている。
「ブライバンティ事件」は、ファシスト政権下のイタリアで起こった。同性愛者は存在すら認められず、禁ずる法もなかったが、アルド・ブライバンティは1968年に若者をそそのかした「教唆」の罪に問われ逮捕、裁判になった。これに、小説家のアルベルト・モラヴィアやウンベルト・エーコ、映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニ、マルコ・ベロッキオら芸術家たちが強く反対の意を表明し、世に激しい議論を巻き起こした。
今作品で主演のアルドを演じたのは、『輝ける青春』(03)、『夜よ、こんにちは』(03)、「いつだってやめられる」シリーズ等で知られるイタリアの名優ルイジ・ロ・カーショ。その演技は「ブライバンティの複雑さと弱さを驚くほど繊細に表現している、卓越した演技」(londonmumsmagazine)と絶賛されている。アルドの教え子で、愛を貫き通そうとするエットレ役には、『若者のすべて』(60)のアラン・ドロンを彷彿とさせる、新星レオナルド・マルテーゼが抜擢された。その全身全霊の演技をアメリオ監督は「映画の奇跡」と称した。また、裁判のゆくえを見守る新聞記者エンニオ役には、第63回カンヌ国際映画祭で主演男優賞受賞歴を持つエリオ・ジェルマーノが扮し、映画により一層の深みを与えている。
【ポスタービジュアル】『蟻の王』
公開されたポスタービジュアルは、アルドの切なげな表情とエットレの美しくも儚げな横顔が目を引く写真に、キャッチコピーの「愛と誇りだけは、誰にも奪えない。」が象徴的に映えるものとなっている。
『蟻の王』は、2023年11月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
『蟻の王』あらすじ
1960年代、イタリア・ポー川南部の街ピアチェンツァに住む詩人で劇作家、蟻の生態研究者でもあるアルド(ルイジ・ロ・カーショ)は、教え子の若者エットレ(レオナルド・マルテーゼ)と惹かれ合い、ローマに出て共に暮らし始める。しかしエットレの家族は二人を引き離し、アルドは逮捕、エットレは同性愛の“治療”で電気ショックを受けさせられるため矯正施設に送られてしまう。世間の好奇の目に晒されながら裁判が始まった。新聞記者エンニオ(エリオ・ジェルマーノ)は熱心に取材を重ね、不寛容な社会に声を上げるのだが……。
監督・脚本:ジャンニ・アメリオ
脚本:エドアルド・ペティ、フェデリコ・ファバ
出演:ルイジ・ロ・カーショ、エリオ・ジェルマーノ、レオナルド・マルテーゼ、サラ・セラヨッコ
配給:ザジフィルムズ
公式HP:http://www.zaziefilms.com/arinoo/
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※2023年8⽉1⽇時点の情報です。