『グリーンブック』監督、まさかのアカデミー賞作品賞受賞にコメディ仲間の反応は「ジェラシー!」【来日インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

グリーンブック』! 日本でも3月1日より封切られ、4日間でなんと28万人も動員と好発進、感動の波が広がっている。

グリーンブック

1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、クラブ改装のため無職になり、南部でコンサートツアーを計画する天才ジャズピアニストのドクター・シャーリーに用心棒兼運転手として雇われることに。黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅に出るふたり。当初は黒人差別をしていたトニーだったが、シャーリーと関わることで、徐々に認識を改め、かけがえのない友人関係を築いていく。

本作を指揮したのは、『ジム・キャリーはMr.ダマー』、『メリーに首ったけ』など、90年代、日本でも大ヒット旋風を巻き起こしたコメディの旗手、ピーター・ファレリー監督。長いキャリアの中で初めて撮り上げた人間ドラマにて、見事オスカーを手にしたばかりのピーター監督がこのたび来日。今年のアワーズシーズンを盛り上げた張本人による録りたて、熱のこもったインタビューをノーカットでお届けしたい!

グリーンブック

――アカデミー賞3部門での受賞、おめでとうございます!

ファレリー監督 ありがとう!!

――監督のホームであるコメディ仲間は何と言っていましたか?

ファレリー監督 もうね、ジェラシー(嫉妬)だよ!

――(笑)。

ファレリー監督 まさか自分がアカデミー賞を受賞するなんて……。僕自身も驚いたけど、友人たちもいまだに驚いている感じだよ。『グリーンブック』を作っているときは、オスカーのことなんて微塵も考えたことはなかった。「もしかして……獲る可能性もあるのかな……?」と感じはじめたのは、授賞式の2カ月くらい前だったんだよねえ。

グリーンブック
(C)A.M.P.A.S.

――素晴らしい演技を披露したヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリとは授賞式後にお話しになりましたか?

ファレリー監督 あの日の夜は、まるで動物園みたいにみんながドドドドドドドッて押し寄せてきたんだ! だから散り散りになっちゃって、ふたりと会話ができなくなっちゃったよ(笑)。ちなみにふたりとも、ひとりの男として、人間として、最高な方々だよ。映画を作っているときは絆が生まれるものだけど、特にこういうタイプの作品だから、より絆が深まったのかもしれない。出会った瞬間から馬がめちゃくちゃ合ったから、こうして(両手をがっちりと組む素振り)いられた。本当に作ってよかったよ。

グリーンブック

ファレリー監督 ただ、この業界の哀しいところは、撮影しているときは2カ月間ずっとご一緒しているけど、終わったら急に会えなくなっちゃうことなんだよね。ヴィゴはスペインに戻ってしまったし、マハーシャラは新しい作品のために別の地に行ってしまったし……。例えば、『メリーに首ったけ』のときのキャメロン・ディアスも、2カ月くらい撮影で毎日一緒だったけど、そのあとは今まで10回くらいしか会っていないんだ。そこが寂しいところだよね……。

――引き続き、作品のことについて詳しく教えてください。お互いが相手に抱いているステレオタイプのイメージを崩したことが、すごく新鮮でした。どう組み立てていかれたんでしょうか?

ファレリー監督 正反対の性格のキャラクターが、旅の中で少しずつ「ここは共通している」と知っていくストーリーなんだよね。映画の中で、シャーリーが連行されてしまって、トニーが解決するシーンがあるんだけど、翌日、シャーリーが「夕べのことは悪かった」と言うと、トニーは「ナイトクラブで用心棒をやっている俺からしたら、よく見慣れているし、この世界は複雑なものだから」と言う。

グリーンブック

――すごく好きなシーンです。

ファレリー監督 あの瞬間から、たぶんトニーは自分が持っていたステレオタイプのキャラクター、しかも一元的な人ではなく「シャーリーは多面的なひとりの人間なんだ」と思いはじめたんだと思う。お互いに、そこから成長していったんだ。初めて会う人に先入観を持ってしまうことは、誰もがあると思う。大体の場合、その人を知るにつれ、実際はそうではなくいろいろな側面を持っている、多層的な人なんだと知るわけで。この作品のキャラクターたちもそうだし、僕は物語のそういう部分に惹かれたので、このような描き方をしたんだよ。

――こうした人種差別がテーマにもなっている物語は、どこか重いムードになりがちですが『グリーンブック』は軽やかで、笑いどころさえある。必要な訴えと軽いタッチのバランスは、どう考えていましたか?

ファレリー監督 そうだね。“No Joke”が『グリーンブック』の塩梅のルールだった。ユーモアというのは、ふたりのキャラクターから自然発生的に、有機的に生まれてくるもの。だから、無理に笑いを取りにいかないようにすることが、一番意識したことだった。トニーは教養がなくて、シャーリーは教養が高いよね。だからトニーがすっとんきょうことを言えば、シャーリーが呆れる。それこそが有機的な笑いだよね。例えば、シャーリーが「すごく狭い視野で僕のことを見るね」と言えば、トニーは「俺、いけてるだろ?」と誉め言葉として受け取る。「いや、そうじゃなくて……」とシャーリーが言っても、トニーには伝わらない。そんな自然な会話をひとつでもすれば、食い違いやユーモアは生まれてくる。そんなふたりだった。逆に言えば、ユーモアがなければ、この物語は描けなかったと思う。

――本作はロードムービーとしても楽しめる作品ですよね。元々ロ ードムービーはお好きで?

ファレリー監督 今まで作ってきた作品でいえば、『ジム・キャリーはMr.ダマー』も『キングピン/ストライクへの道』も『メリーに首ったけ』もロードムービーの要素があるけど、「ロードムービーをやろう!」と意識しているわけではないんだ。……とはいえ、ロードムービーだと「ちょっといいかもね」と思うところはあるんだけど(笑)。

グリーンブック

ファレリー監督 僕が思うに、クルマで移動する環境は、普段の生活とは違うから、不慣れな分だけいろいろなことに対してオープンな気持ちで、人はいられるんじゃないかな。僕はよくクルマでアメリカ横断をしているんだけど、旅に出ているときは、普段の生活とはまったく違う世界に身を置いているし、ものの考え方もちょっと違う。その場における自分はアウトサイダーの立場でもある。何となくロードムービーが好きなのは、そういう環境にあると、人ってお互いに対してよりオープンでいられるように思うから、だと思う。

――最後に、映画業界を目指す人々へ、監督から一言アドバイスをいただけますか?

ファレリー監督 iPhoneで映画が作れちゃう時代なんだから、もうどんどん作りなさい!というのが、みんなへのアドバイス! ウェス・アンダーソンやオーウェン・ウィルソンだって、そうやって映画を作りはじめたんだよ。10分の短編を作って、映画祭に出すと、誰かが「いいじゃん! 長編にしたら?」というところから始まるんだ。

――監督の時代とはかなり違いますか?

ファレリー監督 僕は80年代からキャリアをスタートしているけれど、今に比べたら映画を作るのは、本当に大変だったからね!! 僕は1作目を作るまでに9年もかかったんだ。脚本を書きながら、いろいろな人に「映画を作ろうとしているんです、この企画を映画化したいんです!」と言い続けた。あのとき、忘れもしない……エージェントに言われたのは「“作ろうとしている”という言い方はダメだ。“作っているんです”と言いなさい」と。すごくいい言葉じゃない? 誰もが「いけそうだな」と思う企画には、乗りたいわけなんだよね。だから実際に制作されるかわからない場合は乗ってくれないけど、「作っているんです」と言えば「じゃあ見せてみなよ」と、やっとプロットを読んでくれるというわけ。

ファレリー監督 でも、今は大小さまざまな映画祭があるし、YouTubeだってある。いろいろな人の目に留まるだろう? 「これ、誰が作ったの!?」って。だからためらわずにどんどん作ればいい! 前に前に歩を進めてほしいんだ。自分の中で「これを作ろう」と思ったら作って! たとえ、予算が10万円しかなかったとしてもね。(取材・文=赤山恭子、写真=Yoshiko Yoda)

映画『グリーンブック』は、全国にて大ヒット公開中!

グリーンブック

監督:ピーター・ファレリー
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/greenbook/
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

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  • Simon
    4.5
    人種差別と友情がテーマ。 両極端な2人がだんだん打ち解けていく様子がすごく微笑ましい。 深く考えずに黒人ってイメージだけで差別することの浅はかさがよくわかる作品だった。 2021🎥014
  • pon酢
    4.5
    人種じゃなくて人だよ🫂🦋
  • そんまま
    -
    複雑な関係や環境をはっきりと、 だけど上品に描いていた作品でした。 題名の通り、明るく上品なグリーンが至る所に存在していて、その色がガイドブックのように安心できる色なのに、そのガイドブックがあると同時に差別も同時に居続ける…。 映像のレイアウトも、 当時の黒人の扱い様も映画いていると同時に 題名の色も常に演出されていたように思います。 石ころの下りは「最強の2人」と同じような下りだったり、真新しい演出はありませんでしたが、 最初からリアルな差別表現でしっかりと現実を見せながら、黒人だけではない、アメリカの中にある歴史と差別について考えさせられる映画でした。 俳優さんの演技はどちらも上手いし、 魅力的なキャラクター! 私の中の新しいクリスマス映画に加わる作品になりました。 監督の他の作品も観たい。
  • あな
    3.5
    最初の導入がもうちょっとコンパクトでもいいかも。でも段々ストーリーにハマっていった。黒人差別は大きなテーマの一つだけど、全く正反対の2人が旅を通して理解し合う心温まる映画でした。手紙を書くシーンが個人的には一番すきでした。笑
  • せっきー
    4.7
    ■思い込みや偏見は捨てよう ドクターに対する黒人としての仕打ち然り、"トニー・リップ"が上級階級の人の前でふさわしくない話然り。同じ人間なのに、差別や偏見、思い込みによって仕切りができてしまう。仕切りができてしまうとわかりあうことができない。あらゆる仕切りを超えて、相手の人となりや行いを受け止めることで、心を通わすことができるんだと。最終公演、ドクターは黒人だからレストランで食事をさせてもらえなかった。ここには人種という仕切りが存在した。その後ドクターは黒人しかいないバーに向かった。そのバーにはおそらくドクターと同じくらい高貴な職についてる人はいなかったし、きっとドクターもバーにいたような人たちとは関わってこなかったと思う。ただドクターは、そのバーで幸せそうに演奏した。身分?職業?の仕切りを超えて。 そもそもトニーとドクターの間にはたくさんの仕切りがあったはずだ。トニーは白人でドクターは黒人。トニーは低賃金の労働者で、ドクターは上流階級のピアニスト。人種と階級でマトリクス作ったら真反対にいるような2人が旅を通じて心を通わせていく。ドクターのピアノ然り、道中のフライドチキン然り。些細なことの積み重ねかもしれないけれど、お互いがお互いの世界を広げ、1人の人間としていい影響を与え合うことで信頼関係が生まれたのかなと思った。 思い込みや偏見を捨てて、その人の人となりや、行いに目を向けることで、初めて相手と向き合うことができると、教えてくれた気がする。 ■トニーがいいやつ ぶっきらぼう、面倒なことは他人にやらせる、言葉も汚い。ただ家族想いで、ドクターのことはいの一番に助ける。終始人間味に溢れてて最高だった。 ■根拠のない差別 「この土地のしきたりなので」という理由で黒人差別が罷り通ってるとなると、なかなか問題の根が深いなと。。差別してる当事者たちに差別している自覚がなく、「仕方なさ」を感じているにもかかわらず、なにも改善できていないので。 ■60年代の雰囲気がとにかく素敵 街を走るクラシックカー、年季は入ってるけど活気のある食堂、アナログさが残る家電やかわいいインテリア。物語はもちろん、60年代のアメリカという舞台はかなり画になっていた。きっと現代の東京からすると何もかもが非日常で、いびつで、だけど少し生々しさがあったからなのかな。。?
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