俳優のみならず、ミュージシャンとしても活躍する桜田通が、バンド解散の原因を作った元ヴォーカルの主人公を好演する青春ドラマ、映画『ラ』が公開となる。桜田自身にとってもチャレンジングだったという本作は、「人の人生の一部を切り取っている作品だから、誰しもに当てはまるものなのかな、と」と本人が語るように、普遍的なテーマも内在する人間ドラマの側面も。自分自身をも見つめ直したという桜田に、さまざま聞いた。
ーー本作は世代的にも響くテーマがありましたが、最初の印象はいかがでしたか?
桜田 主人公の慎平君が、とにかく不幸そうなので、大変だなっていう印象でした。作品としてはまず、自分にこういう題材のお話が来るのかって思いました。すごく芝居がしっかりしている作品で、そういうものは限られている人たちがやるものだと思うので、そこに僕自身も含めて、いろいろな人たちのチャレンジを感じました。すごく光栄で、うれしくも思いました。
ーー客観的にご自身をみているのですね。
桜田 客観野郎なんですよね(笑)。もともと映画にどっぷりとつかるような、こういう作品をやってみたかったんです。そういう経験がなかったので、いよいよやれることになり、自分自身もチャレンジしたいと思いました。
ーー主人公が大変そうだと言われましたが、ゆかり(福田麻由子演じる)との関係も含め、どういう人物像だと理解しましたか?
桜田 もとは普通の子だったと思います。でも本当に音楽が好きで、それ以外のことが盲目になるほど熱中するという意味では、僕も彼の気持ちはもちろんわかります。いろいろあったかもしれない過去を抜きにすれば、僕は普通の人だと思う。意外と音楽の才能もあった。それゆえの苦しみもあった。でもだからといってひとりで何かをやっていくほど、決断できない。
ーーすごく共感を集めそうな側面もありますよね。
桜田 ゆかりからお金を借りているので、よくない部分もあるけれども、そこ以外でいいところもあるだろうし、いい意味で無個性な子だと思いました。無個性という個性を存分に持っている子なのかなと。同性としては覚悟を決めてほしいと思いながら台本を読んでいましたが(笑)、なかなかそんな勇気も出ないんですよ。そこは共感はしないけれど、理解はできます。
ーーご自身はどういうタイプですか?
桜田 昔からやりたくないことはやらないというタイプで、人の意見に巻き込まれたり、グラグラゆれたりした時期はなかったです。でも、人には迷惑をかけない感じで生きようと思ってはいました。だから、この映画でいったら、スタートラインは誰しもが切るもので、いろいろな人との出会いで人生が変わっていく話でもあるので、『ラ』っていう映画は、人の人生の一部を切り取っている作品だから、誰しもに当てはまるものなのかな、と。
ーーこれまでの出会いのなかで、他人の人生がうらやましいと思ったことはありますか?
桜田 僕は客観的な人間なので、どれほど恐ろしいことやびっくりするような出来事があっても、すべて客観的にとらえるんですよね。どれだけ自分と価値観が違う人が目の前に現れても、その人がそこまで生きてきてその価値観が備わっているわけだから、その価値観が僕にないことは当たり前。それぞれ違って当たり前なんだと思う。ただ僕にとってうらやましいという感性の人がいたら、その人の人生が素直にうらやましいとは思います。
ーー今回の『ラ』は観る人に影響を与える映画だと思いますが、そういう映画体験はありましたか?
桜田 もともとアニメーションや漫画をよく観ていて、映画もドラマもそれほど観ないので、普段それほど観る機会はないのですが、今まで観た映画では「メイズランナー」シリーズと『英国王のスピーチ』が好きです。邦画だと「るろうに剣心」三部作や『バクマン』が好きですね。普通ですけど、『君の名は。』も最高(笑)。アニメーションやホラーを普段はよく観ています。
ーージャンルも多岐に渡りますね!
桜田 観たいと思ったものを観ているだけですが、何でも観ます。でも、みんながいいと言っているほどには、僕にはわからないことがあったりもします。だから不安にもなります。『ボヘミアン・ラプソディ』もあれほどヒットすると思ってなかったので自分の感性が不安になりました(笑)。
ーーわかります。孤独感を感じますよね。
桜田 「超終わった」と思いますよ(笑)。これから映画に出ようとしている人なのに。ショックでした(笑)。
ーー最後になりますが、この作品に関わって思うことを改めて伺ってもよいでしょうか?
桜田 この映画に出ることも、僕のなかでひとつの夢だったと思うんですよ。音楽の映画に出てみたい、歌詞を書いてみたい、こういう役柄を演じてみたいということも僕のひとつの目標でしたし、細かい夢をいろいろとたくさん持っているんです。それは、いまの生き方に自分で飽きないようにしていることだとしても、純粋な夢でもある。それが叶ってというか、『ラ』という作品でひとつの目標に近づけたことが、すごく大きなことでしたね。(取材・文=鴇田崇/写真=林孝典)
映画『ラ』は2019年4月5日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
出演:桜田通、福田麻由子、笠松将、佐津川愛美、ダンカン、西田尚美ほか
監督・脚本・編集:高橋朋広
音楽:クボナオキ
エンディング:「REBORN」SILENT SIREN
公式サイト:http://movie-la.com/
ヘアメイク:横山雷志郎(Yolken)
スタイリスト 柴田 圭(ZEN creative)
(C)2018映画『ラ』製作委員会