日本アカデミー賞新人俳優賞受賞・芳根京子、6年の女優業で決意「“できない、無理です”は、もう言わない」【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

居眠り磐音』は、時代小説累計発行部数6,500万部を超える佐伯泰英による小説「居眠り磐音 決定版」シリーズ初の映画化。本作で松坂が演じる「時代劇史上、最も優しい」と称される浪人・坂崎磐音と結婚を誓い、一途に想い続けながらも悲劇的な運命に翻弄される小林奈緒を、芳根京子が凛とした演技で魅せている。

居眠り磐音

故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件によりふたりの幼馴染を失った磐音は、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒を残して脱藩。浪人の身となった彼は、江戸で長屋暮らしを始め、大家・金兵衛(中村梅雀)の紹介で昼間はうなぎ屋、夜は両替屋の用心棒として働き始めるのだが……。

ゆくえ知れずの磐音の身を案じながら、奈緒はある決意を固める。幸せな未来が待っていると信じて疑わなかった奈緒が、世間の厳しい風を浴びながら、たくましく生きようとするさまには奮い立たせられる。短くも濃い経験となった撮影期間、このほど受賞した日本アカデミー賞新人俳優賞のことなど、女優として展望あふれる芳根に話を聞いた。

芳根京子

――脚本を読まれて、物語や演じる奈緒についてどんな感想を抱きましたか?

芳根 『居眠り磐音』は時代劇ですけど、エンターテインメント性もあるので、この作品に出会って時代劇が「観やすいもの」という印象に変わりました。自分の役については、シーン数がそんなに多くない中で、これほど重要な役をどう印象づけられるか、という部分がすごく不安でした。これまで、真ん中に立たせていただくことが多かったので、少ない中でどう自分を出せるかが課題でした。撮影もひとりが結構多かったので、完成した作品を観て、やっと「『居眠り磐音』の世界に入れていたんだ……!」という実感が湧いたんです。

――撮影の前は、少し不安もあったんですね。

芳根 そうですね。時代劇の経験もあまりなかったので。京都太秦で撮影していたんですが、「京都で時代劇をやらせてもらえるんだ」といううれしさと緊張がありました。その分、終わったときはホッとした思いがあります。

芳根京子

――時代劇は『散り椿』に続いて2作目ですよね?

芳根 はい。『散り椿』のときは木村大作さんの作品だったこともあり、本当に緊張していて、正直……あまり記憶がないんです(笑)。今回、衣装合わせのときから「大作さん、やっていたんだよね? じゃあ大丈夫だね」と言われることが、すごく多くて。「わからないことばかりなので、いっぱい教えてください!」とお願いしました。皆さん、すごく優しくしてくださって、所作に始まり、いろいろなことを教わりました。

芳根京子

――演じた奈緒は、前半~中盤~後半と、気持ちの変遷がかなりある役です。どう取り組んでいかれたんですか?

芳根 前半の涙を流したシーンが、初日の撮影だったんです。すごく緊張して(現場に)行ったのを今でも覚えています。けれど、現場の空気がすごく温かかったので、一気にリラックスして『居眠り磐音』の世界に入れました。奈緒の気持ちが自分の中にちゃんとあるんだな、とわかったので、この作品では初めて初日ですごく自信がついたというか……自分を信じてもいいのかなと思えました。

居眠り磐音

芳根 監督ともたくさんご相談させてもらって、奈緒を作り上げていったんですけど、初日の涙のシーンを観て、監督が「うん、もう大丈夫だ!」と言ってくださって、逆にそこだけが不安というか(笑)。「そんな、任されても!」と思いつつ、そう感じていただけたのは認めてもらえた気がして、すごくうれしかったです。

――奈緒は芯の強さも光りますが、実際、芳根さん自身と近しい部分もありますか?

芳根 奈緒がずっと待ち続けるあの一途さは、すごくわかる気がします。演じているときも、磐音さまをひたすらに想い続けよう、という一心でした。私はあそこまで強くないですけど、愛というのは、どの時代も変わらないのかなとすごく思いました。

居眠り磐音

――磐音を演じた松坂さんの印象は、いかがでしたか?

芳根 私……人見知りなので、松坂さんともまだあまりお話ができていなくて(笑)。勝手なイメージになるんですが、松坂さんと磐音さまは優しさを持った方なので、本当にリンクしていた気がしました。台本で読むよりも、もっとやわらかく感じたので、本当に愛おしい気持ちになりました。けれど、殺陣のシーンになると全然違う顔つきで……「皆さん、本当にすごいなあ……役者さんって何でもできるんだなあ……」って。尊敬しています。

芳根京子

――ちなみに、劇中で磐音からもらった香袋は、本当に香るんですか?

芳根 本当に香ります! いただいて帰りました! 袋に入れて、スーツケースの中に入れて持って帰ったんですけど、スーツケースを開けたらフワッと香りがして。袋に入れたまま、今でも大事に家に保管しているんです。

芳根京子

――ところで、日本アカデミー賞新人俳優賞の受賞、おめでとうございます。

芳根 ありがとうございます……! 新人俳優賞をいただけたことで、映画界に入れてもらえた気持ちがすごくありました。

――ご家族も、さぞかし喜んだのでは?

芳根 そうです? ?! まず母に伝えたら、すごく喜んでくれましたけど「ここからだね!」という気持ちも強かったのかなと思います。一番ストレートに喜んでくれたのは、祖母でした。無言で泣きはじめて、それを見た母はげらげら笑っていて(笑)。ちょっとでもおばあちゃん孝行できたのかな、と思うと、すごくうれしくなりました。

芳根京子

芳根 それに、『累—かさねー』と『散り椿』という自分にとっては挑戦的な作品で(賞を)いただけたことで、挑戦していくことの大切さを実感しました。はじめは怖かったんですけど、やれば人間どうにかなるというか、体はついてくるんだな、とすごく思いました。だから、「できないです」という言葉は禁句にしよう、と思いました。

――「できない」ということも、これまではあったんですか?

芳根 『累—かさねー』も、最初は「できないです。本当に無理です」とマネージャーさんに言っていたんです。けれど、やってみないとわからないと実感しました。あのときに背中を押してもらえたから今があると思うと、やる前に「できない」、「無理です」とはもう言いません。……「自信がないです」は、ありかな、と思うんですけど(笑)。

芳根京子

――受賞スピーチでは「お芝居をやらせていただいて、6年がたちました」とおっしゃっていました。芳根さんにとって、この6年は長かったですか? 短かったですか?

芳根 ……すっごく不思議な感覚です。あっという間だった気もするけど……、デビューのときを思い返すと、ザーッと過ぎていった感じはあります。一番身近にいる母は、全部作品を観てくれているんですが、朝ドラのときに私のことを「ちゃんと役として見られるようになった」と言っていたんです。1作ずつ振り返ることは今はしていませんが、母とは「あのときこうだったね」、「ああだったね」と話したりするので、それが振り返りになっているのかもしれません。

芳根京子

――女優としての今後の展望は何でしょう?

芳根 いろいろなジャンルの映画に挑戦していきたいです。10代は学生服を着ている役が多く、20歳を超えて、私自身も新社会人の年齢になったので、新人や新入社員の役など、どんどん周りの環境が変わっている印象があります。年齢が上がると幅が広がることを、この1~2年で実感しました。実年齢より下に見られがちだったりするので、大人な役ができるようになれたら、とすごく思います。(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)

映画『居眠り磐音』は、2019年5月17日(金)より全国ロードショー。

居眠り磐音

出演:松坂桃李、木村文乃、芳根京子 ほか
監督:
本木克英
原作:佐伯泰英「居眠り磐音 決定版」(文春文庫刊)
公式サイト:http://iwane-movie.jp/
(C)2019映画「居眠り磐音」製作委員会

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※2022年5月25日時点のVOD配信情報です。

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芳根京子

応募締切 2019年5月21日(火)23:59までのご応募分有効

【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方

【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます

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    ◆あらすじ◆ 幼馴染の磐音、琴平、慎之輔は、江戸での剣の修行を終えて故郷に戻ったところ、善からぬ噂のために慎之輔は琴平に斬られ、その琴平を磐音が斬ることになった。親友を失った磐音は婚約者の奈緒を置き去りに脱藩し、江戸で浪人として暮らし始める。剣の腕を買われ、両替商の用心棒となった磐音は敵対する両替商の陰謀に巻き込まれる。 ◆感想◆ 親友や愛する人を失った坂崎磐音(松坂桃李)が浪人として江戸で悪党相手に戦うストーリーとなっており、外面上、穏やかな磐音が戦いのときに見せる鋭さのギャップが魅力の作品となっています。 ストーリー序盤に親友を失い、婚約者とも離れる展開が非常に重たいのですが、ここでの琴平(柄本佑)や慎之輔(杉野遥亮)のやりとりがとても良く出来ていて、緊迫感の満ちた空気の中で刀でのアクションシーンがとても素晴らしかった。また、琴平と慎之輔のキャラクターも良くて、この2人が序盤で消えてしまうのが勿体なく感じました。 その後、磐音は江戸に出て浪人として貧乏暮らしになり、温厚で穏やかな姿を見せます。このパターンは他の作品でもよくありますが、磐音が悲しい過去を背負っていながらそれを表に出さない姿は好印象でした。 両替商の今津屋の用心棒になってから、ストーリーが幕府の政治に関わる規模の大きな話に移っていき、それとともに磐音はただの用心棒というだけでなく、物事の本質を見抜いて対処する政治的な思考にも優れていることが明らかになります。ひたすら松坂桃李がカッコ良過ぎてつらいです。 一方、今津屋と敵対する両替商の阿波屋が現れ、磐音の命を狙ってきます。阿波屋の主の有楽斎(柄本明)の憎たらしい感じが敵としてとても良かった。これ以上ないくらい個性があふれていました。 磐音の剣術アクションのシーンは多いですが、圧勝するシーンは少なく、ほとんどがギリギリの戦いで勝ちながらも負傷するシーンが多いため、緊迫感が跳ね上がっていてとても良かったです。 とても面白い作品でした。2019年の作品ですが、続編を観たいです。 鑑賞日:2023年11月13日 鑑賞方法:日本映画専門チャンネル (録画日:2022年10月19日)
  • hiro
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    キロク
居眠り磐音
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