居眠り磐音』は、時代小説累計発行部数6,500万部を超える佐伯泰英による小説「居眠り磐音 決定版」シリーズ初の映画化。本作で松坂が演じる「時代劇史上、最も優しい」と称される浪人・坂崎磐音と結婚を誓い、一途に想い続けながらも悲劇的な運命に翻弄される小林奈緒を、芳根京子が凛とした演技で魅せている。
故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件によりふたりの幼馴染を失った磐音は、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒を残して脱藩。浪人の身となった彼は、江戸で長屋暮らしを始め、大家・金兵衛(中村梅雀)の紹介で昼間はうなぎ屋、夜は両替屋の用心棒として働き始めるのだが……。
ゆくえ知れずの磐音の身を案じながら、奈緒はある決意を固める。幸せな未来が待っていると信じて疑わなかった奈緒が、世間の厳しい風を浴びながら、たくましく生きようとするさまには奮い立たせられる。短くも濃い経験となった撮影期間、このほど受賞した日本アカデミー賞新人俳優賞のことなど、女優として展望あふれる芳根に話を聞いた。
――脚本を読まれて、物語や演じる奈緒についてどんな感想を抱きましたか?
芳根 『居眠り磐音』は時代劇ですけど、エンターテインメント性もあるので、この作品に出会って時代劇が「観やすいもの」という印象に変わりました。自分の役については、シーン数がそんなに多くない中で、これほど重要な役をどう印象づけられるか、という部分がすごく不安でした。これまで、真ん中に立たせていただくことが多かったので、少ない中でどう自分を出せるかが課題でした。撮影もひとりが結構多かったので、完成した作品を観て、やっと「『居眠り磐音』の世界に入れていたんだ……!」という実感が湧いたんです。
――撮影の前は、少し不安もあったんですね。
芳根 そうですね。時代劇の経験もあまりなかったので。京都太秦で撮影していたんですが、「京都で時代劇をやらせてもらえるんだ」といううれしさと緊張がありました。その分、終わったときはホッとした思いがあります。
――時代劇は『散り椿』に続いて2作目ですよね?
芳根 はい。『散り椿』のときは木村大作さんの作品だったこともあり、本当に緊張していて、正直……あまり記憶がないんです(笑)。今回、衣装合わせのときから「大作さん、やっていたんだよね? じゃあ大丈夫だね」と言われることが、すごく多くて。「わからないことばかりなので、いっぱい教えてください!」とお願いしました。皆さん、すごく優しくしてくださって、所作に始まり、いろいろなことを教わりました。
――演じた奈緒は、前半~中盤~後半と、気持ちの変遷がかなりある役です。どう取り組んでいかれたんですか?
芳根 前半の涙を流したシーンが、初日の撮影だったんです。すごく緊張して(現場に)行ったのを今でも覚えています。けれど、現場の空気がすごく温かかったので、一気にリラックスして『居眠り磐音』の世界に入れました。奈緒の気持ちが自分の中にちゃんとあるんだな、とわかったので、この作品では初めて初日ですごく自信がついたというか……自分を信じてもいいのかなと思えました。
芳根 監督ともたくさんご相談させてもらって、奈緒を作り上げていったんですけど、初日の涙のシーンを観て、監督が「うん、もう大丈夫だ!」と言ってくださって、逆にそこだけが不安というか(笑)。「そんな、任されても!」と思いつつ、そう感じていただけたのは認めてもらえた気がして、すごくうれしかったです。
――奈緒は芯の強さも光りますが、実際、芳根さん自身と近しい部分もありますか?
芳根 奈緒がずっと待ち続けるあの一途さは、すごくわかる気がします。演じているときも、磐音さまをひたすらに想い続けよう、という一心でした。私はあそこまで強くないですけど、愛というのは、どの時代も変わらないのかなとすごく思いました。
――磐音を演じた松坂さんの印象は、いかがでしたか?
芳根 私……人見知りなので、松坂さんともまだあまりお話ができていなくて(笑)。勝手なイメージになるんですが、松坂さんと磐音さまは優しさを持った方なので、本当にリンクしていた気がしました。台本で読むよりも、もっとやわらかく感じたので、本当に愛おしい気持ちになりました。けれど、殺陣のシーンになると全然違う顔つきで……「皆さん、本当にすごいなあ……役者さんって何でもできるんだなあ……」って。尊敬しています。
――ちなみに、劇中で磐音からもらった香袋は、本当に香るんですか?
芳根 本当に香ります! いただいて帰りました! 袋に入れて、スーツケースの中に入れて持って帰ったんですけど、スーツケースを開けたらフワッと香りがして。袋に入れたまま、今でも大事に家に保管しているんです。
――ところで、日本アカデミー賞新人俳優賞の受賞、おめでとうございます。
芳根 ありがとうございます……! 新人俳優賞をいただけたことで、映画界に入れてもらえた気持ちがすごくありました。
――ご家族も、さぞかし喜んだのでは?
芳根 そうです? ?! まず母に伝えたら、すごく喜んでくれましたけど「ここからだね!」という気持ちも強かったのかなと思います。一番ストレートに喜んでくれたのは、祖母でした。無言で泣きはじめて、それを見た母はげらげら笑っていて(笑)。ちょっとでもおばあちゃん孝行できたのかな、と思うと、すごくうれしくなりました。
芳根 それに、『累—かさねー』と『散り椿』という自分にとっては挑戦的な作品で(賞を)いただけたことで、挑戦していくことの大切さを実感しました。はじめは怖かったんですけど、やれば人間どうにかなるというか、体はついてくるんだな、とすごく思いました。だから、「できないです」という言葉は禁句にしよう、と思いました。
――「できない」ということも、これまではあったんですか?
芳根 『累—かさねー』も、最初は「できないです。本当に無理です」とマネージャーさんに言っていたんです。けれど、やってみないとわからないと実感しました。あのときに背中を押してもらえたから今があると思うと、やる前に「できない」、「無理です」とはもう言いません。……「自信がないです」は、ありかな、と思うんですけど(笑)。
――受賞スピーチでは「お芝居をやらせていただいて、6年がたちました」とおっしゃっていました。芳根さんにとって、この6年は長かったですか? 短かったですか?
芳根 ……すっごく不思議な感覚です。あっという間だった気もするけど……、デビューのときを思い返すと、ザーッと過ぎていった感じはあります。一番身近にいる母は、全部作品を観てくれているんですが、朝ドラのときに私のことを「ちゃんと役として見られるようになった」と言っていたんです。1作ずつ振り返ることは今はしていませんが、母とは「あのときこうだったね」、「ああだったね」と話したりするので、それが振り返りになっているのかもしれません。
――女優としての今後の展望は何でしょう?
芳根 いろいろなジャンルの映画に挑戦していきたいです。10代は学生服を着ている役が多く、20歳を超えて、私自身も新社会人の年齢になったので、新人や新入社員の役など、どんどん周りの環境が変わっている印象があります。年齢が上がると幅が広がることを、この1~2年で実感しました。実年齢より下に見られがちだったりするので、大人な役ができるようになれたら、とすごく思います。(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)
映画『居眠り磐音』は、2019年5月17日(金)より全国ロードショー。
出演:松坂桃李、木村文乃、芳根京子 ほか
監督:本木克英
原作:佐伯泰英「居眠り磐音 決定版」(文春文庫刊)
公式サイト:http://iwane-movie.jp/
(C)2019映画「居眠り磐音」製作委員会
※2022年5月25日時点のVOD配信情報です。
芳根京子さん直筆サイン入りチェキを1名さまにプレゼント!
応募締切 2019年5月21日(火)23:59までのご応募分有効
【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方
【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます