美人が婚活してみたら』は、女優陣に“美人”な黒川芽以&臼田あさ美、男性陣に今をときめく中村倫也、田中圭を迎えておくる、シュールでコミカル、そしてリアルな婚活映画。『勝手にふるえてろ』で松岡茉優に2018年日本アカデミー賞主演女優賞をもたらした大九明子監督の、鋭い観察眼と人間描写がいかんなく発揮されている。
自他ともに認める美人WEBデザイナーのタカコ(黒川)は、不倫を繰り返し、気づけば32歳になっていた。親友のケイコ(臼田)に「やりたいことはないの?」と聞かれ、思いついたのは結婚。勢いで婚活サイトに登録し、不器用でちょっとダサいがタカコを好きな園木(中村)と、スマートな医者だが女慣れしている矢田部(田中)と出会い、揺れ動くのだが……。
31歳の黒川芽以、32歳の中村倫也と、まさに主人公たちの世代とどんかぶりな世代。他人事には感じられない“かも”しれない結婚、婚活問題について、自身の恋愛観について、気になる両者の反応は。実は知り合って10年以上、旧知の仲の二人を、「島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭」にて直撃した。
――ポップな話かと思いきや、身につまされる内容でした。お二人は、台本をどう読み解いて作品に臨んでいきましたか?
黒川 32歳できちんとした恋ができていない、婚活に奮闘する女子の話ですけど、私自身も30代で独身なので(笑)、すごく共感する部分もありました。台本を最初に読んだとき、シソンヌのじろうさんが書いてくださったからか、台詞のチョイスがすごく面白いなと思って印象的でしたね。特に、女性同士の会話がすごく面白かったです。
中村 うん、女性の会話が面白い。
黒川 このお話って、自分に刺さるか、刺さらないかで、重みが変わってくると思うんです。なるべく女の人のリアルを届けたい、という思いで頑張りました。……『美人』とつくタイトルに押しつぶされそうになりながら(苦笑)。
中村 じろうさんの脚本で、監督が大九さんでしょう。男から見た女性の「まだそんなバカなことを考えてんのか!」みたいな、ある種の滑稽さみたいなものが脚本で立ち上がっていて、女性の監督が「それも人生だよね」「それが人間だよね」みたいな優しさで包み込んでいるな、と思ったんです。男女で作ったからか、ちょうどいい感じになっているんですよね。それにね~、この映画はダメな人ばっか出てくるんだよね。臼田あさ美ちゃんの役が「この子、真面目だあ」ってかわいく見えました。
――タイトルについての言及が黒川さんからありましたが、中村さんはどう受け止めましたか?
中村 『美人が婚活してみたら』というタイトル。美人だという主人公の成長物語というか、恋だ、人生だ、ともがく話でもあるんですけど、美人だろうが、美人じゃなかろうが悩むところは一緒なんじゃないかなって、僕は観た後に思いました。生きていれば、みんないろいろ考えたりするし。特に30前後の女性はね、それまでと違うこともきっと考えるでしょうし。そういう意味では、幅広いお客さんに楽しんでいただけるし、共感していただける作品に仕上がっているんじゃないでしょうか。
――お二人はデートシーンが主でしたよね。掛け合いは台本のままでしたか?
黒川&中村 (顔を見合わせて)そうですね。
――ホテルにて、中村さんがパンツを脱いだり穿いたりする仕草も、台本通りですか?
中村 ああ、あれは現場に行ったら、監督に「よし、なんかやって!」と言われて、「なんかやるのかあ……」と思って。
黒川 (笑)。
中村 ああいうキャラクターなので、女性がシャワーを浴びている間、何をしているのかなというのを考えて、その中から「これとこれをやって」という感じでした。
黒川 あれ? 「脱いで、穿いて」と台本に書いてあったような気もするんですけど……。
中村 書いてあったっけ?
黒川 でも、中村さんがさらに膨らましていたから、「やりおるなあ~」と思っていました。あれは必見です(笑)。
――今さらですが、お二人は昔からのお知り合いなんですよね?
中村 そうですね。17~18歳くらい?
黒川 そうです。
中村 一緒に仕事をするのは3回目かな。2年くらい前に一緒にやって。
黒川 そのときは、私のことをストーカーしている役でしたね(笑)。
中村 そうそう。10代のときは、朝ドラで親戚みたいな関係だったしね。
――若いときから10年以上、コンスタントにご一緒される俳優さんは、なかなかいないのではと思うのですが、ご本人たちの実感はどうなんでしょう。
中村 そうですね。たぶん、ふたりともそこまで同世代と仕事していない。
黒川 うん。私も年上の人が多くて。
中村 友達が少ないコンビなんです。
黒川 ええっ(笑)! けど、倫也くんは芝居が達者なので、役者としてすごく尊敬しているんです。
中村 ……その割に、何ひとつ舞台を観に来てくれていないけどね……。
黒川 観に行ったやん! それに感動したんよ!!
中村 ごめん、ごめん(笑)。『八犬伝』ね(笑)。
黒川 そう! 倫也くんは本当に芸達者なので、今回の役もどう見せてくれるのか、すごい楽しみでした。
――結構エキサイティングな現場でした?
中村 役的にも(黒川さんは)受けの関係性だったので、僕がちょっかいを出すのをどうリアクションするのかな、と思っていたんです。ホテルで、僕が「結婚を前提に……」と勇気を出して言うシーンで……今でも忘れないですね。僕がその台詞を言ったら、一瞬、眉間にしわが寄ったんですよ。「おい、何で、しわ寄るんだよ!」って(笑)。
黒川 お芝居ですよ(笑)。
中村 「お前がホテルに呼んだんだろっ」と思いながら……。
黒川 それ、中村倫也が出てきちゃってる。
中村 そうそう(笑)。
――お二人とも独身、30代ですが、本作のテーマでもある婚活や、今の時代の流れであるブームに関しては、どう思いますか?
黒川 「婚活」については、もちろん「良い」という人もいれば、言葉のイメージから「婚活は恋愛じゃない」と思う人も、いろいろいらっしゃると思います。私からすれば「なかなか出会いが少ないんだよね」という声をよく女子同士の会話で耳にするので、最後の切り札じゃないですけど、「もしかして自分もあるかもな」と考えちゃったくらいでした。特に条件がはっきりしている人だったら、婚活サイトや婚活バーは出会いの場としていいんじゃないかな、と思いました。
黒川 あと、強く感じたのは「決して売れ残りじゃない!」ということ! 撮影前、私も婚活バーにお邪魔しようと思ったんですが、高熱を出して行けなかったので、ロケハンに行ったスタッフさんに聞いたんです。実際、婚活バーには、本当に綺麗な女性ばかりだったそうで!! 頑張っている、キラキラしている女子が婚活をしているんだな、と作品を通して実感しました。
中村 普段、彼氏、彼女がいない子の話をいろいろ聞いていて、「何でいないの?」と聞くと、大体「出会いがない」と言うんですよ。当社調べでは98%……。
黒川 当社(笑)?
中村 中村調べ……残りの2%は、本人の性格に難があるということで(笑)。婚活はお見合いの新しい形というか、いいんじゃないですか、と思いますしね。
――中村さんは、恋愛相談を受けることがあるんですか?
中村 何て言うか、受けることもあるんですよ。いろいろな女性の恋愛相談を聞いていると、「とにかく焦るな」と思うんですけどね。
黒川 ……焦るのよ、30を過ぎると。
中村 芽以は結婚願望とかあるの?
黒川 ありますよ(笑)!
中村 へえ~。そうねぇ……恋をするにしろ、したくてできない状態であるにしろ、何か1個バイアスがかかっているというか、平常心じゃない状態でいることが多いな、と思っていて。だから「焦るな」としか言えないですけどね。そう言っていると、次にその子に会うと「いい人と出会った♥」とか言っていることが多いから(笑)。まあ、恋なんてね、するときはしますからね。一生懸命相手を探すのは、いいことなんじゃないかなと思います。
中村 あとは、この作品の帰結点は、タカコの人生の終わりではないですし。『(美人が)婚活してみたら』というタイトル通り、その後、タカコが何を得て、この物語がエンドロールになるかはみどころだなと思います。それに、調子のいいことを言う男じゃなくて、物足りないかもしれないけど、園木みたいな人をしっかり選んでくれる女性が世の中に増えるといいかなと思ったりもします。……うまくまとまったね(笑)。(取材・文=赤山恭子、撮影=You Ishii)
映画『美人が婚活してみたら』は、2019年3月23日(土)より全国ロードショー。
監督:大九明子
配給:KATSU-do
公式サイト:http://bijikon.official-movie.com/
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※2021年3月8日時点のVOD配信情報です。