岡田将生&時任三郎が紡いだ『家族のはなし』 子どもでも親でも共感できる「無償の愛」【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

家族のはなし』は、田舎でりんご農園を営む実家を飛び出し、東京でバンド活動を行う息子・拓也と、優しく穏やかな両親との不器用なやり取りを描いた物語。りんごに情熱を注ぎ続ける父・徹を疎ましく思い、冷たい態度を取りながらも、自分の居場所を見つけられずもがく拓也を、2018年も話題作に数多く出演した岡田将生が務めた。そんな拓也を大きな愛で受け止める徹を演じたのは、名優・時任三郎

岡田将生&時任三郎

岡田と時任は、本作のワールドプレミアを迎えた「島ぜんぶでおーきな祭 −第10回沖縄国際映画祭−」に参戦。あいにくの雨模様となったレッドカーペットや、満席の上映となった舞台挨拶を楽しんだ後、本インタビューに応じてくれた。沖縄という土地がなせる業か、初の公式上映を迎えたタイミングだったからか、俳優同士という括りでは収まらぬ、どこか温かい空気が流れる、作品同様、愛おしい時間となった。

――ワールドプレミア、おめでとうございます。おふたりは本編をご覧になって、どんな感想をお持ちになりましたか?

岡田:ありがとうございます。最初、原作のパラパラ漫画を読ませていただいたときに、僕自身が「やっぱり家族は面倒くさいけど、すごく幸せな存在だな」と感じていたんです。実写にしたときでも、そういうふうになればいいなと本当に思っていて。改めて観たときに、自分自身が「やっぱり家族はいいな」と本当に思えたので、心が温まるような作品になってよかったな、というのが印象です。

時任:親子の話ということなので、親の世代が観ても、子供の世代が観ても、どちらから観ても何かを感じてもらえるような映画になっていると思います。

――時任さんは役を離れたところでもお父さんですが、役と共通したものは親の子供への無償の愛ですか?

時任:徹は、自分の思いを子供に伝えるのが苦手な、不器用な感じの親じゃないですか。そのまま同じというわけではないかもしれないけれども……、そういう気持ちはすごくわかりますね。

――岡田さんも、ご自身のご両親のことを思い出したりしましたか?

岡田:やっぱり……はい。思い出しましたし、撮影中も「終わったら親に会いに行こう」という気持ちに自然になっていました。

岡田将生

――改めて、今回ご一緒されてみての感想も、お聞かせいただけますか?

岡田:時任さんとは、何度かお仕事をさせていただいています。今回は僕のお父さん役をやっていただけるということで、緊張はありました。僕の役がすごく……反抗してしまう息子なので、お芝居中に目を合わすことがほぼなくて(笑)。

時任:そうだね(笑)。

岡田:目が合うときは、ぶつかるときという……。すごく……本当に自分で演じていても、「こんな息子でごめんなさい!」という気持ちでした(笑)。

時任:(笑)。

岡田:時任さんは、本当にどっしり構えて、全部を受け止めてくださるので、100%でお芝居をしよう、という気持ちでやらせてもらえました。

時任:実際、一緒にやっていて、本番で岡田くんから感じるものが結構ありましたね。例えば、「りんごだけ作り続けて何が悪い」と言う場面があるじゃないですか。台本で読むと結構強く出ているのかな、と思ったんだけど、子供に(りんご農園に履いていくための)長靴をポンッと投げつけられたら、すごいショックだろうなと思って、芝居も変わっちゃったんです。それだけ岡田くんの芝居にリアリティーがあったということで、すごく感じるものがありましたね。

岡田:いえいえいえ……!

岡田将生&時任三郎

――おふたりでのいくつかのシーンの内、予告編でも流れているバスの中での拓也と、それを見守る徹は、本作を象徴するシーンでした。撮影エピソードはありますか?

時任:あの日、一番大変だったんじゃない?

岡田:本当に! 大変で……。今回の作品自体、撮影期間がすごく短かったんです。すごく集中して1週間ぐらいで全部撮って、本当にラストのクランクアップの日にあのシーンを撮ったんです。……僕、ずーーーーっとバスに乗っていたんです(笑)。朝から夕方まで……みんな、気が狂いそうなぐらい(笑)。

時任:バスだけ、固め撮りしてね。

岡田:ずっと(笑)! 時任さんは土手で、ずっとその間、座って待っていてくださって。

時任:1回本番をやると、元の場所に戻るまでに20~30分かかっちゃうんだよ(笑)。

岡田:そうなんですよ(笑)。ずっと長回しでしたしね。

――そういう状況だと、気持ちを保つのも大変ですね。

時任:何回もやるのは、ものすごく大変で。しかも、こっちはカメラも何もない状態で待っているから、通りかかった一般のおじさんが、「何してんの?」って(笑)。

岡田:ええっ(笑)。

時任:「いや、撮影です」と言ったんだけど、「撮影?」って。カメラないからね(笑)。

時任三郎

――まさかの裏話もありつつ、ああいった感動的な仕上がりになっているのがお見事でした。

岡田:やっぱりそのシーンは、すごく心にグッとくるというか……、先ほどおっしゃっていただいた「無償の愛」というのをすごく感じるシーンでした。きっと、どの世代の方が観ても響くものになっているんじゃないかなとも思います。自分で言うのもなんですけど、本当にいいシーンになったんじゃないかな、と感じています。

時任:引きの画だから、そんなにはっきりとは映っていないけど、結構ニコニコしていたんですね。ぶつかってばかりのふたりだったけど、なんとかそれで一歩近づけるかな、という思いがあって。向こうも一歩近づいてくれて、こっちも一歩近づいて、みたいな余韻を残したような場面になっていると思います。

――うまく折り合いをつけられない拓也の鬱屈とした思いは、お二方も「わかるな」と感じる部分がありましたか?

時任:どう、ある?

岡田:僕は結構……やっぱりわかります。父親は尊敬する存在なんだけ? ?、ライバルみたい、というか。親父を越したいとは言うけど、やっぱり越せない、という。そういう変な距離感みたいなのは、昔すごくありました。今はもう、ちゃんと真正面から話はできるんですけど、素直に1対1で向き合ってというのは、若いときはやっぱりできなかったです。だから、本作の親子の在り方は、すごくわかりました。

時任:そうなんだね。俺は、親父に相当厳しく育てられたんですよ。「ちょっとも間違いは犯しちゃいけない」みたいな厳しい親父だったんで、自分が親になったときに、そうじゃないやり方をしようと思って。それで自分の子供とは、1対1で話せる間柄を築き上げられたらな、と思って育ててきたんですけど。それでも、何が正解かはわからないですね。

時任三郎

――親子の関係に正解はない?

時任:うん。自分がやってきたことが正解かと聞かれたら、わからないし。正解はないですね。だからこそ、自分の信じるやり方を、あるいは育て方と子供との接し方をするしかないなと思いますね。

岡田:それを貫き通すのも結構大変ですよね。

時任:うん。そう。厳しい親を貫き通すのって大変だね。

岡田:結構大変ですよね。

岡田将生

――岡田さん、まるで実感されているようなお話のされ方です(笑)。

岡田:はい(笑)。時任さんのお話を聞いていて、自分が父親になったとき、すごいブレブレになっちゃいそうだなと思いまして(笑)。

時任:(笑)。

岡田:昨日は厳しかったのに、今日はすっごい優しい、とか(笑)。

時任:ブレブレ(笑)、「どっちなんだよ、親父」って。

岡田:そうです(笑)。

――素敵なお話をたくさん、ありがとうございました。本インタビューは映画好きが集うFILMAGA(Filmarks)で掲載されます。お二方は普段どういう作品をご覧になることが多いですか?

時任:最近、配信があるから、いくらでも見放題じゃない?

岡田:そうですね。

時任:昔はそこまで観なかったのに、最近、本当によく観るようになって。僕、SFが好きなんですよ。今はNetflixでね、『ロスト・イン・スペース』を観ている! 昔ね『宇宙家族ロビンソン』というのがあったんだけど、それが基になっていて、出てくる家族がロビンソン一家で、ロボットも出てきて、「懐かしいな~」と思う気持ちと、新しい映像技術も組み合わさっているんですよ! ……うん、すごく楽しんでいます(笑)。

岡田:そうなんですね! 僕は韓国映画が大好きなんです。実際にあった話をベースにしたもので、すごく真に迫っているところが特に大好きなんです。……でも、午前中に映画館でそういうのを観ると、午後、本当に気分がドーンと落ちて(笑)。

時任:あら(笑)。

岡田:せっかくの休みだけど……でも、好きだからなと(笑)。複雑な感じで観ています(笑)。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=You ishii)

映画『家族のはなし』は、2018年11月23日(祝・金)より公開。

家族のはなし
(C)「家族のはなし」製作委員会

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  • シグナス
    3.7
    鉄拳のパラパラ漫画を実写映画化。ベタな話ですが、ほろほろしました。岡田将生さん、時任三郎さん、共演者のみなさんの力だなあと思います。
  • 愛野弾丸
    4
    お笑い芸人・鉄拳が原作の…ってことで油断してましたが、 思ってた以上に心にグッとくる内容で不覚にも泣いた。 家族の優しさ、ありがたみが切実に感じられる映画。 鉄拳のイラストもいい塩梅のスパイスとなってます。 何かに挫折や、上手く行かなかった人にも観てほしい内容。 贅沢を言えば、時間とボリュームがもうひと押し欲しいかなと言ったところ。
  • かんた
    3
    230作品目
  • ERI
    3.3
    録画リストに溜まってた「家族のはなし」、なんだっけ?と特に調べもせず再生ボタンを押す。冒頭ギターのインストの音にゆったりと映画の世界に入る。あ、岡田将生くんのやつ。色白美肌に金髪、可愛いなぁ。 映画的によくあるお話ではあるけれど、80分と肩肘張らずに見るにはちょうどよく旅に行けない4連休にまるで田舎にショートトリップした心地よさ。 鉄拳さんのパラパラ漫画が原作なんだね。要所要所にパラパラ漫画が出てくる。 親子モノに弱すぎるので、時任三郎さんが手袋外しながら登場シーンにもう泣きそう(なんで)。親のよくわかんないダジャレとかやたらとテンション高いとか、うざいなぁって気持ちわからなくもない。 田舎が退屈でやりたいことをやるために家を出て急になにもない自分に引き戻される感覚は身に覚えがある。 鈴木先生に呼ばれて式典に出ることになった。8年前に陸上選手として有望視されていた拓也は怪我で走れなくなった。その頃から親に背を向けて生きてきた。 この地元の友達のあすかちゃん、めちゃくちゃいい友達だね。こんなにはっきり言ってくれる人、なかなかいない。こういう人を大事にした方がいい。 私も上京組で、もう数え切れないぐらい親からの段ボールを受け取ってるからか、手紙が入ったリンゴジュースに、もう号泣。 豪雨があって今年はリンゴが届かなかったけど、父はただじゃ起きない。落ちたリンゴでジュースを作って、頑張れなんて言ってないけど、こんなにも頑張れって聞こえてくる届けものほかにない。 解散したバンド仲間に頭を下げて、式典に一緒に出てくれないかとお願いをして。金子大地くんのボーカル、好きだな。 バスを見送るパパの存在にどれだけ励まされるだろう。親ってすごい。いくつになっても、背中が小さくなってもそれでも、いやだからこそ親ってすごい。 途中レコード会社の担当さんで和牛の水田さん出てきてびっくり。
  • みゆきち
    3.1
    初鑑賞。パラパラ漫画でお馴染みの鉄拳さんと信濃毎日新聞との企画で発表された作品の実写化だそうです。鉄拳さんの書き下ろしパラパラ漫画と実写の融合もあり。 主人公は親の脛をかじりながら親に嘘ついて大学を辞めバンド活動をしプロになってるんだけど、プロになってもまだ親からの仕送りもらってて、もうその時点で全然共感できなかった…。すねかじってる割に仕送りしてくれてる親に対してめちゃ偉そうだし、お前は何様なのか?!とちょっとイライラ。主人公の両親が良い人キャラだったので余計に怒りが沸いた。。。 そして、その後バンドに訪れる不幸は、結局この主人公が期日を守れなかったせいで起こるし、バンドメンバーは彼にもっと怒っても良いのに優しいな。結局主人公はなんだかんだ周りに助けてもらえてて、そこもふーんって感じだった。 あと、明日香が勝手に色々押し付け決めてくるのもイラッとしてしまった。 親のありがたみというのは、本当に自立して生活費も全て自分で工面出来てこそはじめて解るものだと思う。 実家の家業の農園が存続の危機になってても気にもせず仕送りをもらい、手伝いもせず「親は農園を継がせようとしてる、自分は大変なんだ、お前らとは違う、なにがわかるんだ」という考え方だった子供が、実は親は自分のことを応援してくれてるんだとわかったからといってもそう簡単に感動できなかった。残念。 「家族とは 面倒くさい幸せ」 この言葉は、少なくともこの主人公が言って良い言葉ではなく、こんな面倒な息子をもった親が言う言葉だと思った。
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