『全裸監督』山田孝之×満島真之介×玉山鉄二、ギリギリトーク!「やばいものができるって、みんな思ってた」【ロングインタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

全裸監督』として、8月8日(木)より全世界に独占配信される。

全裸監督

1980年、英語教材のセールスマン・村西は、売上トップにのし上がるが、ほどなくして会社は倒産。ときを同じくして妻の浮気現場も目撃してしまった村西は、失意の底でチンピラのトシに出会う。トシからアダルト雑誌、通称「ビニ本」の存在を教えられ、勝機を見出した村西は、出版社社長の川田の協力を得て、ビニ本の流通販売会社を設立。たちまち業界の風雲児となり、数々の伝説を生んでいくのだ。

村西を山田孝之が、トシを満島真之介が、川田を玉山鉄二が担当、まるで彼らの青春物語かのように、生き生きと好演している。充実の撮影ぶりについては、撮影がすべて終わったときの満島の一言「シャバに帰るのか」に集約されていると言えよう。熱狂の80年代を追体験した彼らに、コンプライアンスにがんじがらめになりかけている現代の日本に一石を投じる本作について、嬉々として語り合ってもらった。

全裸監督

ーー非常にセンセーショナルな作品です。お三方が携ろうと決めた理由から、教えてくださいますか?

満島 山田さんが一番最初にスタートしてますもんね。

玉山 そうだよね。

山田 うん。世代が違うこともあって、僕は村西さんのことを最初知らなかったんです。オファーをいただいて、調べたときに「めちゃくちゃ面白いな」と思って。これはたぶん、実際に現場に入っても楽しめるし、すごい刺激的なものを世に出せるんじゃないかと思ったから、絶対やるべきだと思いました。それからはちょこちょこNetflixに行って、プロデューサーの坂本さんと、この話をどういうふうに作っていくか、というところから相談していました。国籍・年齢・性別を問わず、12人ぐらいで「どういう脚本にしていくか」という会議も何度かやりました。でも、脚本作りに入るタイミングで抜けたんです。完成したものを待って、次からは村西とおるとしてやるので。

全裸監督

――満島さんは、いかがですか?

満島 僕に話が来たときは、「山田さんが村西とおるをやる、しかもNetflixで」という段階だったんです。しかも世界に向けて配信すると聞いたときに、「大きな山が動くかもしれない」と思って、むちゃくちゃテンションが上がりました! 「見たことがない景色が見えるかもしれない!」と思ったので、ひとつ返事で承諾しました。

山田 事件性を感じたよね。

満島 そう。事件性を感じました。そこに加担するしかない、って!

山田 共犯か(笑)。

満島 共犯者になりたいなと思いましたよ。一番近くで目撃したいし、体験したいと。

山田 野次馬みたいな感覚だよね?

満島 そうそう、そんな感覚です。なんだか不思議な、今までにないワクワク感があふれてきたんですよ。僕にとっては、それが一番の決め手だったんです。「どこまででも付き合います、山田さん!」という勢いでした。

全裸監督

――山田さんと玉山さんは旧くからのお付き合いだと思うんですが、お二人に関しては初共演ですよね?

山田 そうだよね。

満島 はい。だから、俺、めっちゃうれしくて。偶然、(プライベートで)いろいろなところで遭遇し、「あ、山田さん?」みたいなことはあったんですけど(笑)。いつか一緒に、がっつり作品づくりをできたらいいなって思っていたんです。とはいえ、「がっつりって何だろう?」と思ったら、これしかなかった(笑)。

山田玉山 (笑)。

満島 山田さん、玉山さん、こういう先輩たちとご一緒できる喜びが、とても大きかったんです。

――玉山さんは、どの段階から入られたんでしょうか?

玉山 僕も結構早いタイミングで、聞いていました。この企画が通る前に、Netflixにいる仲の良い人に「日本は今、時に過剰なコンプライアンスや自主規制の波がありますけど、そこにメスを入れたいんだ」とずっと言っていたんです。その後にプロデューサーから「実は、村西とおるを描きたいんです」となって、「おお……!」となりましたね。

全裸監督

――村西さんや、その世界を演じるにあたっていろいろ調べられたかと思います。どのあたりに魅力を感じましたか?

山田 村西さんの魅力は爆発力と、面白いアイデアと、自分の感性を信じ続けて形にする行動力ですね。そういうところは、すごくいいと思いますね。

満島 そこは見習うべきところだと思います。時代が変わっても、普遍的な生きるエネルギーってあるんですよね。「これだ」と思ったら、そこに向かってガーッと進んでいくのが、村西さんの場合エロだったということであって。あの吸引力を見せつけられると、若者はついていきたくなりますもん。だって、今まで見たことのない 世界を見せてくれそうだし、周りのことも信じてくれるんですよ。

今は、情報があふれているので、体験していないのに体験した気になったり、行っていないのに行った気になってしまう危険性がある。その空気に触れたことがないのに「わかるわかる」という光景をよく目にしますけど、そういうことじゃなかった気がするんですよ。「やるぞ」、「見るぞ」、「お金持ちの空気も味わってみたい」とか、人を動かす強い意思があったんだなって。みんな考え方も違う別々の人間なんですけど、柱である人がいることによって、何倍も広がっていくものがある。そんな村西さんは、本当にすごいなと思います。

玉山 僕は、村西さんはすごくクレバーな人という印象もあります。エロはものすごく需要があると、あの人はまざまざと知っていたんですよね。にも関わらず、法律や国がどこかで規制をしている。だから、「人間は生まれたときには裸なのに、なんで何かで隠さなきゃいけないんだ」と言ったんでしょうし。みんなが思わないような違和感が、彼にはあったんじゃないのかなと、僕は思いました。

全裸監督

――数々の逸話が各話に収められていますが、特に驚いたり、はたまた感動したようなエピソードは何でしたか?

満島 村西さんが最初からエネルギッシュで、オープンで、人を惹きつけるような生き方をしていなかったところに、俺は惹かれました。1~2話でしっかり描いていますけど、村西さんは売れないセールスマンで、普通に家族を養っていくような人だったんですよね。まだ開花していなかった時間が、結構長くあったんだなと思って。そこがすごく大事なんですよね。生まれたときから光を放っていて、太陽のような人だと、観ている人たちも、「これは特別に生まれた人だからだね」と、遠い存在に感じると思うんですけど、そうじゃない。実は、人間誰しもが「自分がウワッと光ってくる、扉が開く瞬間があるかも」と感じさせる人だと思ったんです。この人が特別ではなくて、普遍的なことだと思ったんです。

山田 自分が開いたから、きっと人のことも開かせることができると思ったんだろうな、と。

満島 そうそうそう。そういうバックボーンに、僕は惹かれました。

玉山 俺は(体位の)駅弁ができあがるまでのストーリーに、すごくびっくりした。

満島 あれ、すごいよなあ!!

玉山 笑えるけど、ちょっと切ないよね。泣けるというか、本当の話なんだよね。

山田 3話だよね、注目ですよ。

全裸監督

――お三方は息ぴったりですが、現場でも今日のような明るい雰囲気だったんですか?

玉山 現場でもこんな感じだったよね!?

山田 とにかくスタッフ、キャストみんな、一致団結というか、仲が良かったです。

満島 いやあ、すごかった!

玉山 すごい仲良かったよね。

山田 とにかく楽しんで、本気でやばいもん作ろうって。事件性を感じたから、これこそ本当、事件にしなきゃいけない、みたいな感覚はありましたね。

玉山 ヒロインの森田さんもすごかったです。素晴らしかった。

山田 爆発したね。

全裸監督

玉山 撮影している段階から、結構やばいもんができるって、みんなが思っていたと思う。孝之の芝居、トシの芝居を見て、「俺も本当にちゃんとやんなきゃやべえ」って、どこか背中を押されている感はあった。

山田 ……いやいや、あなた、登場で☓☓☓してたじゃん。

全員 (笑)。

満島 初日でしたよね!?

玉山 初日に☓☓☓するシーンがあったんですよ(笑)。

山田満島 いや、勝手にやってたよね!

全員 (笑)。

――勝手にということは、玉山さんの☓☓☓シーン、アドリブなんですか!?

山田 台本に書いてないですよ(笑)。

玉山 そう。台本には、「こぶしを握る」と書いてあったんですよ。

山田 でも(玉山は)真剣にさ、「この状況でこぶし握らないでしょ」って。見たら、真剣に☓☓☓してるから(笑)。

全員 (笑)。

玉山 だって、村西の演出を見て感化されてさ。「これ、全力でやんなきゃいけないのかな!?」という衝動に駆られちゃって、「じゃあ、もうやっちゃおう」みたいな!

全裸監督

満島 そこから、めちゃくちゃに楽しんでましたもんね! 本当に、カメラに映っている熱量そのままなんです。本番だからとかじゃなくて、現場にはずーっとあの熱量がありましたからね。だから、いつカメラを回していてもオッケーなんです。みんな、いつでもいける状態。本当にどんなことがあろうとも……例えば「隣で事件が起きています」と言ったら、「よし、そこで撮るぞ!」みたいな感じ。

山田 「救出劇のシーンを入れろ!」って(笑)。

満島 そうそうそう(笑)。そのぐらいの熱量。……みんな、「映像制作の 世界に入りたい」とか、「カメラ持ちたい」、「照明を当てたい」という自分の原点を思い出し、あのときの素直な感覚みたいなものが戻ってきていたと思う。年齢とかキャリア、関係ないんですよ。「ひとつになってる」という空気でした。

山田 全員アクセル全開で、ずっと走ってる、みたいな。

満島 全開で、全員の力が結集してた感じが素晴らしかったな、と思う。終わるとき、本当に「シャバに帰るのか」って感じだったよね!

全員 (笑)。

山田 めっちゃ憂鬱になってたもんね。

満島 めっちゃ憂鬱になってましたよ、だって。どう生きていけばいいんだってわかんなくなったんですもん、これから先。

全裸監督

――こうした刺激的な作品に触れてしまって、ちょっと中毒になった感じですか?

満島 いやあ~、うん。そうですね。

山田 シーズン8までやろうってね。

玉山 “寅さん”並にね。

満島 “寅さん”並にやりたいと、マジで思ってます。

玉山 飽きるまでね。『ウォーキング・デッド』みたいに。

満島 そうそう! 海外ドラマを観ていて、シーズンが続いていくと、その役者が役を超えて、そいつでしかなくなっていくじゃないですか。

玉山 そうだね。

満島 俺ね、そこにすごく憧れを持ったんですよ。自分の人生と、この役の人生がリンクして、肉体も表情も全部それでしかなくなっていく、っていうの。続いていってほしいなぁ。

――改めてこうした作品を世に送り出すことについての気持ちをお話いただきたく。玉山さんは冗談半分で、「好感度が下がるんじゃないか」などおっしゃっていたそうですが、イメージについても考えますか?

山田 イメージって、自分じゃなくて、相手が作るものじゃないですか。それぞれ、みんな持っているイメージが違うと思うんです。要は、この作品で嫌いになったら、嫌いになったでいいわけなので。

玉山 でも、孝之って、いつも視聴者なり、観客を裏切らせる代名詞的な感じじゃない?

山田 代名詞(笑)。

玉山 俺らは傍にいて、そこはやっぱりすごいと思うし、真似できないなと思う部分もある。でも、そういう思いを片隅に持っている表現者というのは、意外とたくさんいると思う。例えば、勇気が足りなかったりとかで、トライできないことも多々あるのかな、と。日本が、きっとそういう文化なんですよね。だから、例えば職種が違えど、おそらくライターの方の仕事も「本当はこういうことが書きたいけど、やっぱりマイルドに書こう」とか、思ったりするかもしれないし、各々で何かしらあると思うんですよね。

ただ、それは自ら見えない敵を作って臆病になっているだけで、みんな「せーの」でやっちゃえばいいのにって、僕は思うんですけどね。日本は萎縮してしまう、すごく難しい時代に入ってしまっていて、そんな中こういう作品ができて、ちょっとでも観てくださる方々のタガが外れてくれたら、もしかしたら、もっともっと面白い日本が見えてくるんじゃないのかなって期待しています。

山田 『全裸監督』を観て「勘違いした若い子たちが、SNSで真似をしたらどうするんだ!」みたいなことが言われても「いや、それは親の責任で、ちゃんと言わないとダメでしょう」みたいなね(笑)。どの時代だってそんなことはあったわけで、今は言いやすくなっただけだから。それをこっちが遠慮してやっちゃうと、絶対に面白いもの、刺激的なものは作れないと思います。

満島 そうですよね。それに、『全裸監督』は世界に発信しているわけじゃないですか。日本で生まれて、日本で育って、日本語を使っていて、日本の文化で、日本食を食べて体ができ上がってきたから、やっぱり日本で作品を作りたいんですよ。日本人のスタッフと、日本人の役者たちと、日本語の本で、世界に向けた作品を製作できることが、自分の中でずっと希望としてありました。小さな扉かもしれないですけど、感じたことのない風が通るかもしれないと思っています。配信されたら、何かが動き出すかもしれないワクワク感で満ち溢れています。(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)

全裸監督

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』は、2019年8月8日(木)より全世界独占配信。

全裸監督

■ストーリー
会社は倒産、妻に浮気され絶望のどん底にいた村西(山田孝之)はアダルトビデオに勝機を見出し仲間のトシ(満島真之介)、川田(玉山鉄二)らとともに殴り込む。一躍業界の風雲児となるが、商売敵の妨害で絶体絶命の窮地に立たされる村西たち。そこへ。厳格な母の元で本来の自分を押し込めていた女子大生の恵美(森田望智)が現れる。ふたりの運命的な出会いは、社会の常識を根底からひっくり返していくのだった―。

出演:山田孝之 満島真之介 森田望智 柄本時生 伊藤沙莉 冨手麻妙 後藤剛範 ・ 吉田鋼太郎 板尾創路 余 貴美子/小雪 國村隼/玉山鉄二 リリー・フランキー 石橋凌
総監督:武正晴
監督:河合勇人、内田英治
原作:本橋信宏「全裸監督 村西とおる伝」(太田出版)
脚本:山田能龍、内田英治、仁志光佑、山田佳奈

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