少年少女たちが危険や悪に立ち向かったり、子供たちだけで何かを探しに出かけたり。そして、その過程で友情が生まれ、成長していく。それが冒険物語。
かつて子供だった大人も、そんな冒険映画を観ると思わず胸が熱くなり、胸がキュンとなってしまうもの。
そこで今回は、子供心に戻れるような冒険映画を10本ご紹介。
『リトル・ランボーズ』(2007)
映画を撮りたい!
1982年イギリスの厳格な家庭で娯楽を禁じられて育った少年が、友人の家で映画『ランボー』を偶然観てしまい、たちまち夢中になる。
監督の自伝的作品。映画監督を夢見るようになったきっかけや、自分たちの手で作品を作り上げることの喜びを描き、子供時代のワクワクした好奇心を思い出させてくれる。娯楽を全く知らない子供が生まれて初めて映画を知ったとはいえ、ここまで夢中になるとは……シルベスター・スタローンは偉大だね。
悪友と見よう見まねで作る映画は、毎日ワクワクドキドキ。宗教的禁欲さを押しつけられてきた主人公が、解き放たれたように映画にのめり込み、飛んだり落ちたりの無謀なアクションにも果敢に挑む。だって僕は、ランボーの息子。夢に向かって弾ける喜びとホロ苦さに胸がチクチクする冒険映画の代表作。
『スタンド・バイ・ミー』(1986)
永遠の夏
オレゴン州の小さな田舎町で、轢死体が放置されているという噂を聞いた4人の少年たちが、死体探しの旅に出る。
怖いもの見たさ。いや、それはきっかけに過ぎない。暴力や貧乏という家庭問題を抱えている彼らは、嫌な日常から抜け出したかったのだろう。大人の無理解や上級生のイジメに耐え、隠れ家でタバコを吸いながら、たわいない会話をする彼らには、4人でいる時にしか居場所がない。
普段はなかなか話すことのない本音や弱さがポロリと出てしまう。大人のズルさにショックを受けたこと。親の愛を求めていること。旅の途中で流した涙と心の叫びは、彼らの心を近づける。慰められ、励まされ、人生を変えてくれた夏。それは、大人になって思い出すたった一度の夏。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(1993)
2つの道
同じ女の子を好きな二人の少年は、彼女が両親の離婚で2学期から転校してしまうことを知らないでいた。
親の言いなりになってこのまま遠い町へ行くのが嫌な彼女は、学校のプールで競争する二人を見て、彼らに自分の運命を賭けようとする。勝った方と駆け落ちすると決めたのだ。さすが女の子は、小学生でもませている。この作品を原作としたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(17)あり。
さて、物語は「もしもそれがA君だったら」「B君だったら」という2つのパートに分かれ、彼女を異なる結末へと導いていく。頼もしい男とは、裏切らない男。自分をここから連れ出してくれる男。花火の形は、下から見るのと横から見るのとでは違うのか。結局何も起こらなかったのか、何かが変わったのか。女の子って難しいね。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『ジュブナイル』(2000)
未来と過去
2000年夏休みのキャンプ場で4人の子供たちが見つけた超高性能ロボットは、自ら体を改造して歩けるようになると、彼らの前から姿を消してしまう。
VFXを駆使した映像が話題になったSF映画。超高性能ロボット“テトラ”をめぐる異星人たちとの戦いを描いた子供冒険物語である。地球の海を狙う巨大な宇宙船団がやってきて地球が危ないという時、戦闘用ロボットを連れたテトラが再び登場。見た目はアナログでも実に頼もしいテトラだが、そもそも何者なのだろう。
実はテトラは、主人公の少年に会いに来たのだという。テトラはどこから来たのか。その目的は何なのか。その謎解きのカギを探りながら、天才博士と一緒に異星人の侵略に立ち向かう子供たちの行く末にハラハラ。タイムマシンの研究をしている博士が街の電気屋だというのが、子供の空想にふさわしい設定でよい。
『時をかける少女』(2006)
未来で待ってる
理科準備室で不審な人影を目撃した女子高校生は、その人物を追いかけようとして転倒してしまい、不思議な空間に移動するが、気がつくと誰もいない室内にいた。
原作の映画化ではなく、それから約20年後を舞台にした物語。ひょんなことからタイムリープを起こせるようになった主人公が、過去の自分に意識を飛ばしては、失敗をやり直したりテストでズルをしたりして、ささやかな欲望を満たしていたが、命にかかわる大事故に直面し、それを防ごうと奔走する。
放課後の校庭でキャッチボールをする男子2名と女子1名の遊び仲間が、告白という行為によってバランスを崩してしまう。彼女はこのままでいたいのに。自分の意志でタイムリープできるのも善し悪しで、しかも回数制限があるのがつらい。未来でまた会えるのなら、それに向かって歩いていこう。甘酸っぱくも勇気が湧いてくる青春アニメの傑作。
『SUPER 8/スーパーエイト』(2011)
謎解きにドキドキ
1979年アメリカで映画撮影をしていた子供たちは、貨物列車の衝突事故を偶然カメラに収めてしまうが、そこには恐るべき事実が記録されていた。
実話を基にした衝撃的なストーリー。その貨物列車がこっそり運んでいたのは、一体何なのか。ただの映画好きだった子供たちが思わぬ事件に巻き込まれ、アメリカ政府を相手に真実を暴こうとするわけだが、これはもう冒険というより大スクープに近いだろう。
監督によるスピルバーグ愛が散りばめられ、かつて8ミリ映画に夢中になった経験のある大人にはたまらない作品。少年たちが闘うのは人間どもが太刀打ちできないシロモノなのだが、巨大な壁をぶち破った後、彼らは大きく成長する。夢と憧れがギュっと詰まった壮大な冒険物語。
『ムーンライズ・キングダム』(2012)
駆け落ち大冒険
1965年アメリカの沖に浮かぶ島で暮らしている少女は、双眼鏡で母と警部の密会を目撃してしまう。
大きな屋敷に住んでいる彼女は、本を読んで自分の世界に浸ったり、双眼鏡をのぞいて人間観察をしたりして過ごしている。そんなちょっと変わり者の女の子と恋に落ちたのは、これまたちょっと変わり者の男の子。両親を知らない彼はいじめられっ子で、お互いを唯一の理解者だと信じる二人は、駆け落ちをする。
文通で愛を深め、猫やレコードプレーヤーや本やキャンプ道具を持って駆け落ち。それは子供のママゴトみたいな駆け落ち。でも本気。奥行きのない世界で淡々と繰り広げられているように見えるが、実は愛の絆でものすごいことをやってのけた二人なのである。いい話だね。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)
弱さにつけ込む
1988年子供たちの連続行方不明事件が起きている田舎町で、主人公の弟が雨の日に大量の血痕を残していなくなってしまう。
『IT』(90)のリメイク作品。思春期の少年少女をターゲットにする“それ”は、相手が怖がる物の姿になるので、ピエロだったり不気味な女性だったり病気持ちのホームレスだったりと変幻自在。恐怖が絶頂になったところで食べると美味しいから恐怖を与えているというグルメな奴だ。
大人には見えないので、子供は自分たちの力だけで“それ”に立ち向かう。親との関係に苦しみ、学校ではいじめられっ子の彼らは、そもそもヒーローのように強くはない。だからいいのだ。これは自分の恐怖との闘いなのだから。夏休みの冒険と呼ぶには過酷すぎるが、その成長ぶりが眩しくて、ラストには胸キュン。
『スペースキャンプ』(1986)
まさかの宇宙へ
夏休みにNASAのスペースキャンプにやってきた子供たちは、乗っていたスペースシャトルが本当に発射されてしまい、宇宙へ飛んで行ってしまう。
誤発射の原因は、いじめられっ子の少年が持っていたロボットが、彼の夢を叶えようとして基地プログラムを改造したから。一応女性インストラクターも同乗しているとはいえ、いきなり宇宙旅行へ旅立つなんて、これに勝る大冒険があるだろうか。
CGを駆使しているわけでもないので臨場感には欠けるものの、宇宙が舞台となれば、今も昔も子供にとってはイマジネーションを掻き立てられること間違いなし。命がけで力を合わせたみんながヒーローだ。この作品でデビューしたホアキン・フェニックス(当時リーフ・フェニックス)の子役ぶりにも注目。
『グッバイ、サマー』(2015)
ここから抜け出そう!
女の子のような外見の少年は、機械いじりが趣味のワイルドな転校生と意気投合し、スクラップを集めて作った車に乗って、夏休みに旅に出る。
なんせ車を自分たちで作るという行為そのものが、すでに型破り。これがまた少年の夢をそのまま形にしたような可愛らしい車で、見るからに実用性と機能性に乏しく、やっぱり途中でトラブルを起こすのである。でもそれが冒険。出発前と出発直後のはちきれそうな興奮は、まだ見ぬ世界への憧れと期待に満ちている。
しかし現実では、思わぬつらい出来事にも遭遇するし、ケンカをして深く傷ついたりもする。だってたとえ森で独りぼっちになっても、誰も助けてはくれないのだから。少年は力を試され、不器用にそれを乗り越え、もといた場所に戻って来る。冒険はいつか終わり、夏も終わる時が来る。グッバイ。でも忘れない。
いかがでしたか?
映画のようなスケールの大きい冒険でなくても、ほんのちょっとした出来事が、子供にとっては忘れられない思い出になることもあるだろう。
スリル。夢。友情。達成感。そんなものがギュっと詰まった冒険映画でワクワクドキドキすると、あの頃の自分が蘇ってくるみたい。
たまには冒険映画を観て、疲れた日常から離れてみては?
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※2021年1月30日時点のVOD配信情報です。