名優・松重豊と北川景子が夫婦役で本格初共演を果たした映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』が10月4日(金)に全国公開となる。本作は、作家・ヒキタクニオが自身の妊活の経験を綴ったエッセイ「『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』男45歳・不妊治療はじめました」の映画化であり、妻の一言によってアラフィフで子作りすることを決めたヒキタが、自身の精子運動率が僅か20%しかないことを知り、夫婦で懐妊トレーニングを始める物語だ。
松重も北川も不妊治療や夫婦の妊活について意識を向けた機会になったというが、本作では同問題に直面した夫婦が、それを乗り越えていく過程で本当の夫婦になっていく姿も描いていくハートフルなヒューマンドラマ。よくある夫婦ものとまた味わいが異なる本作について二人に話を聞く。
ーー本作は、奥さんの一言があったからこそ協力して不妊に向き合い、夫婦が本当の夫婦にもなるという素晴らしい作品でした。
松重 「ヒキタさんの子どもが見てみたい」というセリフは、サチ(北川)がふいに口を突いて出た一言で、そこにハッとさせられる。すごくリアルな言葉の力を感じますよね。
北川 完成した作品を観た際に、ちゃんと夫婦になっていると思いました。二人がかわいく見えていれば正解だと思っていたので、とても素敵な作品になったと思います。
ーーテーマについて、思うことはありますか?
松重 不妊治療は、あまり触れてこなかった題材であって、面白いなっていう印象はありました。まさか、この歳で僕が演じるとは思ってもなかったですし、どういう作風かも読めなかったですから、監督ならではの作品になったかなとは思いますね。
北川 原作を読んだときに、あまりにも不妊治療について知らなすぎたところがあり、期間や予算、身体的な負担など、全然知らなかったなと思って、そこをちゃんと乗り越えた人として、丁寧に演じようと思いました。
ーー今回は夫婦役での共演ですが、夫婦役だからこそ気づけた、お互いの素晴らしさは何でしょうか?
松重 年齢差を気にしていた僕に「何を心配しているんですか?」と言わんばかり、北川さんは懐が深いんですよ。潔いというか言い方悪いですが、男らしい。いまの男性俳優にはない、男気を感じてしまうことがありましたね。
北川 よく言われます(笑)。
松重 でしょ?(笑)。男気があるので、同志みたいな感じになるんですよね。数か月、いろいろな話もしましたし、同志愛が芽生えるというか、同じ志でいる役柄ではありましたが、どこか俳優同士でいい映画にしたいという関係になれる心強い存在でした。
異性の歳下だけれど、僕は頼れる人だなあと思っていました。北川丸という大船に乗った気持ちで、居心地のいい日々を過ごさせてもらいましたね。
北川 映画って、その時しか集まれないチームで挑みますので、一期一会、みんなで助け合ってひとつのものを作るんです。今回松重さんとご一緒して、合間にもお話したいと思う方でした。
人間としてきちんと生きている方だということを今回、特に強く感じまして、役者としての前に人としてきちんとあれということを、松重さんを見て改めて強く感じました。
松重 ありがとうございます(笑)。
実は補足させていただきますと、そういういい空気感はスタッフにも伝染していくので、現場にはいい空気が流れます。ところが残念なことに、北川さんのほうが1日早く終わり、スタッフが途端に殺伐としてきた。役名で“サチロス”と言っていましたが、みんなイライラしはじめるという。途端に結束力を失ってしまって(笑)。
ーー1日だけの差でよかったと思いますが(笑)。最後に、FILMAGA読者にメッセージをお願いします。
松重 扱っているテーマが妊活で、題名からわかるように、ご懐妊にいたるまでの夫婦の葛藤の話だったりするわけですが、これを映画館で観る意味はすごく大きいですね。そういう作品になっていると思います。
北川 男性の妊活ですが、同じくらいの世代の女性にも観てもらいたいなと思います。ヒキタさんの物語ですが、女性の方が観ると、わたしの役柄に共感していただける作品にもなっていて、男性も理解できるし、女性も共感できると思うんです。泣くつもりじゃなくても泣けるシーンがあるかもしれません。
松重 夫婦で映画観に行くといっても、暗がりの中で何を考えてるかなとか、「泣いてる?」みたいなことを、家ではない環境で知るので、面白い題材を扱っているなと思いますね。ご夫婦に限らず、恋人同士でも、暗がりのなかでひとりになり、お互いのことを意識しながらも観てほしい。
終わった後にいろいろな感想が口を突いて出ると思うので、観終わった後に会話するのもいいし、ひとりだったら感想を投稿するなどして、いろいろなことを言ってほしいなと思います。(取材・文=鴇田崇、写真=iwa)
映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』は、2019年10月4日(金)より全国ロードショー。
出演:松重豊、北川景子 ほか
監督・脚本:細川徹
原作:ヒキタクニオ「『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』男45歳・不妊治療始めました」(光文社新書)
公式サイト:hikitasan-gokainin.com
(C)2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会
※2022年2月20日時点のVOD配信情報です。