壮大なスペクタクルムービー
国際政治学者 三浦 瑠麗さん
アンジーの生きる姿勢が
マレフィセントに投影
昔から、女優として、また個として際立った自我を持つアンジェリーナ・ジョリー(アンジー)が大好きです。華やかな生い立ちに反して幼少期に両親が離婚、いじめや自傷行為などを経験したものの、養子を受け入れ、実子も授かり母性に目覚め脱皮していく姿は、まさにオーロラ姫を育てたマレフィセントそのもの。
あるインタビューでのアンジーの「大切なのは過去ではなく今」という言葉に共感を覚えました。確かに彼女は実人生で壮絶な体験をしていますが、そこに縛られてはいません。常に今の自分がどうしたいか、主観性に満ちた行動こそ彼女の強さであり、正義でもある。人生は選択の連続ですが、アンジーはマレフィセントを通して「自分の感覚を信じて生きることが大切」と私たちに語りかけているのだと思います。
マレフィセントから読み解く
ダイバーシティー
また、本作では異種族での愛や争い、異なる思想を持つ人たちの関係性といった、私たちの「今」の世界に通じる問題も描いています。今作でもプロデューサーを務めるアンジーの、ダイバーシティー(多様性)への思いが色濃く反映されているように感じました。
オーロラ姫の存在を通して真実の愛に目覚めたマレフィセント。今作では、オーロラ姫の婚礼に仕掛けられた罠により、その愛に更なる試練が訪れます。
特に心揺さぶられたのは、オーロラ姫が「角を隠して」と頼んだのに対し、マレフィセントが悲しみをたたえて応じるシーン。マレフィセントの個性である「角」は、人間にとっては異質であり恐怖の象徴です。心から愛するわが娘から、異質なものとして自分の存在を否定されたも同然。
ともすれば暴走しかねない〝母性〞、それでもわが娘の幸せを願うマレフィセントが、物語の最後に下した決断とその姿には心を打たれました。
老若男女、誰が観ても
楽しめるエンタメ作品
『マレフィセント2』は前作以上にスペクタクル感満載。次の展開が全く読めず、ドキドキしながらも、その幻想的な世界観にすっかり引き込まれてしまいました。
個人的には刻々と変化するマレフィセントの表情と衣装にも注目し、楽しんでいました。 特にラストの彼女の表情は必見。他の登場人物や妖精も含め、みな人間味にあふれていて不完全。それだけにリアルで真実味もあります。
今まで描かれてこなかったヴィラン(悪役)を主人公にしながら、〝おとぎ話〞を現代風に再解釈している。ディズニーはうまいですね。多様性、他者理解など、いろんなことを自然に考えたくなるはず。アクションあり、ドラマチックな展開もあり、壮大なスペクタクルムービーで、誰が観ても楽しめるエンタメ作品です。 (談)
国際政治学者 三浦 瑠麗さん
みうら・るり/ 1980年 神奈川県生まれ。東京大学大学院公共政策大学院及び同大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て山猫総合研究所代表取締役。最新エッセー『孤独の意味も、女であることの味わいも』ほか、著書多数。
◆映画『マレフィセント2』imformation
■STORY■ 永遠の眠りから目覚めたオーロラ姫とフィリップ王子の結婚は、人間と妖精との間に和平をもたらし、世界を幸福に導くはずだった。しかしその婚礼には、真実の愛によって母と娘のように結ばれたマレフィセントとオーロラ姫の絆を引き裂き、妖精界を滅ぼそうとする恐るべき罠が隠されていた・・・・・・。愛するオーロラ姫を救うために、マレフィセントが背負った驚くべき運命とは!?
マレフィセント2
10月18日(金)全国公開
監督:ヨアヒム・ローニング
出演: アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、ミシェル・ファイファーほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト:Disney.jp/Maleficent2
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※2021年5月14日時点のVOD配信情報です。