ブロックバスターの仕掛け人ジェリー・ブラッカイマー「仕事そのものをバケーションと思いたかった」【来日インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

10月25日(金)に日本公開する近未来アクション・エンターテインメント『ジェミニマン』は、『アラジン』(19)でのジーニー役も記憶に新しいトップスター、ウィル・スミスが主演、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(13)などで2度のアカデミー賞監督賞に輝く巨匠アン・リーが監督。そして、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや『アルマゲドン』(98)を手掛けた辣腕ジェリー・ブラッカイマーが製作を務め、ハリウッドを代表するヒットメーカー3人が初共闘した超絶話題の一作だ。

ジェミニマン

そこでFILMAGAでは、来日したジェリー・ブラッカイマーにインタビューを敢行。これまで数々のメガヒット作を手がけ、世界中の映画ファンに極上の週末を提供してきた映画の巨人が、本作で目指したものとは? 過去作『アルマゲドン』(98)の撮影秘話も飛び出した、貴重な取材となった。

ジェミニマン

ーー宣伝文句の<ウィル・スミス、W主演>のとおり、ふたりのウィル・スミスが共演する凄まじい技術でした。今後の作品に応用可能では?

ジェリー・ブラッカイマー もっともっと進歩する技術だろう。アン・リーが最前線にいるわけだが、彼はさらに進化させ、いろいろなことをするに違いない。みなさんが気づくかはわからないが、毎秒24フレームが通常の速度で、これは動きにブレが出る。フレームレートが遅いので、すべての動きをとらえることが不可能だからだ。粒子が粗く見えて、映像が柔らかくなってしまうわけだ。ところが毎秒120フレームで撮れば、すべての動きをとらえることができる。ブレもなく、非常に鮮明だ。まるで生きているように、鮮やかな映像になるよ。

ただ、まだまだ課題もあり、現時点ではカメラが巨大でコストもかかる。でも数年前までコミック原作の映画化は難しかったよね。まだデジタルによる特殊効果が追いついていなくて、いいものができなかったからね。しかし、今は素晴らしい特殊効果によるいい作品が、数多く生まれている。そのことと同じことだと思う。進化によって技術や価格などがより良くなっていくと思う。その好例が、この作品の撮影中に起こった。当初はカメラから20本のワイヤーが出ていたが、撮影が終わる頃にはワイヤーが6本に減っていた。つまり、撮影中にも技術は進歩していたのさ。

ジェミニマン

ーーそれは大いに期待しちゃいますね!

ブラッカイマー とは言いながらも、俳優のリアルな演技や、スタントマンの演技はどうしても必要なものなので、そこは時代や技術が進歩しても、変わらないかな。

ジェミニマン

ーー世界中の人々に週末の娯楽を提供するという輝かしいキャリアを収めていますが、たとえば『トップガン』が大成功した後「次どうしよう?」「失敗するのでは?」とビビったことはないのですか? ご自身のキャリアとはどう向き合っているのですか?

ブラッカイマー 僕は常に恐怖の中で生きている人間だよ。不安の中で生きている。そして常に成功するということではないから、とにかく自分としては全力を尽くして、懸命な努力を重ね、観客の皆さんに特別なものを提供する以外にない。何か新鮮な特別な体験を、いい作品を届けたいという思いだけで、逆にそういう恐れが、より良いものを作るために自分を駆り立てている。

ーーご自身にとっての特別な映画体験は、いつどのようなものでしたか?

ブラッカイマー 僕は子どもの頃から劇場で映画を観ることが大好きだったから、映画を鑑賞するということは、本当に自分に喜びをもたらすものであった。ある時おばに「自分が本当に好きではないことを仕事にしてはいけない」と言われたことがあってね。僕の父親は2週間のバケーションのためだけに仕事を頑張って生きてきた男で、僕は自分の父親を見てそうなりたくないと思っていた。仕事そのものがバケーションと思いたかったのさ。

ジェミニマン

ーー影響を受けた作品は?

ブラッカイマー 監督だね。監督で影響を受けたのはデヴィッド・リーン監督で、『戦場にかける橋』だ。そしてクロサワ監督。映画を作りたいと興奮したものだよ。

ーー今回の作品は十数年前のアイディアに時代が追いついたと言われていましたが、逆に技術が進みすぎて苦労することは?

ブラッカイマー いや、僕たちは映画製作に制限を感じないよ。脚本家がベージの上に描くアイディアがあれば、その絵は実際に全部実現できると思っているからね。

ーーつまり何十年も前に比べて、今のほうが映画作りは楽しいですか?

ブラッカイマー そうだね。より力強い物語を作ることができる時代になってると思う。ツールとしてすぐそこに入手できるものが増え、前はライターが描いたことでも技術的にそれが出来ずに作らなかったことがたくさんあったから。

ーーリサーチはどのようにしてるのですか? 時代時代に合わせて人々に喜ばれる作品を作ってると思いますが。

ブラッカイマー いや、それはしていない。作品というものはとても時間がかかるので、出来上がってみると撮りはじめた頃と時代が変わっていたりする。かつてMGMはシリアル会社のゼネラルフーズの人間たちを引き抜いて、よくリサーチをしていたことがあったけれど、その手法は上手くいかなかった。映画が完成した頃には、すべての状況が変わっているからね。当然だよ。

ーーつまり、作りたいと思ったものを感性で作っていると?

ブラッカイマー そうだね。究極的には自分が観たい映画を作ることにはなるけれど、とはいえ作った作品はすべて、テストはしているよ。テスト用の観客が完成した映画に困惑したり、気に入らないところが出れば、修正したりする。だいたい、どの作品でも追加で撮影をしたり、直したりもしているものさ。

例を挙げると『アルマゲドン』という作品で、ブルース・ウィリス、ベン・アフレック、リヴ・タイラーが出ているアレね。それを観客に見せた時、ベン演じる役がリヴ・タイラーにプロポーズをするシーンで、そこで観客から「なぜ指輪がないの?」と待ったが入った。監督(マイケル・ベイ!)も僕も男性だから、そこまで気にしていなかったわけだ。なので指輪を登場させるという撮影を後から追加で行ったことがあったよ(笑)!

ーー実は、誰にも言っていないヒットの方程式などもお持ちなのでは?

ブラッカイマー そういう方程式はないよ(笑)。すべては脚本と、一緒に仕事をする人間によるものだ。僕としてはとにかく楽しめる娯楽性が高い映画を作りたいと思っているので、もしもそういう方程式があれば、今頃ハワイでマイタイでもやって、ほかの人間に方程式どおりに仕事をさせているさ(笑)!(取材・文=鴇田崇)

映画ジェミニマンは2019年10月25日(金)より、全国ロードショー。

ジェミニマン

出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライヴ・オーウェン ほか
監督:アン・リー
公式サイト:geminiman.jp
(C)2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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  • Axlcity
    3.4
    ウィル・スミスvsウィル・スミスの構成が面白い。ヴァンダムの『レプリカント』を彷彿とさせるようだった。 2019年の映画だが格闘シーンやチェイスシーンのCGの質感が正直気持ち悪くて観ててしんどいのがマイナス点。
  • userKx7DHOG59SN
    4
    有名な殺し屋はあるとき年齢の老いから辞めることを決意する。 すると政府は殺し屋を抹殺しようとする。 そこで気づき逃げる殺し屋だが、殺されそうになったとき、殺してくるのが自分のクローンであると気づく。 クローンは自分をクローンだと気づいておらずわ同じ顔、同じ性格全てが同じで自分がクローンと気づき、殺し屋に寝返る。しかしまたそこで新しいクローンの自分が殺しにくる。 自分対自分。そしてうその育ての親対クローンなどストーリーもよくわ見応えもあった。
  • 友紀
    -
    記録
  • イエス映画用
    3.3
    映画史レベルの技術的挑戦を詰め込んだ一本。 本作最大の売りは、4K・3D・120fps撮影。通常の映画が24fps(1秒24コマ)であるのに対し、本作はその5倍の情報量で撮影された。監督のアン・リーは「映画の未来を見せたい」と本気で考えていたそうだが、対応劇場が少なく、多くの観客は本来の映像で観ることができなかったという。 さらに若いウィル・スミスは若手俳優に顔を貼り付けたものではなく、20代当時の映像や写真を解析して作られた完全CG。今では珍しくなくなった若返り技術だが、当時としてはかなり挑戦的だった。 企画自体は1990年代後半から存在しており、当初はハリソン・フォード、メル・ギブソン、クリント・イーストウッドらの名前も挙がっていたそう。しかし当時は若返りCG技術が追いつかず、20年以上塩漬けになっていたという経緯も面白い。 物語自体は「現在の自分が若い自分と戦う」という王道設定で、SFアクションというより「年齢を重ねた自分自身との対話」に近い側面もある。 ただ正直、今回はiPad鑑賞だったこともあり、本作最大の武器である映像体験を十分に味わえなかった気がする。もし120fps対応の劇場で観ていたら、評価は4.0近くまで上がっていたかもしれない。 知らんけど。
  • すとんこ
    3.5
    Blu-ray所有(レンタル落ち中古367円)
ジェミニマン
のレビュー(31502件)