【ネタバレあり】上田誠『君は映画』撮影日誌《5日目・6日目》

FILMAGAでは、2026年6月19日(金)公開の映画『君は映画』上田誠監督による撮影日誌を連載形式でお届けします。

※本記事は映画『君は映画』監督・上田誠氏による制作日誌です。
※※本記事には『君は映画』のネタバレを含みます※※


(C) ヨーロッパ企画/トリウッド 2026

9月5日(撮影5日目)

シーン5マ マドカ、スクリーンに映ったチラシを見る

台風はそれたけど、雨。
元々は外のシーンを色々撮る予定の日だったけど、トリウッドにこもって撮影することに。スケジュールが崩壊するぎりぎりのところでもっている。
もちろんそういう有事も想定して、予備日含めてスケジュールを組んではいるんだけど。
『リバー、流れないでよ』に続いてまたも、悪天候に見舞われている。
屋内ロケを多めにしておいてよかった。してないと無理だった。

マドカがトリウッドで、スクリーンに映ったカズマを見ているシーン。
カズマは「下北沢エクソダス」という映画のチラシをもらっていて、それにはマドカのイラストが描かれており、ギョッとするマドカ。
こういうスクリーンを絡めて撮るシーンは面白いし、「君は映画」の醍醐味だ。

シーン12マ マドカ、スクリーンでミコシバの犯行を見る

同じくトリウッドで、ミコシバの三日月ロックでの犯行を見ているマドカ。
これもちょっとしたシーン。万理華さんの表情がくるくる変わるのがいい。
お互いがお互いの映画を観あう、という構造の映画なんだけど、現場でもまさにそういうことになっている。
マドカサイドとカズマサイドは、基本的に直接の絡みはないので、それぞれ別々の映画を撮っていて、それをお互いに観あっている感じ。
しかもトリウッドのスクリーンで、という贅沢。
そう、ラッシュを毎日のように映画館で観れるというのも、贅沢なことなんです。

シーン10カ・10カA トリウッドから店長に連れ出されるカズマ

シーン番号がいよいよ訳わからないことになってきている。
トリウッドにて、今度はカズマ先攻で、マドカとのスクリーンごしの会話シーン。
そこへ店長がやってきて、カズマが外へ連れ出されるまで。

トリウッドでマドカとカズマがスクリーンごしにしゃべる(絡む)シーンは、全部で4つあって、それぞれにテンションやトーンがちがう。
ので、カット割りのテーマも少しずつ変えている。細かく割ったり、長ーく撮ったり。
このシーンはできるだけ一連で見せたく、シンメと呼ばれる画角で、長ーく撮る。
なんだ4つか、ってお思いでしょうけど、全部で31シーンしかない。
ひとつのシーンが長い映画なんです。
どのシーンもそれぞれにヘビー。

シーン9カ カズマ、スクリーンでマドカの降板ドミノを見る

先日撮った、マドカと劇団員のグッドヘブンズでのシーンを、カズマがトリウッドで観る。これもちょっとしたシーン。
今度はマドカサイドの映像を、カズマ(というか海くん)が観る番。
お互いがお互いを高めあってる感じがする。
「ほう、そっちの映画はそんな感じね」って、ちょっとライバルっぽいところもある。

シーン7マ マドカとカズマの出会い

3回目のシーン7の撮影である。「マカマ」の3つめ。
つまりマドカのこのシーンを撮れば、シーン7がクロージングする。
3回撮って、やっとワンシーンが完成する映画なのであった。
嬉しい。いいシーンが撮れたというのもあるけど、それよりもうシーン7は撮らなくていいのだ、という嬉しさだ。

シーン18マ マドカとカズマ、ストーリー教えあい

シーン18も3回目。マドカクロージング。
一日トリウッドでの撮影はだめだ。映画が嫌いになりそうだ。
トリウッドでの「マカマ」や「カマカ」の撮影は、頭と心がじりじり蝕まれるので、一日3時間までとかにすべきです。今後の参考に。
よくわかんなくなりながらも、万理華さんは根性でふんばってくれて、シーン18も無事「埋まり」。映画って、シーンの必要カットがすべて埋まることを「埋まり」って言うんですよ。

それにしても同じシーンを3回撮らないといけない上に、前後のシーンとのジョイントもあるしで、考えなきゃいけないことが多すぎる。
DITの内山さんがいてよかった。いついかなるときも冷静に正確に、素材管理してくれている。物流倉庫の倉庫番みたいだ。
こさささんから咳が出はじめる。どうも映写室に長くいるのがきついらしい。
このあとも映写室に長くいるとこささんから出る、メカニズム不明のこの咳は、「映像咳」と呼ばれはじめる。

撮影終了後

終わったあと、スタイリストのエリーさんこと飯田さんと、衣裳の相談。
刑事役のギースさんの役をひっくり返したほうがいいような気になって、それにともなう衣裳の変更をお願いする。
無理を聞いてくださり、ばっちり対応してくださった。
今回の衣裳はたいへんポップだったりかわいらしくて素敵。下北沢映画なので古着っぽさもふまえたカラフルな感じにしたかった。
とくにマドカの劇団チームのスタイリングが気に入っている。バンドってよく映画になるけど劇団ってあんまりならないのは、きっと画にならないからで、けどとってもチャーミングな劇団像が作れたと思う。

帰り道、竹岡Pと歩きながら話す。
ここまでのちょっとした反省会。お互い初監督であり初プロデューサー。
竹岡さんは「こんなに皆さんに働いてもらっていいんですかね」と恐縮している。
もちろん基準と節度の中でやってもらっているけれど、ほんとに皆さん若くて腕利きで、働き者だ。そして竹岡さんもずいぶん働いている。

働くことは善きことだ、と端的に思う。
僕でいうと、ちゃんと休むことを考えなきゃいけない年齢ではとっくにあるし、周りに休んでもらったり、自分の働き方がプレッシャーを与えてしまうことも考えなくてはいけない立場だけど、それにしても愉しすぎてしまう。
ややこしさのラスボスであるシーン27を、ガストでカット割りしてたら朝5時になった。

9月6日(撮影6日目)

シーン28カ・マ CHICAGOでの出会い

朝、また同じカフェで、サンドイッチとコーヒー。
毎朝じゃないけど、撮影期間中はここで一日の作戦を練るのが、ささやかなルーティーンになっていた。

この日は、キャスト(ほぼ)全員集合デイ。
大群像シーンをやり、そしてラスボスのシーン27にも取りかかる。激重!
しかも街では「北沢八幡秋祭り」があり、神輿がやってくるという。
ありがたいことである。音が気になることである。

まずは古着屋CHICAGOさんでの撮影。
使わせてもらえるのは、開店の10時までの2時間。
どうしてもCHICAGOの、古着の森の中で出会いたかった。
お店のレイアウトをあれこれ動かし、古着で迷路をつくる。
その中をマドカとカズマが駆け、出会ったら、あまりにもよかった。
万理華さんも海くんも、「なんか照れくさいですね」って言っていた。さんざんギミックだ構造だってここまでやってきたから、全然このぐらい照れくさくてもいい。
ここからカット割りも解禁となる。映画の運び上、自然とそうなる。
時間に追われつつも、駆け抜けから出会いまでを、ぶじ撮り終えられた。

シーン29 両方の映画が路上で混ざる

(ほぼ)全員集合シーン。
CHICAGOの裏口から出た路上で、ふざけたような群像たちが、わいわいとやる。
日光にあられもなくさらされると、ちょっと学芸会っぽくもあって、映画ってこれでよかったっけと不安が襲うも、それより面白さが勝っている。
みんなで赤信号を渡る怖くなさ、みたいなのもある。
祭りの声が聞こえはじめた。にぎやかだ。合間を縫って撮影する。
御神輿が通るのを横目に、こっちは剣をかざし、銃を構え、謎の武器をそれぞれ手にしている。こっちも祭だ。君は祭。

群像劇の最後に、作業員役の永野さんが登場。
13人の群像を掌握し、おもしろ演技をやってのけてくれる。
そのあとのエレベーターのシーンもやる予定だったけど、群像シーンを優先したほうがよさげで、後日に持ち越し。

シーン31A 茶沢レジスタンス

これまた群像の、でたらめみたいなシーン。
なんていうか壮大すぎて、チープにならないかな、と心配していたけど、楽しくやれた。チープを熱量で押し返した、と見なしている。
あとでこのシーンを映画館で観る、マドカとカズマに笑ってもらおうと、全員で全力で茶番をやる。俺たちは映画だ、って感じ。

そのうち夕方になって、空が暗くなってきたけど、「空からヴァルヴァダムの艦隊が来てるから、暗くなってるんです」とかって、いい加減なことを言いながらやる。
ヨーロッパ企画メンバーの、藤谷・金丸・永野が、率先してくだらなさを引っ張ってくれている。

この映画は、どのシーンも「映画内映画」でもあるから、それを言い訳にして、ふざけたことや、思い切ったフィクションが、果敢にできる。
ちょっと自主映画みたいな気持ちで撮れるのが、この映画のいいところ。
タマルを演じる金子さんが、途中でサングラスをつけ忘れた。
「どこかで外れたことにしましょう」って言って、そのままOKにした。

シーン27マ トリウッドに両チームがなだれ込む

トリウッドに、マドカサイドとカズマサイドがそれぞれなだれ込み、群像と群像がスクリーンごしに出会う、という、ややこしさの極みシーン。マドカ先攻。
しかも凶悪なほどに長い。
ここはしっかり腰を据えて取り組むべく、まずは上田がキャストスタッフ全員を集めて、これからやることの講義。
決して簡単な内容ではなかったけど、みんな咀嚼してくれた。
特に各スタッフの若い助手たちが、むしろ理解が早くて各チーフたちに教えたりしていたのが感動的だった。

そしてご飯休憩をかねつつ、スタッフで割り打ち(カット割りの打ち合わせ)。
信じられないことだけど、ここから4時間ほど割り打ちをやっていた。
我々は100元方程式でも解いていたのだろうか。
ほんとに、何かトラブルが起きたとか、揉めに揉めたとかでもなく、カット割りと撮り順をひたすら整理していたら、4時間かかった。
その間、キャストたちはもちろん待機しているわけで。
「この待ち時間、普通だったら何なのって思いますけど、まあこの映画ですからねえ」って言いながら(海くん)、みんな4時間、のんびり和気あいあいと待っててくれた。
今考えるとキャストもスタッフも異常だ。
そういう季節だったのだ。

シーン27は、長いけど3つのブロックに分かれていて、マドカとカズマのシーン(A)、両チームのなだれこみ(B)、混乱の中でのマドカとカズマの会話(C)。
まずは初めてのキャストたちに、慣れているマドカとカズマが、Aの練習をやって見せる。こういうふうに作って行くのですよ、と。
ふむふむと理解した一同もまじえて、BとCの練習へと。
スポーツでいうコートチェンジをするように、練習場所を両チームでひっくり返しながら、互いの練習に互いにお付き合い(説明不能)。

そして、先攻はマドカサイドなので、まずはBの、カズマサイドの銃撃戦の裏でやっている、フォースでの吹っ飛び、みたいなシーンを撮る(説明不能)。
それからCも撮って、マドカ・カズマ以外には先に帰ってもらい、ふたりは居残って、Aのマドカサイドを撮る。

めちゃくちゃ撮った!

◆作品情報

作品タイトル:『君は映画』
出演:伊藤万理華 井之脇海
藤谷理子 金丸慎太郎
前田旺志郎 菊池日菜子 金子鈴幸 三河悠冴 今井隆文 / 尾関高文(ザ・ギース) 高佐一慈(ザ・ギース)
石田剛太 酒井善史 土佐和成 角田貴志 諏訪雅 永野宗典
監督・脚本:上田誠
製作:トリウッド ヨーロッパ企画

配給:TOHO NEXT、トリウッド
公式HP:https://www.europe-kikaku.com/kimiei
X・Instagram :@kimihaeiga0619

FILMAGAでは上田誠監督による『君は映画』制作日誌を連日公開予定。

◆予告

(C) ヨーロッパ企画/トリウッド 2026
※2026年6月16日時点の情報です。

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