1989年カナダのケベック州モントリオールで生まれたクザヴィエ・ドラン。6歳の頃から子役として映画やドラマに出演。2009年19歳で監督・脚本家としてデビューし、国際的に高い評価を得る。以降の作品でも数々の賞を受賞し、カナダの俊英として注目を集める。2020年3月13日には最新作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』が日本公開を控えている。今回は、そんなグザヴィエ・ドランの魅力に触れるべく、彼の監督作品7本をまとめて紹介。
『マイ・マザー』(2009)
17歳のユベール(グザヴィエ・ドラン)は、母親と二人でケベックの町に住んでいる。しかし母親からの小言を聞かされる日常にうんざりしていた。さらにゲイである自身のセクシュアリティにも悩んでおり、苛立ちと憎悪は日に日に募るのだが……。
フランス語圏の若手監督として世界中からのその才能を称えられているグザヴィエ・ドランの監督デビュー作となった記念すべき本作。ドラン監督特有の映像表現がすでに顕著であり、家族関係やセクシュアリティに煩悶する高校生の姿を自ら等身大の演技で演じきり、その才能が早くもカンヌ国際映画祭で注目された。
『胸騒ぎの恋人』(2010)
親友のマリー(モニア・ショクリ)と同じ彼、ニコラ(ニールス・シュネデール)を好きになってしまったフランシス(グザヴィエ・ドラン)の視点で描かれる。押し寄せるのは、もどかしさ、ほろ苦さ、ジェラシー、探り合い、駆け引き……。出会いに始まり、涙で終わる、切ない恋心。
本作でグザヴィエ・ドランは、恋に落ちる過程の検証を試み、片思いの苦悩に肉薄する。二人は内心ニコラにぞっこんなのに悪口を言って相手の腹を探ってみたり、ニコラの思わせぶりな仕草に期待を持ったり……。ティーンなら誰もが味わうポエティックなカオスを、ポップなカラーアート、ヴィンテージの服、クラシックな音楽で再現。グザヴィエ・ドランならではの異形な恋のスタイルがスクリーンに溢れ出す傑作ラブストーリーとなった。
『わたしはロランス』(2012)
モントリオールに暮らす国語教師のロランス(メルヴィル・プポー)は、かねてから女性になりたいと切望しており、その想いを恋人のフレッド(スザンヌ・クレマン)に打ち明ける。戸惑いを隠せないながらも彼女はロランスの一番の理解者として周囲や社会の偏見に屈することなくともに生きていくのだった。
10代ですでにカンヌ国際映画祭でその才能を見出されたグザヴィエ・ドランの監督第3作目となる本作は、若き才能の大きな成果として大輪の花を咲かせている。自身のセクシュアリティに悩む主人公ロランスをフランス映画界の実力派俳優メルヴィル・プポーが熱演。母親役を演じる名女優ナタリー・バイの存在感も大きな見どころだろう。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『トム・アット・ザ・ファーム』(2013)
恋人のギョームを失ったトム(グザヴィエ・ドラン)は、彼の故郷であるケベック州の田舎町を訪れる。ギョームの家族たちは息子に男性の恋人がいたことを知らなかったが、兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)だけはトムの存在と弟との関係性を知っていた。隠された過去、罪悪感と暴力、危ういバランスで保たれる関係、だれも訪れることのない閉塞的な土地で静かに狂っていく日常……。
『わたしはロランス』(12)の清新な映像感覚が世界中を魅了した若き天才監督グザヴィエ・ドランによるサイコ・サスペンス。これまでにないバイオレンス描写が鮮烈な印象を残し、全編に漲るサスペンスフルな感覚は巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の系譜に連なる。
『Mommy/マミー』(2014)
シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)にはADHDを持つ15歳の息子スティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)がいる。入居していた施設で騒ぎを起こし追い出されたスティーヴを引き取り新たに二人暮らしを始めるのだが……。
新作が発表されるたびに世界中の注目を集めるグザヴィエ・ドランの監督第5作目となる本作。ADHAを抱える少年の閉塞した心理状態を表現するため画面アスペクト比1:1の正方形を採用。そうした斬新な技法が大きな話題となり、第64回カンヌ国際映画祭では巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督とともに審査員特別賞を受賞した。
『たかが世界の終わり』(2016)
人気作家のルイ(ギャスパー・ウリエル)は、自分がもうすぐ死ぬことを家族に伝えるために12年ぶりに帰郷する。母マルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好きな料理を出し、家族は久しぶりに団欒を囲む。ルイはデザートが出る頃に告白しようとするのだった。
劇作家ジャン=リュック・ラガルスの戯曲『まさに世界の終わり』をグザヴィエ・ドランが映画化。意味のない会話を延々繰り返していく家族を演じるのは、ギャスパー・ウリエル、ナタリー・バイ、マリオン・コティヤールらフランス映画界の実力派勢。第69回カンヌ国際映画祭ではパルムドール候補となり、見事グランプリを受賞した。
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2018)
29歳の若さでこの世を去った人気俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)。10年後、ドノヴァンと100通に及ぶ手紙のやり取りをしていた若手俳優のルパート・ターナー(ベン・シュネッツァー)が本を出版し、ドノヴァンの死の真相を明かそうとするのだが……。
『わたしはロランス』や『Mommy/マミー』などで世界的な評価を獲得してきた若き俊英グザヴィエ・ドランの監督最新作となる本作。第71回カンヌ国際映画祭で、グザヴィエ・ドラン自身が仕上がりに満足がいかず、再編集を望んだだめプレミア上映中止となったり、批評家からの酷評を集めるなど、既に様々なドラマがある本作だが、過去を回想し真実が明らかになっていく全体の構成からはドランの真骨頂が窺える。日本では2020年3月13日公開。
【文・チャーリー】
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※2020年10月28日時点のVOD配信情報です。