才能あふれる若き映画監督グザヴィエ・ドラン。何故人々は彼に惹き付けられるのか

映画と現実を行ったり来たり

ne22co

映画監督グザヴィエ・ドラン、FILMAGA読者の皆様の中にもファンの方は多いと思います。

8月6日に公開された『神のゆらぎ』に合わせ、初めて彼を知る方はもちろん、既にグザヴィエ・ドランワールドにどっぷり浸っているファンの方にも、彼の多岐にわたる活動をご紹介。その魅力をお伝えしていきたいと思います。

監督としての華麗なるデビューから現在までの活動

グザヴィエ・ドランは2009年、初監督作品『マイ・マザー』が第62回カンヌ映画祭にて上映され、19歳という若さで華々しいデビューを飾りました。

マイマザー

(c)2009 MIFILIFILMS INC

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

 

その後の制作作品は軒並み様々な映画祭で賞を受賞。世界中で上映され、今世界で最も注目されている若手映画監督の地位を確立しています。(以下制作作品と主な受賞履歴)

2010年『胸騒ぎの恋人』(第63回カンヌ国際映画祭、ある視点部門上映)

胸騒ぎの恋人

(c)2010 MIFILIFILMS INC

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

 

2012年『わたしはロランス』(第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門上映、クィア・パルム受賞)

 

2013年『トム・アット・ザ・ファーム』(第70回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門上映、国際批評家連盟賞)

 

2014年『Mommy/マミー』(第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門上映、審査員賞)

今年2016年のカンヌ映画祭では『juste la fin du mondo/It’s Only The End Of The World(原題)』がグランプリを獲得しました。

日本でも2017年の2月11日に公開が決定していますが、先日フランス版予告編が公開され、彼の作品ではおなじみのアーティスティックな映像美、これまでに無い豪華なキャスティングに注目が集まっています。

彼の受賞歴をざっと紹介しましたが、ご覧頂いた通り、2009年のデビューから、制作した全ての作品がカンヌをはじめ世界各国の映画祭にて上映、名だたる賞を獲得しています。

そして彼は2016年の現時点で26歳。現在はハリウッドデビューとなる次回作『The Death and Life of John F. Donovan(原題)』の撮影を行っており、日々進化を遂げるその才能に目が離せません

監督だけではない、溢れ出す才能

そんなグザヴィエ・ドラン、監督以外にもその活動は多岐にわたります。

自身の作品では監督以外にも脚本、制作、主演、編集、衣装、ヘアメイク、音楽を手がけ、エンドロールでは彼の名前がズラッと羅列されています。

色彩や音楽、各シーンにおける絵画的な画面の切り取り方へのこだわりはどの作品にも共通し、一つの映画作品の中にちりばめられた何十ものアート作品を観ているかのようです。

自身の監督作品以外でも幼い頃から俳優として活躍しており、映画やテレビ番組に出演していました。

昨年日本でも彼が主演を務めた『エレファント・ソング』が公開されています。

エレファントソング

(C)Sébastien Raymond

ドランは「この役は自分自身だ」と言っており、精神病棟で起きた失踪事件で周りの人間を言葉巧みに翻弄する青年を演じています。

母親との確執で心に闇を抱える青年が周りの人間を巻き込んでいく様子、彼の不気味ながらも寂しげな表情、ドランが自身の体験と重ね合わせて演じた役柄に、引き込まれる事間違い無しの作品です。

そして8月6日に公開された『神のゆらぎ』。

神のゆらぎ

(C)2012ProductionsMiraculumInc.

「自分が出演したい作品が無いので監督を始めた」と言う程に自身の出演する作品に対してこだわりを持つ彼が出演を熱望し、信仰する宗教と愛の間で揺れ動く青年の役柄を演じています。

グザヴィエ・ドランが自身の活動を通じて世界に伝えたいこととは?

彼は自身がゲイである事を公表していますが、上述した通りこれまでの制作作品においても自身の体験に基づいたものが多く、社会的弱者や、自分自身とは違う存在に対して理解を示す事(否定するのではなく容認する事)の難しさ、大切さが作品のテーマになっている事が多いです。

以下は2015年、『Mommy/マミー』の審査員賞受賞スピーチで彼が語った言葉の抜粋です。

誰しも自分が好むことをする権利があるにも関わらず、あなたのやることを嫌悪し、あなたを忌み嫌う人たちもいるでしょう。でも夢を持ち続けてください。そうすることで一緒に世界を変えられるからです。人々を感動させ、笑わせ、泣かせることで、人々の意識や人生を、ゆっくり変えていくことができるのです。政治家や科学者だけでなくアーティストも世界を変えられるのです。望むことに限界はなく、夢を抱き、挑戦し、努力し、あきらめなければ、どんなことでも実現可能なのです。

このスピーチからも彼の強い信念を感じる事ができ、何故これほどまで彼の作品が人々を惹きつけるのかが分かるのではないでしょうか。

『神のゆらぎ』はシネマカリテでの特別公開から全国順次ロードショーです。グザヴィエ・ドランがこの作品において、俳優として表現したかったテーマは何だったのか。そんな視点で作品を観てもおもしろいかもしれません。是非劇場で体感して頂きたいです。

 

『神のゆらぎ』についてはこちらの記事でも解説しています。ぜひ合わせてチェックしてみてください!
若き天才グザヴィエ・ドランが惚れ込み自ら出演を熱望!『神のゆらぎ』の秀逸な脚本

 

※2021年4月27日時点のVOD配信情報です。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS

  • foxiiikxxs
    -
    グザヴィエ・ドランの恋人役が女性?!と思ったら エホバの証人は同性愛禁止だからなのか 最後のセリフが深かった〜皮肉を込めて〜
  • benno
    3.8
    最初に、ドランの監督引退宣言はとてもショックで残念っს…ただ俳優業は継続とのことなので一安心!!…今後また監督に復帰してくれることを期待します𐦊ෆ* 今作の原題『Miraculum』はラテン語の『奇跡』…。 奇跡を待つこと…それもひとつの運命…。 輸血の出来ないエホバの証人の信仰者たち…輸血をすれば助かる命…しかし彼らにとっての命よりも大事な信仰とは…?? ただひたすら奇跡を願うだけなのでしょうか…?? 信じることは自由…ただひとたび戒律を破ると排斥…とても排他的で、町で会っても無視されます…選択肢の無い世界、違う意見を享受出来ないのも理解し難い信仰世界です…。 想像以上にエネルギーを要する作品でした…。 今作は様々な決断を前に心のゆらぎを持つ4組の人々のストーリー…其々のストーリーが時間軸を超え行ったり来たり…そして墜落する運命にあるキューバ行きの飛行機へと収斂していきます…。 ✧︎ 末期の白血病を患うエティテンヌ(グザヴィエ・ドラン)と彼に付き添うフィアンセで看護師のジュリー(マリリン・キャストンゲ)…ふたりともエホバの証人の信仰者です…。 ✧︎ 老齢でありながらも情熱的なダブル不倫を続けるバーテンの男性とクロークの女性…。 ✧︎ お互い、既に愛情もなく偽りの暮らしを続けるギャンブル狂の夫とアル中の妻…。 ✧︎取り返しのつかない過ちを償う為にドラッグの運び屋となったひとりの男性…。 ドランが脚本に惚れて出演を希望しただけあり…見事な構成と展開…4組其々のストーリーと時間軸の操作は一瞬複雑そうに見えますが、素晴らしい劇伴と共にとてもナチュラルに入り込めます… 音楽のセンスもとても好き… ♪ Get Thee Behind Me Satan / エラ・フィッツジェラルド ♪ One of Those Summer Days / ライ ♪ Pair of Wings / Frankie Rose … etc. 其々の人物が交錯する空港のエスカレーターや待合室のシーンが然りげ無く美しい…。 そしてジュリー役のマリリンの透明感が天使のように美しい…看護師として飛行機事故で唯一生き残った、まさに"奇跡"の人物を介護しながら、一方でひたすらに"奇跡"を信じてエティテンヌに寄り添い続ける…彼女の心のゆらぎがあまりにも辛く苦しい…。 「飛行機が落ちるのは…全能の神がいないせいだ」 真っ向から信仰を否定され…そして、ジュリーはある決断を下します…。 自分の決断が知らない誰かの運命を変えてしまうかもしれない…人間に許された最良の決断とは…??
  • じゃんくショック
    3.6
    良い邦題 逆マグノリア
  • あだも
    3.4
    選択によってその後の運命が大きく左右される 8人の男女の群像劇 最終的なストーリーの終着点が綺麗にまとまっている 実は原題が「奇跡」らしい。う~む、感慨深い エホバの証人の信者であるエティエンヌ(ドラン)は白血病を自覚しながらも、信仰の為に治療をしない 同じエホバ信者のジュリーは説得しきれず、弱る彼を見て複雑な表情を浮かべる そしてジュリーが働いている病院に飛行機事故の生存者が運ばれる 患者と血液型が一致したジュリーだったけど、信仰があって輸血が出来なかった 決断をする苦しさが何とも言えん 正しい選択ってなんなんだろうね・・・ どうなるかはわからないけど、どうするか決めるのは自分しかいない エホバの証人はなんとなくしか知らんけど、結構ルールに厳しいのね 死後のことを考えて生きるっていうのは驚き
  • ぴぃ
    -
    ドランの作品は余韻がすごい.. 刺さるものがあったのに言語化出来ない。 ✍︎ 群青劇 ✍︎ エホバの証人
神のゆらぎ
のレビュー(3398件)