2014年に日本公開された『神さまがくれた娘』は、もちろんわざわざ日本で公開されるほどなので良く出来た作品だと言えます。主演のヴィクラムは本来、激しいアクションを得意とする肉体派俳優ですが、本作では脳に障害を持ち6歳児程度の知能しか持てない男を見事に演じきっています。
物語は『アイ・アム・サム』にそっくりだけど。
パクリはインド的ローカライズ
インド映画を見ていると「40歳になっても童貞の男が結婚を目指す」というコメディや「不仲な両親を出会いからやり直させるためにタイムスリップする息子」といったSF作品など、デジャブを目の当たりにしたような作品に遭遇します。インド映画界において「オリジナリティはあれば良いに越したことは無いけど無ければ借りてきていいもの」くらいの意識なのかもしれません。
ただ、最近はグローバリズムの波に押し寄せられて、キチンと許可を取ったリメイク作品も生まれています。
『Ghajini』はそんな風潮が訪れる、少し前の作品。
出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Ghajini_%282008_film%29
『きっと、うまくいく』が日本でも大ヒットしたアーミル・カーンが主演を務めます。妻を殺した犯人を追う主人公、というシンプルな物語です。しかし、主人公の特徴が問題です。
妻を殺された際に主人公も頭に深い傷を負ってしまいます。その後遺症で短い間の記憶しか保てなくなり、犯人への手がかりを忘れないよう常にポラロイドカメラで記録を残し、さらにキーワードを身体中に刺青にして彫っています。
あの『メメント』をパクっているのです。しかも3時間の長尺で。さらに、悲しさは含ませているもののハッピーエンドとして終わります。果たしてそんなことが可能なのでしょうか?
やれば出来る! ハッピーエンドの『メメント』
まず『メメント』といえば10分ごとに遡る時系列が有名ですが、本作は「犯人探し」と「妻が殺害されるまで」が同時に語られます。時系列の入れ替えは通常の映画でもよく見る「フラッシュバック」程度です。この時点で『メメント』とは全く別のモノに変質しています。
また、アイデアはパクっても展開に大幅なテコ入れをするのがインド流です。本作はオリジナルの持つ復讐の無情感ややるせなさはありません。その替わりに、巨悪に立ち向かう男の燃える復讐劇として組み立て直されているのです。
ここに至ると制作者の「オレが『メメント』リミックスしたるわ!」という意気込みさえ感じます。
その意気込みは中盤に用意された、主人公を追い詰めるオリジナリティあふれるピンチにも表れています。オリジナル『メメント』を見たことのある人ならアゴが外れるほど驚くでしょう。そのピンチとは……
「犯人グループに捕まった主人公。ポラロイド写真は全て燃やされ、刺青も全て塗りつぶされてしまう。」
これがインド流だ!
【公式トレイラー】