遂に日本上陸!カルト教団への潜入を描くPOVホラー『サクラメント 死の楽園』

感受性複雑骨折

寂々兵

8ポスター

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ウガンダ終末教団、ヘヴンズ・ゲート、太陽寺院など、世の中には闇の深そうな宗教団体の集団自殺(あるいは殺人)が多々あります。

中でも1955年に設立され、1978年に教団員914名が集団自殺を遂げた「人民寺院」はカルト教団の元祖にして最凶と言われています。

そんな「人民寺院」をモチーフに、タイ・ウエストが監督、イーライ・ロスが脚本・製作を務めたPOV形式のホラー映画『サクラメント 死の楽園』が11月28日より公開しました。

あらすじ

 

カメラマンのパトリックはある日、行方不明になっていた姉キャロラインから「田舎で友人と共同生活を送っている」という趣旨の手紙を受けとります。不審に思ったパトリックはマスコミ関係の友人サム、ジェイクと共に、その共同体に潜入取材をすることに。

飛行機やヘリを乗り継いで到着したのは「エデン教区」と名付けられた共同施設。キャロラインや他の人物たちが「ファーザーのお陰で楽しく暮らしている」とみなが口を揃える怪しさ全開の町です。

異様な雰囲気を感じ取りながらも一見平和なこの町の取材を続ける彼らの元に、とある女性が「ここを出たい、助けて」という手紙を渡したことから映画は急展開を迎えます。

そもそも「人民寺院」ってなに?

8ジョーンズタウン

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%AF%BA%E9%99%A2

「人民寺院」とは1955年、ジム・ジョーンズによってアメリカのインディアナ州で設立された宗教団体です。

当初は差別反対運動などに尽力し、社会からも大きな注目を集めていましたが、次第に団体の独裁体制や不審な資金稼ぎがマスコミに報じられ、この頃からジョーンズも薬物使用などによっておかしくなっていきます。

その後、南アメリカのガイアナ共和国へと移住した人民寺院は1973年、土地を買い取ってジャングルを開拓し、外海から完全隔離した自給自足の楽園「ジョーンズ・タウン」を作り上げました。

『サクラメント 死の楽園』は主役の3人がこの街を訪れるところから始まります。

既に映画化されていた「人民寺院」の全貌

1980年には、「人民寺院」をモチーフにしたドキュメンタリー風の社会派映画『ガイアナ 人民寺院の悲劇』が公開されています。

パナマ・メキシコ・スペインの共同製作、監督は『サンタ・サングレ/聖なる血』の製作総指揮をはじめ、日本未公開の冒険映画やアクション映画を製作してきたルネ・カルドナ・Jr。見るからにカルト臭が漂う作品ですが、実際には驚くほど地味な映画です。

物語は史実に忠実に作られています。

自称「神」の教祖ジョンソンがアメリカを捨て、究極の楽園を作り上げるべく南米のガイアナに土地を購入し、「ジョーンズ・タウン」という教団施設を作り上げて信者を移住させます。

始めは悠々自適の理想郷生活に満足げだった信者たちも、徐々に暗雲立ち込める教団の不穏さに気付いてきます。休みのない炎天下の労働やプライバシーも何もない寝室、「あれ、おかしくない?」と気付いたときにはもう最後。不条理な規律を破ると女子供も容赦なく拷問、恥辱の限りを尽くされます。

全体的に弛緩した雰囲気の映画ですが、ジャーナリストが潜入して銃撃戦へともつれ込む終盤から圧巻のラストにかけての展開はかなりの見もの。

勿体ないのは、本作はなぜか『ナチ女収容所』など「女囚ファイル」シリーズ扱いになっているため、一部レンタルサイトや店舗などでエロス映画扱いされてしまっているところ。確かに懲罰シーンでサディズム溢れる演出は一部ありますが、本質は硬派な社会派ドラマなので、手が伸びなかった方はこれを機に鑑賞してみてください。

おわりに

POVホラーは数多く製作されていますが、本作は今までと少し違うカラーのようです。

本国アメリカのホラーサイトでも2014年のホラー映画ベスト10に選ばれるなど、まずまずの評価を受けているようです。

センセーショナルな題材だけに、期待したいですね!

 

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※2021年4月27日時点のVOD配信情報です。

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  • みやもと
    3
    人民寺院の事件の事は知っていたので、結末は予想通り。 すっかり陶酔しきった信者の、こちらの言葉は何一つ届かないんだな感がこわい。 心の拠り所として宗教が存在していることはいいと思うけど、何事も行き過ぎると良くない。という当たり前の事を再確認。
  • すな
    3
    例の宗教団体にVICEが突撃した話。
  • ネジ
    3.5
    本気で善意で人々の為にと思っている所が怖い。 善意だから躊躇がない。 躊躇して欲しい。
  • すめぴ
    4.5
    元になった事件の動画解説を見たことがあって、なんか既視感あるな〜と思いながら見てたら同じ事件でした。 最近日本の新興宗教のトップがさくさく死んで、なんでこんなに信者がいるんだろ?と考えてたところなのでめちゃくちゃタイムリー。 私は無宗教だから、生活まるごと宗教に捧げる感覚は分からない。 何か辛いことがあって宗教に頼って、気持ちが救われるならそれは正しい活用法だと思う。けど、それが自分の生活のすべてになって、財産を投げ打って没入すべきものかと言われると疑問だなぁと思う。 こんなに技術が発展した現代において、なんで科学に頼らないんだろう?なんで令和なのに古来から続く精神論なんだろう?と近頃常々考えてました。 映画の中で、インターネットが恋しくない?と聞かれて、信者が「そんなもの、人類の進化の過程では存在しなかった」と答えているのが印象的でした。そっか、この人たちは科学に頼ることが好きじゃないから宗教に価値を見出したんだなと、人って色んな考え方があるんだなぁと思いました。 ちなみに元ネタの事件では、教祖が日頃から自殺の練習させたり、米軍が狙ってるとか言い聞かせて統治してたみたいですね。用意周到すぎる。 信者に飲ませてた液体はぶどうジュースに毒混ぜたものだったみたいで、映画の演出上毒々しい赤になったんかな〜と思いながら観てました。
  • 1999bayc2
    4
    70
サクラメント 死の楽園
のレビュー(2845件)