『サマーウォーズ』を深掘り考察!映画の世界観と2020年の現実世界を比較すると…?印象的な“朝顔”の意味とは?【ネタバレ】

アニメの風通しがもっと良くなりますように

ネジムラ89

2009年に公開された映画『サマーウォーズ』を2020年の今観直すなら知っておきたいポイントとは?劇中で印象的に描かれる“朝顔”が持つ意味とは?ネタバレありで徹底考察!

夏になると観たくなる映画。そう聞かれたら、皆さんは何を思い浮かべますか。私は何と言っても、サマーウォーズを思い浮かべます。

2009年に公開された本作は、近未来のハイテクなデジタル世界と、田舎の大家族を繋いだ異色の長編アニメーション作品です。本作は『時をかける少女』や『バケモノの子』などを手がけた細田守の初のオリジナル作品でした。『サマーウォーズ』に登場する夏の青空と緑の自然風景はまさに夏らしい夏を思わせる綺麗な情景でした。

そんな『サマーウォーズ』は、公開から早くも10年の時を経ていることをご存知でしたか。

※以下、映画『サマーウォーズ』のネタバレを含みます。

映画『サマーウォーズ』(2009)あらすじ

天才的な数学力を持ちながらも、内気な性格の健二は、憧れの先輩・夏希に頼まれ、夏休みの間、彼女の実家でフィアンセとして過ごすことに。そんな夏休みに、健二はインターネット上の仮想空間「OZ」で起きた事件に巻き込まれ、その影響が現実世界にも影響を及ぼしていた。謎の人工知能“ラブマシーン”の暴走によって生じた世界の危機を救うため、インターネット上の仮想空間「OZ」と現実世界、両方の世界で奮闘する。

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OZまでもが現実の物に?10周年記念プロジェクト

2019年に10周年を迎えた『サマーウォーズ』は、10周年記念プロジェクト「UPDATE!」という企画を実施しました。タイアップCMの制作や、新規コラボグッズの制作、記念イベントの実施や4DXでの劇場公開など、盛りだくさんの企画となっていました。

中でも衝撃だったのが、作中に登場する仮想世界OZを現実にしてしまおうという試み自身の着せ替えアバターを制作できるアプリケーション「VRoid」とのコラボ企画で計画されたのが、「SUMMER WARS OZ on VRoid powered by pixiv」です。この企画は、「VRoid」で制作したアバターを使って、『サマーウォーズ』で登場したOZの世界を自由に飛び回れるというもの。

映画の場面を再現した写真を撮ることができたり、キングカズマのアバターが登場したりといったファンには嬉しい要素が盛り込まれていました。驚きなのは、この3D世界というのが『サマーウォーズ』の撮影で実際に使われた3Dモデルデータを使っているということ!

なんでもできる設定だったOZの世界の様な自由度はありませんが、ある意味、本物のOZの世界と言っても間違いではないのです。

『サマーウォーズ』の世界に時代が追いついてきた

さすがに出来ることに限界のあったOZの再現企画ですが、果たしてOZの世界は夢物語なのでしょうか。
答えは否。サマーウォーズ
近未来として描かれてきた多くの出来事は、10年という時を経て、いくつもが現実のものとなっています。

例えば作中では一瞬で外国語を翻訳する機能が登場し、海外の人との交流が気軽にできていますが、一瞬とまではいかないものの、小型の自動翻訳機やアプリケーションなど、翻訳機能のスピードも精度もどんどん増しています。

また栄おばあちゃんの身体状態をOZを経由して、管理していたことも作中では描かれますが、医療業界においても遠隔での診療やデータの収集など、医療IoT(Internet of Things)がどんどん進んできています。

OZのように、それらを統括する存在がないので、OZが空想上の物のように見えてしまいますが、決して映画で描かれる多くは夢物語ではないのです。

『サマーウォーズ』に近づいてきたアバターの存在

サマーウォーズ』の魅力の一つが、個性豊かでデザインもバラバラでユニークなアバターたちの存在です。2018年には『レディ・プレイヤー1』が公開されて、自分ではない仮想のキャラクターになる人々が描かれていましたが、あの映画を観て『サマーウォーズ』を思い出した人も多いのではないでしょうか。思えばこのアバターの要素も将来を予見していた要素の一つとして言えます。

公開当時の2009年にも、アバターというものはすでに存在しており、SNSやゲームなどで自分の分身となるキャラクターをメイキングできる様にはなっていました。しかし、2010年代に入り、このアバターも次の時代に突入しています。キズナアイをはじめとしたバーチャルユーチューバーが、会話をしたり、歌ったり、踊ったり、ゲームをしたり、そのままの意味で分身として活躍する時代がやってきています。

現実が『サマーウォーズ』の世界を追い抜いた?

そして、『サマーウォーズ』が現実世界を追い抜いてしまったポイントもあります。それは携帯電話。『サマーウォーズ』で登場するキャラクターが使用する端末は、2010年代を目前とする時代感を表しています。今となっては一般的となっているiPhoneシリーズですが、日本で初めて発売されたのは2008年のiPhone3Gでした。

『サマーウォーズ』が公開されたのがその翌年なので、『サマーウォーズ』はまだ一般的に普及する前に公開された作品だったのです。なので、登場人物の多くがまだ折りたたみ式の携帯電話を使っています。そんな中で唯一iPhoneを使っている登場人物が侘助。アメリカのカーネギー大学で研究をしていた国際派ということが、最新のガジェットを常用しているところからも分かります。

もし、今『サマーウォーズ』が制作されるとしたら、登場人物の多くがタッチパネルをスライドして操作し、人によってはタブレットを使っていたり、子供達はNintendo Switchで遊んでいたでしょう。

印象的なモチーフとして登場する“朝顔”

この様にハイテク技術の世界を描いた『サマーウォーズ』を観ていると、多くのことを想定して練られた作品なのだということを、改めて痛感します。しかし忘れてはいけないのが、その高度なデジタル化していく世界を賛美するだけの映画でないことです。冒頭で自然の描写が印象的であることをあげましたが、『サマーウォーズ』では仮想世界だけでなく現実世界での繋がりも、豊かなアイディアで描いています。

そんなアイディアの一つとして、作品を観る上で気にして観て欲しいモチーフが“朝顔”です。サマーウォーズ』では作品の随所に朝顔が登場します。栄おばあちゃんが着ている着物や夏希が渡される浴衣は朝顔の柄をしています。そして、陣内家の縁側には無数の朝顔が並んでいます。

シーンによって、朝顔は開いていたり、閉じていたりするのですが、これが映画の展開に合わせて様子を変えています。朝顔の花言葉は「結束」「愛情」そして「固い絆」。この朝顔は、時に栄おばあちゃんの心情を表し、時に陣内家の絆を表現しているように思わせます。

例えば、亡くなった栄おばあちゃんに涙する夏希の手を、健二が握るシーン。そこには無数の朝顔が並んでおり、そこに居ない栄おばあちゃんを思わせるシーンとなっています。また栄おばあちゃんが亡くなってしまい、家族をまとめ上げる存在がいなくなったクライマックスの戦いで、家族のアバターを背負って戦うのは夏希です。

実は冒頭で、栄おばあちゃんから夏希に浴衣を渡されるシーンがありましたが、栄おばあちゃんの役割を夏希が継承するという暗示でもあったわけです。その他にも、多くのシーンで朝顔が登場しているので、ぜひ気にして観てみると面白いです。

気にしてみる視点が違えば、また新鮮な気持ちで観ることが出来る深みのある映画『サマーウォーズ』。なんども観たという人も、まだ一度も観たことがないという人も、この2020年に観てみることで特別な体験となるのではないでしょうか。

(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

※2020年5月20日時点の情報です。

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  • はるぽん
    4
    記録
  • 拓風
    3.5
    主人公は普通の高校生。 惜しくも数学オリンピック日本代表になれなかった主人公は、夏休みを世界的に普及している仮想ネット空間「OZ」のメンテナンスのバイトをして過ごしていた。 そこに美人の先輩が登場し、先輩の依頼で彼氏のフリをして、長野の彼女の田舎を訪れることになる。 名家である実家で、その大家族と「彼氏のフリ」をして過ごす主人公。 ある夜、メールで送られてきた数式を解いたことによりとんでもない大騒動を引き起こすこととなる。 「時をかける少女」と同じスタッフが送るということで期待していた作品。 実は見る前からタイトルと舞台で、あの合戦つながりかなとは思ってました。 確かに突っ込みどころはたくさんあるかと。 ネット空間の有様、それに頼りすぎた世界、ややドラゴンボールなネット空間での戦い、最終決戦のあの勝負など。 でも、そんなことはどうでもいいです。笑 期待通り、爽やかで、鮮やかで、心躍って、感動できる作品。 ただ、「時をかける少女」にあった切なさはありません。必要ない内容でしょうから。 その代わり、登場人物の表情の豊かさ、多数の登場人物による賑やかさ、という前作に無かった部分が印象に残ります。 見終わった後、一緒に見た友人は、おばあちゃんが各方面へ電話をしているところで感動したとか。 僕個人は、最後の戦いに向かう大家族の一致団結、後に居並ぶその面々に感動し、そこからその想いが他のみんなへつながっていくと言う、いわば用意されていたであろう「感動のしどころ」に見事にヒットしてしまいました。 あとは、ある事件の翌日、みんながそれぞれ縁側にいる場面を、カメラを流しながら写す場面。 夏のまぶしい空や光に対比するように、影で見せる室内と家族。 それはまるで心情を表しているようでもあり、あそこの映像は心に残ります。 声を演じる人たちも、聞きなれた声優さんでなく、逆にパッと顔が出てきにくい(個人的印象)俳優さんを使っていて、それも前作に続いて良い印象。 「時をかける少女」とは違うベクトルで、同じくらいの感動を味わえた作品でした。
  • yuki
    3.8
    これ見なきゃ夏は始まらないよ
  • 10star
    4.7
    僕の死んだ婆ちゃんも受験期に落ち込んでる僕が帰ってきて、そっと温かい美味い白飯を出してくれた。 婆ちゃんの空腹でいるのが1番いけないことという台詞に涙が止まりません。
  • 津島修二
    4.2
    自分の人生で2度と訪れないであろう夏にノスタルジアを感じるのサイコー‼︎ 現代に登場したSNS、VRchatはOZに酷似している。コロナはそろそろ収束するかもしれないが、第二波第三波がくれば電脳世界が広がるかもしれない。そしたらVRchatはOZのようにもっと拡大するかもしれないし、本物のOZがくるかもしれない。 この作品の舞台は電脳世界だが、作品名「サマーウォーズ」の通り、夏と戦争である必要はある。 要素として戦争というよは明らかにふくんでいる。また、夏であること必要性について、お盆という日本の文化との関係性を深く考えることで見えてくる。夏は腐敗の匂いがする。すなわち死と深く関係している。電脳世界OZと人工惑星による滅亡の関係性は架空と死が結びついていることに帰結する。
サマーウォーズ
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