実際に起きたFBI史上最大の汚職事件を描く!手に汗握る『ブラック・スキャンダル』

映画ファンのボンクラ

鎗火亮介

ボストンといえば学生街、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学と隣接するインテリの集う街。比較的治安が良い都市といったイメージを持つ人が多いでしょう。

しかし、チャールズタウン、サウスボストン(通称サウシー)などは犯罪都市として知られています。そのため、今まで何度もクライムサスペンスの舞台となってきました。代表作は、レオナルド・ディカプリオ主演『ディパーテッド』など。

ちなみに、『ディパーテッド』でジャック・ニコルソン演じるギャングのボスは本作『ブラック・スキャンダル』のバルジャーがモデル。そんなボストンのダークサイド、サウシーを舞台に繰り広げられます。

blackmass

あらすじ

サウシーの団地で生まれ、幼なじみとして育った3人の男たち。1970年代、固い友情で結ばれた彼らはギャングのボス、FBI捜査官、有力政治家として、大きな権力を掌握。

ボスのジェームズ・“ホワイティ”バルジャーをジョニー・デップ、FBI捜査官ジョン・コノリーをジョエル・エドガートン、有力政治家ビリー・バルジャーをベネディクト・カンバーバッチが演じます。

ブラック・スキャンダル

当時、FBIはイタリア系マフィアの逮捕に手を焼いていました。そこでコノリーは盟友バルジャーに彼らの情報提供を依頼。コノリーとしてはマフィアを一斉検挙し、局内での出世、バルジャーにとっては自分たちの商敵である大物マフィアを一掃。

そのような利害関係の一致から二人は協力し合いますが、見返りとしてコノリーはバルジャーの犯罪を見逃していくことに……。

実録犯罪もの

事実からは脚色されているものの、なんと、本作の内容ほぼ全てが実話です。それはNetflix配信のドキュメンタリー番組『指名手配 ホワイティー容疑者を捕まえろ』から窺えます。

ただし、番組の内容に関して知ってしまうとネタバレになるので、先に見ないことを強くおすすめします!

サウシーとは

犯罪の温床となっているのは貧困からくるもので、曇り空、老朽化した建造物、低所得者用の団地プロジェクトなどを切り取ったシーンで強調されています。人口の多くをアイルランド系で占めており、強い同胞意識を抱いているのです。

このあたり、本作のスコット・クーパー監督の前作『ファーナス 訣別の朝』で描かれた*ヒルビリーのような同胞意識と共通します。

また、カトリック教徒も多く、彼らは本来「汝、殺すなかれ」の教義をかかげ、コノリーも劇中で何度もバルジャーにも忠告します。 しかし、そんなものにバルジャーは聞く耳を持ちません。 彼の弟で、地元の有力政治家ビリーに関しても、兄を放任します。

*ウエスト・ヴァージニアの山岳地域に住み、アメリカ移民当時の経済レベルのまま生活する白人

冒頭からの緊張感

カメラがテープレコーダーを過度なアップでとらえるも止めた状態から物語は開始。話し手は「俺は密告者じゃない」と告げます。 その異様な撮影方法から、情報が濃密に詰まっていると予想できます。

例のシーンは劇中で描かれる時代のあとからの回想であり、証言です。証言者も聞き手も最初は何者かわかりませんが、「彼らは何者なのか」、物語が進むにつれて分かってきます。

ちなみに回想形式の語りによって、実話ものにありがちな「成り行きを分かっていればネタバレなんてない」といった、サスペンス性を削ぐことを避けています。そのような語り口もお見事。「誰が、どのシーンで、誰の行為を目撃し、その様子を誰に伝えているのか」。冒頭のシーンは大事な伏線となってくるので要注意です。

また、本作はクローズアップで画面全体を占めることも多く、サウシーの閉塞感とあいまって、そこからも異様な緊張感を生み出しています。

恐怖支配の天才

本作のジョニー・デップは終始鋭い眼光で目ではほとんど笑わない容貌で演技をします。その役柄に違わず、関与した犯罪の密告者はじめ、組織の邪魔となる者を次々と惨殺。商敵となる男をバルジャーが自ら蜂の巣にしたり、手下の愛人で密告したと疑わしき者を絞殺したり。 実際には18人ほど殺したと言われています。

ブラック・スキャンダル

そのような人物造形から、劇中前半部では彼の恐怖支配を観客に提示しています。その後、後半部にて密告を過度に恐れ、疑わしき者にも長台詞で血の気が引くような緊迫感で尋問。 仲間から垂涎ものの料理を出された際、レシピについて「教えろ」と脅迫し、そこで仲間が教えたら「秘密の味を教えるとは口の軽いやつだ」とも迫ります。

名声を得るためのタテマエ

コノリーは大物マフィア検挙の功労者として、バルジャーの犯罪を見逃すことも局内で許されます。その後も名声のもとに、マフィアの情報を得つつバルジャーの犯罪を黙認。さらに、密告者をバルジャーに報告することさえします。

彼の目的はただ1つ。局内での名声上げることです。そのため、彼のバルジャーとの協力関係が、同胞意識ともあいまって共犯関係に変化していきます。味をしめた彼はマフィアに関する情報を次々に提供。しかし局内では、バルジャーの密告者が次々と惨殺されている事実を追及されます。その果てに、連邦検事からも追及され、コノリーは憔悴状態に。

また、バルジャーの罪も明らかになるにつれ、眼光も弱まります。そんな彼がクライマックスで教会の椅子にもたれかかるシーンがありますが、愚かしくも憐れです。

原題『BLACK MASS』について

意味は黒ミサ。 彼らは互いの利害関係から、第三者からみてアンタッチャブルな存在になり、そこから同胞意識、利害関係でつながれた奇妙な絆が芽生えます。

そんな絆から、一度悪魔と契約したら、何かを得られる代わりに一生背徳感にさいなまれることを意味しているように思えます。 つまり「神に背いた者」ということです。

また視点を変えれば、彼らは「汝、殺すなかれ」のカトリック教徒でありながら殺人に絡んでいるので、「そんなやつらが何で神のご加護を得られるんだ、バカ!」と、あえて神を冒涜するサタン崇拝の意味にも思えます。

渋く、重苦しい作品ですが、エンタテインメントとして第一級の面白さです。また、そんな意味合いも読める奥深い作品なので、ぜひ劇場でご覧ください。

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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  • メローネ
    3
    ジョニー・デップのオールバック姿がなんとも、見慣れるとかっこよくなる(笑) サクサク進むから飽きずに見れた。ジミーが捕まったのがつい最近でびっくり。誰かも言ってたけど、ケビンベーコンの安心感。
  • ZIMON智宣
    3.4
    1980年代に実在した南ボストンのギャング、ジミー・バルチャーをモデルにした作品。 ジミー・バルチャーをジョニー・デップが演じる。 ジョニー・デップの残虐かつ観るものを恐怖させる演技に注目。 その中にもジミーの人間味を魅せる演出がキャラクターに深みを出している。 実際にジミーの腹心たちである当事者たちの証言や、FBIの実録を基につくっている作品ということもあり、リアリティと生々しさを感じる。 当時の資料や情報をかき集めて制作に挑んだスコット・クーパー監督のこだわりが見える作品になっている。 "事実は小説よりも奇なり" まさにその通りだ。 犯罪王ジミー、そして弟ビリーは南ボストンの上院議員、そして幼なじみのジョンはFBI捜査官。 この3人が織りなす関係性は小説のような真実に魅了される。
  • しょっぴき
    3.5
    2016年33本目@新宿ピカデリー 実話ベースだから淡々と進むので少し退屈しちゃうかも。その分ジョニー・デップの凄みは感じたし、何よりケヴィン・ベーコンの顔を見ると親戚のおじさんに会ったみたいな安心感(脇役だけどね)。ステーキのくだりの伏線感は良かったな。
  • ToruHashimoto
    3.9
    実話はやっぱり重みがある。 50年ほど前のアメリカ、ボストンでの犯罪映画。 FBIとしては史上最大の汚職事件らしい。 主役の組織のトップを務めるのがジョニー・デップ ディズニー映画とか全く違う役者さんに見える。 その弟役はなんとベネディクト・カンバーバッチという異色の組み合わせ。 フィクション映画のようなハデな汚職ではないけど、 結局、捜査官もエゴしかないのか?と 思ってたら、最後の最後、本当に忠誠心あふれた人間だったんだなと大納得のシーンに感銘。犯罪なんだけどね。忠義を尽くした男だと。 最近3本に1本は実話を観るようにしている。 僕のタイムラインは縦に実話、沈黙シリーズ、その他と並ぶ。
  • Y
    3.6
    実在した伝説の南ボストンのギャングの話 事件を洗うたびにブラックスキャンダルとして証拠が上がってくる。 実際にあった出来事なのでリアルで楽しめる!
ブラック・スキャンダル
のレビュー(14657件)