dtv、hulu、Amazonプライムビデオ、Netflix、MUBIなど、「ネットで映画を視聴する」ことが当たり前という時代となってきました。そんな中、なんと自宅で体験できる映画祭があるのを、みなさんご存知でしょうか? 映画配給会社ギャガが運営する動画ポータルサイト「青山シアター」では、"オンラインで視聴する映画祭”『マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル 2016』を開催中です。
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルとは?
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(通称:myFFF)とは、世界未公開であるフランス映画の長編・短編を1か月間オンライン視聴できる画期的な映画祭です。ユニフランス主催のこの映画祭は2011年にスタートし、「自宅で鑑賞できる初めての映画祭」として好評を博しました。
第6回を迎える今年は『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフンを筆頭に、『ペルセポリス』などの女流作家マルジャン・サトラピ、話題沸騰中のホラー『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェルなどが審査員を務めます。
長編コンペティション部門出品作品を数本ご紹介!
長編作品は9本が選出されており、新進気鋭作家の意欲作からベテランの問題作まで幅広く揃っています。今回はその中から5本の作品を選び、簡単に見どころを紹介したいと思います。
『美しいとき』 カトリーヌ・コルシニ
【あらすじ】
パリへ上京したデルフィーヌは女性解放運動の活動を行うキャロルという女性と出会い、やがて惹かれあう。デルフィーヌが実家の手伝いのために帰省する際、キャロルも着いていき田舎での生活が始まるが……。
【見どころ】
1960年代後期から70年代にかけて行われた女性解放運動を根底のテーマとし、男性と女性の在り方、そしてLGBTにも言及した青春映画という意欲作です。女性解放運動を行う仲間との環境にあった彼女が田舎に行った際に浴びる洗礼に胸が痛みます。あくまで個人的な痴情を描きながらも、それ自体が女性解放運動の叫びを如実に表しているのが見どころの一つ。
同性愛が認められるようになってきたこの年代に公開されることに大きな意味があるのではないでしょうか。また、2大女優の体当たりの演技にも注目です。
『彼らについて』 ジェローム・ボネル
【あらすじ】
新築を購入したばかりのシャルロットとミーシャ、一見幸せそうな彼らだが実は2人ともが女弁護士メロディと浮気しており……。
【見どころ】
カップルがお互いに同じ女性と浮気をしているというLGBTに深く切り込んだ題材でありながら、哲学的な主張を含まず、あくまで"日常生活におけるズレ"をドタバタ劇風に描いたコメディタッチの作品です。
また浮気がテーマでありながらドロドロとした愛憎劇もなく、終盤には「そ、それでいいのか!」と言いたくなるような予想外の展開もあり、なかなか楽しめます。
カップルの両方との逢瀬を楽しむインテリ女性を演じたアナイス・ドゥムースティエの魅力が溢れている一作です。
『ブラインド・デート』 コルヴィス・コルアック
【あらすじ】
家にこもって仕事をしており静かな環境を好む"彼"と、コンクールを控えたピアニストである"彼女"。奇しくも薄い壁を隔てたお隣同士であり、初めはお互いを追い出そうと様々な騒音作戦を決行するが、やがてふとした会話がきっかけで親近感を持つようになり……。
【見どころ】
お互いに顔も知らないままの恋愛、というと昨今ではネット恋愛などで当たり前のようになってきましたが、本作の場合は「声」をはじめ生活音が全て聞こえているため、必要以上に相手のことを気にかけたり、相手のことを考える時間が増えたりと、本来恋愛をする上で大事なことを見直させてくれるような一作です。
まったく無関係のイケメンをお隣さんと勘違いして有頂天になるなど、フレンチ・コメディの王道的要素も持ち合わせつつ、少し違う視点から恋愛を描いた非常に楽しい作品でした。
『年下のカレ』 ダヴィッド・モロー
【あらすじ】
編集者を務める38歳の女性がたまたま飛行機で19歳の青年と出逢う。後日、女性が落としたUSBを青年が拾っていたことから交流が始まり……。
【見どころ】
アラフォー女性と大学生の恋愛を描く作品です。
女性側が初めはまったく相手にしていなかったものの、「同僚との出世競争に打ち勝つため」にどんどん積極的になっていく様子が非常に面白いところ。また、このタイプの恋愛の悩みどころとして「今はいいかもしれないけど、30年経って私がお婆ちゃんになったらどうするの?」という部分に言及しているのも大きなポイントだと思います。
登場人物と同年代の方はもちろん、年下男性に恋している女性の皆さんは一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。
『カプリス』 エマニュエル・ムレ
【あらすじ】
教師のクレマンは女優のアリシアと恋人関係になったが、カプリスという女性に誘惑され浮気をしてしまう。それがアリシアにばれ、更にクレマンの元妻と恋仲にあった友人トマがアリシアに急接近し……。
【見どころ】
数人の輪の中で痴情のもつれが三角にも四角にも展開されるロマンス・ドラマです。
誰かが上手くいくと誰かが不運になり、しばらくすれば逆転し……というのを、パリの歓楽街や路地裏、劇場、レジャー施設などの風景と共に描いています。往年のハリウッドのスクリューボール・コメディを見ているようでしたが、ハッピーハッピーで終わらず少しビターな余韻を残します。
上述の『彼らについて』では女弁護士というインテリ女性を演じたアナイス・ドゥムースティエが、今度は天真爛漫で男を振りまわす女性を好演。演じ分けに驚きます。
長編部門は1月18日~2月18日の1か月間配信中!
長編部門は上記作品のほか、ファンタジー風のロマンス映画『アンリ、アンリ』(マルタン・タルボ)、30代女性の苦悩と葛藤を描くドラマ『砂の城』(オリヴィエ・ジャアン)、極右思想に傾倒する男を描く社会派の問題作『フレンチ・ブラッド』(ディアステム)、不穏な農村の夏を描くサスペンス『熱風』(ラファエル・ジャクロ)などがあります。
短編は無料配信
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルでは短編作品の配信も行っており、こちらはなんと全作無料で視聴することができます。ドラマ、コメディ、ロマンス、アニメーションとジャンルも豊富なので、空いた時間に少しずつ鑑賞してみてはいかがでしょうか。
短編作品リスト
『最後の扉』サシャ・ファイネール
『男女を求む』マリナ・モシュコヴァ
『日曜の昼食』セリーヌ・ドゥヴォー
『ダイ・ヤング』モルガン・シモン
『夜のさまよい』ピーター・ドゥルンチス
『みんなビッチ』フランソワ・ジャロ
『サラの夏』エマ・ベネスタン
『ドラゴンの最期』マリアナ・ディアビ
『僕のウルフガール』ヤン・ドゥラトル
『ファースト・マッチ』アリス・ドゥアール
ネットを通じてフランス映画の魅力を世界中へ
今回の作品群を見ても分かるように、社会のテーマにズバリ切り込む意欲作・問題作にあふれており、フランス映画界はかなり熱いことになっています。マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルを通して世界中に映画ファンが増えることを、またより多くのフランス映画が日本で公開されることを願いたいですね。
「青山シアター」Information
映画配給会社ギャガが運営する動画ポータルサイト。PCやスマートフォンで、いつでも、どこでも、自由に映画を楽しむことができる映画ファンのための新しいオンラインシアターです。
◆マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル 2016
開催期間:2016/1/18(月)~2/18(木)
短編無料:(第1弾)1/29~2/4 (第2弾)2/5~2/11 (第3弾)2/12~2/18
青山シアターにて配信中!