日本映画界に欠かせない演技と存在感!俳優・ピエール瀧の魅力とは

好奇心で生きてる雑食人間

sakasa

俳優陣の圧倒的な演技が話題になった映画『怒り』や、従来のファンだけに留まらず老若男女から高評価された庵野秀明監督作品『シン・ゴジラ』そして12月10日に公開された『海賊とよばれた男』など話題作や超大作に次々と起用されているピエール瀧

ここ数年スクリーンで彼の姿をよく見かけるな、と感じているのは私だけではないだろう。ほとんどの作品でいわゆる脇役としての出演が多く、ほんの数分しか画面に映っていないなんてこともよくある。それでも私たちの記憶の隙間に入り込み、強烈な演技とインパクトを残していく。

作品の出演者にピエール瀧の文字を見るだけで、何だか面白そうと思えてくるから不思議だ。そんなちょい役でも独特な存在感を隠しきれないピエール瀧の魅力とは一体何なのか? 彼に関連する作品を紹介しながら、考えていきたい。

そもそもピエール瀧って、何者?

名前はよく聞くけど何者なんだ?という方も多いだろう。

ピエール瀧は石野卓球とテクノバンド「電気グルーヴ」として活動しているミュージシャンだ。電気グルーヴでは主に歌とパフォーマンスを担当。楽器は一切弾けないと本人は語っているが、楽曲提供やプロデュース業などもしているのだ。

さらに音楽活動以外にもタレントや俳優、声優、ナレーターなどマルチに活躍している。近年は俳優としての起用が著しく、2016年だけでも映画の出演作はなんと7本!

ピエール瀧

どちらかと言えばアンダーグラウンドやサブカルチャー界隈で人気を博する人物だったが、CMや国民的人気の朝ドラなどにも出演し、お茶の間にもすっかり溶け込んでいる。電気グルーヴとしてデビューしてから20年以上経った今でも活動の範囲は広がるばかりだ。

先述したように近年は俳優として映画に出演することが多いが、マルチに活躍するピエール瀧はこれまで様々な立場で映画と関わってきている。ここからは彼が携わってきた作品をカテゴリー別で紹介しつつ、その魅力に迫っていこうと思う。

俳優・ピエール瀧

これまでにもドラマや映画には度々出演していたが、俳優としての『ピエール瀧』を確立したのは間違いなくこの作品だろう。

『凶悪』(2013)

凶悪

個性的で誰もが認める実力を持つ俳優・山田孝之、リリー・フランキーと共演。実際に起きた事件を基に描かれたストーリーで、ピエール瀧はリリー・フランキー演じる「先生」と呼ばれる不動産ブローカーに利用され殺人を犯し、死刑囚となった元暴力団組長の役を演じた。

何人もの人間を殺めてきた惨忍な一面を持ちつつも、馬鹿正直で先生の言うことをすぐに信じ込んでしまったり、舎弟を大事にする人情味溢れる人柄も垣間見え、凶悪犯でありながらもなぜか憎めないキャラクターが見事にハマり、第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞など多くの賞を受賞。

それまでのピエール瀧といえば主人公と親しい近所に住むおじさん役や真面目な軍人の役など、比較的良いイメージのキャラクターを演じてきた。ところが本作ではそれまでの全てを覆すような凶悪っぷりで、他の俳優陣にも劣らない存在感を残した。

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『日本で一番悪い奴ら』(2016)

日本で一番悪い奴ら

先ほど紹介した『凶悪』の白石監督の作品に再び出演。本作も「日本警察史上、最大の不祥事」と呼ばれる実際に起きた事件を基に描かれている。

ピエール瀧は正義感の強い新米刑事・諸星要一(綾野剛)に「刑事のいろは」を叩き込む先輩刑事・村井定夫を演じた。敏腕刑事である村井は「刑事が求められるには犯人を挙げて点数を稼げ。そのためには協力者=S(スパイ)を作れ。」と諭す。この言葉をきっかけに諸星の人生を大きく左右することに・・・。

作品にとっても諸星にとってもキーパーソンとなる役柄を今回も見事に演じ切っている。善人なのか悪人なのかはっきりしない怪しげな雰囲気を醸し出すキャラクターが、なんともぴったりだ。

『凶悪』とはまた違った悪人っぷりに是非とも注目していただきたい。

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声優・ピエール瀧

世界中で社会現象が起こったディズニー作品『アナと雪の女王』で陽気な雪だるま・オラフの吹き替えを担当したことでも有名だが、本業が声を扱う仕事ということもあり声優としてのキャリアも積んでいる。

アナと雪の女王

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その中でも異例の挑戦をしている作品がこちら。

Panic in the Village

ベルギーのアニメーション作家による人形を使ったストップモーションアニメ作品。本作ではなんと1人45役の吹き替えを担当している

内容は超ドタバタコメディ。人形は関節や顔の表情を全く動かせないので、一見すると子どもが人形遊びをしているだけのようなチープさだが、丁寧で計算され尽くした質の高いアニメーションが好評を得ており数々の映画賞を受賞している。

おどけているように見えて実は巧みな技術を駆使した表現は、電気グルーヴのスタイルと共通している部分があるようにも感じる。

監督・ピエール瀧

俳優の活動は周知だが、それだけには留まらず映画監督としてもデビューしていたのだ。

『SF Short Films』(2002)

SF

中野裕之プロデュースによる短編集。その中でピエール瀧は2作目の「県道スター」という作品の監督を務める。

なんともシュールなストーリーで、何故かUFOを探知する能力を持つヤンキー弁天さん(ゲッツ板谷)とその弁天さんを慕っているヤンキーのゴロー(安藤政信)が、おバカな日常会話を繰り広げるというぶっ飛んだ世界観だ。

劇中ではバイク音をサンプリングしたようなサウンドがアクセントになっていて、シーンを盛り上げている。監督が誰かなんて知らなくても「いかにもピエール瀧らしい」と言いたくなるような作品だ。

電気グルーヴのミュージックビデオを手掛けたりもしているので、瀧ワールドの虜になった方はチェックしてみてはいかがだろう。

ちなみに3作目に収録されている「ハナとオジサン」に出演もしている。

ミュージシャン・ピエール瀧

ここまで読んでいただいてピエール瀧という人物に興味を持ったなら、ぜひとも本業である「電気グルーヴ」としてのピエール瀧も知っていただきたい。

あくまでも本業はミュージシャン。ライブステージではスクリーンとはまた一味も二味も違ったピエール瀧を観ることができるのだ。

『DENKI GROOVE THE MOVIE?石野卓球とピエール瀧』(2015)

電気グルーヴ

テクノミュージックを日本のメジャーシーンに持ち込み、オリジナリティ溢れる音楽性と型破りなパフォーマンスで日本の音楽業界に衝撃を与えた電気グルーヴ。本作は同バンドの26年間を総括するヒストリー&ドキュメンタリームービーだ。

アーティスト仲間、関係者の証言、そして結成初ライブなど初公開の貴重な映像を織り交ぜ、彼らのこれまでの歴史を紐解いていく。監督はメンバーの要望により、音楽シーンに造詣の深い『モテキ』や『バクマン。』などの大根仁監督が務めた。

パンクロッカーのような精神でいつも新しい挑戦をし続けてきた電気グルーヴ。常にぶれない姿勢を貫いてきたからこそ、ある意味何をやっても「電気グルーヴだから」の一言で受け入れてしまう。そこまでの存在に至った理由もこのドキュメンタリームービーを観ればなんとなく理解していただけるはず。

ステージで自由自在に音を操って楽しんでいる2人の姿を目にすると、若い人たちには大人になるのも悪くないと思えるし、同世代の人たちには遊び心を忘れてはいけないと教訓のようなものにもなるだろう。

見逃せないシーンが盛り沢山の本作は、日本のテクノシーンを語る上でも目を通しておいて然るべき作品だ。時系列で電気グルーヴの功績が語られていくので、電気グルーヴを全く知らない人たちにも観ていただきやすいだろう。

今後の日本映画界を担っていく男

ここまでカテゴリー別でピエール瀧という人物を紹介してきたが、はっきりとカテゴライズできない不確定さのある独特のオーラが多くの人を惹き付ける魅力であり、唯一無二で在り続ける理由だと思う。

はっきりとしたイメージ像がないからこそ幅広い役をこなせるし、少ない出演時間ながらもその場に良い違和感を漂わせ、観ている人たちにインパクトを与える。それは様々な角度、位置から表現者という立場を長年経験してきたピエール瀧だからこそできることなのではないだろうか。

近年、重要度の高い役どころを演じる機会も多くなってきた。もはやピエール瀧は日本の映画界には欠かせない存在になってきている。柔軟な彼には余白も好奇心もまだまだあるだろう。

これからの活躍にも大いに期待したいものだ。

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会、(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.、(C)2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

 

※2021年12月23日時点のVOD配信情報です。

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