公開から1ヶ月以上が経過した現在でも、連日話題になり続けている『君の名は。』。興行収入では『風立ちぬ』の120億円を超えて、邦画アニメで歴代5位にランクインし今もなお話題の映画となっています。
そんな『君の名は。』の裏で、密かに(!?)話題になっているアニメ映画、『映画 聲の形』。「別冊少年マガジン」から始まり、「週刊少年マガジン」で連載された大今良時によるマンガを映画化した本作。
イラストだけ見ると今風の青春アニメなのかなと思う方もいるかもしれませんが、"身体障害""いじめ""罪悪感"を始めとした非常にシリアスなテーマをもとに、「過去の過ちとどう向き合うか」「友達とは何か」「人と理解し合うことの難しさ」について非常に考えさせられる作品です。
主人公たちの現在(高校生)と過去(小学生)が舞台となっているので、自分自身の過去の体験と照らし合わせながら共感する点、改めて考えさせる点も多いはず。そんな本作の見どころを、かいつまんで紹介します!
『映画 聲の形』のあらすじ
マンガから始まった「聲の形」
冒頭でも紹介したとおり、「聲の形」はマンガを原作としたアニメ映画です。聴覚の障害という難しいテーマを扱っているだけに少年誌へ掲載するまでもスムーズにはいかなかっという本作。
それでも読み切り版を経て、2013年より「週刊少年マガジン」で連載が開始。2015年にはマンガ大賞で第3位に、(1位は「かくかくしかじか」2位は「子供はわかってあげない」)『このマンガがすごい!2015』オトコ編 では第1位になるなど、大きな反響を呼びました。
そんな同作が、山田尚子監督(『映画 けいおん!』など)のもとでアニメ映画化されたのが『映画 聲の形』です。
『映画 聲の形』のストーリー
物語の中心にいるのは、石田将也と西宮硝子という2人の高校生。
2人は小学6年生の頃、将也の通っていた学校に硝子が転校してきたことによって出会います。聴覚に障害を持っていた硝子はクラスで徐々に浮いてしまい、主に将也からいじめられる存在に。
それをきっかけに硝子は学校を転校。将也もその罪を自分1人になすりつけられ、今度は自分自身がいじめの対象に。次第に周りの同級生と上手く関係を築けなくなり、孤立していきます。
そんな小学生の時から5年が経ち、高校生になって再会する2人。当時の同級生をはじめ個性的なキャラクターとともに、過去の過ちを含め様々な「人間関係」に関する問題と向きあっていくというストーリーです。
とにかくリアルに描かれる、登場人物の心情や行動
この作品は将也と硝子を始めとした個性的なキャラクターと、彼ら彼女らの非常にリアルな心情と行動が大きな特徴です。
例えば序盤に描かれる小学生時代のシーン。障害を持つ硝子に対する言動は、胸が痛くなり思わず目を背けたくなる箇所もあります。「ここまでやるのか」そう感じる方もいるくらい、とにかく容赦ないです。硝子が転校してしまった後も同様で、お互いの罪のなすりつけや、それまでは友人と思っていた人物からの冷酷な仕打ち。過去に似たような経験がある方は辛い思いをされるかもしれませんが、それほどまでにリアルに描かれています。
だからこそ、余計に共感してしまう部分や思わず感情移入してしまう部分も多々あるのではないでしょうか?
「罪滅ぼし」「罪悪感」過去の過ちとどう向き合っていくのか
この物語の大半は、高校生になってからの将也と硝子を中心としたキャラクター達の日常が舞台となります。
そこで大きなテーマとなっているのが、将也が「過去の過ち」とどのように向き合っていくのかということ。硝子と会話をするために手話を覚え、硝子がいる場所に頻繁に通う将也。硝子のために、硝子が会いたがっていた1人の同級生を探して一緒に会いにいく将也。
周囲の人間からは「自分を満足させるため」「偽善者」「罪悪感」と言われ、何度も悩みながら毎日が経過していきます。
一度も"失敗をしたことがない""人を傷つけたことがない"という人はほとんどいないのではないかと思いますが、その失敗・過ちとどう向き合い、どのように乗り越えていくのか。そう簡単なことではありません。
将也や登場人物の様子、セリフの1つ1つがとても身にしみます。
お互いを理解するということの難しさ
そして最後にストーリー全体を通して改めて感じさせられるのが、お互いに気持ちを伝えること、お互いに理解し合うことの難しさです。
過去の同じ出来事に関してもそれぞれが別の見方・捉え方をしていて気持ちが通じ合えないことは日常的にもありますよね。今作でも「過去のいじめ」について、各々が違った捉え方をしていて衝突が起こります。
「あなたもわたしのことを理解しようとしていなかった」という趣旨のセリフが非常に印象的でしたが、相手のことを理解しようと思っていても実はそれができていなかったこと、伝わってなかったこと。多くの人が日々直面しているであろう人間関係の難しさを感じるシーンが、何度もありました。
これについては公式サイトに掲載されている漫画家・諫山創氏のコメントが非常に共感できたので、引用させていただきます。
原作を読んだ時に、すごく心をかき乱されました。
人間というのは人のことを完全に理解したと思っていても、全然わかっていなかったりする。「聲の形」は普遍的なテーマを描いていて、誰にも思い当たる部分を突き付けてくる。
自分が変えられてしまう怖さを感じる作品でした。
(漫画家・諫山創氏のコメント 『映画 聲の形』公式サイト より)
難しい問題と向き合っていく中での成長
ここまで紹介してきたように、『映画 聲の形』はそのイラストに似合わず非常にシリアスなテーマを扱った作品で、最後まで「人間関係」について考えさせられる内容です。
だからこそ「普段はアニメはあまり見ない」というような方にも見て頂きたいですし、約2時間のお話の中で共感できる点、見て良かったと思える点があるはず…。
難しい問題に直面した登場人物がそれとどのように向き合い、成長していくのか。是非その様子をご覧になってはいかがでしょうか?
(c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会