映画『タイタニック』超大ヒット映画の製作の裏側を徹底解説(前編)【ネタバレあり】

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

1912年、世界最大の豪華客船が氷山に衝突し、1,513人が亡くなった「タイタニック号沈没事故」。“20世紀最大の海難事故”とも呼ばれるこの悲劇をベースに、上流階級の娘と貧しい青年の悲恋を描いた感動のスペクタクル大作が『タイタニック』(1997)だ。

第70回アカデミー賞では、14部門でノミネートされ11部門で受賞。興行収入は全世界で21.9億ドルに達し、当時の世界最高興行収入を記録。批評的にも興行的にも大成功を収めた。

という訳で今回は、不朽の名作『タイタニック』について、前後編に分けてネタバレ解説していきましょう。

映画『タイタニック』(1997)あらすじ

時は1912年。豪華客船タイタニック号に乗り込んだ画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)は、船から飛び降りて自殺しようとしていた上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)を助ける。ひょんなことから出会った身分違いの二人。二人の仲は急速に進展していくが、タイタニックの行く先には巨大な氷山が待ち構えていた……。

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※以下、映画『タイタニック』のネタバレを含みます。

タイタニック号に取り憑かれたジェームズ・キャメロン

ジェームズ・キャメロンが『タイタニック』を撮ることになったのは、ある意味で宿命だったのかもしれない。カリフォルニア州立大学で海洋生物学を専攻し、20代の頃からダイビングを始めていた彼にとって、海は第二の故郷。『エイリアン2』を完成させた1986年には、およそ1年間の休暇をとってダイビングの冒険旅行に出かけたくらいだ。それだけ彼は“海”に取り憑かれていたのである。

直接のきっかけとなったのは、1958年にロイ・ウォード・ベイカーが監督した映画『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』。

二等航海士チャールズ・ライトラーの視点で「タイタニック号沈没事故」を描いたこの作品を観て、キャメロンは並々ならぬ関心を抱く。そこからおよそ5年という歳月をかけて、あらゆる文献や資料を読み漁り、自ら12回も潜って本物のタイタニック号を調査した。最初のダイビングでは、本物のタイタニック号を目の当たりにすることで「歴史的な悲劇の大きさ」を実感し、泣き崩れてしまったという。ちなみに2010年2月に開催されたTEDカンファレンスで、ジェームズ・キャメロンはこんなコメントを述べている。

ひそかにやりたかったのは、本物の沈没船タイタニック号に潜ること。それが映画を作った理由なんです。

間違いなく、この企画は映画になる。そう確信したキャメロンは、20世紀フォックスに売り込みをかける。当時まだ完成した脚本はなかったが、「沈没船に実際に潜ることで宣伝効果が得られれば、映画の製作に大いに役立つはずだ」とプレゼン。そう、自分がダイビングして撮影したタイタニック号の映像自体を、マーケティングに活用しようと考えたのだ。うーむ、このあたりはキャメロンの策士ぶりが伺えるエピソードなり。キャメロンが過去手がけて来た作品の実績、そして熱いプレゼンの効果もあって、『タイタニック』の製作にGOサインが出される。

とはいえ、この映画はあまりにも高額の制作費がかかることが予想された。そこで20世紀フォックスは、費用を回収するためには幅広い年齢層の観客に映画を見てもらう必要があると判断し、PG-13指定(13歳未満の鑑賞には、保護者の強い同意が必要)のレーティングで公開することを条件にだす。ジャックが絵を描くシーンではローズがヌードを披露するものの、二人が結ばれるシーンでは露骨な性的描写をしていないのは、このレーティングによるものだ。

“タイタニックのロミオとジュリエット”

当初キャメロンは、彼にインスパイアを与えた『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』と同じように、「タイタニック号沈没事故」を忠実に再現しようと考えていた。だが調査を進めていくうちに、あるアイディアが浮かび上がる。タイタニック号には富裕層向けの1等船室から、労働者階級向けの3等船室までが用意されていた。この船には、あらゆる階級の人間が乗り合わせていたのだ。であるならば、「身分違いの恋」というラブロマンスが描けるのではないか?

ジェームズ・キャメロンは、20世紀フォックスに売り込む際に「タイタニックのロミオとジュリエット」というコンセプトを書き添えたという。偶然だが、『タイタニック』で主演を務めたレオナルド・ディカプリオは、バズ・ラーマン監督の『ロミオ+ジュリエット』(1996)に出演。この映画の撮影中に、共演者のポール・ラッドから「タイタニック号について描いた映画が作られるらしいから、オーディションを受けてみたら?」と促されていた。かくしてディカプリオは本物のロミオだけではなく、船上のロミオも演じることにもなったのだ。

キャメロンはシナリオを書く際に、主人公のジャックとローズを架空の人物として設定した。しかし脚本が完成した後になって、タイタニック号で亡くなったリストに「ジョセフ・ドーソン」という名前があったことを知ったという。カナダのフェアビュー ローン墓地には、タイタニック号の犠牲者たちが数多く埋葬されているが、その中でジョセフ・ドーソンの墓地は多くのファンが訪れる「聖地巡礼」の場所となった。

望まれていなかった、ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットのキャスティング

今でこそ、ジャック役のレオナルド・ディカプリオとローズ役のケイト・ウィンスレットは、この二人しか考えられないハマリ役のように思えるが、ジェームズ・キャメロンはその起用に懐疑的だった。

まずは、ディカプリオ。『ボーイズ・ライフ』(93)では不良少年、『ギルバート・グレイプ』(93)では知的障害者と、エッジーな役柄を好んで演じてきた彼に、ごく普通の青年役が務まるのか? キャメロンはそれを恐れていた。しかもディカプリオは、役作りのための読み合わせを拒否するという最悪な行動をしでかしてしまう。キャメロンが「読み合わせをしなければオーディションは行わない」と宣言し、しぶしぶ承諾してやって来たディカプリオ。だが、その演技は圧巻だった。そこには、キャメロンが求めていたジャックがいた。20世紀フォックス側はジャック役にマシュー・マコノヒーを推薦したが、キャメロンは強硬にレオナルド・ディカプリオを主張。みごとジャック役を射止める。

次に、ケイト・ウィンスレット。当時すでに彼女は、「コルセット・ケイト」というニックネームで呼ばれるくらいに、多くのコスチューム・プレイ(時代劇・歴史劇)を経験していた。「1912年を舞台にした作品でも問題なく対応できる」とキャスティング・ディレクターが主張するも、キャメロンは「あまりにもステレオタイプすぎる配役なのでは」と考えていた。彼は、もっとフレッシュな顔を探していたのだ。

ウィノナ・ライダー、ニコレット・シェリダン、アイオン・スカイ、トリ・スペリング、シャーリーズ・セロン、ユマ・サーマン、レイチェル・ワイズ、リース・ウィザースプーン、アリシア・ウィット……。多くの女優が検討されたが、キャスティングは難航。どうしてもローズ役を獲得したいケイト・ウィンスレットは、毎日キャメロンに手紙を送り、電話をかけ続けた。

あなたは分かっていない! 私はローズなのよ! どうして他の人と付き合っているのかわからないわ!

実際、ウィンスレットはローズとして完璧だった。オーディションを受けてみると、彼女がこの役を表現するための全てを兼ね備えていることは明らかだった。みごとローズ役をゲットしたウィンスレットは、「From Your Rose(あなたのローズより)」という文章を添えて、バラを彼に送ったという。

いきなりの追加予算捻出……波乱含みのスタート

撮影前から、『タイタニック』の製作は波乱含みだった。当初ジェームズ・キャメロンは8000万ドルくらいの予算と見込んでいたが、すぐにこの見積もりが甘かったことが判明。セットの建設に莫大な費用と時間がかかることが分かったのだ。

いきなり追加予算を捻出しなくてはいけなくなった20世紀フォックスは、パラマウント・ピクチャーズに協力を申し出る。交渉の結果、アメリカでの配給権と引き換えに、6500万ドルの追加出資を取り付けることに成功。

だが今後予算が超過した場合には、20世紀フォックスが追加出資する必要がある。トーゼン、ジェームズ・キャメロンにはスタジオ側からの相当な圧力がかかることとなった。

過酷な撮影が、いよいよ始まった。(続きは後編で!)

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※2021年5月7日時点の情報です。

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