日本を代表する映画女優は誰ですか?と問うと、おそらく様々な女優の名前を挙げられる事と思います。やはり映画において「女優」というのは極めて重要なポジションにあって、誰もが好みや理想像を投影してしまう特別な存在です。
多くの映画に出た女優、出演作は少ないけれど絶大な人気を誇る女優、海外の映画祭で評価された女優と、大勢いる中でこれまで出演作のうち60本が一気に上映される機会が与えられた女優はそれほど多くないはず。
今から半世紀以上前に隆盛を極めた映画会社・大映が誇るスター女優・若尾文子の150本以上に及ぶ出演作から、選りすぐりの60本が上映される「若尾文子映画祭 青春」がいよいよ6月27日から東京・新宿の角川シネマ新宿で始まります。
今回はこの映画祭の見どころをご紹介いたします。
まずは代表作を劇場で見る!
これだけ大きな特集上映になると、何度も何度も上映機会に恵まれている作品からレアな作品まで幅広く上映されます。中でも代表作として挙げられる幾つかの作品は、レンタルDVDやVODでも容易に見る事ができる作品ばかりではありますが、せっかく劇場で上映される機会なので劇場で観ておきたいところ。
本映画祭のポスターにも選ばれた、増村保造の長編2作目であり、増村×若尾の初タッグ作品である『青空娘』や、45歳で早逝した天才・川島雄三が大映で手がけた3作『女は二度生まれる』『雁の寺』『しとやかな獣』。吉村公三郎監督による、最も若尾文子の美しさが際立った名作『越前竹人形』など、映画ファンなら観ておかなければならない名作が軒を連ねております。
ソフト化されていない傑作を見る!
一方でこれまでの特集上映や、ラピュタ阿佐ヶ谷や新・文芸座、フィルムセンターなどでは頻繁に上映の機会があるものの、何故かソフトリリースがされていない作品も多くあります。
まず今回の映画祭の目玉のひとつでもある、若尾文子のスクリーンデビュー作である『死の街を脱れて』。久我美子の代役として抜擢された、十代の頃の姿が初デジタル化で蘇ります。
また、本特集上映で17本上映される増村保造監督作の中で唯一ソフト化がされていない『偽大学生』や、2010年に亡くなった職人監督・井上梅次の『閉店時間』、松本清張原作の傑作ミステリー『果実のない森』など、このチャンスに一度観ておきたい作品が盛り沢山です。
初デジタル化作品を見る!
すっかりデジタル化が主流となりましたが、それでもまだまだデジタル化されていない作品も多数。フィルム上映の作品も観ておきたいけれど、この特集で初めてデジタルになった作品を観ておきたいと思うのも映画ファンなら判るはずです。
全60本の上映作品のうち、15本が今回初デジタル化作品として上映されます。その中には小津安二郎監督のセルフリメイク作『浮草』や、溝口健二監督の遺作『赤線地帯』といった世界的名作を始め、増村×若尾の最高傑作とも言われる『清作の妻』や『最高殊勲夫人』、さらには若尾文子のブレイクのきっかけとなった島耕二の『十代の性典』など話題作が多数。
デジタル化されたことでほぼ永久的に作品が残るだけでなく、今後上映機会がさらに増えてくれれば嬉しい限りです。
「若尾文子映画祭 青春」は6月27日から!
まずは東京新宿の角川シネマ新宿で6月27日から8月14日まで行われます。昨年からTCGメンバーズカードに加入した同劇場では、水曜のサービスデー以外にもTCG会員のサービスが受けられるので、首都圏のミニシアターファンの方は是非ともその恩恵を肖ってたくさん観てもらいたいです。
また、毎週日曜の最終回は学生限定で500円で観れるので、学生の方、こんなに羨ましいことはありませんよ。ワンコインで若尾文子の映画が劇場で観れるのです。
東京以外でも大阪シネ・ヌーヴォで7月11日から、福岡の中州大洋では8月1日から上映が予定されています。スケジュールや上映作品は異なりますので、是非とも公式サイトをチェックしてみてください。
この機会に日本を代表する映画女優・若尾文子の作品を劇場で観て、日本映画の歴史を体感してみてはいかがでしょうか。