『天使のはらわた 赤い教室』〜オトナになったあなたにすすめたい映画〜

"DON’T TRY"

ロハ

妖艶で甘美でドラマチック。そんな「大人の映画」がある……

大人ってなんだろうか?

タバコが吸えるようになったら? 恋をしたら? 二十歳になったら……様々な大人の定義があると思う。15歳で元服して大人になった時代もあった、今は18歳で投票権があるのだから18歳から大人だという意見もあるだろう。大人って一体いつからだろうか……。

申し遅れました。ロハと申します。今回よりここ、FILMAGAで「大人の映画」を紹介していくことになりました。基本的には日活ロマンポルノ作品の紹介と年齢制限のある官能的で映像美が美しい作品を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

今回紹介するのは天使のはらわた 赤い教室』(1979)

天使のはらわた

日活ロマンポルノ作品の中でも名作と名高い一本。原作が石井隆、監督が曽根中生蟹江敬三水原ゆう紀が出演している。3月30日は蟹江敬三の命日。この作品でも蟹江敬三の名演を見ることができる。

アダルト雑誌の編集をしている村木(蟹江)はある日、ブルーフィルム(当時の無音声のアダルトビデオのようなもの)の上映会で作品を見ていた。そこに出演していた名美(水原)のリアリティのある妖艶な姿に釘付けとなる。村木は名美を探し見つけ出す。しかし、あのブルーフィルムは実際のレイプ映像で、勝手に撮られ勝手に売買され上映されている事実を村木は知る。名美はその事件以来、男を、自分の人生を憎むようになっていた……。

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蟹江敬三の異質な魅力

蟹江敬三と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、今の人はやはり「あまちゃん」のじっちゃんだろうか、それとも「ガイアの夜明け」のナレーションか。今ではあまりイメージはないが、当時は蟹江敬三と言えば悪役だったという。この作品でも、村木という役柄は一筋縄ではいかない男だ。女性と不倫関係にあったり、職業はアダルト雑誌の編集者。佇まいも少しヤクザな感じが漂っている。

冒頭で、彼と不倫関係にある女性との絡みのシーンがあるのだが、とても野生的で印象的だ。しかしどこか彼自身が傷ついている。そんな芯の部分の人間らしさと表面上の野生感の両端が、この作品で村木というキャラクターを際立たせている。蟹江敬三の魅力もおそらくその両極端な部分なのだと思う。表面上の野生的な激しさと内面の人間的な優しさ。その二つがぶつかり合って一人の人間の中にあることこそが、多くの人がスクリーンで彼の姿を追ってしまう理由なのではないだろうか。

幸せなセックスは、描かれない

今回この作品を観ていて一番に思ったことが、一つも幸せなセックスが描かれていないということだ。

日活ロマンポルノは経営が危ぶまれた日活が、起死回生の一手として始めたと言われている。やはりエロというものは強くて、多くの人に需要がある。特に男性に。しかしこの作品には、男が一般的に望むようなセックスは描かれない。村木は不倫している女性と、仕方なく、凶暴的にセックスをするし、名美は男に復讐するように、自分を自分で堕とすかのようにセックスをする。

単純に絡みのシーンを楽しむことができない演出になっている。エロを単純に楽しめないのだ。そういう意味ではポルノ作品として疑問が残る。しかしそこが、名作である所以でもある。

堕ちていく女。それに引きずられ堕ちていく男たち。そんな男女の悲哀がこの作品には確かに収められている。ストーリーは幸せな結末を迎えない。名美は堕ちるところに堕ちていくし、村木はそれを救おうとするのだが、救うことができない。名美が村木の救いの手を掴めば、あるいは幸せな結末を迎えることができたのかもしれない。しかし、そう単純ではないのだ。

大人ってのは難しい生き物だ。

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※2021年4月27日時点のVOD配信情報です。

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  • Sawady
    4
     うらぶれた温泉町でブルーフィルムを鑑賞したエロ雑誌の編集者である村木(蟹江敬三)は、フィルムに映る女に一目惚れ。ある日、撮影現場であるラブホテルに行くと、受付にいたのは、フィルムに映っていた女(水原ゆう紀)だった…。  地獄の様な出会いと再会。そして別れ。泥沼に嵌った女に対して半身で同情したってうまくはいかない。憐憫を持った時点でその結末は決まっていた様なものだ。明かりや視点で心象風景を映し出す曽根中生の演出が見事。どん底に堕ちても気高さを失わない水原ゆう紀と終始不貞腐れて斜に構えている蟹江敬三が好演。もう"最優秀・土屋名美"と"最優秀・村木哲郎"は水原ゆう紀と蟹江敬三で決定。  奇跡の様な演出と奇跡の様なキャスティングが生んだ奇跡の様なメロドラマだ。
  • 西村大樹
    4.5
    石井隆の世界観である。 男と女の関係性。その根底には、悲しさがある。幸せな関係もあるだろう。だが、突き詰めた先には分かり合えない関係があるのだ。 本作は、過去にもあった不幸が女に壁を作り、その壁を崩そうとする男の物語である。 男は信じている。しかし、それは男の思い込みであって女の本心には辿り着けない。永遠に分かり得ない、互いの壁。 ロマンポルノには、分かり合えない男と女の物語が多くある。それがロマンポルノを映画としている要因でもある。 特に石井隆作品は、脚本作品でも監督作品でも性差による壁を描いている作品が中心である。ロマンポルノ以降の石井作品では、このような物語は少ない。ロマンポルノという場であるからこそ描けた物語であり、ロマンポルノという場だからこそ描かれるべき物語であったのであろう。 石井隆作品は、ロマンポルノというジャンルを象徴する作品群であり、特に『天使のはらわた』を中心とする名美と村木の物語は、ロマンポルノの象徴である。 本作『赤い教室』は、その代表作といっていいであろう。
  • えす
    3.8
    奥行きのある画面構成。スクリーンを恍惚と眺める蟹江敬三は、襖の前で涙を流す。視線の切り返しによって、見られる側と見る側の力関係が逆転する悲哀と恐ろしさ。その相互関係が成立する水面のラストショットによって、水原ゆう紀がフィルムの中に取り込まれていったような感覚を覚える。傑作。
  • Golo_Viehmann
    3.8
    Rec. ❶25.12.07,ラピュタ阿佐ヶ谷(35mm)/cinema collage 映画プロデューサー 成田尚哉
  • -
    これもアノーラと比べてしまう、というか、日活がずっと前にスゲーことしてたのか 名美の顔が本当にかわいい 酔いの演出が面白かった、三年後からの画がすべてよい、夜とパキッとした色は本当に合うな、ネオトーキョー感 骨太なフェミニズム 女性性すら悪というか原罪的に見なす昨今のものとの強度の差は自明 ルッキズムも性欲も批判してもしゃあなくて、男に限らず人間はキモいし、漂白して誤魔化す方が、変な反動になる  見ることしか出来ないというのを、画面上に見ることしか出来ない
天使のはらわた 赤い教室
のレビュー(1142件)