ライアン・ゴズリングが人形と恋する? ハートフルコメディ映画『ラースと、その彼女』を紹介!

映画観て、絵描いて、ハイッ!

フクイヒロシ

本年のアカデミー賞6部門を受賞した話題作ラ・ラ・ランド』は観ましたか?

賛否両論巻き起っていますね……。僕も観ている最中は「う~ん」と思っていましたが、帰ってiTunesでサントラ買ったらそれを聴くのがもう楽しくて楽しくて。映画は観ている2時間より、観終わって記憶に残っている時間の方が長いんだから、幸せな記憶として残れば、それは自分にとっても映画にとっても幸せな結果かなと思います。

さて、そんな『ラ・ラ・ランド』の主演俳優の一人といえばライアン・ゴズリング

全米が泣いた系映画きみに読む物語でブレイクして、ハーフ・ネルソン(日本未公開)』ブルーバレンタイン』『ドライヴなどで批評家にもウケのいい当代きっての人気スターです。

見た目からしてシュッとして腹筋バキバキですけど、役柄もシュッとした腹筋バキバキのが多い印象です(ラブ・アゲインなど)。そのライアン・ゴズリングがパブリックイメージと真逆のキャラクターを演じたのが2008年日本公開のハートフルコメディ映画ラースと、その彼女

第80回アカデミー賞脚本賞にノミネートされ、トリノ映画祭で観客賞、第12回サテライト賞ではライアン・ゴズリングが主演男優賞を受賞しました。今回はこの映画をご紹介させていただきます。

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『ラースと、その彼女』あらすじ

まずザッと『ラースと、その彼女』のあらすじを。

アメリカの小さな田舎町に住む26歳の好青年ラース(ライアン・ゴズリング)は極度のシャイで特に女性と接するのがとても苦手であり、兄夫婦はそれをとても心配していました。そんなある日「紹介したい女性がいるんだ」とラースから言われた兄夫婦は驚きながらも、とても喜びました。

しかし、ラースが連れてきたのは「ビアンカ」という名のついた等身大の女性の人形(まぁ、つまりそういう人形……)だったので兄夫婦は軽パニックになりました。さてさてどうなる、どうする!?

ラースとその彼女1

こう書くとだいぶドタバタコメディ感が溢れますけど、実際は静かに淡々と進んでいきます。音楽も全編美しいメロディです。とは言え、笑えるシーンも多いですよ。人形を紹介された兄夫婦の「やばいことになった!でも顔に出しちゃいけないよな!」というリアクションは噴飯モノです。

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ビアンカ(人形)に対する周囲の戸惑い

この映画を改めて見返してみて印象的だったのは、「わからない」という言葉が多く出てきたことです。

兄「弟がついに壊れた!どうすりゃいいんだ!」 

兄の妻「わからないわよ!

兄「先生、ラースはいつ治るんですか?どうしてこうなったんですか?」 

女医「わからないわ

などなど。そりゃわからないですよね…。実際こんなラースに対して直接的に嫌悪感を表す人もたくさんいます。

「許せん!人形を偶像崇拝するなんて!天罰が下る」「エロ人形に恋するなんて、ものすごく不気味だ」言葉はなくても冷たい視線で見たり、ビアンカに走り寄る子供を「近づくな!」と引き留めたり。

ですが、「うわ!キモ!」とシャッター降ろしちゃうんじゃなくて「わからない」ということを受け入れた上で「正しそうなこと」をひとつずつ行動していく姿がとても丁寧だし、優しいなと思いました。

そもそもラースは心優しい青年なのでそれを知っている人は危機的状況にある彼に対して優しくあろうと努めます。そして、女医さんは「ビアンカは必要があって現れた。ラースの話に合わせて。」と兄夫婦に助言します。

ラースとその彼女2

兄夫婦は戸惑いつつもラースの望むように、ビアンカにも食事を作り風呂に入れパジャマに着替えさせてベッドで寝かしつけたりと丁重に扱います。

ちなみに、ビアンカは元宣教師(という設定)で結婚前に男性とベットを共にできないのでラースとビアンカは別の部屋で寝ることになります。だから「リアルドール」のそもそもの目的として使うことはありません。

ビアンカの噂はすぐに広がり、上記のように後ろ指さされることもありましたが、町の人たちもビアンカを徐々に受け入れ始めます。そして、ビアンカを通して自分自身を見つめ返すことも。

ラースとその彼女3

ラースの変化とビアンカの運命

周りが変化していくことでラースにも変化が。ラースはビアンカにプロポーズしますが、なんとビアンカに断られてしまうのです。「え~~、断られることなんてあんの!?」と周りの人たちも素で驚きます。

意思を持たない人形が人間を拒否するわけないんですから。つまりそれはラース自身の心に変化が起きるということです。これ以降ラースとビアンカの関係は変化していきます。

ラースとその彼女4

さて、王様の◯ランチのDVD紹介並みにストーリーを説明しましたが、後半の展開はさすがに本編を観ていただきたいと思います。

町の人たちもラースを支えることが自分の問題に向き合うきっかけになったり、ビアンカを通して自分の考えを主張する機会を得たような気がしました。ラース自身も「自分は今ヤバい状態である」ということに気づいているようだし、ビアンカという謎の人形を周りが受け入れてくれることに少し戸惑っているような感じも見受けられます。(ひとりでダンスを踊るシーンがそうかな、と思うんですが。切ないシーンです。)

何気ないシーンを丁寧に積み重ねてる映画で、ストーリーの流れもセリフも自然だし、笑えるシーンもいっぱいあるし、恥ずかしながら最後はウルっときてしまいました。

ぶっちゃけ「こんなに優しい人ばかりなわけがないっ!」と、この映画を嫌いな人も多いようなんです。まぁわからなくはないんですが、ちゃんと嫌悪感表現する人もたくさん出てきてましたからね。

理解できない事柄に困惑しながらもまずは受け入れるフリをしているうちに、実際受け入れられるようになって自分が変化(成長?)する物語かな、と思います。

監督はクレイグ・ガレスピー。ディズニー製作の実写映画や伝記映画を多く撮っていますが、おそらく一番ヒットしたのはコリン・ファレルがヴァンパイアを演じたホラーコメディフライトナイト/恐怖の夜。こちらもユーモアが効いてるしキャラクターが面白かったです。みんなのびのび演じてる感じで。(正直怖くはなかったですが…。)

ちなみに今回、カリン(兄嫁)役のエミリー・モーティマーがいい味出してます。声がとても可愛くて『ハウルの動く城』のソフィーの声を担当したり、2010年公開の主演映画レオニーでは中村獅童原田美枝子と共演していたりと、日本とも繋がりのある女優さんです。

設定が「ぎょっ」とする映画ですが、そこでシャッター降ろしてしまわずに試しに観てみたら意外とよかったなんてこともあるかもしれませんよ。

ラースポスター

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※2021年2月17日時点のVOD配信情報です。

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  • Dominique
    -
    心がつかれた時にみる♡
  • きょんちゃみ
    -
    今をときめくライアン・ゴスリングがダッチワイフを愛する引きこもりをやっていて面白い。
  • ローズマリー
    4
    ミスターシャンシャイン☀️ シャイすぎて不器用だけど周りの人の愛で人間らしい心を取り戻してくれてほっとした
  • Hiro
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    記録
  • Shu
    4.5
    「ラースと、その彼女」観てきた。 お話は… 主人公のラース(ライアン・ゴズリング)は、とても優しくて純粋な青年。周囲の人々にも愛されているが、とてもシャイで、心に傷を持っており、女性が苦手。ある日、彼は兄夫婦に「彼女だ」と言って、リアルドールのビアンカを紹介する。 とどのつまりダッチワイフである。 「頭がおかしくなったのか」と心配する兄夫婦だったが、医師はビアンカの出現を「必要があるから」と判断し、受け入れるように促す。 そしてそんなビアンカとラースと周囲の人々の奇妙な生活が始まることとなる。 ゆっくりとした時間の流れで始まり、所々でコミカルに笑わす。こりゃおもしろいわ!と思っていたら話は徐々に変わってくる。周囲の人々もリアルドールを本物の彼女のように扱うラースに最初は驚き、気味悪がったり、失笑したりしていたが誰ひとりラースに意地悪なことはしないし、だれかしら味方をする。彼の人柄がそうさせているのだろうと解る。 人々の優しさが物語り全体をつつみじんわりとした心温まる作品だと思う。 ラース役のライアン・ゴズリングがとってもいい! 役柄的に難しかったのではないかなと思うけど(人形相手に演技するからね)実にうまく変にコミカルに走らずに落ち着いた演技を見せてくれたのが良かった。 そして何かに踏みきれずにいる人にとってちょっとだけ勇気をくれる。 人の優しさにほろっとさせられるいい映画でした。おすすめです。 (2009年01月16日レビュー転載)
ラースと、その彼女
のレビュー(13594件)