あの「ハリー・ポッター」シリーズでハーマイオニーを演じた実力派女優、エマ・ワトソンを主演に迎え、不朽のディズニー・アニメーションをディズニー自身が完全実写化した映画『美女と野獣』が、全世界で異例の記録的な大ヒットとなっている。ベルと野獣のロマンティックな愛の世界をはじめ、ディズニー音楽の巨匠、アラン・メンケンが手掛ける珠玉の音楽が人々の心を揺さぶり、いよいよ4月21日(金)、ここ日本でも公開を迎える!
その重責を見事にまっとうした監督が、『愛についてのキンゼイ・レポート』(04)、『ドリームガールズ』(06)、『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』(15)のビル・コンドン。多彩なフィルモグラフィーで培った経験を活かし、実写『美女と野獣』で名匠が目指したものとは?
“100年語り継がれるエンターテイメント”の映像化にあたっては、何をおいても「リアルにこだわった」というコンドン監督に、来日インタビューを実施。さまざまな話を聞いた。
――今回の実写化において、実写化ならではの難しさを感じた瞬間はありましたか?
僕たちはアニメーターたちを嫉妬することもあったほどだよ(笑)。なぜなら、彼らは自分たちが思いついたことをやりたいように実現できるけれど、僕たちはリアルを追求しなければいけなかったんだ。ただ、アニメーションに近いシーンとして「ひとりぼっちの晩餐会」のシーンがあるけれど、僕たちはリアルを求めるために撮影や照明の方法、音楽についても物理的に考える必要があったよ。それはそれで、楽しい課題ではあったけれどね。
――この作品には、アラン・メンケンによる珠玉の名曲の数々がまずありますよね。それが前提で実写化する場合、作業としては大変だったのでしょうか?
ミュージカルには3種類の様式があって、アニメーション、舞台、そして実写映画だよね。実写映画のミュージカルはムービーであるわけで常に動いている必要があって、曲を使いながらも物語を必ず進めなくてはいけないわけだ。つまり、ある曲が終わった時には、始まった時と比べて状況が変わっている必要がある。たとえば「朝の風景」や「強いぞ、ガストン」という曲があるけれど、「強いぞ、ガストン」ではル・フウ(ジョシュ・ギャッド)がガストン(ルーク・エヴァンス)をなんとか持ち上げようと奮闘して、そこでは過去の栄光にも言及するなど、一曲の中でいろいろなことを伝えようとしているんだ。
――なるほど。曲の最後には、実写としてリアルに終わっていないといけないですからね。
今回ポット夫人(エマ・トンプソン)の旦那さんについて新しく描いていて、彼は何か思い出せないことがあるんだ。それは呪いの一部なんだけれど、物語の進行上、歌の中で伝えている。また、ガストンにあこがれている女性たちの母親も自分たちの娘よりもベルのほうが上だと思っているので、ベルがなぜはぐれ者になっているか、そういうことも楽曲で説明している。やらなければいけないタスクを理解すれば、僕たちにとってもわくわくする作業なんだ。
――ベルと野獣については、リアルを追求するために、彼らにどういうリクエストを?
エマ・ワトソンに関しては撮影前の三か月から、大きな犬と一緒に寝るように指示したよ。ジャーマン・シェパードのような大型犬とね。
――え!?
冗談だよ(笑)。野獣役のダン・スティーヴンスには、毎日生肉を食べるように(笑)。僕は常にメソッドで行くタイプだからね! それはさておき、リハーサルの段階で各シーンについて深く掘り下げる作業をしたよ。彼らはどういう状況で何に直面して、どういう心情であるかなどを皆で確認し合ったんだ。一か月間ほどね。キャラクター相互の関係性もすべて確認して、語る上でのリアルな土台がベルと野獣については出来上がったと思っているよ。
――個性的な俳優陣が揃っていた撮影現場だったと思いますが、そこでの裏話などがあれば教えてください。
ジョシュ・ギャッドと馬の話かな。彼本人の口から説明してほしかったけれど、この映画の中で彼が乗っている馬が、彼のことを気に入らなかったみたいでね(笑)。ジョシュが乗ろうとすると、それこそ馬があわなくてね、そっぽを向いてしまうことがあった。実は本編を観るとわかってもらえると思うけれども、ガストンが颯爽と馬から飛び降りると、その後ろのほうで必死になっているジョシュがいると思うよ(笑)。
――ちなみに劇中で、ベルがパリに行く時に使った、どこにでも行ける本がありましたが、実際にあったらどこに行きたいですか?
別に自慢じゃないけれども、僕は高校時代、ギリシャ語とラテン語を学んでね。だから昔のアテネに戻ってプラトンや、たくさんの人々が聴講している中で議論をしているソクラテスの前に行って、彼らが話していることを聞いてみたいかな。
――現在本作は、興行的に大成功を収めていますよね。『美女と野獣』のほかに実写化してみたいディズニー作品はありますか?
正直に言うと、この作品が自分とのつながりを持てる唯一の作品だったんだ。僕は子どもの頃、ディズニー少年ではなく、ヒッチコックが好きなホラー少年でね(笑)。この作品以上に、自分とのつながりがありそうな作品を見つけることは、なかなか難しいかな。(取材・文:鴇田崇)
『美女と野獣』は2017年4月21日(金)全国ロードショー。

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