「ハッピーエンドじゃなくてもそれがリアリティ」板谷由夏&有村昆が『マンチェスター・バイ・ザ・シー』をすすめる4つの理由

俳優・マット・デイモンがプロデュースし、今年のアカデミー賞にて主演男優賞・脚本賞を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の日本最速試写会が4月24日、Filmarksユーザー限定で行われ、上映後、女優の板谷由夏さん、映画コメンテーターの有村昆さんによるトークショーが行われました。

板谷由夏&有村昆

過去に朝の情報番組にて今年のアカデミー賞を予想する企画で共演したことのある2人。しかもそのとき板谷さんは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でケイシー・アフレックが主演男優賞を受賞するという予想を見事的中! 作品自体も応援していたとのことで、観てほしい理由や見どころを大いに語ってくれました。

上映後ということもあり、ネタバレもありましたが、公開を楽しみにしている方のためにもネタバレなしの2人のトークをご紹介します!

説明しすぎない、隙間があるからすごくいい!

有村昆(以下有村): ある男が再生していくお話なんですけど、僕的にはまさにこれはケイシー・アフレックの話だなと。ケイシー・アフレックって5年くらいキャリア的に不遇な時代も続いたんですけど、マット・デイモンやお兄さん(俳優のベン・アフレック)、まわりのサポートもあって再生していく。まさに彼のためにある映画だなと。板谷さんはこの『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、どうご覧になったんですか? 激推ししてましたもんね。

板谷由夏(以下板谷): 最近観た映画の中でこんなにも人の心のひだに寄り添うっていう監督の才能プラス脚本のよさ、それがやっぱり、素晴らしいと思ったんですよね。だからこのケネス・ロナーガンの脚本を読んだ役者たちはその時点で多分心が震えたと思うんですよ。それで彼が監督、演出したっていうことで、マジックが起きたというか……。全部に感動してしまって。

有村: 隙間がすごくたくさんあるからよかったですよね? 説明しないっていう。

板谷: そう。リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)が雪かきをしてる雪のサクッという音を思い出しただけで、彼の背景を想像できるっていうか。でもそれって映画の醍醐味だと思うんですよね。

有村: そうですよね。しかも最初なんで(リーが)落ち込んでいるのかわからないじゃないですか。マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ることに何かあるのかなっていうのがだんだん回想劇でわかってくる。その回想劇の入れ方を観たときに、あるときにふと、そういえばこのときこうだったなとか、僕らの生活にもあるような時間軸の切り方をしていて、それがすごいなと思いましたね。あれ間違えちゃうと感動が半減するじゃないですか。

板谷: 過去未来、その葛藤、心の動き。シーンのパズルの組み立て方がやっぱりロナーガンが書いた脚本は完璧なんだと思います!

板谷由夏&有村昆

人生の重みを感じるけど、どこかユーモアがあるからぜひ観てほしい!

板谷: この映画を人に勧めるときに、いろんなことが起きるからあんまりネタバレとして言えないじゃないですか。その中でどう勧めるかなって悩んだときに重い映画だけど、考えすぎたり、重すぎたり、悲しい思いをしたりっていうそういう重さじゃないよって。確かに人生の重さをわかってる大人たちが出てくるけど、でもどこかにユーモアがあるからぜひ観てみてって私言ってるんです。

有村: 確かに。そのユーモアのアイコンとして、甥っ子のルーカス・ヘッジズを入れてますよね。

板谷: ケネス・ロナーガンのインタビューを読んだんですけど、絶対に人生にユーモアって必要だと。悲しくても笑うことだってきっとあるし、明日になるのが怖いなっていうくらい落ち込んでもやっぱり笑うことってある。それがあるから人の人生はおもしろいし、それを描くのがおもしろいっていうことが書いてあって。確かにそうじゃないですか! すごい大変な毎日でもやっぱりユーモアがないと、ね?

有村: そうですよね(笑)。

淡々と描かれた物語を読み解いていく上質な映画!

板谷: (劇中で主人公は)とんでもなく悲しい思いをしたけど、その悲しいことだけじゃ終わらない、人生は続いていくよっていうことを映画では表現している気がしていて。だから特別「よし、今日からがんばろう」とか「明日からピースだ」みたいな終わり方じゃないじゃないですか。まだ多分このテンションは淡々ときっと続いていく。でもそれが人生だし、「その中にかすかな光みたいなのがあるんじゃないの?」という終わり方な気がして。「ハッピーエンドなの?」ってよく聞かれるんですよ、この映画。でもハッピーエンドじゃなくてもそれがリアリティなんじゃないかなっていうのを教えてくれた気がします。

有村: まさに板谷さんがおっしゃっていたように監督自身がインタビューで、僕はあくまで事実を淡々と伝えるだけでいいと思ってる。そこに作家性の主張を入れたりはしたくない。だからそこに「これは喜んでくださいね」っていう演出を入れたり、「楽しんでくださいね」っていうのはあえて入れたくないってことを言ってるんですね。だから隙間があって、その隙間を我々がどう読み解くのかっていうところだと思うんですよね。

板谷: だから受け取り側にお任せっていう。

有村: そうなんですよ。

板谷: だから映画として上質というか、大人の映画というか。

板谷由夏&有村昆

監督からの宿題!? これからの人生を考えたくなる作品

板谷: きっとこの映画って、「ああだったね、こうだったね」って語れる映画ですよね。

有村: 語りたくなりますよね。観終わったあとに「あれはさぁ」っていう。隙間を埋めるために、僕らが確認作業したくなる感じしません? それに監督から宿題をもらった気がするというか……。「(描かれた人物の)今後の人生はあなたたちです」っていうメッセージもあるのかな。

板谷: そうですね。でも大きな変化はなかったけど、ささやかな幸せをきっとリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)も甥っ子(ルーカス・ヘッジズ)も手にできるんだろうなぁっていう、ゆるやかなやさしい希望を残して終わるじゃないですか。あれが観ている側である私たちの、人生も日々も日常として流れていくけど、ささやかな何かがあるかもしれないって思わせてくれるというか。そういう意味ではラストはハッピーなのかもしれないなって。

有村: あえてそういうちょっとふわっとさせてるところがまたオシャレだな。

板谷: そうそうそう! そう思いますね。

2人が言うように、隙間を味わい、そして語り合いたくなる大人な映画が『マンチェスター・バイ・ザ・シー』です。5月13日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー。気になった人はぜひ劇場へ!

マンチェスター・バイ・ザ・シー

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  • hanadaizemura
    3.6
    辛すぎる過去だなあ…そりゃ荒れるわ… 人は簡単には変われない感じはリアル。
  • その他
    4
    捨てられない後悔と傷を抱えて、続く地獄。
  • 3.5
    ボストンでアパートの便利屋として働くリーは、ある日兄のジョーが危篤であるとの連絡を受け、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに向かう。しかし、病院に着いた頃にはジョーは帰らぬ人となっていた。そして驚くべきことに彼は、リーを息子の後見人とする遺言を残していたのだった。 * * * ケネス・ロナーガン監督、マット・デイモン製作、ケイシー・アフレック主演によるヒューマンドラマ。海辺の田舎町マンチェスター・バイ・ザ・シーののどかで美しい風景を舞台として、故郷にトラウマを抱える男の葛藤を描く。常に心ここにあらずといった雰囲気のケイシーの演技が素晴らしく、また最終的に主人公がトラウマを克服しない(安易に救済されない)のも残酷ながらリアルで好感を持てる。 パトリックの彼女Bはどこかで見たことあるな〜と思ってたら、『愛はステロイド』で妙に印象に残るエキセントリックな脇役を演じてたアンナ・バリシニコフだった。なんか無性に良いんだよな、この人。
  • po
    3.9
    まだ大して苦しみも後悔も感じずに生きてきてしまっている今の自分にはまだそこまで刺さらなかったけど、俳優陣の演技に見えない自然なやりとり、カメラワーク、映像美、プロット、もう何をとってもクオリティの高すぎる作品だなと思った。 アメリカの寒々しい雪景色は見慣れているはずなのに、海辺の街は行ったことがなかったのでまた独特な寒々しさがあって「鬱屈」という言葉が似合う情景だった。佐藤泰志の函館3部作のうち、「海炭市叙景」とか「そこのみにて光輝く」とも通ずるもののある空気感。 またもう少し色々経験してから観たいな。
  • CNSM
    3.8
    乗り越えられないよ。 そんな簡単には。 罪の意識で心閉ざしてしまうのも分かるし。 そうでなくても故人が戻ってこないことなんて100も承知。 どうやって生きるかだよね
マンチェスター・バイ・ザ・シー
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