『四畳半襖の裏張り』〜オトナになったあなたにすすめたい映画〜

"DON’T TRY"

ロハ

面白い映画って何だろうか?

一つの指標となり得るのがアカデミーやカンヌといった映画賞、映画祭だろう。様々な肩書きを持つ審査員達が選んだ作品は一見の価値がある。日本で有名なものがキネマ旬報が毎年発表している、キネマ旬報ベストテンだ。

そんなキネマ旬報ベストテンにロマンポルノの作品で選ばれたものが5本だけある。今回紹介する作品はその内のひとつ。神代辰巳監督作品『四畳半襖の裏張り』(1973)。

四畳半

監督、脚本は神代辰巳、芸者役に宮下順子、その相手役に江角英明が出演している。

時代は大正中期、米騒動の頻発で世間は揺れていた。そんな中でも好き者の信介(江角英明)は春を買いに料亭“梅ヶ枝”を訪れていた。そこへ芸者の袖子(宮下順子)が現れ、初見の相手である伸介相手に激しく乱れていくのであった。それとは打って変わって、お茶を引く花枝(絵沢萠子)は新人の教育に精を出し、また別の芸者夕子は兵隊の幼馴染と時間の限られた逢瀬を重ねていた……。

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神代監督の世界観

この作品は永井荷風原作の「四畳半襖の下張」の映画化として作られたもので、様々な芸者のストーリーが群像劇の形で進んでいく。

まず面白いのがこの映画の編集だ。おそらく初見では理解することが難しい編集になっている。というのも、袖子と信介の一晩の絡みのあいだに花枝や夕子の話が挟み込まれる形で入れられており、時間の流れを理解することがまず難しい。さらにサイレント字幕と呼ばれるいきなり画面中央にパッと字幕が現れたり、少し違和感のある音楽がBGMとして使われていたりと、とても前衛的な印象を受けた。しかしそれらが組み合わさり、神代監督独自の世界観を作り出している。ストーリーも明確なオチに向かって作られてはおらず、この作品に写されているのはただひたすらに芸者として生きている登場人物の“今”が描かれている

“今”が繋ぐストーリー

私たちは面白いものが見たいと思っている。年がら年中思っている。しかし何が面白いのか……最近は分かりやすいものが面白いと言われることが多いのかもしれない。分かりやすさやシンプルさというのはとても大切な要素だ。しかし分かりやすさというのは恣意的な物語になりがちだ。困難を経てハッピーエンドを迎える登場人物。そんな分かりやすい構図を私たちは頭の中に思い描きながら、その通りのハッピーエンドを見て楽しんでいる。しかしそこにはどこかリアリティを感じることができない。世界とはそんな分かりやすいものなのか?と頭の中に疑問が浮かんでくる。

神代監督はおそらくある意味分かりにくくすることによってそのリアリティを出すことに成功している。この作品には確かに登場人物である芸者達のその瞬間の人生の1コマが収められている。人生というストーリーは恣意的ではなく、今の瞬間の積み重ねなのだから。

分かりやすくない。そんな面白さもあっていいじゃないか。

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※2020年12月18日時点のVOD配信情報です。

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  • ゆきちゃん
    2.8
    大正ロマンか白日夢か😭⤵️💣 支離滅裂な三角関係やら嫉妬の嵐やら➰🌀 ませガキ正太郎のやりまくり絶倫物語🚀🚀🚀 捨てられて置屋の女将になった宮下順子がエロい💕
  • tori
    3.8
    成人映画、ピンク映画、ポルノとバラバラに呼んばれていたジャンルを日活が自社ブランドで日活ロマンポルノと呼び始めた初期作品だったと思う 神代辰巳監督の名とともに印象的だったのは確か あの頃は一目を気にして入ることができなかった日活ロマンポルノであったが、今こうして自由に観れるのはありがたい 時代は大正7年 芸者遊びの粋に米騒動、ロシア革命、シベリア出兵などの世相 をも絡めたポルノとは名ばかりの歴史、文芸ロマン
  • 伊藤大晴
    -
    これもまた独特な作品やな笑 なんとも言えんような世界観、ええな。 時間がないんや、急げ!
  • YohKitajima
    5
    一晩のセックスの中に、大正7年という動乱の歴史がはめ込まれる時間の解体の壮大さが、ラストカットのただ淡々と天井叩いてるあたりでまた元の緩やかな日常の時間に収束していっちゃような感覚があった、あの感じは良い。 戦地に旅立つ幼馴染のために、自分の陰毛を包んで制服のポケットに入れてやる芸者、それを受け全力疾走する二等兵くんは泣ける。 行為中の男が「長くなるかもな」的なことを言ってる間に、先輩芸者が「男に長引かせないように」と後輩芸者に膣で巻笛を吹かせてトレーニングする場面が映されるのとか、女がイキそうになった時に、噺家が「首吊りは女がイく感覚と同じらしい」と無理やり首吊りさせられる場面が挟まるのとか、性行為の間の早く過ぎ去る時間の中に、どうでも良い駄弁り的なゆったりと流れていく時間感覚が同時にあるのが、良いよなあ。
  • マイケル
    3.5
    以前見たことを思い出す 落語家役の山谷初男が男前
四畳半襖の裏張り
のレビュー(474件)