『17歳』や『8人の女たち』などで知られるフランスの巨匠 フランソワ・オゾン監督の最新作『Summer of 85』が8/20(金)より公開されます。
自身が17歳の時に感銘を受け、映画制作の原点となったと語るエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ(Dance on my Grave)」を原作に全編16mmフィルムで撮影された本作は、1985年の夏に運命的な出会いをはたした少年達の、短く熱い6週間を描いた刹那の恋物語。北フランスの海辺の街を舞台に、フランソワ・オゾン監督のこだわりが端々から感じ取れる珠玉の1作に仕上がっています。今回はそんな本作の、あらすじとキャスト、見どころをご紹介します。
映画『Summer of 85』(2021)あらすじ
セーリングを楽しもうとヨットで⼀⼈沖に出た16歳のアレックス。突然の嵐に⾒舞われ転覆した彼を救助したのは、18歳のダヴィド。⼆⼈は急速に惹かれ合い、友情を超えやがて恋愛感情で結ばれる。アレックスにとってはこれが初めての恋だった。 互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された⽅はその墓の上で踊る」という誓いを⽴てる⼆⼈。 しかし、ダヴィドの不慮の事故によって恋焦がれた⽇々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、⽣きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった─。
映画『Summer of 85』キャスト紹介
フェリックス・ルフェーヴル(アレックス)
進路に悩む16歳のシャイな高校生。ひょんなことからダヴィドと運命的な出会いを果たした1985年の夏に、初恋と永遠の別れを経験することになる。
バンジャマン・ヴォワザン(ダヴィド)
母親が経営する船具店で働く18歳。アレックスとは対照的な性格で、刹那的な生き方をしている。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ゴーマン夫人)
亡き夫が残した船具店を営むダヴィドの母。息子の“親友”としてアレックスを気に入り、可愛がっている。
イザベル・ナンティ(ロバン夫人)
堅実で家族を愛するアレックスの母。ダヴィドに影響され変わっていく息子を心配そうに見守っている。
フィリッピーヌ・ヴェルジュ(ケイト)
アレックスが海辺で知り合う、ロンドンからヴァカンスにきた大学生。明るく社交的な性格だが、アレックスとダヴィドの関係に亀裂が生じるきっかけをつくってしまう。
メルヴィル・プポー(ルフェーヴル先生)
アレックスの進路指導の先生。悩み落ち込む彼をサポートすべく優しく寄り添う。
映画『Summer of 85』見どころは?
フランソワ・オゾン監督といえば、挑発的なサスペンスやエロティシズムなど、人の欲望の深淵を露わにする作品をイメージする方も多いかもしれません。しかし本作でオゾン監督が目指したのは、原作を重視した“世界共通のラブストーリー”を作ること。もちろん本作でもオゾン節は健在ですが、今までとは少し違う一面を私たちに魅せてくれます。
アレックスの供述書を元に進んでいく本作。過去と現在を行き来する物語の中で、アレックスの初恋は無邪気さと危うさが混在する、キラキラとした鮮烈な記憶として描かれています。人は誰でも人生を切り開こうとする時、その闇も見つめることは避けられないでしょう。ただ、過去というものはどうしても輝いて見えるといった心理を見事に描いています。
今日ではフランス映画界の巨匠であるオゾン監督も、思春期に出会い大きな衝撃を受けた小説を映画化するにあたり、「少年2人の恋愛に皮肉を一切加えず、古典的な手法で撮ることで、世界共通のラブストーリーにした」と語ります。本作には、監督自身の“あの頃”が少なからず投影されているのです。
また、80年代という時代感を再現するために全編16mmフィルムで撮影された映像は、デジタルでは出せない曖昧な色味やざらざらとした風合いを持ち、まるで当時に撮影されたかのような仕上がりになっています。そして、二人の揺れ動く心に合わせて選曲されたこだわりの楽曲にも注目です。THE CUREの代表曲「In Between Days」や、ロッド・スチュアートの「sailling」が当時の空気を呼び起こし、観る人をより深く物語へと引きこみます。
フランソワ・オゾン監督の原点回帰にして新境地と謳われる本作は、胸を焦がす初恋の記憶を爽やかな海風にのせて私たちに届けてくれるでしょう。この夏、ぜひ劇場でご鑑賞ください。
【予告映像】
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