「これぞメルギブの信念」齋藤孝&枡田絵理奈が説く『ハクソー・リッジ』を観るべき4つの理由

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

本年度の米アカデミー賞で編集賞、録音賞の2部門を受賞した映画『ハクソー・リッジ』の公開を記念した試写会が、6月8日、Filmarksユーザー限定で行われました。上映前には、教育学者・作家・明治大学文学部教授の齋藤孝さんと元TBSアナウンサーの枡田絵理奈さんによるスペシャルトークショーも実施され、本作の見どころについて熱い意見交換が展開されました。

ハクソー・リッジ トークイベント

第2次世界大戦下、沖縄・前田高地で苦戦を強いられるアメリカ軍の中で、何ひとつ武器を持たずに激戦地を駆け回り、75名もの命を救った兵士の実話に基づいた映画『ハクソー・リッジ』。本作を一足先に観た齋藤さんは、「世界に配給される映画で、沖縄戦を舞台にしているのは珍しいことだと思います。迫力のある映像ですよね」と意義のある映画だとし、枡田さんも「主人公のドスが殺しに行くのではなく、助けに行くんです。イメージを超え、どれだけ困難で危険なことだったかを感じました。また、奥さんが、ドスの背中を押す強さにも感銘を受けました」と、人物について女性らしい視点での感想を伝えてくれます。

本作は「アメイジング・スパイダーマン」シリーズで知られるアンドリュー・ガーフィールド演じる衛生兵が主人公。日本では、あまりよく知られていない「衛生兵」という存在について、齋藤さんは「衛生兵を主人公にして映画を作るのは、かなり珍しいことではないですか? 衛生兵は戦争において後ろでケアをするので、スターになりにくい存在。けど、本作では主人公が普通の衛生兵じゃないのもポイントですよね」と、武器を持たずに戦場に行く行為に敬意を表します。枡田さんは、「自分を守るための武器も持たずに、戦場に行く強さは驚きでした。実在する方だったんですよね」と、本作が実話を基に描かれている事実にも触れ、目を丸くしていました。

10年ぶりにメガホンを取ることになったメル・ギブソン監督は、できるだけ現実に近づけるために、CGをほとんど使わず、生身の俳優のスタントや実際に爆発を起こすといった特殊効果を最大限に利用したそう。迫力のある映像について、枡田さんは「思わず目を背けたくなるような、生々しい描写もたくさんありました。自分がその場にいるような感覚になるシーンがたくさんありました。特に、日本兵の気配を感じると一緒になって息をひそめて……本当にドキドキして観ていました」と話します。実際に、爆発で身体の破片が飛び散る描写など、監督のこだわりが詰まった映像に、枡田さんは「あれだけオブラートに包まずに描いたことで、どれだけ戦争が悲惨なものかを伝えたんだと思います」と、その手腕を絶賛。

ハクソー・リッジ トークイベント

第二次世界大戦をアメリカ側から描いたことで、日本人として観るのは複雑な思いがあるのも正直なところかもしれません。現代の私たちが作品を観ることの意義を、齋藤さんはこのように語ります。「現代はテロが頻発したり、北朝鮮問題があったりと大変な時代です。やられたらやり返すという報復的な考え方があります。そんな中、静かな湖面のような心を持つことが大事だと思うんです。この映画は、周りが激しいのに、主人公の心の中だけは静か。そういう気持ちを持たないと、波にのみ込まれてしまい、戦いのスイッチが入りやすいから。平和というものを保ち続ける精神の一貫性を、映像から読み取っていただければと思います」。

齋藤さんは、メル監督が伝えたかったことをさらに説明してくれます。「メル・ギブソンが伝えたかったのは、信念の力だと思います。信念を持った人間は、周りがどうであっても流されない。時代は空気があり、流されてしまうこともあると思うんです。信念の力こそが、人を動かし周りの目も変えていきます」。そして、スコットランドの英雄が独立のために戦い続けるという、メル監督のオスカー受賞作『ブレイブハート』(95)を引き合いに出し、「メル・ギブソンは信念が生きているような人物ですから」と、きっぱりと表現していました。

ハクソー・リッジ トークイベント

メルが描いた強い信念の映画『ハクソー・リッジ』は6月24日(土)よりTOHシネマズ スカラ座ほか全国ロードショーです。(取材・文・写真:赤山恭子)

ハクソー・リッジ トークイベント

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  • take4
    3
    信念と選択の矛盾
  • 千年女優
    5
    太平洋戦争の沖縄戦に志願して参戦し、敬虔なクリスチャンであるがために武器を持たずして衛生兵として業火の如き戦火の中で負傷兵の救出にその命を賭し、良心的兵役拒否者として初の名誉勲章が与えられたデズモンド・トーマス・ドズの実体験を描くメル・ギブソン監督作品です。 至高の第二次世界大戦映画です。『プライベートライアン』に勝るとも劣らないリアリティのある戦争描写と、そのような生き地獄にあっても己の信念を貫き通す『ブレイブハート』の精神で展開されるストーリーは圧巻の一言。さらにその信念が人命救助という普遍的な価値観にあり、戦争における英雄を描きながらも、決して戦争賛美ではない人の美しきを描くという離れ業を実現させています。 仲間が撤退し、死臭漂い弾丸の雨が降り注ぐ戦場に愕然とし、神に自分がなすべきことを問うデズモンド。しかし神は冷たく求める返答は帰ってきません。しかしその刹那、代わりに彼の耳には仲間の助けを求める生の声が届きます。それを聞いて一目散に仲間のもとへ走り出した彼の姿は、宇宙規模で普遍の輝きを放っているのです。
  • きょう
    4.2
    ● 映像の迫力は凄まじい ● 不殺主義をどう捉えるか ● 事実を基にした作品であること ◇ ストーリー 第二次世界大戦下、主人公のデズモンドは宗教上の考えから兵役を拒否していた。ある日真珠湾攻撃を受けた自国に衝撃を覚え、軍隊入隊を希望する。不殺を主義に抱え、衛生兵として訓練に混ざるのだが…。 ◇ 感想 戦争シーンの凄惨さはプライベートライアンを彷彿とさせる。ある意味吹っ切れておりかなりグロテスク。苦手な人は注意レベル。ただ、そのおかげで凄惨さをイメージできる。 "こんな映像なのに撮影時死亡者0人"の方が凄く見えるぐらいだ。 不殺主義も如何に捉えるかというところがあると思うが、これに関しては明確に答えは出せなかった。軍隊というのは規律を重んじるべきで、作中でも言及される通り風紀の乱れは結果的に大きな軋轢へとなりかねない。 更に戦場では実際に人殺しするのは他人任せとなる。見方を変えれば自分だけ神の教えに背かずに楽園に行けるという身勝手さがあるとも言える。 ただ、それを含めて考えてもデズモンドのした行動は功績を称えるべきなのも間違いない。ことハクソーにおいて救出した人数は凄まじくまさに神がかり的な活躍と言えるだろう。 日本人の視聴者としては、ありがちなトンデモ日本兵ではなかったことは1つの評価ポイントかと思う。劇中の日本語はネイティブだし日本人ぽい行動をきちんとしていた。悪として描かれるのでは無くあくまで別の正義として描いているように見えた。最後のシーンがステレオタイプな日本人だが、この時期はまだまだ日本人は切腹していたのは事実。捕虜になるぐらいなら自決が美しいとされる時代だった。 本作で正直アンドリュー・ガーフィールドを見直した。こんなに演技できたんだ…。
  • パパ
    4.2
    第2次世界大戦、沖縄が舞台の戦争映画。 軍隊に志願するけど信仰心から銃を持つことを拒否する衛生兵の実話。 人は足りてるのに野球の試合にやって来たのび太君みたいな話。 「え?お前なにしにきたの?」ってみんな思うわけですよ。 だけどそんなのび太君が玉拾いで大活躍する、そんな映画。 銃持たないならマイルド系戦争映画かと思ってたけど全然違う。 意識高くなりがちな題材を単細胞な私にも楽しめる映画にしてくれる監督メルギブソン大好き。 グロい戦争映画が苦手な方にもオススメ。
  • zoso30
    3.6
    この映画は戦場を舞台にした人間ドラマ。 観て良かった。感動した!! 「実話」表記のあと、物語が始まる。 デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は過去のトラウマがあって銃が持てないのだが、軍隊に入る。 軍隊に入る前に、看護師ドロシーと結婚の約束をする。 二人が山の上でキスするシーンは美しい。欲を言えば、カメラは一周して欲しかった気がする。 その後、軍隊に入ったデズモンドは、「銃を持たず、上官の命令拒否、ということで裁判」まで行われたりする。 しかし何とか戦場まで行って、難攻不落のハクソー・リッジなる日本軍の守る「崖の上の基地」を米軍が攻めることになる。 ここで思うのは、「ハクソー・リッジって、沖縄だったのか!」ということ。 米軍と日本軍の戦闘シーンなどは、自分が日本人なので、何とも言えない不思議な気分になる。 それでも、デズモンドが「誰にもできないことをやってのけたな。お前は奇跡を成し遂げた。お前なしでは戦えない」などと言われる場面では、感動の涙。 なかなかの感動作であった。
ハクソー・リッジ
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