ロックなセクシュアリティに心酔せよ!『ロッキー・ホラー・ショー』【カルトなミュージカル映画】

腐女子目線で映画をフィーチャーしてみる。

阿刀ゼルダ

ロッキー・ホラー・ショー2
超個性的な登場人物たち。中央が主人公でマッド・サイエンティストのフランクン・フルター博士

10月はモンスター映画月間!

10月のビッグイベントといえばハロウィン! もうまもなくですね。
あちこちのお店のディスプレイでかぼちゃのお化けジャック・オ・ランタンを目にするこの季節になると、なんとなくモンスター映画が観たくなってきませんか?
今日ご紹介するのは、そんな季節にピッタリのミュージカル映画『ロッキー・ホラー・ショー』(75)。

血文字が踊るDVDジャケット画像からは古典的なホラー映画を想像してしまいますが、B級ホラーのテイストを取り入れつつも、芯はサイケでコミカルな(そしてちょっぴりせつない)セクシュアリティ解放の物語。
1973年にミュージカルとしてロンドンの小劇場で上演され、たちまちのうちに人気を呼び、1975年にはハリウッドで映画化! 以降40年以上の歳月を経ても人気が衰えない、筋金入りのカルト・ムービーでもあります。

この秋、日本では6年ぶりとなるミュージカル公演も予定されているようですよ。

(以下はネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。)

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ストーリー

ティム・カリー演じる本作の主人公は、「トランシルヴァニア星雲トランスセクシャル星から来たトランスヴェスタイト(異性装者)」のフランクン・フルター
「トランシルヴァニア」、「フランクン・フルター」などのキーワードから分かるとおり、ドラキュラやフランケンシュタインなどのパロディ要素がふんだんに盛り込まれたキャラです。

物語は、雷雨のなか恩師に婚約の報告に行こうとしていたカップル、ブラッドとジャネットが、フランクン・フルターの城に迷い込んでしまうところから始まります。

ロッキー・ホラー・ショー3
なんとなくセクシュアリティに違和感を感じながらもジャネット(右)と結婚しようとしていたブラッド(左)

ごくごく平凡な男女、結婚適齢期を迎え、何の迷いもなく異性と結婚しようとしていた2人が、セクシュアリティのカオスとも言うべきこの城館でのめくるめく性体験によって、本来のセクシュアリティに目覚めていくストーリーを軸に、歌と踊りとセックス満載のディープでマッドな一夜が描かれていきます。

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ボンデージにメイド服に、ゴールドのブリ〇フ!フェティッシュなファッションに注目

ミュージカル映画ということで、歌と踊りは当然本作の目玉。加えて、アバンギャルドなファッションも大きな見どころです。
1970年代当時ロンドンにおけるカウンター・カルチャーの発信地だったキングスロードのグラム・ロックの香りを湛えたボンデージ・ファッションや、メイド服など、フェティッシュなアイテムが盛りだくさん!
しかも網タイツにガーターベルトのボンデージ・ファッションを装うのは、主に男性です。

登場シーンからトランスヴェスタイト(異性装者)と名乗っているフランクン・フルターはもちろん、館に迷い込むまではごく平凡な男性(ただし、ジャネットという恋人がいながら男性に興味がありそうなそぶりも)だったブラッドや、彼の恩師スコット先生までもが、気が付けばビュスチェに! 網タイツ姿に!

メイドのマジェンダがまとうクラシカルなメイド服、マッド・サイエンティストでもあるフランクン・フルターが造り出したマッチョな人造人間ロッキーのゴールドのブリーフ姿にも目が釘づけです。

フランクン・フルターのドレスの左胸に縫い付けられた赤い三角形は、過去の記事「アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男」に学ぶ、戦争下ドイツでのセクシュアリティでも触れた、ピンク・トライアングルを逆さにしたもの。

ピンク・トライアングルとは、第二次世界大戦時、ナチスのホロコーストで強制収容所に送られた男性同性愛者に付けられた、逆三角形の識別章です。
逆三角形を逆さの正三角形にして、性的マイノリティであることをポジティブに主張したこのマークは、今ではゲイ・パレードでも使用されているとか。
ゲイ・パレードでも掲げられるレインボー・フラッグ(LGBTQ運動のシンボル)を思わせるレインボー・カラーも随所に取り入れられているので、そのあたりにも注目してみてください。

フランクン・フルターは「パンセクシュアル」

映画化にあたっては有名ロック・スターを使いたいという映画会社の希望を蹴って、敢えて舞台版に近いキャスティングにこだわったという本作。
というのも、舞台の人気はフランクン・フルター役のティム・カリーの魅力によるところが大きいと判断したからなのだそうです。

オバさんパーマにぎょろりとした眼・大きな口の、どう見ても美貌のトランスヴェスタイトとは言いがたいティム・カリー版フランクン・フルターですが、B級ホラー的グロテスクさと露悪趣味をウリにした本作のテイストにはピッタリ!
ルックスからして個性派揃いの面々の中でもひときわ存在感があって、ブラッドとジャネットの童貞と処女を奪ってしまうという悪魔的なキャラであるにもかかわらず、彼の言いがたい魅力にグイグイ惹きつけられます。
パワフルに歌い、踊るフランクン・フルターのビュスチェの胸元から乳首が時々ポロリンするのはご愛嬌。

両刀使いのフランクン・フルター、一見バイセクシュアルのようにも見えますが、設定上は「パン・セクシュアル(全性愛者)」なのだとか。
パンセクシュアルとは、男性・女性という性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋をしたり、性的願望を抱いたりする人のこと。
ちなみに、フランクン・フルターのメイドであるマジェンダはレズビアン、屋敷に迷い込んだブラッドが「キャンディ・マンじゃなくてガッカリした」という執事のリフ・ラフはゲイでしょうか。
「キャンディ・マン」には、「キャンディ売りの男」という意味のほかに、「男娼」という意味がありますから。

もっとも、マジェンダやリフ・ラフをなんらかのセクシュアリティにあてはめようとすること自体ナンセンスなのかも。
フランクン・フルターの城館の世界は、性別・セクシュアリティという垣根の存在しない世界と捉えたほうが、よりこの映画の世界観に近付ける気がします。
このあたり、ロック・ミュージックが持つカウンター・カルチャー的思想を強く感じる部分でもありますね。
「パン・セクシュアル」というセクシュアリティ自体、実にロック!!

当時の社会の枠組みを突き破ろうとするパワーを秘めた作品だからこそ、今なお古びることなく、多くのファンの心を捉え続けているのではないでしょうか。

映像に合わせて観客も米やトーストを投げたりできる観客参加型の上映スタイルが、この作品のカルト的人気につながったと言われる本作ですが、DVDで観ても十分映画の独自の世界観に浸れます。
ハロウィンの仮装に取り入れるには、フランクン・フルターのボンデージ・ファッションはちょっと寒そう……でも、本作の作者でもあるリチャード・オブライエン演じる怪しい執事リフ・ラフの衣裳や、これまた怪しすぎるマジェンダのメイド衣裳なら、ハロウィンにおあつらえ向きでは?
映画を観て、今年の仮装に取り入れてみてはいかがでしょうか。

ロッキー・ホラー・ショー1
『ロッキー・ホラー・ショー』
(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment, Inc. All Rights Reserved. 

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  • Kazuo
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    ティム・カーリーがdiva過ぎて。最高〜毎年ハロウィンで観ることなりそう
  • びー
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    狂気 怖い
  • 嶋田
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    楽しい。鮮烈なキャラクター。時代を切り開くパワーがとか言いたいけど。
ロッキー・ホラー・ショー
のレビュー(16937件)