夢を追う若者と、夢を追ったかつての若者に捧ぐ全肯定の物語。ほとばしる熱量で、心を温める作品『火花』

お笑い芸人・ピースの又吉直樹原作『火花』が11月23日より公開です。

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若手コンビ「スパークス」の徳永は、まったく芽が出ないお笑い芸人。ある日、彼は営業先の熱海の花火大会で先輩芸人・神谷と出会う。神谷は「あほんだら」というコンビで常識の枠からはみ出した漫才を披露。その特異な芸風と人間味に惹かれ、徳永は「弟子になりたい」と神谷に申し出る。神谷はそれを受け入れたが、代わりに「俺の伝記を書いてくれ」と頼むのだった。
2年後、徳永は拠点を大阪から東京に移した神谷と再会する。ふたりは毎日のように吉祥寺の町を飲み歩き、芸の議論を交わし、仕事はなくとも、お互いの才能を磨く充実の日々を過ごす。しかし、いつしかふたりの間にはわずかな意識の違いが生まれる。笑いに魅せられ、現実に阻まれ、才能に葛藤しながらも、夢に向かうふたりの10年間の物語。

 

本作の監督を務めるのは、板尾創路。シュールなネタと独特の審美眼を持つ彼も神谷と同様の天才肌の芸人のひとりです。原作者の又吉直樹と同じく、お笑いの世界で生きる彼だからこそ『火花』の世界観を紡ぐことができたのでしょう。メインのキャストには菅田将暉桐谷健太を迎え、ヒロインには木村文乃。脇を固めるキャストにもお笑い芸人が多く登場。「芸」を生業とする人間たちの生身を感じられる、本作の魅力をご紹介いたします。

夢、才能、現実。それぞれの未来を選び取る若者を描いた青春映画の傑作。

本作はお笑い芸人の物語ですが、描かれるのは普遍的です。夢を追い、他人の才能を知り、自身の才能を見直す。新たに人生を見据え、そこにあるのは追い求めた夢とは異なる現実。それでも突き進むのか、足を止めるのか。徳永と神谷の行く末は、夢や目標を抱いたすべての人間の心にかつての熱量を思い出させます。

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幼いころからのお笑い芸人への夢を追う、徳永を演じるのは菅田将暉。出演作が多いからか、多様な人物を演じる彼ですが、本作の徳永は年齢的にも、ひとりの役者と捉えても現在の菅田将暉がピタリとハマる役。年相応の「普通の」若者を演じる姿も新鮮ですし、クライマックスのスパークスの漫才は見応え抜群。徳永の言葉なのですが、菅田将暉自身の言葉にも聞こえる名場面です。

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圧倒的で稀有な才能の芸人・神谷を演じるのは、桐谷健太。彼の持つ人懐っこさと常識から外れた言動は見る者を惹きつけます。そして、ヒロインの真樹を演じたのは、木村文乃。口調、仕草からも伝わる透明感は、本作の人物のなかでも浮世離れした存在に思えます。しかし、現実をまっすぐに見据えているのも彼女でしょう。それぞれの未来を選び取る、青春の刹那は『火花』の見どころのひとつです。

■お笑い界を支えている人たちみんなに「ありがとう」と伝えたくなる映画でした。 先輩芸人を慕う菅田将暉さんの演技は、客を笑わせるために、日々懸命に考え悩む全ての芸人さんの写し鏡だと思いました。最後の漫才シーンの熱演、大人が忘れてしまった何かを思い出させてくれて、胸が熱くなりました。(kissamadasuさん)
■最後の漫才のシーンは本当に菅田将暉という俳優の演技ではなく、魂、ソウルの叫びのようで、それだけでも見る価値はある(haradasenmonkaさん)
■すごく良かった!主役の2人はもちろん、脇のキャスト、特に修士の最後の漫才のときの表情がすばらしかった(missmiwamiwaさん)
■まきさんが木村文乃なのは本当にずるい。愛おしすぎて寂しさも倍になり泣いてしまった(chiixxさん)

人を笑わせるという仕事の苦悩と葛藤を描く。

一見、華やかな世界に思えるお笑い芸人の世界ですが、どんな業界でも下積みの期間や人気を得るまでは泥臭いもの。本作でもお笑い芸人のリアルなところがしっかりと描かれます。印象的なのは、お笑い芸人の現場を映し出した場面ほど、そこに笑いがないということ。誰もが漫才や芸に真摯に向き合うからこそ、人前に姿を見せないときの彼らは真剣そのものです。

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また、劇中のあほんだらの漫才でも顕著ですが、本作は万人にウケるお笑いだけが描かれる作品ではありません。むしろ、わかりにくいと言われる側の漫才ばかりで、それは前述のスパークスの漫才も同様。しかし、自身の信じた漫才を全力で見せることにかっこよさが生まれますし、それを凄まじい熱量で演じる主演のふたりが素晴らしい。

■普段何気なくテレビを見るなかで、芸人さんが出てきて面白いことをやるのをみて何気なく笑っています。でもその裏では、私たちが計り知れないような努力や葛藤、挫折などされているのだということをあらためて感じました。(mincooooinoさん)
■「笑われたらあかん、笑わせなあかん」ことはこんなに身を削って成立するものかと考えさせられます。お笑いに打ち込むことは人生を破滅させるぎりぎりのところで生きる決意が必要なんだと気が付きます。(IkkobayashiIさん)

夢を追う若者と、夢を追ったかつての若者に捧ぐ全肯定の物語。

本作は夢を追う若者の物語ですが、夢を追ったかつての若者にもお薦めの作品です。

夢は諦めたらこれまでの時間は無駄なのか。これは数多くの作品で幾度となく扱われたテーマでしょう。本作では、徳永、神谷、真樹らを中心にそれぞれの10年間が描かれ、彼らと、彼らを取り巻く人間たちはそれぞれの未来に辿り着きます。それは思い描いた夢とは異なるものだったり、自身を貫いた結果だったり、さまざまな現在を示します。

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■最後の神谷さんの言葉も、まきさんの存在も、エンディングも、 全てが心に響いてきました。 また観に行こう。(ball3さん)
■お笑いの世界に限らず、どんな世界にも自分より輝いているひとが必ずいます。成功した人だけがドラマチックなのではなく、その周りには数え切れないほど同じ夢を追い続けた人たちのドラマがある。陳腐な表現ですが、いい意味で人間臭い映画だと思いました。(matsuchika6さん)

本作ではそこに至るまでの苦悩や葛藤をこれでもかと見せつけますが、それらのすべてを受け入れて全肯定します。夢を追わなかったことも、足を止めた時間も、ほころんだ人間関係も。圧倒的な人生への肯定感が本作の圧倒的な強さでしょう。夢を追う若者には後押しを、夢を追ったかつての若者にはこれまでの人生の肯定を。ほとばしる熱量で、心を温める作品『火花』。ぜひ、劇場でご覧ください。

◆映画『火花』 information

火花

あらすじ:若手コンビ「スパークス」としてデビューするも、まったく芽が出ないお笑い芸人の徳永は、営業先の熱海の花火大会で先輩芸人・神谷と出会う。神谷は、「あほんだら」というコンビで常識の枠からはみ出た漫才を披露。その奇想な芸風と人間味に惹かれ、徳永は神谷に「弟子にしてください」と申し出る。神谷はそれを了承し、その代わり「俺の伝記を作って欲しい」と頼む。その日から徳永は神谷との日々をノートに書き綴る。2年後、徳永は、拠点を大阪から東京に移した神谷と再会する。二人は毎日のように呑みに出かけ、芸の議論を交わし、仕事はほぼないが才能を磨き合う充実した日々を送るように。そして、そんな二人を、神谷の同棲相手・真樹は優しく見守っていた。しかし、いつしか二人の間にわずかな意識の違いが生まれ始める―「笑い」に魅せられ、「現実」に阻まれ、「才能」に葛藤しながら、「夢」に向かって全力で生きる二人の10年間の青春物語。

上映時間:121分
2017年11月23日(木・祝)全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
公式サイト:http://hibana-movie.com/
(C)2017『火花』製作委員会

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