どのような世界でも、メインストリームをいくのは容易なことではないだろう。2010年「第3回劇団EXILEオーディション」に合格後、デビューを果たした鈴木伸之は、「仕事がなかった」という当時を振り返り、「休みだらけの日に戻りたいとは、一切思わない」と苦そうに、しかし、やや懐かしそうに微笑んだ。「HiGH&LOW」シリーズの出演に端を発し、俳優としてめきめきと頭角を現す鈴木は、2017年のドラマ「あなたのことはそれほど」で不貞な男を好演、さらに『東京喰種 トーキョーグール』の亜門鋼太朗役で、体を一回り大きくするなどギリギリの肉体改造を行い、気づけばオファーが絶えない状況になっている。
ショートフィルムのプロジェクト『CINEMA FIGHTERS』の1作『Snowman』で主演を務めた際も、多忙を極める中、集中して撮影に臨んだ。あぐらをかこうと思えばかける今、それでも「やりたいことだらけなんです」と唇を噛む鈴木に、今の状況と、これから迎える未来の展望も語ってもらった。
――今日聞かせていただくお話は、Filmarksに掲載されます。
アプリもありますよね? 僕、登録していますよ。最近、撮影続きであまり開けていないのですが、常々アップデートはしております!
――ありがとうございます! 主演作の『Snowman』のことから、まずはお伺いさせていただけますか?
E-girlsさんの「Mr.Snowman」という曲をショートフィルムにするということで、『Snowman』は始まりました。E-girlsさんの楽曲は常々聴かせていただいていて、どれも素敵ですし、明るい前向きな曲が多いので、すごく女性らしいなと思っていました。萩原(健太郎)監督は、「Mr.Snowman」とは違う『Snowman』を描きたいという話を最初にしてくださったので、完成作は明るいアップテンポな曲とは違うテイストの作品に仕上がっています。だけど、どこか曲とリンクするような感じなんです。
――大人の切ない物語に仕上がっていますよね。『Snowman』は不治の病に侵され、50年後に目覚めるロクと、ひたすら待ち続けた奥さん・深雪との関係が描かれます。
不治の病の特効薬が完成するまで、ロクは冷凍保存されるんです。現実的には(まだ)冷凍保存の機械とかも、ないわけじゃないですか。たとえ、あったとしても、待てるのかどうかという問題もあります。きっと50年という歳月の間に、いろいろなことがあると思うんです。けど、何年かかったとしても、ロクがもっとカプセルに入っていたとしても、きっと倍賞美津子さん演じる深雪は待っていてくれたと思うんです。それくらい、ひとりの人と恋愛をしたり、生きていく上でひとつのことを一生懸命頑張ることは素晴らしいこと、というエンターテインメントだと思いました。
――鈴木さんだったら、50年待てますか?
待てないですね。
――即答でしたが……。
え~。リアルに待てますか!? きっと1年も待てないと思います。1年もあったら「あ、素敵だな」と思う人に、必ず出会うはずなんですよ! この作品は絶対的にエンターテインメントだと思います。それを貫いているから、『Snowman』を観て「今の彼氏を大事にしよう」とか「彼女を大事にしよう」と思えると思うんです。
――けど、鈴木さんは違う?
俺はね、バーンと閉めてどこかへ行っちゃいます(笑)。
――(笑)。倍賞さんとは、撮影中どのようなコミュニケーションを取りましたか?
倍賞さんって、すごくかわいらしい方なんです。一緒にベッドに入るシーンがあるんですけど「なんか恥ずかしいね」と、おっしゃっていて。すごくピュアで、本当に少女のような心をもっている方で。倍賞さんとふたりでお芝居ができる機会なんて、なかなかないじゃないですか。説得力みたいなものをすごく感じたので、本当に感謝しています。とても貴重な経験でした。それに、すごくいいチームワークでやらせてもらいました。
――『東京喰種トーキョーグール』に続いて、萩原監督との取り組みになりましたね。
2回目だったので、すごくやりやすかったです。尺が短いこともあって、撮影も2日間だったんです。監督は「台本も短いから、イメージがつきづらいよね?」という話をしてくださって、プロットのようなものを書いてくださったんです。すごく小さい文字でブワーッと書いてあるプロットを、5~6枚くらい渡してくださって、「一応、僕が考えるロクはこういう人だから、読んでみて」と用意してくださいました。読んだ上で、いろいろお話をして。監督はヒントをくださる方だし、作品に対してすごく真面目な方だから、やっぱり素敵だなと思いました。けど演じるのは、うん……本当に難しかったですね。
――表現が難しかった?
はい。台本をもらってから、いろいろ考えたのですが、逆に今回は考えないほうがいいな、ありのままやったほうがいいのかな、と思ったんです。
――ショートショートには、初挑戦ですよね?
はい。短編作品に取り組むのが初めてだったので、現場でも、でき上がったものを観ても、1カット、1カットが大事なんだと改めて感じました。もっと表現しないとダメだと反省したこともたくさんありました。得られたことがあったというよりも、「次こうしよう、ああしよう」ということのほうが多くて。またチャレンジしたい気持ちのほうが大きいです。
――ショートショートの魅力も感じましたか?
15~20分という時間でひとつの物語を見せることができるんだ、という新しいエンターテインメントの形を感じました。それくらいの時間だと、観る側としてもすごく観やすいんですよね。例えば、映画を観るとなれば、仕事で疲れていたら途中で寝てしまうかもしれないし、次回にしようかと思うときもあると思うのですが、20分だと集中して観られますし、わかりやすい。今回を機に『CINEMA FIGHTERS』というプロジェクト自体がどんどん進化していったらいいなと願います。次回携わることがあるなら、そのときにはまた違った自分を見せられたらいいなと、すごく思います。
――『CINEMA FIGHTERS』では、ほかに5作品ありますよね。気になる作品や、やってみたいと思う作品はありましたか?
作品としては「花火」(三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)の楽曲が基になっている『終着の場所』がすごく好きです。(主演の)町田(啓太)くんは、すごく上手に作品を描いていたなと思いました。何をやりたいかと言えば、う~ん……。僕は寒いのが苦手なので、雪が舞台の『SWAN SONG』はつらい(笑)。『Snowman』でよかったです! どの作品もそれぞれの魅力があって、面白かったです。
――本プロジェクトに限らず、映画と音楽は切っても切れない関係にありますが、普段の生活の中で、音楽の力を感じる瞬間はありますか?
いっぱいあります。音楽って、人間の力だと思うんです。いつ聴いても音楽自体が変わることはないから、心に響きます。エンターテインメントで、お芝居や音楽の「素敵だな」と思うところは、普段しゃべることで「サムいな」と思うことだって、ドラマや音楽だとスッと人の心に入ってくるところ。そういう仕事に携われているのは、すごくうれしいことです。
――ちなみに、鈴木さんが自分の愛するもので冷凍保存しておきたいものはありますか?
(悩んだ末)ないですね、ない!
――何かないですか?
あ、あった! 若さ、かな!
――若さ? 意外です。
入れられないですけどね(笑)。自分の若さ! 20歳の頃の肌(笑)! 入れられるなら、入れたいです。この間25歳の誕生日だったんですけど、一気に大人になっちゃったんだなと思って。22~24歳までは、誕生日がきても全然何とも思わなかったんですけど、25歳は急に大人になってしまった気がして、すごく嫌で。永遠に中学生くらいで生きたい!
――(笑)。
肌がどんどん劣化していくっていうか……年には勝てないと思って。でも皆が絶対そうなっていくわけなので、やっぱり中身を大事にして充実させていかなきゃいけない。シフトしていくんだな、と実感したんです。
――充実という点で言えば、2017年は特に出演作が多く、非常に露出の多かった印象です。
大変でした。全部の作品を俺なりに一生懸命頑張りました。中でも、話題になった作品の存在は大きいです。観てもらって、初めて成り立つことを感じましたし。やっている自分は(どの作品も)変わらずにやっていますけど、誰かが「あの作品、面白いよ」と言い始めると、ブワーッと皆がそこに注目するじゃないですか。良くも悪くも、それをすごく感じる瞬間がありました。
――今までにないくらい、忙しかった年でもありましたか?
いやあ……(苦笑)。忙しい人は、皆、大変だろうなと思いました。俺より忙しい人はたくさんいらっしゃるので。忙しいのも大変だなあ、って。
――「忙しくなりたい」と思っていた時期もあったと思うのですが。
そう! 「忙しくなりたい」と思って常々やってきて、7年くらい経ちました。忙しいのも大変だなと思いながらも、だからと言って、休みだらけの日に戻りたいとは、一切思わないです。今は、もっと1作1作に集中してやっていける自分になりたいとは思います。
けど、劇団EXILEが忙しくなっているのはうれしいです。劇団EXILEのメンバーそれぞれに仕事が増えたのはここ数年です。2~3年前とかは今ほど仕事がなくて。その頃に比べたら、本当にうれしいです。それと同時に年齢も重ねちゃっているとも思っていて。自分的には、時間がかかりすぎたと思います。これじゃあ、もう20代もアッという間に終わっちゃう。
――今の場所までくるのに、鈴木さんとしては時間がかかりすぎた印象なんですね。
そうです。だって、一生はすぐ終わっちゃいますよ?
――……恐ろしいことを。
(笑)。でも本当に常々思います。絶対にアッという間に終わっちゃう。だから、やりたいことだらけです。海外も行きたいですし、語学留学とかもしてみたい。20代で英語がペラペラになりたいなとか、こうなりたいとか、若くしていろいろできるようになりたいという考えがあります。やってみたいことはいっぱいあって、20代で経験したいと思っちゃうんです。僕は30歳が分岐点だと考えていて、お仕事や、もしかしたら結婚とかもそうだと思いますし、いろいろなことが変わる年だと思うんです。今、一生懸命やっておかないと、そのときに「どうしよう」ってあたふたしたくないから。(インタビュー・文:赤山恭子、写真:岩間辰徳)
(C)2017 CINEMA FIGHTERS
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